閑話 133 作成群体@2
観測機を先行させ緩やかな速度で船を進ませる。その間も活発に意見は交わされるが、如何せん情報が少ない中での考察なので堂々巡りは否めない。旅をして既に数多の時は流れ様々な民に出会い時に依頼を受け、時に敵対して来たが中々プレート制作者の情報は得られない。
自負する訳では無いが我々の交友関係は広い。それは滅んだ銀河を出た後も関係が続く程に広いのだが、それでもプレートの作成者の情報は出ない。下等か上等かで言えば上等で精神体なのだろうとは考察出来る。少ない情報を出すのは精神体ばかりで観測出来るなら同等の次元の者か、それを観測し対話出来るツールや能力を有する者だろう。
確かに出会った中には我々と同等の技術を持つ者やそれ以上の者もあったが、どちらかと言えば作成者への解答をしない者が多い。この広い黒の中には様々な考えのものがあり、滅びた破壊者の様に破壊する事でしか自己を認識し隔絶させる事の出来ない者もあれば、我々の様に広い関係の中で自己認識を広げる者もある。
個の身を持つ者なら言語理解を行えばそこから妥協点や関係性を築く事も出来るが、あまりいい手ではない。どうしてもそこには時間と言う流れ流転し止めようもない法則が流れ、少し時間を置くだけで滅びてしまう事もある。星図にはその民達がいる場所を記録しているが次にいつ出会うかは分からない。
そもそも他の民と出会い話し合う必要性と言うのは、互いに会う必要性があるから発生する事象であり、我々は今の所この暇と言うメッセージをばら撒いた者以外に余り興味を抱いていない。共通宇宙言語と言う物でもあればまた違った可能性もあったかもしれないが、数多の民が居る以上それは難しく、1番それに該当する可能性があるとすれば精神体の使う光と波長だろうか?
ただあれもかなり扱いが難しく、身を持つ者からすれば一方的なメッセージにもなり得る。事実として我々が精神体との対話を余り行わないのは下手に精神干渉されたくないと言うのもある。意思脆弱云々ではない。不意にメッセージを投げ込まれそれを自己の思考と誤認する可能性があるからだ。
それを下等な民は啓示と取る者もある。まぁ、観測出来ない者からすれば確かにそう言ったモノとも取れるが、送る側からすれば実験的な試みと言う部分もあるらしく、事実を知っている我々としては扱いを知っていても他の民と対話を試みるなら理解から入りたい。我々は別に何かを欲している訳ではない。
銀河を出た当初こそ定住も考えたが、それは既に過去でありこの船をそのまま移動する故郷としていいとの考えもある。寧ろ、身からの脱却を考えるなら定住と言う言葉そのものが形骸化してしまうだろう。そもそも身がなければどこに居ようと関係ないのだから。
「観測機ロスト・・・。いえ、機能崩壊後・・・、従っている?」
「従う?指揮系統を奪われたのではなく?」
「不可解だ!観測機は干渉を受けない様に完全機械仕掛けの代物だ。精神体からのコンタクトか?」
「観測機からのデータを検証、崩壊直前に干渉波を確認。ここになにかあるのは明白。」
「おぉ・・・、到頭邂逅の時。その者はどの様な者か・・・。」
「楽観視してはいけない。コンタクトが成立していない以上、警戒すべきだ。」
「精神プロテクトは最大です。先程のデータを検証し更に増強プロテクトを検証し作成に取り掛かっています。」
「それだけではない。対話ツールの作成にも着手、同時に武装作成もスタート。」
「物理干渉については作成を停止、現行装備で十分と推定。観測機に発生した事象から検討するに何らかの感応波、或いは寄生する民とも考えられる。船の指揮系統を分割制御する事を提案。」
「分割ではなく、隔壁対応を希望します。パーテーション方式でパージ可能なモノの方が損害を軽微に出来ます。」
「対話ツール作成を行うが対精神体用で行う。イメージのやり取りを行う為、リンクを強化して欲しい。」
「我々は群体としてリンクしてある。数百億の同胞がそれを支えている。コレ以上の強化は痛みを伴う結果となる。それでも良ければ作成しよう。」
「身についての改造は全会一致で許可。必要な処置は行う。既に他の精神体から余り関わるなとの警告はあった。しかし、我々は進む事を止めなかった。ならば進もう。」
「総主・・・。」
先を見通す目はどこまで見通せるのか?100年と言う単位なら概ね見通せる精度もある。あくまで見通せるだけで確定ではない。それでもこの邂逅は何一つ見通せていない。何をどれほど準備し何をどう進めるのか?暇と言うなら会って話す程度は可能だろう。
「再度観測機を。暇と言うプレートをばら撒いた者は我々の以上の存在であると断定。観測機には・・・、接近したいとメッセージを封入。我々の旅はここで一度終わる。以後、次の目標はまだ定めない。」




