734話 ギルド祭り
「お祭りお祭り〜!りんご飴ってどっちが好きですフェリエット。」
「イカ焼きの方が好きだなぁ〜。たこ焼きもいいなぁ〜。でも、一番いいのは焼き鳥食べながらマタタビ酒をこう・・・。」
「コンビニでもマタタビ酒が売ってるからって歩き飲みはするなよ?」
フェリエットがおっさん臭い事を言っているが、焼き鳥食べながらの1杯は旨い。それこそ屋台で焼き上がったばかりのももや皮をアテに冷えたハイボールとかもうね。夏場なので食べるなら塩!甘辛いタレも嫌いではないが、口に残る感じを考えるとやっぱり塩で、ボンジリとか何本でも食べられる。
夕方からのギルド祭りだが、既に朝から人で賑わい露店も盛況なら来客者も多い。去年はなかったが地元の歌手を呼んでステージではミニコンサートもやってるし、よさこいチームが踊ったり神楽を舞ったりと催し物も多いし、招待で来る施設の子供達にはお祭りチケットと言う形で券を渡した。
コレは後からギルドに申請すれば一律1000円と引き換える券で、お祭りの当日のみ有効で引き換えは1週間以内としてある。流石にお祭りに来て露店見て帰るだけじゃ詰まらないし、確かに相当数発行したが、使えるのはあくまで食べ物やくじ引きのみ。
流石にこの券で武器やらを買おうとする奴はいないと思うけど、先に使えない物を指定しておかないと困るしねぇ。特にもうすぐ16歳なんて子はレプリカでもいいから実際に武器を触ってみたいと思う様だ。R・U・Rとは違う重さが気になるらしい。
妻は救護所に昼間で詰めて午後からはフリー、望田はエマと2人で温泉入ってから祭りに行くと先に家を出たし、那由多は千尋ちゃんとデートしてから祭りに行くと、コレまた朝から家を出た。残された俺とソフィアとフェリエットは今から祭りに行く。途中でソフィア達の友達を拾う事になっているが、会場に着けは自由行動だろう。
「ほら、車に乗った乗った。待ち合わせ場所はキリシタン公園でいいんだな?」
「ハイです。横のスーパーで先に飲み物とか買っとかないと、会場ではそこそこするですからね!フェリエット、荷物はお願いするですよ?」
「焼き鳥1本で手を打ってるから心配しなくていいなぁ〜。でも、はぐれたら後は知らんなぁ〜。」
「集合場所はギルド前ですよ?スマホもあるから大丈夫です!」
「莉菜から連絡があったが結構賑わってるらしい。何箇所か決めておいた方がいいかもしれないぞ〜。」
「う〜ん・・・、ならフェリエットが飛べばいいです!敷地内は職を使っても大丈夫ですから!」
「その前に逸れるなと言っておきたいなぁ〜。と、そろそろかなぁ〜?」
フェリエットが言う様に公園は車ならすぐそこで、駐車場に入ると本田君とミカンちゃんが待っていた。2人とも浴衣ではなく帽子に短パンTシャツとラフな感じだが、昼間から浴衣でうろつくと結構堪えそう。
温暖化は止まって去年よりは最高気温が下がると予測されているが、それでも夏は暑い!多分、後10年くらいは猛暑日と言う言葉も消えないんじゃないかな?まぁ、魔術師が頑張れば短縮出来そうではあるが・・・。
「おじゃましまーす!久しぶりソフィアにフェリエット!宿題どう?」
「ぼちぼちです。行きたい高校に対しての学力判定は大丈夫だと思うですけど、願うなら定員割れで全員合格を・・・。」
「宿題しなくていい猫人には関係ないなぁ〜。」
「車出しありがとうございます。久しぶりソフィアにフェリエット、それはみんな同じだよ。僕だってデザイン系の学校目指してるけどデッサンとかは試験があるからなぁ・・・。」
「なに、私も祭りには顔出しするからいいよ。」
高校への入学方式と言うか試験がなくなったんだよなぁ〜。あの掲示板を見て受験番号あるかな?のドキドキはもう感じられないらしい。全て無償化して入学後に学力を付けさせる。コレは政府から出た案で高校生ともなると職に就ける。
それを加味すれば自分の入りたい高校に子供達は通い、大人達は教育指針を立ててそれに沿う様に勉強させると言うか知識を付けさせた方が効率的であると言う観点から、一部を除いて教育格差是正に乗り出した。
