666話 発見 挿絵あり
ドライアドは木の中を駆け巡り挟まっているであろうゲートを探す。数が増えればエコーロケーション的な方法で調べられると思うが今の所は数が少ない。と、言うのも遠くにいたはずのモンスターが加速して突っ込んできたからた。
魚魚と言っていたが来たのは50mはあろうかと言うラブカチックな何か。多分ムカデに食われたかムカデを食ったかして進化したのだろう。随伴する様に蝶の様なモンスターもいるし、その蝶も腹にデカい口っぽい何かがあったりとダーウィン先生が見たら進化論を小一時間キレながら話すんじゃないかな?
「と考えてもコイツも違う。」
盾を出した所で丸呑みされるので回避はするが、何枚かタワーシールドも出して身体から放たれるビームに当たらない様にする。ただ出力の問題かはたまた盾師じゃないからか何枚か砕けた。替えはいくらでもあるからいいのだが、灰色と言うか中位の武器じゃないと厳しいか?まぁ、ビーム減衰やらも仕込んでいないし仕方ないか。
かと言って俺が持っててもどの武器も透明にはならないんだよな・・・。う〜ん、逆に考えればこのキセルは簡単には砕けないと言う事だろう。周りを飛ぶ随伴機をさっさと叩き壊しつつ、煙を持って行ったバイトの方を視れば多勢に無勢でありつつモンスターは倒せている。
「ん?見つかったか。バイト、クリスタルを手近なものでいいから集めろ。次へ行く!」
60階層を超え待ち伏せがなかった61階層でもドライアドが使えるかと思ったが、どうやら上と下の木は繋がっていないらしく。新たにドライアドとクリスタル回収用に適当に光るものが好きだからとカラス出る杖を作る。上層ならいいわけではないが、猶予を考えるとこの辺りのクリスタルは出来る限り回収したい。
サイラスじゃないが設置型魔術はソロには必要だな。中位なら仮に上層で苦労してもクリスタルが回収出来ない事は少ない。薄暗いが荒野で見つけやすいし、何よりモンスターが多くとも中層程の密度はない。しかし、中層はそこそこ落ち葉もあるし根もあるしでかなり見づらい。
「音声記録開始、現在61階層。モンスターの量と視認性の悪さは戦闘映像を見れば分かる。喋るモンスターと個人目標の空間を割く様なモンスターも今はいない。武器は盾を出したが砕かれた。まぁ、私は盾師ではないので職が乗らないのだろう。貫通はせずに相殺したが、過信はしない事を推奨する。記録終了。っと。しかし出てこんな。お前もっと下にいたのか?」
(分からぬ。駆けて興味ある明るい方へ向かっただけだから、そこまで覚えていない。)
クロエと共にそこそこ明るい場を進む。吾輩が薄っすらと覚えるモノはおらず、かと言って過去に吾輩が撤退を選んだ様なモノとも出会っていない。そもそも仕切りは勝手に現れたのだ。吾輩がどこにいたのかも、クロエの言う階層とやらも中にいた吾輩からは分からぬ。
犬とパートナー、タブレットとか言う物を貰い犬は見た。その犬が犬人へとなり吾輩を悩ませたが、少なくとも吾輩は犬の形をしているのでただの犬の様に振る舞えばいいだろう。ただパートナーは難しい。配偶者、仲間、何かする相手がパートナーらしいが、吾輩とクロエはゴミを狩るにしてもそこまで協力して仲間として動いているのか?
例えば吾輩の住処は家とか言う箱の外にある。餌として出される物も食わなくていいので小さな何かが持って行き、空になればまた足される。一応、少しは食えと言われるので食うが、煙を貰った方がはるかにマシである。
配偶者なる者は既にクロエにはいる。それを害する気はないが、仮にすれば首どころではなく存在そのモノを消されかねないので、そこそこ触手を振りながら出迎えたりするにとどめる。アレの不興を買うのも恐い。
例外とするなら青山か?アレは散歩に毎朝連れて行くと言って現れるが無視しても怒りもしない。まぁ、射殺さんばかりの目で吾輩をみてくるが手は出して来ない。仮に手を出して来れば番犬のなる者の様に噛めばいい。受け身で焦れったいが吾輩の裁量で敵対していない者を殺すわけにもいかない。
自由なにゃん太様は猫人になりスィーパーとなり、那由多は毎朝行っていた場所がクロエのいる場所となり、新たに千尋なる者が毎日来る様になった。かなり無理難題を押し付けられ助けたソフィアなる者も家に来たが、吾輩も恐れずに家へ入ればいいのか?
