664話 60階層からスタート
潜る準備はした。大前提を言うなら指輪があるから物の破損やら劣化は特に気にならない。それが一点、二点目を上げるなら回復薬もいらない。新人含め回復薬の使い方講座なるものをベテランが新人に教えているが、要点を上げるなら自分の動く方に出すだ。有り難いことに飲んでも被っても結果を出す薬は被りさえすればいい。
まぁ、切断やらされたら繋ぐ必要があるからその部位は持っておくに越したことはない。パーティーに治癒師がいるならその点は節約出来るし、連戦を考えるなら体力回復に回す事もある。潜る時間にもよるが一度の仕事で1人回復薬の30本は最低持った方がいい。特に上限があるわけでもないが飲んで回復薬して戦って、怪我を直してまた戦ってとしていれば時間なんて確認する暇はなく半分使ったらお開きぐらいがちょうどいいらしい。
まぁ、それも階層次第では目安にならず俺にとっても目安にはならない。なにせ疲れと言うものもなく死ぬ事もないのだ。目的があるなら達成したら終了で、不測の事態が発生したと思えば立て直しを考える。詰まる所ソーツの言う効率と言う物を考えるならば、確かにゲートに居座り続けて戦い続けるのがいいのだろう。
「潜るのはいいですけど本当にバイトちゃんと2人でいいんですか?もっとこう・・・、誰かを連れて行くとか。」
「色々考えたけど森林地帯って言う地形は面倒だし、空を飛ぶか地上を走るかでも変わってくるからね。別に誰かが弱いとか言うわけでもないけど、効率を考えると私とバイトが行くのがいい。」
ゲートを進む上で効率を考えるなら次へ進むゲートを最短で発見しつつ立ち止まらない事だろう。更に言うなら中位含め怪我せず死なない事も付け加える。徒党を組むならある程度の役割分担もあるし、それが駄目になれば補う必要もある。まぁ、ワンマンアーミー目指す奴もいるし、潜る理由も目的もそれぞれなのでギルドとしては新人ならパーティーやら補助者を雇う事を推奨するが、それを聞き入れるかは本人達次第で1〜5階層マラソンで実戦経験を積むソロのニュービーもいる。
あまり大きい声では言えないが、秋葉原やら米国で単騎をやった俺に憧れている奴は多いらしい。なら憧れ先からパーティー推奨と言われたら大人しくパーティーを組んで欲しいものなんだがな・・・。確かに補助者は金は掛かるがその分色々と教えてくれるから、今後を考えるとお得だと思うんだが・・・。
「それは分かるんですけど必ず帰ってきてくださいよ?私も莉菜さんも待ってますからね!それとバイトちゃんも無茶しないでね。」
「あぁ、少なくとも60階層から始めて次のセーフスペースと考えられる65か66階層階層辺りで一旦連絡をする予定だよ。逆を言えばそれまで連絡が取れるかは分からないけど、死なない事は約束しよう。じゃぁ、行ってくる。」
着込むのはゴスロリだが防御力的にはこれが最高峰。まぁ、遥に種子島で改造やら刻印やらされたので布でありつつ防御力は多分おかしな事になっている。そもそもが魔法糸だしねぇ。ただ鍛えられたインナーは頑丈だが反動吸収とかの刻印がなければ衣類なので、ダイレクトアタックされて骨が折れるなんて事はある。貫通しないだけマシだと思えよ?
穴が空くのと内臓治すのは内臓治す方が早いんだからな。まぁ、治った所で吐き気やらは当然ある。しかし、その部分の骨がないから動かせないと言う事はない。折れたらどうかって?折られる様なら階層違いと思って撤退する事をお勧めする。足なら特にそうだ。
「相変わらず熱烈な歓迎だな!バイト!」
(はっ!)
