370話 準備期間
細々とした質疑応答を終え会議は終わった。これから俺達本部長がやるのは人員選定だな。誰が信用出来て誰が信用出来ないと言うよりは、どれだけ素直に従ってくれるかとか?まぁ、東京は雄二が選定するスィーパーと出来る限りツーマンセルを組ませるだろうし、水源地系は千代田との連携になる。
そうなるとやんちゃなスィーパーよりも、相手を立ててくれる様な性格のスィーパーが望ましい。そうなると体外的には高評価な青山と岡部達か?どれくらい出して欲しいかによりけりだが、ギルド立ち上げとは違いやる事は警備なのでアホらしい人数は出して来ないと思う。
そもそも来るのはブローカーと企業人なので、要人警護とは違い普通警備でいいだろうし、不要な外出時に発生した問題は自力でなんとかしてもらうしかない。
少なくとも日本語は喋れるんだろ?職質されて日本語分かりませんとかベタな事言うなよ?手間が増えるだけだし鑑定師か鑑定術師呼ぶぞ?
「フェスの時エマはどうする?」
「米国ブースで自衛予定だナ。日本政府からもブース内自衛は許可が降りているシ、多国籍な人間が集まる場で必ずしも全てに目が行き届くわけではないと言われていル。まァ、来るブローカーも国から推薦された者達だガ、本部長選出戦時よりはクロエ達も気が楽だろウ?」
「ホスト国になったら大変さが分かる。いや、エマには一生分からないかも?カオリはどう思う?」
「う〜ん、言わんとしている事は分かりますよ?既に米国は色々な民族が暮らしている分、日本よりは多国籍警備のノウハウがあるって事ですよね?」
「そう。ゲートが出る前は来ても農業実習生とか旅行者がメインで、住み着かれた様な場所はあるにしても大多数は日本人ばかりだった。でも、そこからゲートが出て日本語が広まって第2母国語に日本語を選ぶ割合も増えたと言うか、殆どの国でそれを勉強してる。そんな中で警備するのはかなり骨が折れる。」
外人が英語を話すのは分かる。ハーフやクォーターが日本語を話すのも分かる。なら、外人が流暢に日本語を話したら?答えは日本に何年か住んでると思うし、その住んだ年数分暗黙のルールにも触れていると思う。
しかし、そんな話はなく自国で日本語勉強して、その教材がアニメや漫画ならまだ日常的な部分もあるからいいが、本当に日本語だけを学んだら?答えは自国風の態度を取り流暢な日本語を話す外人の出来上がり。懸念されらのは言い負かされる事かな?同じ様に話しても全く違う理論で動いていれば印象も何もかも違うし。
「それハ・・・、米国の話だけするなら警官はかなり丸くなったゾ?昔なら銃を突き付け罵声を浴びセ、高圧的に物事を進めていたガ、今は警官も丁寧なら質問される方もしっかり答えル。曲げない部分は確かにあるガ、そもそも罪を犯していなければすぐに解放されるしナ。」
「それって鑑定師が?」
「あァ。かなり議会で揉めたが重大な余罪出ない限リ、余罪は別件として考えル。つまリ、職質されて何もしていないなら無罪を宣言すればいいシ、それでも疑わしいと思うなら警官側はどう怪しいか説明する義務が発生すル。そこで更に揉めるなら鑑定師に鑑定してもらウ。」
「正義の基準を今にして秘密を保護したのか。因みに重大な余罪と言うと?」
「ゲート外での殺人、過度な暴行、貴重な物の窃盗等だナ。マフィアは潰しテロリストも潰シ、ドラッグは鎮痛高揚剤の名目で政府が回復薬とセット売りして低価格。私はドラッグが嫌いだガ、ゲート内で死の間際に使うなら理解も示ス。まァ、使う暇なく死んでいる事の方が多そうだがナ。」
「首をすくめるのはいいけど、日本ではまだ薬物は禁止。仮にブローカーが薬物取り出したらしょっぴくからね?」
「私もクスリを使う人とはちょっと・・・。」
「ん?松田さんからメールだ。」
他国がどう国家運営するかは別として、ゲート内でラリったら死ねる。なにせまともな判断が下せないのに膨らんだ肯定感だけで使えばガッタガタのイメージだろうな。そんな事を思いつつメールを開くと、結構無理難題が書いてない?