パートナーとしての役割、簡単に首は刎ねないと言われたがこうして共にゴミを壊せばそれでいいのだろうか?得た意味は疑わぬが、なら揺るぎなきモノにするにはどうするのがいいのだろうか?パシリのままでいいとも思えぬが・・・。
「犬だから臭いでってわけにもいかないしなぁ。モンスターって臭いとかないし、更に言えば人の汗臭さとかもゲート内だと抱き着きでもしないと臭わないし。やっぱり釣って狩って出てくるのを待つしかないか。流石に生産中止だとしても食われたならその食ったモンスターは残るだろうし、スタンピードで全部外に出たとも考えづらい。まぁ、現れるのを待つしかないか。行くぞ!」
そう声をかけたクロエが武器から煙を出した薄く広めていく。『これくらいでいいか。』その言葉が出た後に辺りが白に包まれる。アルミやらマグネシウムやらと言うが吾輩からすればこの煙は無垢なるモノである。クロエのイメージを投影しそれが完了すれば有も無も生み落とす法外のモノ。賢者曰く何も要らないけど見えたら扱いやすい。ただそれだけの為にこうして煙となっているらしい。
この煙はこの中のガラクタとはかけ離れた価値あるモノだ。故に吾輩が貰えば化け物に改造されたとは言え古き姿が産まれる。しかし、探し物を見つけるのはパートナーらしい事なのか?仲間とか言う物は助け合う為にあるらしいから、吾輩が動いて見つければ多分パートナーらしい行いなのだろう。
(賢者よ、クロエの探しているゴミはあるのか?)
(さぁ?探さなければ見つからないし、見つからないと思って探しても見つからない。けど、ないものは最初から見付けられない。)
(ならないのか?)
(いや?他でもない君がある事の証左だよ。まぁ、ある事は証明されても何処にかは分からないけどね。)
少なくとも賢者が話した事を噛み砕けば探せばあるのだろう。前に行った時は63階層と言っていたが、ここはまだ少ない。なら、まだ奥なのか?見落としがないとも言えないが・・・。
(・・・、クロエに提案する。別れて探す事は?)
「別々にか・・・、この辺りで遅れを取る事は?」
(分からぬ。)
「いい答えだ。喋る奴がいたら呼べ、それならいいぞ。」
(御意。)
「そうと決まれば・・・。」
自分の記憶を視聴しよう。映画館の椅子に座り流れるのは秋葉原での記憶。魔法も弾かれ散らされ頭も身体も削られたバイトの姿。犬っぽいコイツは確かに強かった。ゲームで言えば、四天王とか裏ボスとか?しかし、ゲートのアナウンス的には中層のモンスターである。確かに米国のラストよりは多分弱い。だが、あの時あの場所で作り替えが失敗したなら、再戦したとして俺はバイトに勝てただろうか?
ダメージらしいダメージは与えられず、下位は束になって殺されその顎は何度でも俺を貫き削り取る。ifの話は好きじゃない。今ある事実は俺が勝ってゴミはバイトとなり犬とパートナーと言う意味を与えた事。しかし、賢者が言う様に無数の視点で物事を視て成立させよう。
「それはあり得た別の場所の話。
その牙は鋭く他者を消し、その躯体は傷付こうと駆動する
勝敗は逆転し、されど得たモノは消えず意味は残る
知あるモノよ、その身に刻まれた名を呼ぶ時まで
今一時の暇を出そう。」
再現率120%。本物を超えるならそれは妄想でありつ空想であり法を破った異端である。ソーツが感知したら殴り込みに来そうな事だが、これは既に俺のパートナーであり文句を言うにしても遅すぎる。そもそも安全装置であるガーディアンはスタンピード発生時に助けに来ないし、モンスター持ち出したら大穴開けるしで、職があろうと人類はかなり不利な所からスタートしてんだよ。
文句言うなら溢れたモンスターを最初から回収してから文句言え。まぁ、その溢れた失敗作でさえ自身の意味だから回収も破壊もしないんだろうけどさ。なにせ直視してしまえば自分の不甲斐ない失敗作を再び見る事になるんだし。
メカニカルな部分はなく秋葉原で出会った躯体をベースにしたバイトは、どこまでも動物的で単純に大型犬に見える。何をもって強いとするのか?色々な意見もあるだろうが要はシャア理論で当たらず一方的に一撃必殺を当てられる。これがやはり強いだろう。バイトはモンスターを削り取れる空間攻撃が出来る。なら最速で爪なんか振るわずに飛びかかればいい。
と、言うかあの口って攻防一体兵器でかなりチート臭いんだよな・・・。開いて閉じると言う動作は必要なものの範囲も広ければ瓦礫なんかもまとめて消しされる。なら、感知範囲の増大と良く動き被弾率の少ない小型な躯体、それに特化させた悪く言えば一本槍でそれ以外を削ぐ様な形が多分いい。
「よし、いけ!」
「tjtvjtwmjvjt」
飛び出していったバイトと別行動をし、ドライアドにゲートを探させながらモンスターを倒しつつカラスにクリスタルを回収させる。途中、喋るモンスターも出てきたが魔女が殺らせろと言うので代わり倒して63階層までに歩みを進める。次から未到達階層となるが、ガーディアン停止の時に見たカブトムシっぽいモノはヤバい。と言うか・・・。
「コイツかよ・・・。」
遠隔的に削り取れはしない。しかし、あの光ってる角に触れれば木もモンスターも削られている。多分、米国で殴って削り取って来た奴の様に角に纏わせて一切合切無効化する盾兼槍にでもしてるんだろう。
「音声記録。個人目標、空間攻撃と名付けた攻撃をする様な個体を発見した。アレが大元かは分からない。しかし、前回来た時も似たような個体は多数いた。後続の為に出来る限り処理する。以上、音声記録終了。」




