675話 グイグイ来る人
松田との電話会議は終了しラボと言うかラボゲート外支店へ連絡。飛行可能により一応、電波範囲内を飛行しているとしつつも連絡が付かない時もあるし、高槻本人が捕まらない時もある。まぁ、今回はアルを呼び寄せるので連絡さえ付けばどうにかなる。寧ろ、言語学発展の為と喜び勇んで来るのではなかろうか?宇宙からゲート経由で統合基地に行った時も話を聞きたそうにしてたし。
「取り敢えず開催地を何処にするかだな。ここに来てるなら大分ギルドでいいけどアルがどこから入ったやら。」
「アルとは誰ダ?」
「フルネームだとアルヴィー・デューラー。ラボにある言語を取り扱う所に所属してる人で、取り分け宇宙言語に興味がある人かな?」
「クロにゃん知らない?結構有名な学者さんだよ。変人って話もあるけど論文自体は視点もユニークだし内容的にも理路騒然としてるにゃあ。有名な著書だと古代言語の分布と共通点とか?」
「流石に言語学の本までは読んでないかな?ファンタジー小説関連でルーン文字辞典とかヴォイニッチ手稿をネットで見たりはしたけど。」
奇書やら禁書、或いは稀覯本。要は世界七不思議やらに名前が出て来そうな本なら興味が沸いたら調べはした。しかし、それを書く言語については調べてないし、サンスクリット語やらヘブライ語を知ろうとしてもねぇ。
TRPGをやる関係上、その名を知っていてもゲーム的なエッセンスとしてしか知らないし書いて話せと言われても・・・、賢者なら出来るのだろうか?まぁ、俺の中にある知識なんて雀の涙程度なのでインターネットを活用してもらおう。
「文明の利器にどれだけ早く触って活用して興味を抱くかですね。私がスマホとかガラケー持ったのって結構遅かったですし。」
「それを言うなら私だって軍に入るまではPCさえ扱っていなイ。基本はレッスンばかりだったしナ。神志那とクロエは?」
「私はPCが一般化した頃には触ってたかな?知らない所で面白そうな事されるとなんか悔しかったし、遊び道具としては高級だけどコレからはこれが一般化すると思ってたし。」
「私はPCと共に生きてたにゃあ。寧ろそれがあれば生活には不自由しないかったし。」
年齢的に言えばエマは俺と同じぐらいの世代だが、ミスコンやらの目標でそちらは触らなかっただろうし、望田は施設出身なので個人で買えるまではお預け。逆に神志那は頭良すぎて親がPC渡したパターン?時に子供の疑問とは大人でも答えられない事がある。
それは例えば人はどこから来て何処へ行くのか?とか、何故戦争をしたらいけないのかとか。多分どうして戦争したら駄目なのか?に明確な答えを出せる人はいない。法律で禁止されてるからと言ってもやる所はやってるし、なら勝てば正解なのかも曖昧で負かした相手を助ける事もある。
そんな疑問を煙に巻くならされたら嫌でしょう?で済むが、殴りかかってくる相手にノーガード戦法取ってもボロボロにされるだけで、した相手は勝鬨上げながら1杯旨い酒を飲むなんて事も。そんな疑問から逃げずに答えを出そうとするなら人の仄暗い部分を教えるのがいいのだろうが、今度は年齢やら倫理なんてものが邪魔をしてくる。
多分正解のない問題なのだろうが、それならそれで解答に近付くだけの材料を渡すのもまた親としては間違いではない。まぁ、神志那の場合そのPCに世界を見出して現実が疎かになっていた様だが・・・。
そんな話をしつつ電話を掛けて名を出すとそのまま高槻へ繋いでくれた。要件を伝えるとアルはラボにいないと言う。なら何処にいるのかと聞けば斎藤に遅れて種子島に向かったとか。なんでもS・Y・Sでコアと同等のメッセージが送信出来るなら、手元にないコアよりも見れるS・Y・Sで当時の状況記録を確認して行けば言語として成立出来るのでは?と考えたらしい。
ご丁寧に有給申請してラボを飛び出して退出ゲートを潜ったのを確認したから自国に出ていると推測される。ただ行き先は種子島で間違いないらしくフライトチケットやビザなんかを考えると日本に来ていても鹿児島辺りで足止め食らってる可能性が高いらしい。
まぁ、今の種子島は宇宙ステーションもあるし色々な国が注目しているのでおいそれとは行けないし、流石にラボの人間だとしても簡単には許可が降りるとは思えない。でも最近の学者も研究者もアクティブなんだよな・・・。アルもスィーパーだしイメージがあれば最悪種子島に自力で上陸してる可能性も・・・。
「高槻先生アルの電話番号教えてもらえます?」
「いいですよ、本部長用PCへ送りましょう。こちらからもアルにクロエから連絡があるとメッセージを送っておきます。」
「ありがとうございます。」
「あぁ、そう言えば生命のスープはもう作れないですかな?」
「生命のスープ・・・、どちらかと言えば錬金術師の方面では?材料としても一般的な物ですし。」
「そうなんですが研究しても未知の部分は多い。やはり魔法が何かしらの作用をもたらしている可能性が・・・。分かりました、こちらでも研究しますが気が向いた時にでも顔を出して下さい大株主。」
「了解しました社長。」
電話を切るが生命のスープと言えばソフィア再誕の時に溢れた物だよな?原材料だけで言えば6万円くらいで揃うし回復薬の精度向上に向けた研究だろうか?
