679話 噛み合わない
マイナーかどうかはさて置き教えて欲しいと言われても困る。そもそも文字も無ければコアが返すのは送った言葉に対してのオウム返し。それもコードなんて言う人が発音するにはかなり難しい音である。実演を見たエマ達からしても言葉と言う認識はなく、なんとなく綺麗なオペラっぽい音を出しているとしか取れないらしい。
う〜ん・・・、賢者に師となる者があるから教えられない事はないと思うが、やってみせるのが早いのだろうか?渋る渋らないと言う話をするならS・Y・Sからメッセージを送ったのと同じ方式同じ言葉を引き出せば問題ないとは思うんだが、それでイメージが作れるかと言われると微妙なんだよな・・・。
「教えるのは・・・、私個人としては渋らないと言うか、悪用されるされないと言う以前に悪用すればバレるんじゃないかと推測しています。エマ、共に宇宙へ行き間近でコアを使ってのイメージ送信を見ましたがどう考えます?」
「ふム・・・、仮にイメージを送信するならかなり厳しいだろウ。送る相手の位置や到達速度、光量の問題にメッセージそのモノを扱う手段。これから先S・Y・Sが量産されたとしても問題はあル。秘密裏にメッセージを送ろうとしても今回と同じ方式なら先ず目立ツ。来いと言うメッセージを送りそれを訂正して宇宙人を呼び込まない事は可能かもしれないガ、それ以前に何を持って報酬や契約とするかは分からなイ。そもそもソーツとの契約ハ・・・、国家間でのみ共有されているので公には話せないガ、同じ様な方式だとかなり不味イ。」
エマが契約の話をするが確かに不味い。ソーツと同じ様な感じが宇宙人のスタンダードな接し方だとすると、メッセージを送った個人ではなく対象は宇宙規模となり何処の誰が俺の様な目に合うか分からない。寧ろ個人が特定出来たとしても呼び込んだ人間とピンポイント契約する必要もない。まぁ、精神体ではなく肉体があればまだ個と言うものに関心を示すかもしれないが、何処の宇宙と言うか銀河からやって来る者に対して人類の技術力では太刀打ち出来ないだろう。
故に人類は原生生物であり脅威でもないからまだ見過ごしてもらえる。一応、ソーツや魔女達が地球と関わってるから来ないとも考えられるが、その2種族?が宇宙でどれだけ有名かも分からない。まぁ、ソーツの場合ゲートをばら撒いているのでそこそこ知られているのでは?とも思えるが。
「お預けは止めてくれクロエ。渋らないなら教える、私は教えを請う事に恥じらう気はない。姿、外見、年齢、その他諸々含め過去ならば老人を優遇する風潮もあり、事実として永く生きると言う事はそれだけ知識を得る機会が多いと言う事に繋がった。しかし今は違う。90を越えようと乙女の姿の者もあれば、女性だった同僚が次の日に男性として現れる事もある。師としての能力がある者を師と仰ぎ教えを請おう。さぁ!さぁ!!さぁ!!!」
「てかエマやんずっくない?その場にいないのは仕方ないけど先に送信風景見たんでしょ?私の探究心が嫉妬の炎を上げてるぜ!」
「ズルくはなイ。S・Y・Sに乗ったものの特権ダ。ただ間近で見ても何をどうしているのかは不明で再現しろと言われても無理ダ。複数人で連携すれば出来るかもしれないガ、最初の一歩で躓くだろウ。」
「そんなに難しいものなんですかね?」
「カオリは目があル。」
「ほう!なら私も体験してみたいですね。」
わいわいと話すが神志那もコアをガン見しているから鑑定してるんだろうな。ただアミットと同じ様な感じなのか微妙な顔をしている。コア自体は老兵と言っても過言ではないので仕方ない。燻ると言う感覚があるなら63階層で制限付き迎撃プレーさせられてイライラするかもしれないが、マスターからご苦労休めと言われて解体されたなら悔いも残らないだろう。
