716話 静かな食事
松田に話は預けている間にフェリエットは結城くんとの所に行くと部屋を出て行った。パーティーならと言うわけではないが、あそこならリーもいるしまだマシだろう。獣人スィーパーの件は他の本部長達と話し合わないといけないが、今は潜ったりもしているので副長含めてと言ったところか。
まぁ、潜るなとは言えないしせめて保護役付けろとか?ギルドには獣人スィーパーと、そのパートナーのデータもあるので難しい話ではないと思う。それに、本気で種としての自立と言うか、隣人としての在り方を考えていると言うなら、止めても潜るだろうな・・・。
データやら試験がある以上、国内の獣人に関しては管理できていると思う。それこそ獣人の誕生はギルド稼働後だし、スィーパーに成ったのは更に後なので、漏れがあればギルドとしての管理体制が疑われ出す。
まぁ、海外から獣人スィーパーが自力で渡ってきたと言われたらそれまでだが、流石にどの国も獣人スィーパーには気を使ってるしな。共存と言う話で言えば人の方が獣人に譲歩している様に見えるものの価値観の相違というか、獣人は飯を優先し人は金を優先する。結果としてその相違がいい様に働いて、飯+人よりもある程度安いお金で獣人は動いてくれる。
個体成長薬はもう出土しなくなってしまったが、獣人ベイビーはどんどん生まれているので、種としての最初の問題である遠方地での繁栄は既に済ませたと言う事だろう。実際獣人の雇用は結構すんなりと行われてるし、獣人学習用に作ったアプリの学習内容は日本基準の有名学校問題を神志那監修で作ったものをやっているので、下手をすると海外だと獣人の方が頭が良かったり、人も獣人用のアプリを使ったりする。
「さてと・・・、残る問題は奏江からのメールか。ファイアウォール関連で話し合いたいのは分かるけど、そこまで急ぐ内容はあったかな?流石に突破されたなら悠長に構えている暇はないけど。」
プカリと一服して奏江に連絡を入れると、本人は不在と副長に言われた。明日には戻ると思うと言う事だが、素材フェスに向けてモンスターを狩っているとの事。選出戦でも見たけど奏江って結構ガッツがあるんだよなぁ〜。
他は差し迫って連絡をとる用事もないので書類整理と、今回潜って調べた廃棄ゲート関連の所感を書きつつ、鑑定は橘が行ったのでその部分を箇条書きでまとめて橘に送る。訂正してもらうと言うか、箇条書きなので肉付けしてもらうと言うか・・・。
そんなこんなで事務作業をしていると昼になったので妻と食事して託児所に顔を出し、子供達を浮かせたりして遊びつつ休憩してまた仕事へ。昼から突発的に舞い込んだら仕事はないものの、獣人の試験申請は多いな・・・。確かにスィーパーとして見れば二馬力になるし、チームなら戦力としてカウント出来る。
今年に入ってから専属も増えてるし、その増えた中で身を置いていたチームが空中分解したり内輪揉めから離脱したりと様々。順調にやっている所は依頼もこなすし稼ぎも悪くないが、ソロになってしまって予定の稼ぎを下回ると焦りから無茶な潜り方もする。
楽と言うわけでわないが1〜5階層を完全に全ルート攻略するとして大体半日。モンスターとの遭遇次第では更に伸びるし、ソロなのでミスすれば死ぬ。そんな中で獣人がスィーパーでパートナーと言うのは人からすればかなり美味しい。まぁ、個人的な意見とするならギルドで斡旋もしてるから困ってるなら声かけてくれとか?簡単に死んでいい奴なんて早々いないんだよ・・・。そんな昼からの業務を終え、今日は定時で帰宅。
「ただいま〜。」
「お帰りですお父さん。夕食は力作ですよ!」
「今日はソフィアが作ったのか。莉菜は遅くなるって昼言ってたし、那由多も何かに打ち込んでるみたいだし、フェリエットと2人で寂しくはないか?」
「大丈夫です。家に入れば誰かが帰って来るですし、私の居場所はお父さんの所です。だから私はここにいるだけで大丈夫・・・。」
