683話 素材放出会議
アルが居座るのでラボに連絡入れて引き取ってもらいつつR・U・Rを使い方本部長会議をしたり、松田とコアをどう運ぶかを話し合う日々。季節は6月に入り雨が多くなる。別にコアを直接持っていってもいいのだろうが、防犯面警備面の目処が立たないので話し合うに留まる。
盗まれて簡単にどうこう出来る代物じゃない反面、盗まれると国としての警備や情報管理等が脆弱と知られるのでどうしても慎重になると言う。今の所コアの事を知るのはアルにアミット、S・Y・S搭乗者の一部に4カ国のトップと少ない人数なのだが、その知っている人間を無碍にも出来ないしねぇ。
松田としてはロシアに渡さなかったのは迷いどころらしい。大国をまとめつつ合法的に監視出来る機会と言うのは少なく、ギルドをどの国にも置くなら政治としても強い繋がりを持たなければ人が支持する先が二分化して行く事を懸念している。確かに先を考えると国際的な機関で且つ、ここまで市民に身近な機関はない。
巫女とかグラマスの足音がヒタヒタと聞こえてくるが、果たしてそれに意味はあるのだろうか?巫女はまぁ、交渉権がある以上仕方ない。逆にギルドを束ねる必要があるかと問われると迷う。基本的に日本式ギルドは公共機関と言う側面があるのでその国に即したものにカスタマイズされていくだろうし、必要なのは協力大勢なのでまとめるのとはちょっと違う。
最強なんて言葉には全く持って興味はないし、真正面から正々堂々と戦うより搦手で嵌殺しの方が良い。勝つ過程に意味を見出すのはそれだけ努力を重ねた人で、勝つ事に意味を見出す人は戦闘者である。そして、その勝利を使うのが政治家。そう考えると戦闘者には成れても努力の人にはほど遠い。
「この政府からの素材放出って必要なのかい?」
そんな中での今本部長が集まって話しているのは政府からの素材調達と言うか価格調整について。R・U・Rを使って会議しているのでデータ習得が楽なのが利点だな。必要データはネットやら本部長用PCからも引っ張ってこれるし。
アバターさえ登録すればゴーグルタイプやメガネタイプの装置で脳波読み取りもしてくれるので表情なんかも変わるし、近未来的な要素が増している。佐沼的にはグローバル化を目指して商品とルームを売りたいらしいが、このメガネなんかのデバイスにもモンスター素材が使われているので一般化するにはもう少し時間がかかる。
「込み入った事情と言うわけではありません。どちらかといえば経済的な話で、ある程度安定した素材価格がある反面どうしても奥の素材は値が時価になりやすい。企業としても少なくない額を提示していますが、スィーパー側としてもまだ上がるのでは?と足元を見る傾向です。」
「命がけで取ってきた物で安く売りたくないと言うのは分かりますけど・・・、それで価格調整の為に放出要請と言うわけですか。選出戦時の様に低価格ではないですよね?」
「流石にそれはあり得ない。低価格にし過ぎれば今度は企業が政府に放出要請を行って一般スィーパーが割を食う。」
「でも今甘い汁吸ってるからええんとちゃう?アコギな奴はかなり甘い汁吸っとるで。依頼受けて再交渉したいとか言う奴もおるで。」
「ウチはそのパターンだと仲裁しますね。ただ目標素材だけ取って来るわけじゃないから企業と直接交渉して表示価格より釣り上げる的な事もあります。まぁ、その場合両者が納得しているならとやかく言いませんが・・・。」
「こちらをどうぞ。」
奏江が電子ペーパーをみんなの前に出す。内容的にはギルドを通しての取り引き履歴で高い物は億から安いものは数万まで様々。傾向としては奥にいるモンスターで大型のものが高い。体積とはそのままパーツ取りに使える部分であり、奥にいればそれだけ進化して思いもよらぬ素材が手にはいるのでは?と言われている。
