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街中ダンジョン  作者: フィノ


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閑話 140 魔法少女市位ちゃん 0.5話

「お母さん朝ごはんは?」


「冷凍の唐揚げとご飯にお味噌汁よ〜。」


「どこのメーカー?メーカー次第ではストレートかそれとも何を付けるかで熟考する時間が!」


「学校に間に合うなら悩みなさいね?遅れる様なら取り上げるから。」


「くっ!今日はストレートで向き合うとしよう・・・。お母さん、チンしすぎだよ・・・。」


 若干硬い唐揚げをモグモグ。今日から小学生6年生だけど伸び悩んだ身長は140cmで止まったし、体重も22kgから増えない。おばあちゃんとかお母さんはお肉を食べれば大きくなるって言って、小さい頃からお肉を食べ続けて、私は唐揚げに出会った・・・。


 多分この世で1番美味しいものはお母さんの唐揚げであり、おばあちゃんの唐揚げであり、それに追いつく為に私は日々分子ガストロノミーやロジカルクッキングに勤しむの。最高の食と何度でも出会えるものじゃない、気温や湿度やグラム単位で調味料を調合しても同じ物は作れず、最大の問題は小麦と片栗粉をまぶした時の量。


 毎回違った顔を見せてくれる唐揚げに対して私は常に真摯であり、その一口を得る為に想いを紡ぐ・・・。あっ、お父さんは日本人だけど仕事で海外にいるし、なんか白髪で赤い瞳だからそれが私にも遺伝したんだって。


「時間がない朝はそんなものよ?さっさと食べて学校に行きなさい?」


「私の思いが!」


「朝から重くてもさっさと食べる。」


 お母さんに言われて真摯に向き合う時間もそぞろに学校へ。去年から持ち上がりのクラスだから代わり映えはしないかな?特に中のいい子がいるわけでもなく、かと言ってクラスから浮いてもいない。物理的に浮いてると言うなら目と髪の毛の色?でも、瞳は鶏肉の赤で白髪が片栗粉と小麦の白なら、私は唐揚げをこの身に宿しているのかも・・・。 


「おはよー、綾香。落第せぇへんかったな。」


「おはよございます新美さん。今年も同じクラスですわね。」


「おはよ2人とも!春休みは楽しかったけど、今日からの勉強は・・・。」


 適当に挨拶しながら席に着くと、クラスの仲良し3人組の声が聞こえる。ジョークだろうけど小学生に落第は法律的にないよ!でも新美さんの頭の方は・・・。身体を動かしたりするのは得意だけど、テストが結構壊滅的だった様な・・・。


 お上品な西園寺さんは社長令嬢で、大阪弁っぽい話をする一条さんの家は自営業だったかな?これだけ見ると将来的には新美さんが今から就活の為にコネを作ってる様にも・・・。西園寺さんって小学校受験とかしなかったのかな?


「相変わらずですわね。」


「元気が一番ちゃう?偉い人も元気があればなんでも出来るって言っとったし。」


 多分言った人は偉いけどその偉くなる為に色々してるよ?それに、元気があって、なんでも出来るなら今は勉強するのが1番何じゃ・・・。なんにせよ私は唐揚げと向き合う為に料理も算数も理科も頑張る。それが私の望む道だから・・・。


「それよりも昨日変な夢見たんだよね。」


「変な夢?前に見っていいよったサメに食われない様に両足で突っ張る夢の続きか?」


「違うよ!アレは最後にかかと落としてサメを倒したの!」


「なら蘇った宮本武蔵に駄々っ子パンチする夢かしら?」


「それも違う〜。武蔵も駄々っ子パンチで倒したし、見た夢はなんか笑顔が大事ー!とか、助けてー!って呼ばれる夢だよ。」


「助けを求められる夢ですの?奇遇ですわね、私も似た様な夢を見た気がしますわ。」


「ウチも見た気がするけど奇遇やなぁ。」


「HRを始めますよ〜、席についてください。」


 先生が教室に入って来て明日からの事を説明する。今日は昼まででおしまいだし、お母さんは夕方までパートに行ってるから夕ご飯は私が作る!ふっふっふっ・・・、昨日からニンニク醤油に漬け込んだ鶏肉はどう進化している?