逆に悔いが残ってブラック企業の戦士並みにやる気を強制させられているとヤバい。かってに外に出る事は無いだろうが猛攻が更に密になる可能性もあったな。しかし、このコアってどっちなんだろう?生命体と言う定義は非常に難しく人はAIを電子生命体とは言わない。しかし、思考し進化するならそれは生命に準ずるものがある。これはやる気が無いと言うか役目を終えたから大人しいが、他のコアと言うかガーディアンは仕事待ち状態ならヒャッハーと言わんばかりに動き出すかも・・・。
ま、まぁ?地球ではモンスター持ち出しを止めさせたので大丈夫だと思いたいが・・・。流石に国際会議での中国の発言を考慮するならどの国も試さないよな?尊い犠牲と言うのは生きた人間で死んだ人間からすればふざけるなと言いたくなるし。
「分かりました、機会とするならこれが最後でしょう。日本政府に渡した後は誰がどう管理するかは知らない。少なくともこれを使って再度呼びかけしろと言われたら私は拒否しますし、その時先頭に立つのはアミットさん達です。」
「不測の事態でも動かないと?」
「不測の事態を見越して動かないんです。懸念事項を踏まえるなら私はコアに触れないほうがいい。そもそもスィーパーと言う新人類はどう言ったイメージを抱え何が出来るのかから始まる。基本は戦闘方面となるでしょうが、それでも人は戦闘外で指輪を使い職を使う。なら、近付かない触れないと言う選択肢もある。」
ゲート外で職や指輪を使わないと言う選択肢はない。既に地球を旅するな指輪に道具を詰めて手ぶらで旅するのが当然となるし、秘境の地や未開の地へ行くなら職は必須である。インドと言えば北センチネル島を長らく危ないから上陸禁止としていたが、この度現状報告が必要と言う事で上陸していたな。
流石に弓矢では迎撃出来ないし下手すると海を走って来て矢を素手で受け取り、笑いながら『開国してくだサ〜イ』と言う人間に勝てるなんて思えない。寧ろ未開の部族的には驚異的な何かが侵略してきたとも受け取れる。一応、解明出来ている言語から解読して意思疎通出来たから大丈夫だったと言うが・・・。
そんな事を考えながらキセルを取り出しプカリ。大丈夫と言うイメージを伝えるとコアが大丈夫と返してくる。見た目的にはただ点滅してるのと変わらないんだよな・・・。ただ、手に持ったアミットと見ていた神志那は違う様だ。
「これが宇宙言語?」
「違うと思うよアミットさん。多分エコーだよ。言われたからこれを返す。それ以外はやる気が無い。言語的鏡、コレがコアの実情かな?」
「そうなるとクロエさんは単体で宇宙人対話・・・。いや、変換器が無いからメッセージも遅れない?しかし、魔法と言うものを考えると個人的なメッセージも送れる・・・。」
「可能性の話をするなら可能だろうけど光と波長を必要とするなら音だけでは不十分かな?仮に送れたとして振動は宇宙だと伝わりにくい。それこそ銀河を出る振動なんて大爆発と変わらないから、なにかすればすぐに見つかる。寧ろS・Y・Sの利権がクロにゃんにない事が歯止めとか?確かS・Y・Sって藤っちに渡すとか言ってたし。」
「言い方は悪いですがクロエ一派と言う見方をするなら懸念ですよ。ラボの大株主はクロエさんでしょう?いや、でも受信出来る人間が地球規模でいるなら察知は可能?でも、察知した時には終わっている可能性が・・・。」
「それを払拭するのがコアかにゃあ?これを手放すなら私達は歩めばいい。現状でクロにゃんは宇宙人と接触しない派で、ソーツにもいい印象を持ってないしソーツもクロにゃんに会いたくない。更に言えば祭壇に行かないと会う気もない。保険としてなら互いに噛み合わない実情が保険かにゃあ?」