その一部ってなに?答えは職に就かない人材。ここはまだゴタゴタしているのだか、社会を回す為には一定数そう言う人材も必要だと言う声は多い。極端な話、社長含め社員全員でゲートに入って全滅したらその会社と取引していた企業も大打撃を受けるし、急に会社が潰れて困る人も多い。実際スィーパーの販売先ってオークションは別として企業なのよね・・・。
その為高校から管理職コースを作り、会社の運営を任せられる人材を作るとして新たに学科が設立された。内容的には大学の経済学部やら経営学部と言った感じらしいが、特に力を入れているのは経理面だとか。
「長谷川君も試験あるから大変と言ってたよ。」
「やっぱり委員長は管理職狙いかぁ〜。私が兼業スィーパーになって委員長が上役とか・・・、なんか変な感じ。」
「プチ同窓会みたいですね!」
「でも仕事は真面目にしないといけないなぁ〜。」
「そうだな。真面目に仕事してれば辛い事もあるけど、そればかりでもない。何かしらの楽しみくらいは許されるさ。」
「お父さんの楽しみってなんです?」
「決まってるよ。家族と仲良く暮らす。美味しいご飯を食べる。母さんと仲良く出かける。ありふれた日常こそ楽しむものであって、大冒険やらはたまに食べる高級料理くらいでいい。」
そう。大冒険も最強なんて言う不確かなモノの取り合いもたまにでいい。リャンの件は松田とチャンが日時を決めるとして預かられた。多分、素材フェス辺りに焦点を定めてくるだろうし、あまり長引かせても今度はリャンが爆発する。
魔女に扇動出来ないかと聞いてみたが、確固たる意思を持ってそれを選んでいるなら扇動しても剥奪してもあまり意味はないそうだ。確かに剥奪した所で残るのは最強への強い憧れだろうし、扇動しても最強を目指すならその道に帰って来る。
どんなに先延ばししてもリャンとは手合わせしなければならないのだろうし、その決着がどの様な形かは俺にも分からない。仮にチャンが俺がダブルEXTRAとリャンに伝えたら?
・・・、その仮定に意味はない。ダブルEXTRAと言う話で止まるくらいなら最初から最強なんてものは目指さない。藻掻いて求めてそれでも辿り着けなくて、でも辿り着く道は合った。それが俺に挑むと言う事なら、手合わせをしなければならないな。
「着いたぞ〜。流石に車で橋は渡れないからここから歩きだな。」
「ありがとうございました。ソフィア、フェリエット行こう!ほらほら、本田も降りた降りた!」
「わわっ!みかん急かさないでよ!ありがとうございました。」
「じゃあお父さん行ってくるです!フェリエット早く早く!」
「・・・、私は司と冷房の効いた車の中がいいなぁ〜・・・。」
「この車も指輪に収納するぞ?暑いなら魔法でも使って涼みながら行け。寧ろ、熱中症が怖いから敷地に入ったら使え。」
「なぁ〜・・・。」
フェリエットがゾンビの様に車から降りたのを確認して指輪へ収納。ギルドへと続く桟橋は氷像が置かれミストシャワーが降り注ぎと、結構涼しい。別府なら湯ぶっかけ祭りとかもあるし、来場者には着替えやら水着やらを持って来いと商工会がチラシで宣伝してたな。
実際服が濡れてスケスケな人もいるが、下にはカラフルな水着が見えているしミストなんかを飛ばすもの16時頃までと言う話である。そっから以降は氷像が増えるとか・・・。
子供達を見送り俺も橋を歩きギルドへ。流石に子供同士で遊ぶのに親は要らない。何かあれば連絡出来る様、スマホは出しておくにしても結構な賑わいだな。
「お疲れ様〜。混乱とか怪我とかは?」
「早かったわね司。今の所はないけど、迷子は何人かいたわよ?親御さんもすぐに見つかって一安心ね。怖いのは熱中症とかだけど、今年はミストや雪も降らせてかなり涼しいわ。」
「雪?そんなモノ見なかったけど溶けたの?」
「定期的にミストを雪に変えて地面とかの熱も取ってるのよ。猛暑だけど思ったよりも涼しいって声が大半ね。ただ、それで飲み過ぎる人はいるみたいだけど・・・。お仕置きにアセトアルデヒドを増殖させようかしら?」
「流石に悪酔い通り越してアル中になるよ。なんにしてもみんなで作る祭りだから迷惑かけずに楽しむ分にはいいさ。」