 ロジカルに漬けダレを作り、お母さんの好みに合わせて多少甘めに仕上げた液は味見すると濃ゆ目だけど、淡白な鶏肉にはそれでいい。出会いを飾るファーストバイトはストレートで味わい、その後に数々の調味料との出会いを体験して末永く幸せになる相手を選ぶ。人間関係もいきなり最高の出会いなんてないしね!


 学校が終わって帰宅してシャワーを浴びて着替える。最近は春だけど汗ばむ日も増えたし、家は学校から少し離れた所にあるからシャワー浴びないと汗臭くなっちゃうもんね。


「冷蔵庫よし!ボウルよし!ラップよし!漬け込んだ鶏肉・・・、もう少しか。揚げるその時まで今は休め、ソナタは静かに眠るといい。そして・・・、私も寝ようかな?久々にの学校でなんか疲れちゃったし。」


 部屋に行ってベッドへ。お気に入りの抱き枕はシャチの形をしていて、抱きつくとひんやり接触冷感素材。抱き着くと足との間と頭にフィットしてCooLに接してくれる・・・。 


「けて・・・、たすけて・・・。」


「・・・。」


「けて・・・、たすけて・・・。」


「・・・。」


 多分不審者!人のいる気配はないけど、それは私が単純に感じ取れてないだけかもしれない。声は若い男の人っぽいけど、年齢とか関係なく他人の家に上がり込んで来るなん不審者だよ!


「あのぉ〜、聞こえてますよね?」


「寝てます。御用の方はピーッと言う発信音の後にメッセージを残してシャープボタンを押してください。ピーッ・・・。」


「起きてるよね!喋ってたし、口で『ピーッ』て言ってたよね!?」


 マズった!居留守用の返答をしたけど、返答したら起きてる事やいる事がバレちゃう!気配はまだないけどどうしよう?そもそも何処にいるんだろう?声は近くから聞こえる気がするんだけど・・・。もしかして幽霊とかイマジナリーフレンドとか?今試しはないけどさ。


「その時私は震えながら自身の正気を疑った。家の中には留守番する少女しかおらず、話される声は男性のモノであったためだ。これが現実ならば間違いなく家の中に不審者が侵入していると言う事実が出来上がり、空耳だとすれば私自身が何らかの精神的な疾患を患ったと言う逃げられない証左からだ。ブルブル。」


「起きて!そして助けて!」


「寝かせて!警察行って!むしろ行け!不審者!悪霊なら神社でも教会でもマヤの神殿にでも行って!」


「他の仲間は既に協力関係を作ってるし、僕は君にしか頼めないんだ!」


「厳正な面接の結果、誠に残念ではございますが、今回はご希望に沿いかねる結果となりました。貴殿には今後の繁栄をご健勝を祈るにとどめておきます。」


「そんな不採用通知みたいな返しは要らないから助けて!そして目を開いて!」


「目を開くと事実を受け入れないといけないから開きたくありませんね。そもそも不採用と感じるならご自身に何か心当たりがあるのではないですか?例えば挨拶をしていない、名を名乗っていない、何よりまず先に状況説明をしていない。小学生女児の部屋に上がり込んで助けを求めるなんて、常識的に考えておかしいと感じるのですが。」


「ぐ、グサグサ来るなぁ・・・。もっとこう・・・、真摯な想いを持つ子は純粋な子って言う話なんだけど・・・。」


「純粋なのと騙されやすいのは違うよ!純粋な子は純粋であるが故にお汚れを知り、穢れを知ってそれでも尚純粋であろうとしてるんだよ。不審者は帰れ!」


 抱き枕を強く握って目を開く。目の前にはお気に入りの抱き枕のがあるけど他は誰もいない。えっと・・・、本当に私の頭がヤバい?誰もいないからいいけど、ずっと独り言言ってたって事?


