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街中ダンジョン  作者: フィノ


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722話 とある晩 挿絵あり

 忙しい月日は風の様に過ぎ去り鬱陶しい梅雨は終わって7月。松田に預けた獣人スィーパーの件で何度かゲートに入りつつサイラスやエヴァと話して状況確認をしながら奥へも足を運ぶと言うかなり多忙な日々。その間にも奏江とファイアウォールの再調整をしたり、ラボへ言ってS・Y・S建造プランを斎藤に聞かされたりと、分身出来るもんならしたいと切に願う。


 よそう・・・。それで分身したら最後、お呼びの声が鳴り止まず誰かに頼る事も出来ず、最終的に俺1人でいいんじゃないか論が浮かび上がってくる。言いたい事は分かるけど流石に1人で出来るキャパシティにも限界があるんだよ・・・。


 物理的にそこにいない時に何かを言われても知らんとしか言えないし、後から対象出来るなら口を出さない事もないけど、それだって過ぎ去る時間の前では終わった事として消えていく。


 ただ強者としてこの先あるなら知識だけは貪欲に吸い上げないといけない。確かに雑学的なものの知識は多いけど、その雑学やら学術、空想に至るまで全てが職として力となるなら文字通り無知は罪であり、知性ある物を批判したとしても嘲られて押し潰される。自分Wi-Fiのアップグレードも必要だなぁ・・・。


 既存の電波送信方式から新しい物・・・、アル達がやろうとしている情報量伝達方式を考えるなら、時代に取り残されるのだけは避けたい。いや、避けなかったら過去の人になれるのだろうか?永遠は人の手に落ちた、超人的な力も格差はあっても誰でも手に入る。残された有能性は交渉権だけ・・・、その権利の行使を持って他の突出した性能・・・、EXTRAと言う物を出来ないとか言う物言いで塗り固めたら?


 ・・・、ナンセンスだな。自分の性格からしてそう塗り固める方がボロが出る。能ある鷹は爪を隠すと言うが、普段は昼行灯でもスタンピードがあれば動かずにはいられない。それは自ら家族を危険に晒す行為だから・・・。


「それで青山、これは?」


「はい!言われた通りの時間潜り指示通り集めて来た品です。どうぞお納め下さい。」


 にこやかに言う青山がテーブルに出したのは1本の不老薬。話してから数ヶ月でよく見つけたと言うか、より中層付近には不死薬や不老薬が眠っていると言う話を広めるものとなるのか?邪推するならわざとソーツがそこに投げ込んだとも考えられるな。


 人の在り方を知ったソーツが人にやる気を出させるなら、手っ取り早く権力者が欲しい物を提示するのがいい。国民的にも多い中国や、その他の権力者にとっても夢である永遠を提示して焚き付けると考えるならこれもありなのだろう。


「分かった、貰うのは貰うにしてもただでは受け取れん。そもそも10本と言う約束だったが?」


「やはり奉公する者を殺しましょう・・・。俺は言ったんです、言われた数を揃えてから渡し方がいいと。しかし奉公する者は手に入ったならすぐに渡せと!」


「あ〜・・・、殺す殺さないは勝手にやってくれ。とりあえず感謝したいんだが、どうすればいい?先に言うが子供やらの話をするなら・・・。」


「しません!俺もちゃんと学習して言われた事は覚えてますから!それこそもう、クロエさんは結婚している、なにか事を起こす前には相談する、バイトの散歩は俺の仕事・・・。」


 青山が俺との約束事を羅列していくが、ちょっと感動的かも・・・。そうか、ようやくまともと言うか話が出来るまでに・・・。どこかで無能な働き者は処刑しろと聞いたが、有能で馬鹿な働き者は調教すればいいのだな。少なくともそこで馬鹿が消えれば有能な働き者になるし、青山の最大のアドバンテージは裏切らないだろう事。


  挿絵(By みてみん)


 今までを考えると紆余曲折あったとしても、後から見返せばマイナスな事はしていないし、トータルで見ればプラスの場面も多い。それこそ本部長選出戦とかガーディアンのコア騒動とか、宇宙ステーション破壊未遂とか・・・。なんだろう、どんどんスケールアップしている様な・・・。


