669話 前哨戦 挿絵あり
忙しくて短いです
「悪いが拳で語るなんて事はしてやれない!」
蹴った感じ俺の打撃ではダメージが出ない。キセルやらでぶん殴ればその限れではないかもしれないが、腕も飛んでくればビームも飛んでくる。どのレンジで戦うのが最適かと言われると俺は多分遠距離だろう。接近して撹乱してとやってやれない事はないが、近寄れば漏れなく触手が飛んでくる。
豚鼻の剣でさえ繊維の集まりの様に別れて斬り掛かってくるし、人間を殺すと言う事を考えるならわざわざデカい爪で腹に穴を開けるとか、頭から貪り食う必要もなく前頭部を2cm深く切れば脳へダメージが入る。そしてモンスターの攻撃は・・・、触手はその程度容易く切れる。
近寄らせない防御機構と考えるならどこでも好きな様に出せるコレは誠にやりづらいモノだ。最も格闘家はその触手をグローブ嵌めて掴むし、盾師は衝撃で散らしタックルもする。
背後を取ったがモンスターに取って背後なんてモノはないのだろう。そもそも前面と背面があるかも怪しい。留まらず距離を取り瞬間発火を試したが着いた側から腕を振るって消される。多分カブトムシの角は両手に回ったか?
それならロケットパンチと言うか、本体から離れ勝手に飛び回りながらビームやら突撃やらをしてくる腕を躱しながら攻撃した方が楽だ。ただ、そのモンスターも棒立ちではない。
右腕に付いたブレードをデタラメに振り回すし、厄介なのは見た目に反してその効果範囲が広い。人は視覚に頼る生き物で目を瞑って気配でなんて事は達人かそう言った職の奴に任せる。まぁ、その気配さえ感じ取れるのがスィーパーとも言えるが、俺の場合その軌道も範囲も切り替えた視界を通して視える。
「遅い!既にここは私の胃の中だ。徹底的に邪魔させてもらうぞ?」
「6gtJdg!!!????」
思考を回し・・・、全ての工程は既に完了している。そうでなければ・・・、そうであっても魔女や賢者には手も足も出ない。視界の中で蠢こうとその理解していない空間攻撃以外は驚異足り得ない。
「|tjptaxmjp《わけが分からないだろう?》」
斥力があるなら極めて遅く近寄ればいい。煙なんてモノはそもそも重さなんてないに等しいし、充満する煙を掻き分けようとするなら動くしかない。そして勝手に動くなんて事を許すわけがない。例外とするならまだ飛ぶ腕がモンスターの周囲をデタラメに飛んで振り払おうとしているが、そんなモノは掴める所を掴めばいい。撃ち出すのではなくまとわせるなら付け込めるし、何より米国のモノよりもまだ分かりやすい。
「tMjpw'wt」
「追撃の手を緩めるとでも?」
飛来する腕をバレルロールで躱し翻ったスカートの裾が消失するのも気にせず、斥力の出力を上げようとしたのか光る頭上の輪を引き千切り、その輪の付いていた細い頭部であろう場所を更に捻じる。軋む様な音はするが、その程度でモンスターは止まらない。出鱈目に振り回すブレードは更に伸び頬を掠めるがその程度はダメージにもならない。って、ここで使い方を学習するか。
確かにたらふくクリスタルは食っただろう。攻防を開始して数分にも満たない中で学習・・・。いや、元々使えた空間攻撃を理解したのか。仕掛けて来たのはただの極小・・・、米の一粒にも満たない小さなモノだった。
それがボンと広がり辺りを削る。顔半分持っていかれたがコレは失敗だ。だから俺も学べばいい。今まで見てきた空間攻撃は縮小こそすれ広がるものはなかった。しかし、確かに座標を指定しそこに消失現象が出せるなら範囲を広げるのもお手の物。他の人にとって失敗=死だろうと、それを投げ売って仕事をしているんだ。ズルしても真面目にもやらせてもらおう。
要は吹き矢だ。とても見えづらく小さな点での攻撃。ただ、着弾するかモンスターの気分で展開するのだろう。何度でも失敗して学べばいい。何度でもモンスターに襲いかかればいい。誰も見ていないなら、そこで負けを定義するのは自分でしかない。
飛蚊症の様に小さな空白が視え、それを大きく躱し展開範囲を確認する。少なくとも1mは広がる。それを前提に動けばいい。未だ視界は良好、ダメージなんて合ってない様なもの。
「こういう時に言うんだろうな。お前が死ぬまで殴るのを止めないと。さぁ、第2ラウンドだ。」