「やっと目を開けてくれた!」


「シャチくん?」


「僕はヤクポ、怪人がこの星を襲おうとしてるから僕と一緒に戦って欲しいんだ!」


「・・・、はいぃ?」


「契約成立だね!魔法少女の力を君に!」


「ちょっ待てよぉ!ノーカン!疑問形な返答で契約成立とかノーカンだしシャチくん何言ってるの!?」


「凄い!こんなに真摯な想いを持った子がいたなんて!これならゲータリアも圧倒出来る!」


 汚い大人?妖怪?化け物?を知った・・・。不用意に了承する形式の返事をしちゃいけないって習ってたのに、海外でもないから油断してた・・・。どうしよう?服はキラキラ光った後にヒラヒラした服になったし、お父さんとかがするドッキリにしては手が込みすぎてるよね?


「さぁ!君は力を得た、僕や仲間達と皆の笑顔を守る為に戦おう!」


「あー、契約条項は?」


「契約条項?」


「そう。私は今魔法少女になったらしいけど、それに対する契約条項が不明だと何が出来て何が出来ないのかも分からないよ。それに契約解除が出来ない契約なんて奴隷契約だし・・・。」


「・・・、魔法の力を得て皆の笑顔が守れる?」


「契約破棄で。魔法の力なんて不確かなものとか、皆の笑顔とかって言われても・・・、困る。」


「で、でも魔法少女に憧れるよね?強くて真摯な思いがあるよね?」


「その思いに魔法少女の力?は要らないかな?結果として不要な力やご要望なのでご期待には沿えません。何より私の笑顔がその皆の中に含まれてない時点でお察しでしょう?」


「ぐぬぬ・・・、もう力を渡したから破棄は出来ないよ・・・。『はい』と言ったんだから協力して欲しいんだけど?」


「これは・・・、やっぱり詐欺の手法だ!けっこうですと言ったから肯定したって言われる奴だ!」


「はいは肯定。そこに否定はないよ。えっと名前は・・・、市位ちゃんだね☆」


「いや・・・。」


 否定するよりも先に外からなんか悲鳴が聞こえた。窓から外を見るとブルドーザーがトランスフォームして家を解体しながらこっちに来てる。・・・、寝ようかな?多分春だから変な人も増えるし変な物も見えるんだろう・・・。


「アレはゲータリアン!市位ちゃんはやく!」


「はいはい。オバタリアン、オバタリアン。多分夢だよ、警察も来てないし何処からでも駆けつける報道もいないし。」


「戦わなくっちゃ現実と!アレはおばちゃんじゃなくてゲータリアン!世界征服を目論む組織の手先だよ!魔法少女だから戦おう!」


「・・・、私は子供で庇護を要求する気はないけど、アレと真正面からの戦うほと頭空っぽで夢詰め込んでないよ・・・。」


 バキバキ家を壊してるブルドーザー・・・、明らかにトン単位の巨体に鋭い爪はどう考えても子供が・・・、大人でも真正面からの挑んだら勝てないし、免許もないから操縦も出来ない。


『そこまでよゲータリアン!』


『こない早く現れるんかいな!』


『でも倒さないと街が危ないですわ!』


「あれは?」


「仲間達だよ!大丈夫君は一人じゃない!」


「チェンジ!」


「チェンジ?」


「貴方が私を選んだ様に私にも仲間を選ぶ権利がある。」


 あの子達って同じクラスだけどあんまりそりの合わない子達だよね。悪い子じゃないとは思うけどこう・・・、あの子達が陽キャなら私はモブで住む世界が違うと言うか、グイグイ来る所が合わないとか・・・。


 良かれと思ってやってるのがわかる分、微妙に否定も肯定もしづらいし黙ってると肯定だと思って勝手に進めてしまう。リーダーシップってもっとこう・・・、信頼関係を深めてから発揮するモノと言うか、的確な判断を下すのに多少時間を必要とする子もいるんだよね・・・。私?唐揚げと家族以外はどうでも・・・。

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そらレモネードスプラッシュに食べてからガチギレですわw 愛しの唐揚げをどうするか一口味を見る前にかけられたんだからww そして瞳の赤が唐揚げの鳥肉の赤だとしたら中がまだ赤い生焼k…レアが好みか 低温…
ゲータリアンの親玉が片付けすら出来ず周りに丸投げするだけのコミュ障だとこの時は気付いているものは居なかったのである
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