「それで、流石に不老薬を貰ってありがとうじゃ気がすまないんだが?」


「価値観的に言えば欲しい物を取ってきて、ありがとうの言葉だけでプライスレスなんですけど?」


「なら私じゃない誰かが同じ事をお願いしたら?」


「危ないから聞くわけないじゃないですか。俺はあくまでクロエさんに奉公したいのであって、他の誰かとか本当はど〜でもいいですし、そのクロエさんが大切と考えるモノは守りますけど、天秤にかけろと言われたら間違いなくクロエさんを取ります。」


「はいはい、一貫してるのは分かったから。なら、その私が何かを感謝を示したいと言っているのにはどう言った奉公プランを立てる?」


「感謝を示させる奉公プラン・・・。分かりました!両方が満たせるプランを立てて持ってきます!」


 思えばコレが俺の間違いだったのかもしれない。数日経ってから青山が1枚の手紙を寄越してきた。わざわざどこかで買ったのが高そうな紙に日付と時間が書かれていて、丸をして返して欲しいそうだ。夕方からの時間帯しかないので、あらかた飯にでも行こうと言う話だろう。


 しかし、飯と奉公って合うのか?牛一頭買ってきてそれを食わせてくれると言うならまぁ、奉公ではあるのだろうし代金を請求してくれれば感謝の印とも言える。手っ取り早い感謝として金銭を支払うと言うのは目に見えて分かりやすいしな。


 ソフィアや妻の夜勤、望田やらエマ、政府なんかからの話で多少間は空いたが、その当日の朝に青山から本当はは何を着ても綺麗だが、そこそこでいいからいい服を着て欲しいと要望が来た。まぁ、指輪の中にドレスでもコスプレでも大凡大体服は入っている。・・・、今度コスプレは出しておくか。全く持って使う予定のないものだ。


「お迎えに上がりましたクロエさん。」


「あぁ、とりあえず楽しみにしておくよ。」


  挿絵(By みてみん)


 ちょっと派手目なスーツに金髪はワックスでも付けているのか整えてある。香水も振っている様だが嫌味にならず臭くもないので、身嗜みの範疇と言えばそれまでかな?色々な人に会ったがどうしても苦手な香水の匂いとかあるし、男性物と言うと変に甘ったらしかったり、なんとなくおじさんの匂いだと思う物もある。


 そんな青山がレンタルでもしたのか高級スポーツカーを運転して夜の街へって、進む先は歓楽街だけどいいのだろうか?確かにいい飯屋もあるが、時間帯的に言えば飯よりも飲み屋方面が賑わう。


 う〜ん・・・、飲もうと言うなら別にそれでもいいけど、ドレスコードが必要な飲み屋とかあったっけ?いや、俺が大分戻って飲み屋に行かないだけで探せばあるのかも。


 本部長となってからと言うか、元々会社の宴会以外は殆ど夜は飲みに行かず宅飲みばかりで家にいた。それをもったいないと言う人もいるかも知れないし、家族思いと思う人もいるかもしれない。なんにせよその選択は俺がして俺がそれでいいと納得しているのでなんの問題もない。


「ここは・・・?」


「さぁ、今宵は貸し切りです。楽しみましょう!ただ・・・、心苦しいのですがお代は・・・。」 


「言うな。それくらい・・・、金貨でいいなら全部出す。」


 店の前には複数の着飾った人と獣人の男女・・・。それこそ盛り髪やらツンツンヘアーやら無造作ヘアーに高そうなアクセサリー、ドレスにスーツにと・・・、なんだろうな・・・、多分キャバクラとホストクラブとかを混ぜたものか?


 忘れてたけどコイツって元々ホストなんだよなぁ・・・。相手が喜んで感謝の気持ちを伝えつつ、本人は本人で奉公と言うか相手を喜ばせると言えばこうなるのか?男女揃えたの?多分、男ばかりだと嫌がるだろうけど、女性ばかりでも嫌がると踏んだから?