「ソフィア〜・・・、腹が減ったから早く食べたいなぁ〜。テストが帰ってきた事実を隠す工作をするなら早くするなぁ〜。」
「・・・。」
「・・・、点数は?」
「は、半分よりは上ですよ?」
「半分よりは上か・・・、特に怒りはしないが高校に行くならあまり勉強はおろそかにしないように。ソフィアの場合内申点やら1年生の時の点数がないから、どういう判定になるかは分からないけど将来に対する選択肢の幅を広げたいなら点数は取っておいた方がいい。まぁ、勉強だけじゃなくて色々挑戦するのも大事だけどね。」
3人で食卓を囲むが2人いないので少し部屋が広く感じるな。まぁ、本来ならにゃん太は猫で妻と2人・・・、2交替の仕事を続けていたら妻は1人なので更に広く感じていたかも。
「今日は学校の体育でマラソンしたですけど、長く走るのはキツイですね・・・。」
「体育か、最近は何してるんだ?色々とカリキュラムが変わったとは聞くけど、中学の事はあまり聞かないな。」
「色々するですよ?走ったりバレーしたり、刃を潰したナイフを使った刃物の取り扱い習ったりサバイバル的な木登りやらをしたり・・・。」
「林間学校でやりそうな事を通常授業でもやってるのか・・・。ナイフの扱いとかっている?」
「ナイフは1本あれば身を守ったり火を起こしたら出来るから必要です!スィーパーに攫われても、どうにかして居場所は知らせないといけないですし。」
「それって放火して狼煙を上げてるような・・・。まぁ、叫ぶだけだと足りないしなぁ・・・。フェリエットとしては?」
「ただの猫人なら諦めてご飯を要求するなぁ〜。帰りたいけどスィーパー相手に勝てる気がしないなぁ〜。でも、同じスィーパーならどうにかして逃げるし、ソフィアを守るなら戦って見せるなぁ〜。」
「フェリエット〜!」
飯を食ってるフェリエットをソフィアが抱き締めているが、フェリエット的には姉妹愛なのか仕事としての意気込みなのかは微妙・・・。まぁ、やる気と責任感があるならそれでいいか。
神志那や青山からの報告ではフェリエットは順調に接近戦と魔術を両立させて戦っていると聞くし、属性的には全て使えるのでそれも満遍なく使っている様だ。仮に妖怪と言う職が中位に至るとなるとどうなるのだろう?
人の様に更に職が選択出来るのか、それとも妖怪と言う職の比重部分が作用して特化していくのか?人とは近くても遠い種族だし考え方によっては既に両方待ってるから、その比重により職の性質が変わるとか?
語録だけ考えると妖怪の上って荒神とか神獣とか?河童とか零落した水神とか言うしなぁ・・・。まぁ、それは至った時にしか分からないだろう。
「そう言えばフェリエットはどうやってフィンやらマイロと連絡取ってるんだ?ゲート内だと臭いとかも消えるだろ?」
「普通に誰かが走って来て話したり、その話を聞いた奴が外で広めたりだなぁ〜。よく見える目は遠くても夜なら結構見えたり聞こえたりするなぁ〜。」
「・・・、えっ?もしかして宇宙言受信出来るし話せるのか?」
「あんなもんは感じるだけだなぁ〜。お日様あったかいとか、今日は晴れてるとかとおんなじ感じだなぁ〜。大丈夫は大丈夫としか受け取れんなぁ〜。」
「ソフィアはあの宇宙からのメッセージって受け取れたか?」
「お父さんが何か話してる感じはしたですけど、内容は知らないですよ?はっ!私にも猫耳があれば・・・?」
「猫耳は関係ないなぁ〜。溢れ出る野生が足りないなぁ〜。」
「スィーパーでも中位とかしか感じ取れてないから、多少でも感覚があったならそれはそれで多分優秀だぞ?」
ソフィアの話にそれぞれで笑うがもしかすると、獣人って種として今の世代がスィーパーとしては1番優秀なのか?スタートが犬猫だとすると、それの習性を色濃く受け継ぐし人とは違った時点で常にモノを見る。しかし、次世代になればなるほど獣人であっても人の輪の中の獣人として人と同じ様な考えを持つ様になる。




