710話 防衛戦
ゲート発見の知らせは朗報だが、周りが静かでないのもまた事実。しかし、ここからは半分防御戦で籠城だ。外に持ち出せない以上ここで調べるしかないしな・・・。発見した廃棄ゲートは地面に寝かされており反対側は見えない。なのでまずは・・・。
「鑑定は・・・、一旦後からにして先にひっくり返しましょう。」
「引っ張り出すのは出来ましたけど立てるのは?」
「そっちの方が簡単ですよ。幸いにして私も宮藤さんも・・・、卓君も頑張ればどうにか?宮藤さ〜ん。ゲートを立てるのとモンスターを倒すのはどちらがお好みですか?」
「倒す方に回りますよ!必要な時は呼びます!」
宮藤はやはりそちらを選ぶか。俺も犬やらを消しかけつつ広範囲に煙を撒いて追い返しを試みる。多少でも混乱してくれればコチラとしては更にやりやすくなるが、夏目や雄二達が囮の様に離れつつ多方面で暴れているので多少の余裕も出来る。
さっさと土を盛り上がらせつつゲートを立て掛けられる木を選定してそちらに転がせばいい。浮かせるよりも転がす方が楽だしね。そんなこんなで廃棄ゲートを両面見てみるが何も彫られていない。内側の違いも探るが入る前に見た写真との違いも特に見当たらない。
発見出来たのがこれ1つなので他のゲートも同じなのかは分からないが、そうなると他を見つける度にひっくり返したり調べたりする必要も出て来るな。いや、橘次第か。上手く鑑定出来れば推測にも色々と決着が付いてくる。
「橘さん。鑑定をお願いしたいですけど倒れませんよね?」
「流石に今まで鑑定してきて限界も分かってきてますよ。それにこれが私がここまで来た役割でもありますからね、ただ無防備になるかもしれないのでお願いしますよ?」
「それは全力を尽くしましょう。耳栓はしておいて下さい。そちらの方が集中もできるでしょうし。」
そう言うと橘はゲートに触れる。鑑定して使いこなせるなんて事態になると、それはそれでまた面倒事も増えるがそれを押してもここでこれには決着をつけておきたいな。本当に廃棄されただけならそれもよし、打ち捨てられた原因は分からず仕舞いとなるが、そんなもんはソーツの管理の問題だ。
逆にスタンピード時に開門して外に出す用のゲートなら・・・、何か目印を付ければゲート内での迎撃も可能になる?溢れると言う事はその溢れる前に叩いてしまえばすむ。まぁ、全ては不可能だとしても外への被害は減らせる。けど、これは多少望み薄かも。
上層のゲートが改造型だと言われればそれまでだが、全く持って上で廃棄ゲートを見た、或いは見つけたと言う報告は受けていない。これは単純に他国が隠しているからと言う話には留まらないだろう。何せ日本人やら米国人も多数ゲートには入っているし、発見して完全にその情報を防ぐのは無理だ。そうなると辻褄が合ってくるエネルギー切れの線が濃厚なのだが・・・。
「何匹か抜けて来たか、悪いが通行止めだ。」
喋りはしないがソコソコ進化はしているのだろう。仲良く襲いかかって来るわけではないが、モンスター同士で争う気配もなくコチラに攻撃を仕掛けてくる。指輪から盾を取り出し橘の周りに浮かせて守りを固めつつ、先頭を駆け抜けて来たモンスターの実弾をはたき落としつつ高速飛行で接近して強化して蹴り飛ばす。
そのまま吹き飛べばいいが重いので吹き飛ばない。しかし、この一撃で俺に注意が向けばそれでいい。ならさっさと扇動しよう、魔女ではないが城壁は分厚い方がいい。囁くようにモンスターに呼びかける。
「裏切り寝返り報酬はなぁに?金貨なら30枚、でもあなた達には価値がない。ならその価値を渡しましょう。裏切りの代償を払うなら渡しましょう。クリスタルある物をここで倒しなさい。」
何も派手にやり合うだけが能じゃない。防衛戦をするなら相手の戦力を削りつつ自陣の戦力を増やす。モンスターがどれくらい指示に従うかは分からないし、そこまでイメージを込めていないのでギクシャクと動く。コチラにまだ攻撃する様な素振りも見せるので先に倒してしまうのがいいか?
しかし、裏切り者を裏切れば結局元の敵対者でしかなくなってしまう。今はそっとしておいて離れるか。上からもモンスターは来ているが、そちらは磁気嵐を発生させて焼き落とし残る大型をどうしようか考えつつ、地面から出て来るムカデを警戒。
先に卓の方に出たのかワラワラ出て来るムカデを迎撃しているが、殴り飛ばしてもダルマ落としの様に連結したりしているので時間はかかりそう。その代わり、夏目がカブトムシを制御しようとしているの様だ。ただかなり顔色が悪い、多分気持ち悪さは拒絶反応なのだろう。扱えればお手軽自律銃火器と出来るのだろうが、不安定な制御だと暴発しかねない。
宮藤の方は逆に輝いてるな・・・。記者で炎術者。炎の巨人もいればマグマも流れ出す。ただ、そこまで派手にやればモンスターも集まるので被弾して回復薬を飲んだりもしている。
雄二はそんな中を縫う様にモンスターを狩って行く。他と変わり派手さは無いものの、その剣だけでモンスターを斬り伏せて行ける辺り切符である求道者は道を違えない限り効力を出してくれるのかな?そう考えると雄二の行き着く先は剣のEXTRAだったりするのだろうか?
切符である以上、剣を極めて上位を超えればそのままEXTRAに上がれるのかな?流石に装備制限があるとは思わない。武器はあくまで武器であって助けてくれる相棒だから。
「橘さんの方は・・・、まだかかりそうか。煙を介して見つつちょっかいはかけるとして・・・、上空対策に杖も出すか。更に城壁も固くなる。疲れてる方は一旦引いて変わって下さい、守備を代わりに前に出ます。」
指輪からバラバラと杖を取り出し呪文を唱えて飛ばす。込めたイメージはシンデレラの鳩。何もモンスターをこれで直接倒わけではなく、意識を割かずに自動攻撃してくれる言わばエマのドローンに近い存在。最後は自爆特攻なので割と火力はある。これもガーディアンを見ていたいおかげだな。
「一旦下がりますけど、あそこのモンスターは?」
「無力化してますから放置でも倒してもいいですよ。どうせ最後には狩る対象ですから。それより夏目さんは大丈夫ですか?」
「ちょっとモンスターを制御しようとしましたけど、胃を裏返して吐きたい所ですね。イメージは積み上げてますけど、それでもここのモンスターは更に気持ち悪い・・・、うぷ。」
吐きそうな夏目から目をそらす。個人の名誉の為でもあるし、本当に口から胃が出てきそうなので怖い。そんな夏目は回復しつつ橘を守ってくれると言うので代わりに前へ。
上からも見渡せばやはりモンスターは集まってきているな。橘が後どれくらいで終わるかは全く分からないので掃除も含めて狩るとしよう。




