672話 好奇心? 挿絵あり
1人探索は流石に限界がある。空を飛んでも森なら歩いても木しかない。湖の中を進んでもなにも見つからないし、流石にコレ以上の留まっても仕方ないだろう。最悪を想定するなら・・・、たまにあるこの湖の底に祭壇があるかもしれない。
現状湖が見つかっているのはここと36階層セーフスペースなのだが、わざわざ大規模水場を用意する意味もないだろうし、身体構造を考えて行くと俺さえ行ければいいとするなら、シンプルに水中でもいい。そもそも言葉を話さなければならないなんて事もないし、クリアな水の中なら光も透過する。
「また来てから水中探索かなぁ・・・。バイトは1人で底まで行って探索とか出来る?」
(不可能ではないが、なにを探していいか分からない。)
「まぁ、そうなるよなぁ〜。」
そんな事を考えながら俺はウサギに乗って並走するバイトに話す。外観にしろなんにしろ祭壇の様なモノと言われても、全くの手がかりなしでは打つ手もない。奥に行けば見つかると思っていたが、流石にこの広さだと不安になってくる。
そう言えば65階層セーフスペースは今までになくセーフスペースと退出ゲートが同一空間にあるんだよな。今までだとセーフスペースには次に行くゲートしかなかってので中層の拠点とするならここになるのだろうか?まぁ、流石にここまで来て拠点が作れませんとは言わないだろう。
「音声記録開始。約10日、60階層からスタートして65階層セーフスペースでは目新しい発見はなかった。まぁ、ここがセーフスペースと分かったのが最大の発見だろう。新たな乗り物としてウサギはいたが、中層の乗り物はジェットコースターだ。アトラクションが好きな人は乗るといい。ここで呼びかけていいか分からないが、交渉の祭壇をどの様なモノと考えるのか?多角的に意見が欲しい。祭壇と言うからには建物だと思うが古今東西祭壇と呼べるものは多い。それに、仮の話をするなら祭壇にはもしかしたら神官がいるかもしれない。なんにせよ1人では手に余る広さがあるゲート内だ、眉唾以外の手がかりを求める。以上、音声記録終了。っと、出ようか。」
祈りを捧げる場なら神官はいそう。まぁ、それがソーツとの仲介役かもしれないし、機械仕掛けでAIの様なものかもしれない。輸送機のコアなんかから考えるとそっち路線かな?長時間1人で過ごせば精神的にもキツイだろうし、人員を割くよりも来たら呼び掛けてソーツが来るパターンの方が効率的だろう。
なら、今の祭壇は休眠状態とか?どこにあるか分からない以上、上層の探索もした方がいいのかな?日夜スィーパーはゲートに入っているが、地形探索は後まわしで報酬とモンスター退治がメインだし、落ち着いて地形調査する人は少ない。やはり情報収集は大事だな。
「大分よ!私は帰ってきた!」
外に出るに辺り適当な服に着替え、出たら久々の太陽を見てバンザイ。割とこうする人は多い。ゲート内が薄暗いせいもあるし、生きて帰ってきたと言う実感を味わう為にする人もいる。なんにせよ生きて陽の光を拝めると言うのはありがたいものだ。
スマホを取り出し時間を確認すると14時か。今から帰還報告してデータを送って公開して欲しい部分と言うか、政府にもなにか情報がないかを確認して・・・、その前に不在の10日間でなにか変わった事がなかったかからか。流石に電波も届かないゲートの奥だと外とのデータのやり取りも出来てない。流石に10日で世界が変わる様な事は・・・、ありはするんだよな。ゲートは時間をかけてじっくり出てきたわけじゃなくでソーツがハイ、置いた!後よろしく!なんて感じで置いたんだし。
そんな事を考えながらギルドに入る。中は変わり映えしないが若干獣人が多い様にも感じる。警察も獣人登用を検討していると言うか、盗人相手に獣人はキラーカードなので仲のいい獣人を作ろうと言う動きもある。まぁ、性格的に犬のお巡りさんはどうにかなりそうだけど猫の婦警さんは厳しいかな?
なんにしても犯人確保さえ出来れば後はギルドに登録してあるスィーパー獣人にオファーするだけである。風の噂ではご馳走代なるものが予算に組み込まれたとかいないとか。まぁ、犯罪率はそこそこ低いが獣人の能力考えると必要だしな。
「クロエ〜。」
「ただいまカオリ。なんでまたゾンビみたいになってんの?」
音に敏感な望田がでてくるのはいいとして、なんだか目の下クマはあるように見えるし足取りも重い様に見える。なにか厄介事だろうか?留守を任せっぱなしだったが休暇も渡したし、サポート出来る人間もいるはずなんだが・・・。
「戻ったかクロエ。」
「ただいまエマ。エマもお帰りだけどなにかあったの?」
「なにがと言うわけではないんだガ・・・。端的に言えば世界がクロエを求めたと言う話ダ。」
「・・・、はぁ?」
「中露からの贈り物とかおべっかとかその他諸々が大分ギルドに向かってナ。それだけではなく宇宙言語についての問い合わせは日本政府のみならず連盟で発表した国全体に及んでいル。最適化されれば感じ取れる幅も広がると言う話は出したんだガ・・・。」
「政府公認の学者先生達が毎日ギルドをうろうろしてるし、顔見られる度にファースト氏はまだかって聞かれて大変なんですよ・・・。今の所全員ホテル待機で神志那さんが窓口になってますけど、それでも連日話し合いで神志那さんもうんざりしてますね・・・。」
「宇宙言語はいいとして、知ってなにする気なの?」
宇宙人を呼び込む気がないなら宇宙言語は必要ない。そう、必要ないはずだがそれを求めると言うからには何かしらの理由がある。例えば宇宙人が本当にコンタクトを取ってきたとか、あのドックで出会った宇宙人が来てるとか。或いは、それに対する備えを必要としたとか。現状把握が出来てない今だとそれくらいしか思い浮かばない。大穴を考えるならば知的好奇心なのだろうが、その好奇心でここに詰めかけるというのもなぁ・・・。
しかも政府公認と言う事は逆を言えば公認しなければならない状況とも言える。う〜ん・・・、やはり一度状況整理から始めよう。
「取り敢えずマスタールームに行こう。現状把握しないとなんとも言えない。」
エマと望田を連れてマスタールームへ。その間にもスマホを確認して溜まっているメールやらを見る。連絡は取れないとしたが着信やらメッセージやらがかなり溜まっている。内容的にはぼかしたモノが多いのだが、要点を見ると魔女と賢者に対する質問と取れるものもある。
宇宙で暴露大会をしたわけだが、この事実が人質に出来る情報かと言われれば答えはNO。なんなら妻に話してしまったので人質にしようとした瞬間に勝手に暴露する構えである。寧ろ、中露としては人質には出来ないだろう。下手にその辺りを突くと宇宙での出来事が明るみに出てくるし、何より中国側はビジネスと言う繋がりがある。
不死薬の供給元の1つを自らの手で潰す事は避けるだろう。なら、ロシアかと言われればあちらは1人戦国時代で中国が動かない以上、1人で動こうとすれば孤立する。ある意味暴露話を聞いた4カ国は共同体なんだよな。弱みを握り握られ秘密を共有しつつ大きな動きはやりづらい。
仮に次動くとすればインドとか?国民の数にしろ発展速度にしろあの国には勢いがある。それに全員クシャトリヤと言う、昔の日本の様に全員中流状態なので中身は別として上からの圧迫は減っている。