「ささ、どうぞこちらへ!お酒も食事も心ゆくまで楽しんで下さい。また、キャストへのセクハラ行為は禁止ですよ?」


「禁止される前に既に抱き着かれてるんだが!?」


「いらっしゃいファーストさん、楽しんでいってねぇ〜。」


「私の尻尾手触りいいって評判なのよ?特別に触っていいからね?」


「あおのさんシャンパンタワーどうします?アゲアゲコールして入れちゃいます!?」


「ダンスいけるッスよ!獣人の人達と練習した成果を!」


「俺もあっちに混ざりたいなぁ〜。」


「野郎はファーストさんにお触り厳禁!本人からの接触を待て。」


「でも、俺の裸って昔ファーストさんに温泉で見られたし・・・。」


「ファーストさんローストビーフ食べよう!あ〜んしてあげる、ほら!あ〜ん・・・。」


 ローストビーフを口に入れらつつ、ステージでは人と獣人が流行りの曲でダンスする。取り仕切る青山は俺の前に座り手拍子したりしつつ、指示を出しているが照明関係かな?少し暗いなかでレーザーライトとかは眩しいし、最近のスィーパーはレーザーライトにも反応して避けようとするらしい。


 なんにせよ獣人と人が一緒にスィーパー関連以外の仕事で純粋に仕事をしているのを間近で見るのは初めてかも。どうしてもギルドにいると警察からの要請でスィーパー犯罪の捜索に獣人斡旋したくれとかが多いし。


「最初はハイボールとして、ほか何か飲みます?ウイスキー、ブランデー、日本酒に焼酎、テキーラやウォッカもありますよ。ショットグラスでキュッとやってライムをかじるのもいいですし、カクテルがお好みなら色々作りますけど。」


「カクテルか・・・、久々にブルームーンが飲みたい。オーソドックスにクレーム・ド・バイオレットを使ってくれ。」


ブルームーン(憂鬱な月)ですか?騒がしいのが・・・。」


「違う違う。昔・・・、結婚する前に友人達と飲み歩いた時に気に入ってな。よく行ってたカクテルバーで飲んでたんだよ。色も綺麗だしな。」


「ファーストさんおっとなぁ〜。私甘いお酒欲しい〜。」


「あっ!抜け駆け!私もジュース欲しい!」


「私はカツオ出汁を・・・。」


「肉吸いってありましたっけ?」


「こら!今日はクロエさんを楽しませる為に・・・。」


「いいよ青山。私を接待するのに他の人、全員が窮屈な思いをしていたらそれはそれで楽しめない。金貨でいいなら出すと言ったんだ、その言葉に二言はないさ。取り敢えず、金貨1000枚。コレでここにいる面子が楽しめるだけ楽しもう!と、言うかシャンパンタワーにシャンパン入れさせて?」


「えっと・・・、入れてもいいですけど結構跳ねますよ?」


「どうせ服は着て破けて最後は雑巾にしかならん。大切に着るのは着るが、それでも楽しい事の邪魔をするのは違うだろう?どうせジョージから送られた服の中の1枚だしな。」


「ジョージ?誰そのジョージさんって?ファーストさんの友達?海外にも行ってるから顔ひろ〜い!」


(ファーストさんの言うジョージって、ジョージ=ハーワードだよな?)


(言うなよ!大統領から送られた服って聞いただけで汚したらどうしようってなるだろ!?)


(どうせ布だけどなぁ。)


(その犬人の感性が羨ましい・・・。)


 ヒソヒソ話は置いておくとして、結構高く積まれたグラスタワーに青山が渡して来たシャンパンを注ぐ・・・、注ぐ・・・、注ぐって、やっぱり思った通りかなりの本数いるな。床に落ちないよう魔法で受け止め下のグラスにも入れていくが、このグラスが固定されていたらどうしよう?


 そんな時袖を引く人か。見てみると口を開けて指差している。なるほど、飲ませてくれと言う事か。浮いた酒玉を口に放り込むとそのままゴクリ、他にも何人かしてほしそうなので顔の前まで飛ばしていく。割とバーテンの魔術師:水とかこんなパフォーマンスしてそうだな。


「どうぞ、ブルームーンです。」


「ああ、ありがとう青山。」

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青山がおかしいぞ、これ偽物なんじゃ ·不死薬を捜索でクリスタルや素材等に金貨も出て探索前にお金無くてもある筈なのに足りない ·つまり不死薬が出てすぐ身綺麗にしてすぐクロエに行かなかった ·その上で更に…
ソーツは未来永劫人類にやる気を出させるためにトップ層が望むものをばら撒けば良いなんて理解できないと思うのよ 獣人のホストクラブキャバクラは飯が揃ってるなら楽しそうだな 逆に食事がショボい場合のノリは…
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