709話 真相は闇の中 挿絵あり
「モンスターってなにで俺達を感知してるんだろうな?」
「分からん。ただ不思議存在はお互い様だ。宮藤さん達はなにか見えますか?」
「大きいから見落としはないと思うけど、今の所は下でもそれらしきモノはないですよ卓君。橘さんの方はなにかレーダーにかかりました?」
「フェムが解析しつつ地形把握してますが、こうも木やモンスターが多いと厳し。ゲートかと思ったら木の虚や洞窟なんて事もあったでしょう?夏目さんとクロエは?」
「私の方は難しいですね橘さん。目を増やしても見える範囲は変わらないですし、それをするくらいならモンスターを倒す。あるとすれば煙をキセルから吹き出したクロエさんの方じゃないですか?」
「ない地域にでも出たのか見当たらないですね。潜ればあると言う訳ではないですけど、進めるゲートを見つけた進みましょうか。」
次に進むのも迷いどころなら同一階層を探し続けるのも迷いどころ。物理的に広いから同じ所に出る確率は低いし、かと言って不用意に次に進めば待ち伏せも懸念される。事実として57、8階層では待ち伏せされていて、まともに調査するまでに時間もかかった。俺達は出ずに進んでいるが、断続的に潜る組はキツイな。
外でリフレッシュ出来るかもしれないが、毎度待ち伏せの可能性を考えないといけない。まぁ、それでも回復薬やらの調達やら装備の修理、ローテーションでの休息と利点も多い。
しかし階層とモンスターの装備のせいか爆音がすれば地面からムカデが這い出して来るし、それを感じたのか空から魚らや鳥みたいなのやらとワラワラ集まってくるのが面倒だ。宮藤が卓と木を燃やしたり、橘が砲撃したりとかなり見渡しもよくなったが、見渡しがいいと言う事はモンスターからも見えやすいと言う事で更に集まって来る。
惹きつける者やら魔性の女でモンスターを釘付けにしたりしたのだが、喋るやつは中々止まらないし余計興奮でもするのか俺ばかり狙ってくる。まぁ、それでも6人いれば凌げるのでいいのだが、結構みんなの装備はボロボロにされたし怪我もした。
救いがあるとすれば洞窟の中やらに出なかった事か?下手に閉鎖空間に出ると崩落とフレンドリーファイアの確率が跳ね上がる。かと言って空中だと堕ちながら不自然な体勢で攻撃する事態に・・・。
モンスターを綺麗に倒すなんて目標は既にかなぐり捨てて破片やら残骸やら一部を集めるに留まっているが、後は鍛冶師やらに任せよう。それが嫌なら自力回収してくれ。俺は別として全員命はかかっているし、相手も殺意が高いから簡単には倒されてくれないんだよ!
今もワラワラモンスターが集まってきてるし、追いかけっこしながらモンスターを倒している。止まると死ぬと言うか止まると囲まれてから袋叩きに合うので簡単には止まれない!今迫ってるモンスターが金の山に見える様ながめつい奴ならテンション爆上がりなんだろうが、俺達は殺意に殺意を返すしかない集団だ。
「こんな時ですけど嫌な話をしていいですかクロエ!」
「どんな時でも嫌な話は嫌な話なんでどうぞ橘さん!」
「祭壇へはゲートを越えて行く、その推測を否定する気はありませんが打ち捨てられたゲートは他の用途があったんじゃないかと私は考えてるんですが?」
「他の用途?用途も何も使い終わったか作成不十分で捨てたんでしょう!セーフスペースを掘っても綺麗な廃棄品が出る事がありますし。」
「そこですよそこ!仮に打ち捨てられたゲートが役目を終えたゲートだと考えたらどうです?セクター数を考えると他の星にもゲートは高確率であるんでしょう?」
「そのはずです!どれだけ稼働してどれだけ報酬を渡してるかは知りませんが、あるのは確実です!」
橘が他の用途と言い出したがゲートに転送以外の用途はあるのか?確かに俺達と言うか人類はゲート内を住処にして住んだりもしているし、飯の調達やらで来る人もいる。ただそれはゲート内に入って掃除すると言う延長線上での話で、役目を終えたからと言って勝手に閉まったり・・・。
「ゲートがゲートとして稼働しているとして、そのエネルギーが何処から来るのか?もしかしてそれは還元変換された物をエネルギーとして使ってるんじゃありません?」
「ありません?と聞かれても私はゲートを鑑定してないんですよ?そもそも魔女も賢者もスタンピードさえ知らない・・・。知らない?」
