715話 マジで?
「悪いがその要請は却下だ。」
「どうしてもダメかなぁ?私達は私達として働きたいなぁ〜。」
自立心とでも言えばいいのか、モンスターを敵視する獣人としては戦えるだけの職に就けたならそう言う考えに至る事も予測はしていた。しかし、今それにYESと答えるわけにもいかない。
確かに職に就いた獣人はそこそこ増えて来ているが、全体を見るとまだ少なく警察からの要請も入るので、稼ぐと言うだけなら金銭的な報酬を増やしてもいいし、ご馳走の量を増やしてもいい。
「報酬面が気に食わないのか?」
「違うなぁ〜。人が命をかけでモンスターをプチプチしている横で、戦える私達は温々してていいのかなぁ〜?人がそうあると言うなら、一緒に住む私達もそうしないと飯がまずくなるなぁ〜。」
「対等性を求めると?」
「対等?違うなぁ〜。子供じゃないから縄張りの中に敵がいたら倒さないといけないなぁ〜。アレはまたいつか出てくるなぁ〜。」
「そっか・・・、フェリエットは世界を理解したのか。なら役割もわかるだろう?協力関係とするなら今は外で色々と頑張って欲しい。」
「・・・、なぁ〜。」
納得したかは分からないが1鳴き。今の地球の中は歪で2面世界と言っても過言じゃない。それに宇宙を入れると3面世界だが、誰かがそこに住んでいる以上獣人もまた住める。フェリエット的には地球と言う星に住み着いてその世界を縄張りとした時に、外敵が潜む巣穴は早々に潰したいと言う心の表れかな?
なんにせよ獣人全員が同じ気持ちかは分からないが、そこに住み共に戦える者としての意識が生まれた様だ。ただ、言った様に時期尚早と言うか人間としてはストップをかけるしかない。
指輪の中が見えると言うアドバンテージはかなりデカいんだよ。それこそ、最近はルーブル美術館に入った強盗を捕まえるのに獣人スィーパーは活躍したし、権力者が子供の護衛として獣人スィーパーを求める場面もある。
何時までもNOを出しているわけにもいかないが、獣人スィーパーには人と潜ってもらいつつ外の仕事を頑張ってもらおう。と、言うか獣人だけと言うと何人くらい集めるつもりだろうか?大分だけ見るとそこまで獣人スィーパーは多くないし、住んでる所も点在している。まぁ、統合基地で落ち合って潜ると言われればそれまでなんだが・・・。
「参考までに聞くが、何人くらいで潜るつもりだった?」
「わからんなぁ〜。いろんな国の獣人スィーパーがいるから多分多い?」
「ちょっと待て。それの発案者は誰だ?寧ろどこまで行くつもりだった?」
「マイロとフィンがやる気出してたなぁ〜。行くのは10階層辺りで上昇アイテム使って帰ってくるなぁ〜。」
サ〜イ〜ラ〜スゥ〜!他の国のお国事情だからとやかく言わないが、なにハーメルンの笛吹きしてやがる!やるなら自国でだけでやれ自国だけで!やる気出してたって以上、知らんとは言わせんぞ!
「もしもしサイラスさん?」
「おお、クロエ。急にどうしました?」
「どうしたもなにも獣人騎士団とか獣人魔法団作るなら自国だけでして下さいよ!なに獣人スィーパーだけ集めてゲート進ませようとしてるんですか!事と次第によっては他国から猛批判くらいますよ!」
「えっ!?確かに獣人メインですが、それは私もエヴァも動向しますし何より声けしたのは魔法省内ですよ?」
「はぁ?フェリエットが獣人だけでゲート進むと言い出しましたけど?色々な国の獣人集めて。そして、発案者はマイロとフィンだとも。確かマイロはサイラスさんの所の犬人ですよね?」
「ちょ!それは本当ですか!?」
「エイプリルフールで嘘付くならもっと酷い嘘を付きますよ。それこそ人類滅ぼすとか。」
「実現出来そうな事は嘘とは言いませんよ。貴女が言うと本気でやりそうで嫌だ。と、私はこれからマイロとフィンに話してきます!では。」
電話は切れたがなにやら雲行きが怪しい。確かに獣人は電話も使えるしPCも使える。なんなら職に付かなくても統合基地にいる奴はいる。もしかして獣人ネットワークって物凄く原始的で最新のネットワークなのか?