ゲートに潜り出たのは森の中。ただ運の悪い事に数体のモンスターがいる中に出て、若干の運の良さと言えば目の前の人型は多分背を向けていたくらいか?まぁ、そのモンスターがバックアタックくらいで倒せる様な楽な作りなら、人はもっと楽にモンスターを狩っていると思う。地べたに這いつくばりながら足を刈り取る様にキセルを振るい、すっ転ぶ瞬間にはバイトが身体を噛み砕き反応して放たれる弾丸もビームも両腕で身体を持ち上げて飛んでかわす。
噛み砕いたバイトは次の獲物に飛びかかり、残りのモンスターを2体串刺しにするも1体は反応して直撃を避けたかビームをムチの様にしならせて来るが、しなると言う事は直撃までに時間が生まれると言う事。なら、その腕を切り落としてしまえばいい。
「地の刃は鋭く隆起し何処からでも獲物を飲み込む。」
木だと思うモノは中々頑固だ。その巨大さゆえのイメージのしづらさがイマイチ動きは遅いがそれでも細い根は動く。しなったビームを放つ腕は根により切り飛ばされビームは止みつつ不格好なモンスターを更にバラし、背後から攻撃ってミサイルかよ!
発射を抑えられたのは10発中9発、動作不良を起こして止めたが放たれた1発は周囲に音を響かせ爆発する。流石に留まるわけにはいかないか。寧ろ、飛んだ後は動き続けバイトもモンスターに飛びかかり煙を削られながらも攻撃している。
「バイト、いるかここに?お前の噛みつきの様に空間毎削る奴はいるか?」
(多分いない。吾輩が取り込んだモノと似たモノは見えない。)
「分かった、ゲートを探しながら進む。さぁ、扇動しようか。」
バイトの背に乗りモンスターを扇動する。先を調べるのも最もだが、それと同じ様に空間攻撃して来る大元を探す。モンスターの中でこれが今の所一番嫌らしい攻撃で何を取り込んでそれが成立しているかの見当もつかない。色々と考察はした。
例えば分解ロッドの様に分子崩壊させているのではないか?とか、概念的に無を押し付けてきているのではないかとか、特定部分の転送と言うかマイクロゲートとか言う物を発生させて削っているのではないかとか?
ありそうな所で言えばマイクロゲート=マイクロブラックホールで、発生地点のモノを吸い込みつつゲートを閉じればその部分は確かに消失する。しかし、そんなにポンポンブラックホールを作れるのか?
解答としては小型なら作れる、だ。クリスタルは圧力で熱を生み回転させると電気を生む。つまりエネルギーはそこにあり、モンスターもそんなクリスタルをエネルギーとして多分動いている。そして、飛行ユニットの核である光ディスクもモンスターの素材。引力にエネルギーにビームを収束させたりする機構にと組み合わせていけば出来る。
実際聞きたくないがブラックホール・エンジンにも飛行ユニットって制御システム系で必要不可欠らしいし・・・。だが、その前にそれを使う前提としたモンスターが多分いると思うんだよなぁ〜。だからこうしてバイトも連れてきたわけだし。ただそのバイトも食ったモンスターを覚えてないから虱潰しに探さざるおえない。
木の上を飛ぶ様に走るバイトと下で扇動されてモンスターを襲うモンスターを視界を変えて視つつ。走るがどうもそれっぽいのはいない。寧ろムカデが出だして下は砂地獄状態とでも言えばいいのか・・・。
「下には降りるなよ?面倒だ。」
(はっ!しかしあのムカデ達も進化する。いいのか?)
「数が減ってから叩く。」
とは言うもののあのムカデって分裂もするし下手に取り込まれると空も飛ぶ。厄介極まりない相手で・・・。なんか小型のムカデが出てきた?大型のモンスターに目が行きがちだが小型のモンスターも確かにいるし、その小型のムカデは何やら霧っぽい、モノを・・・。
「再度扇動!征こう!征こう!倒しに征こう・・・!」
上で見た霧型のモンスターは厄介だった。そして、ここで小型のムカデから出てくる霧も多分取り込まれた霧型のモンスターで纏わりつ付かれたモンスターは侵食されたかの様にその部分がボロりと落ちる見上げた空にも魚が集まってきてるし、数の暴力は未だ顕在か。しかも、ここで争いがないわけではないにしても興味を引く対象は少なく、最もホットな対象は俺とバイトだろう。