「生命のスープとはなんダ?まさかラボでは蘇生薬を作っているのカ!?」
「違うとは言い切れないけど・・・、人を値段にすると約6万円分の素材で構成されてる。もちろんあくまで素材だから骨格やら人相やら性別はまるっと無視してね。回復薬の精度向上を狙って研究してて、その辺りのモノをまとめて生命のスープって名前でラボでは呼んでるんだよ。」
嘘ではない。事実ラボの調合師達は回復薬作る時に生命のスープ作るぞ!と意気込んだりしてるし。ラボ産回復薬が広まったり米国以外にも工場建てたりしたおかげで等級の低いゲート産回復薬はそこそこな値段で手に入る様になり、今度はソーツ産回復薬の解明が高槻達の目標の1つとなりつつある。
確かに解明出来れば等級を上げるのにも役立つし、最上位の蘇生薬も夢ではないのだろう。まぁ、そうは言ってもかなりの部分が解明出来ずに手詰まり感もあるらしいが・・・。何にしても薬自体は助かるので頑張ってもらいたい。
「確か米国ラボでも山口が色々と調合していたナ。アレが欲しいこれが欲しいと色々オーダーも受けタ。」
「どこの先生達も最近は止まったら死ぬ病を患ってるからね・・・。」
「私もゲートの出土品鑑定はそこそこでいいけど未知の物がたまにあるから目が話せないにゃあ!」
「どうどう神志那さん。確かにクロエがいない間に出土品も溜まってますからね。後で金庫にお願いします。」
「了解、了解。その前にアルに連絡しないと。」
資源等目録もコピーしないといけないし、やる事が多いな・・・。相変わらず目録の内容は増えているが、名前だけだとねぇ。流石に個体成長薬騒ぎ2ndシーズンは止めて欲しい。そんな事を考えつつPCに送られてきた番号へ電話する。ラボからのメッセージが届いていたのかアルはすぐに電話に出てくれたのだが・・・。
「もしも・・・。」
「ファースト!メッセージ!S・Y・S!S・Y・S!」
「・・・、間違いました。違う方の電話にかけてしまったようです。」
「私はアルヴィー・デューラー。声でファースト氏と判断したが間違いか?いや、間違う訳がない。貴女の声は耳に残る。ラボからも私に連絡があるとメッセージを受け取ったが・・・、本当に間違い?」
「いえ、間違いではないですが間違いで合って欲しかったと言うか・・・。今何処にいます?」
「私か?日本に来たが種子島に渡れず仕方なく鹿児島にいたが、埒が明かないので友人のアミットに連絡を取ったら他の言語学者達と大分に来ていると言うので、そのホテルに転がり込んで風呂に入ったり言語学について語り合ったりしているが?」
アクティブだなおい!まぁ、これで種子島にいると言われたら密航も疑わないといけなくなるからいいと言えばいいのだが、日本来て鹿児島行って大分来るとか結構な移動距離だぞ?まぁ、エナドリ飲んで動いていれば肉体的な疲れはないのだろうが・・・。なんにせよアミットとアルが一緒にいるなら話がスムーズに進む。
「その言語学についての話です。S・Y・Sからのメッセージ送信。コレについてアミットさん含め多数の言語学者達が懸念を示していると聞きました。それについての会談を開きたいのですが、あまり人数が多くても話の腰を折る。出来ればそちらで数人か或いはアミットさんとアルを代表として意見をまとめて来てもらえませんか?」
「おぉ!遂に!遂に!!新たな言語の足がかりが!分かった!意見集約と人員選定をしてから今から出向くとしよう!」
「いえ、来るのは明日でお願いします。流石に時間も時間ですからね。」
「その時間が惜しい。1日経てば私の寿命は1日減ってしまうのだが・・・?」
「それは誰も一緒です。薬でも買って飲んでチャラにして下さい。いいですか?必ず明日ですからね?詰めかけてきたり家に来ても追い返しますからね?」
前もお姫様抱っこで攫われたが相変わらずアクティブな様だ。斎藤なんかもグイグイ来る時は来るし、黙って机に向かう学者は減っているらしい。