「次へのゲートがあります!2人とも話すのは後にして入りましょう!」
「ならド派手に打ちのめしてから行きましょうか!」
それぞれがと言うよりは夏目と雄二を除いた組が魔法やら砲撃やらで追ってくるモンスターを薙ぎ倒す。しかし、それさえもすり抜けて来るモンスターもいるが、そう言ったモノは控えの2人が各個撃破する。クリスタルの回収も考えるとかなりロスが多いな・・・。まるっと回収したいが攻撃しているの関係上、残骸も吹き飛べばクリスタルも吹き飛ぶ。それを探して回収するのは次のモンスターを呼び込むのと変わらない。それでもどうにか魔法で集めてるんだけどね・・・。
ソーツが見れば雑な掃除と言われそうだが、それなら雑にゴミを投げ込むなと言いたい。いや、それでゲートを取り上げられても困るのか。人はまだゲートに極度に依存はしていないが、それでも食料やらエネルギー面での依存度は高くなってるんだよ・・・。それ以外の技術も研究されてるけどさ。
そんなこんなで60階層。残念な事にここはセーフスペースじゃない。セーフスペースは65階層なので気を引き締めないといけないし、最悪カブトムシやらの空間攻撃も飛んでくる。全員バイト体感済みなので回避不可能とは言わないが、かなり厳しくなるな・・・。
今回の救いとすれば木の上に出て待ち伏せはなかった事とか?飛行型モンスターもいるので下手すると頭上から砲撃なんて事も考えられるが今回はそれもない。ちょうどいいので宮藤達に周囲を警戒してもらいながら考えをまとめつつ橘と話そう。
「さてと、手早くしか話せませんか橘の考えはゲートを鑑定したから?」
「その部分もありますし資料やらデータ、ソーツを考えてみたと言う所もありますよ。あのゲート言う物は外部からの接続部分と言う物が全くない。モンスターを勝手に投げ込めるソーツなら何らかのエネルギー補給方法を持っている可能性もありますけど・・・。」
「それだと溢れる意味が分からない、ですか。しかし、内部にエネルギーが溜まり過ぎで溢れるのでしょう?そう言う話で決着は付いていたと思いますけど。」
「ええ。それは私も同意しますが、なら逆はどうです?」
「逆?エネルギー不足ですか?それは・・・、掃除が足りてないから・・・?」
確かにモンスター同士でも争うがクリスタルは食って溜め込む。残された残骸は還元変換で消えるが、クリスタルを溜め込んだモンスターは動き続ける。そして、モンスター同士が争うのは賢者曰く稀で米国や日本のスタンピードでは真横にモンスターがいるのにモンスター同士で争わず落ちたクリスタルを捕食していた。
「クロエは掃除を急かされていると言ってましたけど、それは単純にエネルギー超過やらセーフスペース建設の為に急かされていたのだと思います。でも、打ち捨てられたゲートは・・・。」
「エネルギー切れで再稼働させずに廃棄したと?・・・、あぁ!辻褄が合う!報酬とかも含めて!」
「辻褄?」
「他の星にもゲートはある。それは間違いないですけど、なんでそこから報酬だけくすねずにモンスターを適当に倒しているか?確かに契約やら娯楽と言わらればそれまでですけど、倒したモンスターの残骸をエネルギーにして稼働しているなら、わざわざ片手間でも倒す意味はありますし、何より・・・、魔女は別として賢者がスタンピードを知らない理由も分かる。」
頻繁に起こるものではないが、その機能があるならそう言った想定もしているはず。ならなぜ知らないかと言えば、ゴミ掃除を辞めてしまって視るのもがなくなってしまったから。そうなるとゲートの運用は総て自力になり、モンスターとも自分達の技術や能力のみで戦う事になるし、どれくらいでエネルギー不足になるかは別としてエネルギー補給もしなければならない。
それが可能なほど高等な存在ならいいのだろうが、俺達とは逆で知性及第点で闘争心の低い種族がいたらどうだろう?その場合、報酬を得て発展しまくればモンスターにも対処出来るかもしれないが、そもそも闘争心が低いと言う事をあまり想像出来ないが、要は争いを好まないのだろうし、それが種族繁栄なんかに舵を切ればゴミ掃除なんて言う危ない事をするわけがない。