インターネットを使えばそれこそパッキングや情報漏洩は怖い。しかし、それを介さずに本当に人力だけで情報伝達してるとしたら?獣人集会って未だに対面で公民館でやったりしてるし、獣人そのものは群れてもなんのいざこざも起こさない。
現物主義と言えばそれまでなのだろうが枷が少ない分、獣人達が対面を重視すればする程知らないし所で何が起こるか分からない。
「フェリエット、もしかしてお前ってどこまで潜ったとか誰かに言った?」
「どこまでとは言ってないなぁ〜。その代わりに潜ってるとは言ったなぁ〜。お土産に自分で取ったゲートの魚を渡したなぁ〜。」
「それだ!他の獣人がどこまで潜ってるかは知らないが、ゲートの魚がどこで捕れるかは知ってる!」
さてはフィン辺りがフェリエットを師匠呼びして用心棒件魔法の指導者として推したが?それともサイラスの所の犬人マイロがサイラスの手間を省く為にフェリエットを呼ぼうとした?
なんにせよ話次第では丸投げも難しくないか?中止のお知らせ出して済むならいいが、パートナー側が魔法の指導を受ける目的で送り出そうと考えているなら多分ゴネる。なにせ魔法の使えないスィーパーがパートナーだった場合、魔法を教わるのは知り合いの魔術師からとなる。
その上で全属性やらせようとすれば何人もの魔術師に声を掛ける必要も出てくるし、魔法を使える獣人自体がまだ少ない。そこでフィンとフェリエット、魔法省長官の所にいる犬人と俺の所にいるフェリエットの名が出れば・・・。
最悪橘と雄二とフェリエット連れて獣人パーティーに参加かなぁ・・・?末永く見守ると言った以上、簡単にほっぽり出せるものでもないし・・・。
「とりあえずフェリエットはなにか話が舞い込んだらすぐに教えてくれ・・・。私は一度松田さんに電話かけるから・・・。」
「分かったなぁ〜。」
フェリエットは出て行きそのまま松田に電話!フェリエットの言う階層そのものは危なくない訳では無いが浅い。ただ、連れて行くのがスィーパー獣人と言うのがなかなかどうして、失うわけにもいかない人財である。
「もしもし松田さん?クロエです。」
「もしもし?どうしました?今更コアが必要とは言いませんよね?」
「あんなモノはいりませんが、ちょっと困った話を耳にしましてね・・・。」
「電話っ切ていいですか?」
「ダメです。獣人達が自分達だけでゲートを進むかもしれません。」
「ゲート内は自己責任、それは獣人もですよ?スィーパー獣人だからと言って・・・。」
「多国籍な獣人がゲートを進むかも知れません。そして!その中には多分フェリエットの名も囁かれている。」
「噂で動くのはちょっと・・・、えっ?日本の獣人ももしかして行きます?」
「噂の広がり具合は正直分かりません。ただ獣人はバカではないし、スマホもインターネットも電話も・・・、大凡パートナーが教えたものは使える。それこそタブレットだって今はどの国の獣人も使っている。」
「全容把握出来ます?それ。流石に把握出来ないと動きようもないですよ・・・。」
「サイラス長官に話は振りました。フィンとマイロ、英国の犬人が事の発端かも知れませんし、フェリエットからその名が出た。」
「コアで一段落ついて、素材フェスの予定を組んでいたのですが・・・、ふむ。私がその件預かっても?」
「松田さんが?私は構いませんけどいいんですか?」
「ええ、悪い様にはしませんよ。ただ、何かあれば協力はお願いしますね、本部長。」




