703話 何の話かな? 挿絵あり
雄二達から接待を受けた次の日には千代田に別れを告げて大分ギルドへ。土産もそこそこ買えたし、話としてもいい方向で終わったと思う。まぁ、後はロシアがどれだけ耐えるかだな。耐えれば耐えるほど時間的な猶予は出てくるし日米は動きやすく、中国もこの隙にとばかりに色々やりだすだろう。
まぁ、それでも監視の目があるので変な事はしないと思うし、不死薬研究に没頭してくれれば文字通り頭を痛めた甲斐もある。羽田空港から飛行機で大分空港へ到着し、そのままバイクでギルドに乗り付けたが、流石に数日で様変わり・・・、なんだか釣り人が増えているがその辺りは様変わりとは言わない。
勝手に釣り堀経営している人もいる様だが、平時は子供も遊びに来るし餌と竿で100円はかなり安いと言うか破格だ。まぁ、感覚のバグったスィーパーは金貨を1枚出して餌箱2つくれとか、暇そうな獣人を誘ったりしている。
「戻ったよカオリ。」
「お疲れ様ですクロエ。東京どうでした?」
「新しい千代田さんはちょっとドジっ娘属性のあるクールビューティだったとか?ギルティタウンも覗けたしそれなりに収穫はあったよ。大分ギルドで変わった事は?」
「大きくはないですね。その代わりにエマが青山連れてゲートに潜ってますけど。」
「それは別にいいよ。ギルド視察と言いつつ米国は独自ギルド方式だからね。はいこれお土産、定番だけど東京バナナ。しかし、ゲートに潜るのはいいとしてエマと青山ってなんだか不思議な組み合わせだな。」
「中層以降に行きたいって事でしたから自然と選べる人間が少なくなるんですよ。」
「こればっかりは仕方がなあからなぁ・・・。」
仕方ながないと言いつつ世界的に見れば中位は増えている。日本も官民問わず誕生したが、まだまだ特別と言う感じはある。流石にもう世界に向けての中位誕生報道はされないが、地元の英雄と言う感覚はあるのでマスコミはやっぱり来るらしい。
ただ、その中位でもR・U・Rのボスモンスターが集団で来ると厳しいと言うので訓練機としての面目は躍如されている。東京でもファイアウォールの話が出たしR・U・R方面も一度データ貰って確認するか。
ハッキングは撃退出来ているらしいが人と機械のイタチごっこだし、いつ破られるかもわからない。法律関係のデモストに更に強固なモノを作ってもいいな。
「そう言えば政府から素材フェスの話って来てる?」
「素材フェス?あぁ!モンスター素材価格の安定化に向けた取り組みですか?長ったらしい文章で色々書いてありましたけど、要約するとモンスター素材を取ってきて安売りして欲しいってやつですよね?」
「それそれ。まぁ、経済が安定しないと悪い事考える人は増えるからね。それに、下手に高値が付くと尾を引くって部分もあるし。」
一度売ったらそれ以上の価格設定にはしても以下には中々しづらい。まぁ損する人と得する人がいる以上仕方がないのだが、昨日10万で何かを買って次の日にソレが半値以下だと流石に文句を言いたくもなる。緩やかに下がる分には折り合いもつけられるが昨日の今日だとね・・・。
そんな価格競争を頭からコントロールしようとしているのが素材フェスなのだが、政府の要望的には中層を狙っている。理由としては中位がいるにしても、まだそこまで進んだスィーパーが少ない段階で実績を作ってしまいたいと言う話なのだが、さてどうしたものかな?
少なくとも本部長達は後発含めて中層には足を踏み込んでいるし、中位にも至り万全な体制とも言えるが身体が訛ったと言う本部長もいるのよね・・・。2、3日ゲートに入ってれば勘は戻ると言うがAI開発は急いだ方が良さそうだ。
「フェスやるのはいいとしてどのモンスター出すかの検証も必要ですよね?」
「その前に綺麗に倒せるかの方じゃない?映像資料は提出したりしてるけど、上層の比じゃないモンスターが集まってくる。それを毎回綺麗に倒すなんて考えるだけで頭が痛い。」
扇動して棒立ちしろと試してみる?厳しいかなぁ・・・。敵に攻撃しろはまだ扇動と言えるが、棒立ちしろは命令で意見や行動の変更ではない。なら煙で縛り上げる?