逆にクリスタルなんかは価格がある程度安定しているが、そこそこ価格は落ち目で多少のダブつきもある。まぁ、1つで賄えるエネルギー量がかなりあるので仕方ないが、持ち帰ってもらわないとスタンピードの引き金となるので売らないにしても大半のスィーパーは可能な限り回収する。
その他で言えばセーフスペースの素材も用途が多いので人気である。馬はや草は言わずもがなだが、美食的な意味で魚やらを欲しがる人もいるし繭っぽいモノをほぐしてシルクの代わりにしたり、土もケイ素なので加工して見たり樹の実は硬度照射装置で使うので自前調達としても人気がある。
人な生活に本格的にゲートが関わってきたからこその価格問題で、割安な青山の出品なんてマクロ入札してるんじゃないかと言うくらい初っ端から上限入札で持っていかれる。
「やっぱり状態が良くて大きい物が高値ですね。喋るモンスターは表記があってもそこそこ安い?」
「うん千万単位が安いかと聞かれると迷いますが、証明のしづらさでしょうね。戦闘音等をマイクが拾えば喋ってるかの判断はしづらいですし、誰もがカメラを無事に持ち帰れるとも限らない。割と首の防具兼用で首輪カメラは人気ですが・・・。」
「それだけじゃなくで強くなるって目標の人もいるっすね。モンスター倒してクリスタル回収出来れば素材は無視的な?試験的に獣人スィーパーをギルドからのサポーターとしてつけてるっすけど、諸々を差し引いても素材供給と言う話ならありっすよ。」
「獣人スィーパーなぁ・・・、パートナー判断なんだが警察との連携を考えると一定数はギルトに残しときたいんだよな。この中で獣人スィーパーをパートナーとしている人はいるか?」
「ウチは違うねぇ。幸い補助者のパートナーがスィーパーになったから警察依頼は優先的に回すようになってるが。」
「私な所は乱暴だがパートナーを失った獣人に声をかけてゲートに入りたい者をゲートに入れた。そこまでスィーパーにはならなかったが人数確保案としてはいいと思う。」
「中々難しい話ですね。獣人自体の需要は少なくないですし、企業側としても補佐として雇ったり、教育すれば素直でいい人材になるからって募集したりしてますし。」
獣人の需要は一次産業以外にも増えて昔で言うコピー係やらお茶くみ係としてデスクワーク方面にも進出している。元々ギルドの法律課にいたりしたので、それを見た企業人が人事部に話して試験的に採用したりしている。まぁ、そう言う所は若手社長とかが多いかな?腰の重い所は学校卒業組を狙っているらしいが、企業ナイズした社員を作るなら今とも言えるし、ある程度の人間関係を学んだ獣人を採用したいた言うならもう少しかかるだろう。
実際政府も獣人ベイビー誕生を受けて幼稚園やら保育園やらの整備を進めている。まぁ、進めると言っても人と変わらない制度で人と変わらない教育を受けるくらいしかないし、それが隣人としては最大限のもてなしだろう。変に特別視しない代わりに変に貶めたりもしない、付き合い方としては対等であり負荷なく過ごせる。
「本部長って頭痛い・・・、やり甲斐あるけど毎日なにか問題ががが・・・。」
「それを言うなら私だって頭痛いですよ酒井さん。」
「それを言うと自分も頭痛いですね・・・。」
「ん?宮藤さんは何でまた?ブートキャンプは終了したと聞いてますけど?」
「キャンプは終了したんですけど定期開催依頼とかギルティタウン調査依頼とかですね。特にギルティタウンは点在し過ぎて雲を掴む様な話ですよ・・・。」
「それなら副長貸し出せるぞ?」
「宮藤さんから依頼があればいい人材をだしますよ?青山とか青山とか青山とか。後は・・・、あぁ、青山がいましたね。」
「それは青山さん1人なのか青山と言う人が複数いるのか迷う話し方ですね。なんにせよ何かの際は依頼を出します。海外ギルマスのデータは後で共有するので確認しておいてください。スタンピード応援依頼があったとすれば彼等が架け橋となります。」




