696話 変わる価値 挿絵あり
松田の言う打開策、それはそのままゲート内をギルド管理すると言うもの。確かにどこにでもあるギルドなら国籍をゲートととすれば真の意味での無国籍となる。元々外に居づらくてゲートでの暮らしを選択した人々なのでその案に乗るかは別として、親の選択を子供にまで引き継がせていいのかは分からない。
ただ選択の自由を奪うのもまた違う。先に生きる者として選択の自由を用意するのも務めだろう。まぁ、それを日本政府が提案して他の国が応じるかは分からないが、それはもう本当に政治家に頑張ってもらうしかない。
「会談は終了ですか?」
「ええ。ただすぐに帰れるかは微妙ですけどね。」
「なにか残務が?」
「松田さんから東京観光を進められまして。あの人は性格的に無駄な事を勧める様な事はしません。そう考えると都市部と地方での温度差やらを感じ取って置いて欲しいとかじゃないですかね?」
「・・・、普通に観光されますよね?」
「普通の観光ってなんでしょうね?」
街を歩いて空気感を肌で感じると言うのもいいだろうし、千代田に頼んでギルティタウンに行ってもいい。コアも渡してしまったし今の所呼ばれる様な事はないと思うが・・・。
「109とかに行かれて服を買いドーナツとか食べます?」
「最新の流行食と服が欲しいならそれでいいんでしょうけど、今流行りの服ってなんです?」
「ゴスロリ等のドレスは人気で元々日本人は白を神聖視する傾向があるので色白に魅せるコスメも人気です。また、活動的な服を選ぶなら下がダボ着いたズボンに小さめのTシャツに上着等を合わせるとかでしょうか?」
「短ランボンタンスタイルが流行であると?」
話だけ聞くとそんなイメージだよな?ファッションは巡ると聞いたが巡り巡ってそこまで来たか。まぁ、色合い考えるとそうではないのだろうがちょっと弄ればB系ダボダボファッションになりそうだしある意味気が楽でいい。
「流石に短ランボンタンではないですが・・・、どちらかと言うと袴?」
「更に時代を遡った!?」
「いや!言葉のアヤですよ?ワイドパンツって袴に見えますし靴まで隠すような物ならそれにしか見えないと言うか・・・、袴ほどヒラヒラはしてませんがスタイリッシュ袴なら分かりやすいかと。」
「確かに服に興味ないとワイドパンツとかテーラードジャケットとか言われてもイメージわかないですからね。」
街で見かけてもファッションに興味ないから丈の短いジャケットとか足元が広がったズボンとしか思わないし、それで通じてしまう。逆にコーディネートの名称聞かれても宇宙言語以上に難解で遥が話す言葉が知ってる言語のはずなのに全く頭に入ってこない。
一時期酒ヤケメイクとか流行ったけど、未だにメイクの良し悪しって分からないんだよなぁ・・・。究極的に言えば人気女優がしたメイクが流行になるので流行を追うと言うよりは女優を追っているとした方がしっくり来るかも。
「そう言えば千代田さんは潜入とかで変装とかしなかったんですか?」
「しても秘書的な服装ですよ?身長と目つきから与える印象を考え、その通りに演じれば済みます。逆に機を狙うと相手の印象に残ってしまうので、どこまでも平均値を探しだすと言う作業になります。まぁ、最近は肉壁やサバイバーが潜入に適したイメージを作っていますが。」
確かに仕事柄印象に残るのはよろしくない。増田だって強面だが百貨店に勤めを隠れ蓑にしてたし、千代田ならお硬い職業の人と言われたら大概のイメージには沿ってくる。それこそ茶道家やら華道家とかでも行けるだろうし弁護士とかでもいそうな感じがあるな。
「職が絡むと途端に難易度が下がりますからね。その代わり犯罪者も巧妙に仕掛けてきますけど。」
セルゲイがスィーパー出せと言っていたけど黒岩あたりが選定するのかな?流石に俺に来いとは言わないだろうし、そんな事を言えば盗みに来いと言っている様なものだし、仮に盗んだとしても泥棒3代目の警部じゃないが『奴はとんでもないものを盗んでいきました・・・、あなたの心です。』とセルゲイに話してやれる奴はいるのだろうか?
盗まれてブロークンハート、監視されて胃痛、下手したら春夏秋冬みたいに、やらかして春、隠し通して夏、バレそうな秋と来て揉み消して冬とか?なんにせよ撃退出来ればいいが出来なかった場合重圧は増していく。
いや?上手く使えば攻略されたから協力しろと言う自分人質第2シーズンが始まる?他の国のスィーパーの実力も知れるし定期的にやる大会の様な形にすればさほど違和感もなくなる。当然コアの事は伏せてだろうが・・・。
そんな事を考えたり話せる範囲で話したりしながらホテルに戻り、妻と電話したりしながら夜を過ごした翌朝。カジュアルな服装に着替えて千代田と街を歩く。服に興味はないが
復興した秋葉原には興味があるので歩いているが電気街とオタクの街の融合が激しい。
スィーパー街としての側面もあるし、下手するコスプレ集団とスィーパーとビジネススーツ着た企業人とで何がなんだか分からなくなる。ただフィギュアなんかも扱ってるな。造形師の練習なのか普通に作っているのかは分からないが・・・。
「ほう、上手く作るものですね。」
「それよりも私は騒がれないかの方が心配です。魔法でバレないと言うのは分かっていても堂々と歩かれると心配になる。」
「消えた訳じゃないですし視線誘導やら顔隠しやらですよ。しかし出来が良い分結構と言うかべら棒に高いですね。」
一点ものなのかどうなのかは分からないが60万と値札が置いてある。他のも結構高いしふらっと入ったが高級店とかプレミア品を置いてる店とか?旧秋葉原はスタンピードで破壊されてしまったのでコレクターには高値で売れるとか。
「こう言った物も私達の監視対象ですよ・・・。」
「何かで聞きましたけど、下手に現金で取引するよりその価値のある物で取引するってやつですか?例えばトレンディングカードとか。」
「それもそうなんですが今は立体物が人気ですね。カードは刷れば済む話ですが、フィギュア等の立体物は制作者が死んでしまえば次を作れない。例えば藤氏が今フィギュアを作ればこれ以上の値段になるでしょうし、警察としても取り締まるなら物の価値を把握しなければなりません。」
「確かに16億で落札されたフィギュアとかもありましたからね。」
人が何に価値を求めるかは分からない。そして新しい価値と言う話でフィギュアも資産入りしたらしい。確かにソフビとかブリキもコレクターがいるし認められた価値なら誰も文句は言わないだろう。
「他人事の様に言っていますがクロエも絵画を描いてますよね?」
「絵画?そんなもの描いた覚えはありませんけど?絵は見る分にはよくても描く分にはちょっと・・・。」
「東京ギルドに寄贈された絵は魔法でクロエが描いたと聞いていますが?」
「・・・、宇宙服か!」
確かに雄二が欲しいと言うからあげたけど・・・、えっ?アレにも価値がついてるの?確かにS・Y・Sから降りる時と言うか宇宙服のデザインはアレで間違いないんだけど、そんなに目敏く見つけるか?
「ええ。欲しいと申し出る方は多いそうです。」