「内容を聞いても?」
「寧ろ聞いて・・・、素材フェスは政府主導。コレは間違いないんだけど、その政府として私、カオリ、神志那さんにフェリエットは会場に来て欲しいんだって・・・。」
「それって大分ギルドがかなり手薄になるんじゃ・・・。」
「なる。なるけど不在期間中は他ギルドから副長も来るし、神近さんとか私達が休んでる時に代わりを務める人もいるから、よほどマズイ事態じゃなければ対応も出来るし、最悪走って帰ればいい。」
テレポートは出来なくても瞬間移動っぽい事は出来る。それを緊急事態では高高度で許す旨も書いてあれば、護りの要としての望田や獣人代表挨拶をしたフェリエットを他国の獣人スィーパーに合わせたい、神志那は鑑定術師として必要等々フェスにかこつけて来るだろブローカーに紛れた政府関係者対策として事前に東京に呼んでおきたいらしい。
らしいと言うのはあくまで政府が表に立って、今名の上がった者達は警備に来ていると言うと体だから。う〜ん・・・、なんか動いたのか?せっかく地方から人を出してゆっくり眺めておくつもりだったのに・・・。
「かなり強引な感じもしますけど、行く必要ってあるんですかね?」
「必要不必要を考えると微妙。個人的な話をするなら企業ブースは覗いておきたいかな?日本では色々と出土品研究には待ったがかかるし、ゲート内で研究しても表に出すにはまた時間を食う。その点を考えると海外がどの程度技術力を高めていて、日本としてはどこまで許容範囲を広げるかの指針になる可能性もある。それに神志那さんが名出しなのは、悪い事を言うなら鑑定して技術盗めじゃない?」
サイラスの杖の話もあったし、ドイツと言うかヨーロッパ方面ではパワードスーツの改造が盛んで、宇宙運用を視野に入れたロボテックスーツも作られている。その他にも他国が作った回復薬が並ぶと言う話もあるし、新機軸の銃なんかをガンナー向けに販売するなんて話も・・・。
日本の場合銃本体は職の関係上、販売は許されたけど弾薬は販売禁止されている。まぁ、黒棒突っ込めば弾が出るからどこまで有効かは横に置くとして、実射するならゲート内か自衛隊の施設で実弾使うしかない。
それだけではなく米国スタンピードで使用した地雷に興味持った国もあるんだよなぁ〜・・・。モンスター吹っ飛ばせる地雷、それは言い換えればモンスター吹っ飛ばせるだけの威力が確保出来る既存兵器とも言える。
確かに調合師である山口や高槻に依頼して作ってもらったが、それを大量生産出来るならゲートに持ち込みたいとも考えるだろうし、火薬なんかを取り扱ってる企業は開発を成功させて売りに出したい。企業ブースと言いつつ中身は兵器展覧会かも。
まぁ、どんな物だって取り扱いを間違えれば危険物に早変わりする。そんな危険物の持ち出しを防ぐ為にフェリエットも呼んだんだろうし、本当に爆発なんかを考えたら望田と俺は盾としたいた方がいい。
「盗むだけの技術があるかは疑問だナ。」
「先に米国が飛行ユニット作り上げてお披露目会やるなら?」
「死守すル。しかシ、他国の技術がそこまで上がっていると思うのカ?私個人としては緩やかな上昇だと考えているガ・・・。」
「それは知るべきか否かの問題じゃないですかね?急にエマが理論も分からない兵器を使ってトラップ出したら怖いじゃないですか。」
「逆にカオリはそのせいで会場に来いってされた可能性もあるけどね。なんにせよ8月末にはフェスが始まる。それまでは出来る事をしておこう。」




