684話 連絡は密に
「素材放出については何処かの時点で採取ツアーでもやりましょうか。松田さん、政府側からは企業技術の祭典的なモノを行いたいと言う話もありますし、その際の目玉に出来ればとも言っていました。」
「それってぇと選出戦時の物販みたいな感じかねぇ?」
「そう考えてもらって結構です。ただ海外企業の技術も知りたいので声かけを行うともしてますね。内々の打診としては米国、英国、台湾、ドイツ、ベトナム、その他数カ国に話を出していると聞いています。」
「中露は流石に声かけないんですね。やはり丁寧な無視と宇宙でのゴタゴタのせいですか?」
「う〜ん・・・、その辺りは微妙なんだそうです。無視したいけど無視するとおかしな事をしだす。それこそ今回の宇宙での出来事も公には出来ませんが、そこそこ面倒な状況でした。なのである程度の繋がりは確保したいと考えている様です。」
別に無視し続けてもいいだが、その結果が自分の頬を引っ叩いてこちらの気を引くと言う行為である。その後の流れとしては日本と融和路線を打ち出して日夜ありがとうコールを送っているし、キリロフやリュウもその時の証言者として各メディアで親切にしてもらった等の発言をしている。
コチラとしては衣食住と娯楽を提供して缶詰めにしていたのだが、モノは言い様で『物資の乏しい宇宙空間と言う中で潤沢な酸素と食料に安全な寝床を提供してもらい、風呂にも入れてもらえるというのは最大限のもてなしである。』と言っている。
悪意のある発言なら否定して真実を暴けばいいのだが、概ね真実でありしかも感謝を伝えているので否定も出来ず、国ぐるみでありがとうキャンペーンした上に宇宙ステーションまで公開してしまったので、無視するしない以前に無視していると更に面倒になると言う結論を出したらしい。
まぁ、種子島の宇宙ステーションに対して補償金を政府間で数年間払うらしいので、一応それで手打ちにするのだろう。ついでに言うと中露支持国もコレでまとまればいいと言う思惑もあるらしい。
「その他なにか話しておきたい事はありますか?」
「なら俺からいいっすか?」
「なにかな雄二。」
「東京ギルドへの依頼で学習AIの本格的な導入試験依頼が来てます。佐沼さんやラボとも共同で試験を行うんですけど、1番大きな試験項目としてAI簡易裁判があります。取り敢えず実施項目を共有するので見て下さい。」
内容的にはスィーパーの犯罪に対するこれまでの判例を元に審議を簡略化するというモノで、当然ながら警察による証拠やら証言は固めるとして情状酌量の余地をなくす流れとなるらしい。雄二の言っていた弁護士いらない問題が前に進んだ形だな。犯罪項目毎に刑罰の上限下限も決まっているし賠償金も概ね決まっている。ただ示談については本人同士の話し合いとなるので、その部分はまだ弁護士が着いたりするかな。
「判例を適応した裁判の簡略化、いいんじゃないですか?横展開をどの程度の速度でするか知りませんけど。」
「警察出身としては黙秘なんてなくなるのは楽なのかねぇ?まっ、犯罪が巧妙化してもやった事実は残るから捕まえられる。問題はゲートに逃げ込んで指名手配が続くことか?」
「その辺りもAIで顔認証するつもりですね。ギルド周辺に出るならギルドを壁で囲って出入り口にカメラを設置して顔認証するとか、肉壁対策を夏目さんと共同で開発しようとしたりとか。」
「何か成果ってありました夏目さん。」
「う〜ん、私自身職にマイナスなイメージを付けたくないから難しい話ではある。しかし、余程上手くしなければDNAは改変出来ないだろう。私の血液型はゴールデンブラッドとなっているが、それに改変するにしても相当な労力が必要だった。それを考えるとDNAを調べると言うのは1つの手だろう。それ以外となるとギルドへの出入り口に何か思考を阻害するものを設置するのがいい。いくら変化出来ると言ってもどう言う原理で変化を解かれたか不明ならイメージもやりづらい。ついでに入口に審判の門とでも掲げれば更に犯罪者はイメージを崩される。」
「思考阻害・・・、簡単な話なら微弱電流とかですか?」
「ベターなのはそれですね。ただ慣れてしまえばバレる可能性もあるので目下検討中です。出来る限り不意打ちで驚くものがいい。」
肉壁の偽装はバレにくい。それこそ声帯模写から外観模写やらと写真を眺めるところから始まり最終的に本人に会って長く過ごせば精度も上がる。たた、瓜二つとまでは行かずに何処かにボロはあるらしい。まぁ、それが本人による抵抗で自身であると言う証明なのだろう。
「驚かすねぇ。・・・、単純にオカルトにお願いするのはどうかねぇ?暴露なら変装解除出来んか?」
「その辺りも検討中ですよ赤峰さん。寧ろ警察とも連携を密にして色々検証してるっす。でも人のイメージも十人十色、白を切る剣士が嘘発見器無効にしたり、漁師の人が潜り込むってイメージで雑な変装で多数の中に入り込んだりかなり難しいっす。」
「犯罪者とのイタチごっこは終わりそうにないですね・・・。各ギルドでも情報共有とデータベースを確認して犯罪者がどんなイメージで何をしたかをよく確認しておいて下さい。さて、他はありますか?」
その後は雑談と近況報告が主となった。流石首都と言うか東京含め各県でも獣人ベイビーが産まれそれの対応どうしてるとか?スィーパー専門校が出来そうとか色々と話題もある。しかしスィーパー専門校とはなんぞや?
詳しく聞くと職別で科が代わり自身に足りない部分を総合的に補ったり、基礎的な格闘技やサバイバル技術を身に着けたりイメージを膨らませる授業をしたりするらしい。う〜ん・・・、なんと言うか職に就いてからやるべきじゃない授業とも言えるな。確かに足りないと言われればそれまでなのだが、最初の頃ならいざ知らず数年経った今なら何かしらのイメージは持っているだろう。
それこそ新しく入る子はR・U・Rを使ってどの職も体験しているし、モンスターの映像なんかも見ている。それで自信をつけて補助者とゲートに入り生きて帰って来てから更に自身の職と向き合ってどうしたいのかを考える。
当然ながらそこで奥に行くのを諦めてセーフスペースより先に行かない人もいるし入る事を辞める人もいる。しかし、それは仕方ない事でゲート内でモンスターと戦う事を専門にした専属がいる一方、外で経済を回して技術発展させる兼業やら職に就かない人がいる。
今の所何を選択してもどちらからも文句は出ないが、その軋轢を生まない為に政府も経済やら価格には目を光らせているし今回の素材放出による価格安定と言う話が出てきている。しかし、俺はどうするべきか・・・。65階層まで行ってカブトムシなんて言う空間操る奴の素材も集めたし、木も大量伐採したしムカデやら他も多数指輪に入っている、
これを放出するとなるとまた経済が荒れそうだから松田と話し合いかなぁ?放出予定階層を調整したいとか言ってたし、素材そのものが何があるかも分かっていないので仕方ないと言えば仕方ない。取り敢えず飛行ユニットに必要そうな素材は高値なのでその部分もテコ入れするのだろうか?
「特にいなら会議は終了とします。会議自体は誰が開いてもいいので困った時は連絡を密にしてくださいね。」