そうなると本当に打ち捨てられたゲートは廃棄品?種が変われば報酬も変わるだろうし、ゲートをたらい回しにした場合報酬そのものが牙を向いてくることも・・・。今でも黄リンとか高純度ウランとかスィーパーでも危ないのだが死にはしない。
しかし、例えばウチのゲートを水の存在しない星に持っていき、何も教えずに水箱渡したらそこで育った生物には水が超有害で、ドラキュラの様に水浴びたら即死とかあるかも。何も考えてない様に見えて意外と報酬やらどのゲートを設置するかとかは考えてるのかもな・・・。
「辻褄が合うのはいいとして自己完結はやめてくださいよ。それで、打ち捨てられたゲートと言うか廃棄ゲートの捜索はやめます?」
「・・・、探しましょう。別の問題もでてきましたし。」
「別の問題?」
「ええ、別の問題です。本当にエネルギー切れで廃棄されているのなら、それはそれでよし。復活させるとか研究するとかもパンドラの箱を開ける可能性があるのでなしですが、ゲート内スタンピードが発生しないかと本当にエネルギーがゼロなのかも調べないといけません。」
「ゲート内スタンピード?流石にそれはないんじゃありません?使えるゲートをわざわざ捨てるとも考え辛いですし。」
「それはそうなんですけど、閉門するまでゲートにゴミを投げ込んでいると考えたらどうです?モンスターが勝手に動かなくなるのかははっきり言って分かりません。しかし、ゲート内にモンスターが残ったまま閉門されたとするなら微量でも回復するかもしれません。」
「先ずは見つけてから検証しないと先へ進めないと。賢者や魔女は何も教えてくれないんですか?」
「この想い悩みも楽しんでますからね・・・。」
感情やら考えやらを楽しむと言うか、2人ともニヤニヤして何も話さない。本当に他の星のゲートで倒せない様なモンスターが溢れてきたらどうしよう?少なくとも今相手にしているモンスターはどうにか出来る。しかし、他の星の他の法則で動くモンスターがいたら?
・・・、産み出す者か。作り変えて型枠に嵌め込んで、汝はそうだと定義して処断する。結局他のモンスターとやる事は変わらないし魔女達が見ている以上、そんな変革があればなにか言ってくる。まぁ、魔女やら賢者以外の同族?がちゃんと動いてくれるかは分からないが・・・。
「いい性格をしていると言うか、視るだけで部外者だと線を引いていると言うか・・・。取り敢えず廃棄ゲートを探しましょうか。」
「ええ、そうしましょう。次のセーフスペースは65階層、前に夏目さん達と来ましたけど、かなり厳しいですよ。」
警戒に当たってくれた夏目達と合流するが、話し込んでいたおかげでちょっといい事もあった。夏目があまりやりたくないと言いつつ肉片を出してコソコソ捜索したり、雄二がどの道が正解か探したり、その方向に宮藤が人魂飛ばして捜索してくれたおかげで、この階層の次へ進むゲートは見つかっている。
そこで多数決を取り進むかここを捜索するかで、進む事が決定し次へ。それぞれ食事やらは手早く済ませているし、俺には必要ないので橘が食べ終わればそれでいい。続く61階層も特筆すべき点と言えばカブトムシがいた事か。
倒せるには倒せる。しかし、橘の火力不足が目立って来た。回避や先読みと言う部分では群を抜いているものの、直接戦闘と言う面では中々厳しい。砲撃やらは確かにダメージを与えているものの、それでモンスターが確殺出来るかは別の話で耐えるものやら意に返さず突っ込んでくるものも。
こればかりは橘が悪いわけでは無いが、本人はとても悔しそうにしている。そんな橘にどう声をかけるのか?誰もその答えは持ち合わせず『限界ならそう言って欲しい』と言って口を噤む。確かに武器の扱いに長け、記憶再現でもダメージが出さるので弱くはないが、それだけでは厳しい部分も出てくる。
「・・・、まだいけますか?」
「鍛え方が足りないと言うならそれまでです。しかし、廃棄ゲートは持ち出せないのでしょう?皆さんに頼る事になりますが、弱音を吐くにはまだ早い。」
「分かりました、他の皆さんも限界を感じていたら言ってください。今回が最初で最後と言うわけではないですから。」
誰からも限界と言う声は上がらず、周囲を捜索しながらモンスターと戦う。早く廃棄ゲートが見つかって欲しい。そんな思いが通じたのか、雄二から待望の声が上がる!
「それっぽい・・・、いや!ゲート発見!」