1、2体ならいいし足止めなら使えるが、多数を縛り上げても餌をくれてやるだけだよな?う〜ん・・・、そもそも倒したら消えていくと言うありがたい部分がネックなんだよなぁ。米国はスタンピードで出てきたモンスターの死骸をそのまま素材として企業売ったので素材研究は進んでいる。
日本は市街地戦と言う事で全てをゲートに投げ込んだ事もあり素材研究自体は他国と変わらない。代わりに出土品の方に目が行ったと言うのも大きいかな?R・U・R然り、飛行ユニット然り。しっかし、政府の考えを読み解いていくと何かを作ろうとしてるとも考えられるんだよな。
確かに素材フェスは金のばら撒きとは違うので批判の的にはならないし、逆にそれだけ狩ってスタンピード抑止に務めてくれてありがとうと言われる可能性もある。あるのだが、合法的な戦力見せ付けと受け取られるとかなり厄介だな。上手いのは表立って批判する方法がない事で、不要なら買いに来なくていいとも言えるし、見せ付けと思うなら自国でもやったらどうだとも言える。
まだ正式に文書を読んでいないが長ったらしくて回りくどい文書と言うのは2面性があり、必要だからそう書いてあるものと相手に読ませない様にする為のものがある。例えば市販薬の説明書は長ったらしく回りくどいが、必要な事は確かに書いてある。それに引き換え小さい子の作文なんかは長ったらしく、結局なんだったのかよく分からないものもある。まぁ、作文が苦手で文字数稼ぎなら仕方がないのだが・・・。
どちらにせよ政府が清廉潔白と言うわけでもないし、流れに逆らおうにも丁寧に整えてから流しているので俺としては乗るしかない。乗るしかないが・・・。
「綺麗に倒すのは普通に倒す以上に難しいですからね・・・。くり抜きとか抜き取りが得意な人か料理人探してみます?上手く料理してくれれば活造りとか。」
「モンスターの活造りって有害物資垂れ流してるんじゃ・・・。流石に肉感的な部分でもモンスターを食べるのはちょっと・・・。」
かつて豚鼻モンスターの豚鼻を食った高槻は偉大だが、それを料理して振る舞った料理人もまた偉大(?)だな。まぁ、食への探究心やらがあるからS料理人やってるんだし、食えるからだしてるんだろう。ビジュアルは最悪かもしれないが・・・。
「魚とか馬はいいのにですか?」
「エビとダンゴムシ、同じ甲殻類だけどダンゴムシ食べる?オカダンゴムシとかなら最大で1.5cmあるから小エビ感覚で・・・。」
「ディストピア飯は勘弁願いたいのでエビ食べます。そう言えば結城くんがクロエを探してるって那由多君が言ってましたよ?」
「結城くんが?専属スィーパーになって何かトラブったのかな?知り合いとしてではなくスィーパーとしてならギルマスとして介入するにしても限度があるけど・・・。」
「それは分かってると思いますよ?那由多君も公私混同はしないって言ってましたし。」
「う〜ん・・・、家に来るなら話は聞こうかな?それでギルド案件か個人案件か判断出来るし。取り敢えず仕事をしようか。」
さて。結城くんはいいとして一緒にリーがいる訳だが、彼女が付いていてそんなにトラブル事はあるだろうか?家と周りは大半が警察やら公安やらが住んでいるのでおかしな人物が訪ねて来れば・・・、来れればすぐに分かる。
そうなると人間関係的なトラブルではない?まぁ、家から離れて街でなにかあったと言うならその限りではないし、リーも何時でも一緒と言うわけでもない。だが2人はチームとしてスィーパー業をしているので相談くらいはすると思う。
そうなるとリーにも言いづらい事か?例えば昔の彼女が子供連れてあらわれたとか。う〜ん・・・、流石にないな。家族ではないのでそこまで知ったかぶりするつもりはないが、ソレの相談は俺ではなく自分の親や付き合ってる予定のリーにするもの。
寧ろそんな話があればリー達が既に処理してそうではある。駄目だ、最近ゴタゴタがあり過ぎてマイナス方面にばかりに思考が行く。逆に良さそうな話ならどうだろう?例えば・・・、結婚するとか?うわぁ・・・、1番ありそうと言えばありそう。ある意味恋のキューピッド的な何かではあるし、その話ならまぁ?
専属スィーパーは結構その手の話は早いし、物理的に逝く事も早いからさっさと結婚してしまう人も多く、夫婦の絆を感じながらゲートを進むなんて事も。実際仕事上の付き合いで薄い人間関係なら裏切りも恐れるが、夫婦になるまで好きあった仲なら情も湧くし裏切りづらい。まぁ、何に重点を置くかで変わって来るんだよな・・・。
そんな事を考えながら仕事を進める。日米中露会談の話は伏せるとして、卓から話された理論書の件は死蔵と言う話で相談した各本部長にメールが回ってきたので同意するとして返す。
素材フェスに関してはまだ政府とのやり取りが進んでいないが準備しておいて欲しいと一斉送信したが、宮藤が張り切ってるな。まぁ、講習会が終わって一段落ついただろうし奥に行けるなら言って暴れたいのだろう。
他にも色々と話は飛んできているし、書類整理しつつチャットで何人かと話す事もある。兵藤から米軍スィーパーが合同で潜りたいと言う話が来ていて監督として同行すると言われたが、その辺りは副長や最寄りの本部長と調整してもらい行ってほしいとした。
流石に1日2日で終わるものでもないだろうし、助っ人として行くにしても石川はちと遠い。まぁ、飛んでいけばすぐなので本当にヤバいなら一考するとしよう。
他にはうちの県に大使という何かが来たとか?正式に大使ではあるのだが、どちらかと言えば同職のスィーパーが来ているらしいので、ギルドでどうこうと言うよりはスィーパーとして学びに来ているのではなかろうか。
その辺りは来た県の本部長達も分かっているので、ぼちぼち対応していくそうだ。まぁ、大使としてくるならいいが、大使館どうしているのだろう?大使館職員扱いとか?なんにせよ受け入れられて来ているので多分大丈夫。
「さてと帰ろうか。」
「ええ。さっき連絡があってエマ達はゲート内に泊まるそうなので待たなくていいそうです。」
「エマの精神が試されるな・・・。いや、無休で潜ってるのかも・・・。」
妻は休みなので息子だけピックアップして帰宅。ソフィアとフェリエットがTVゲームで遊んでいるが、フェリエットの無慈悲なコンボがソフィアのHPをガンガン削っている。おかずでも賭けているのだろうか?食事を終えて外でプカリ。
「こんばんは司さん。ちょっと話して大丈夫ですか?」




