661話 食堂にて
「そう言えば青山はどこに行ったんですか?スキップしながら出て行きましたけど。」
「ちょっとしたお願いを果たしにかな。時間制限はないし気長にやると思うよ。それとは別に私も祭壇捜索しないといけないんだけどね。」
ガーディアン捜索で63階層までは行ったが、それから宇宙行ったりして全然進めてない。他国の動向としても最高到達階層を公表しないのでどこまで行ってるかは分からないが、下位でも40階層辺りまでは進んでるんじゃないかな?
それがチームなのか個人なのかは分からないが、個人なら中位である可能性もある。しかし、中位誕生は国力と言うか軍事力増強とも言えるので発表はどの国も避けている。一応国連への報告義務とかもあるが、真面目に報告する国がどれくらいあるか・・・。
流石にスタンピードが発生すれば発生国は明かすしかないのだろうが、隣国との仲が悪ければどちらの国も何人かは隠している事も予想出来る。実際中国は中位であるリーをスパイにして日本に送り込んでたし、運用方法やら方針はかなり多岐に渡るだろう。なにせ英国は中位がいてもサイラス以外は問題児として最低限の協力体制にとどめているし、魅力を感じなければ国へは協力しないと言う選択肢もある。
まぁ、その辺りは本人と国或いはその国のギルドの問題かな?世界化すると言いつつまだ建設途中の所が多く、早く稼働させたい所はゲート近くの間借りしたビルなんかに機能を詰め込んでいる様だ。
「他の本部長達も潜って探してるんですけどね。広さと言い強さと言い60階層以降は厄介ですね。大きいのも小さいのも早いのも潜るのも・・・。」
「まぁ、ぼちぼち行けばいいよ。取り敢えず宇宙に行って来ない事は確定したし、年1回の交渉権の使用と考えてもまだ時間はある。それに見つからなくても特定の個人を責めるわけにもいかないだろうしね。」
今年見つからなければ陰口を叩く奴は出るだろう。しかし、面と向かって批判出来るかと言えば答えはNO。スタートからして端も見いないゲート内をくまなく捜査するのはマンパワーがいるし、階層の指摘もないからどこまで進めばいいかもわからない。そんな中で表立って批判する事が出来る人間と言えば、誰よりも先に進んでいる人間か、
或いは言った時点で目標達成していると考えている頭お花畑な奴くらいかな。
「今年の交渉はどうなるか分かりませんね。まぁ、それはさておき昼食食べて仕事をしましょうか。」
青山やら高槻と話し込んだから時刻はどうに12時を周り14時近くになっている。食べなくてもいい身体だが食える時には食っとく方がいい。そうじゃなければ面倒になって色々と省いて行ってしまいそうだしね。
望田と食堂に行くと時間のせいか人はまばらでそこまで注目は集めない。ただ、ウェイトレスとして働く獣人が賄いを食べていたり、職に就いた獣人がパートナーといたりするくらいかな?
「お久しぶりですマスター。」
「お久しぶりですです内田さん。新人入れましたけどどうです?」
「うちは自衛隊や警察からですからね。そこまで代わり映えしませんけど来る客はリフレッシュした感じはありますね。お金払って契約した奴やら親と潜ってる奴やら。こう言ったら悪いかもしれませんけど、男の親の背中を間近で見せる場面は少ないじゃないですか。一緒に潜って温泉入って家族としての距離が少し縮まった所もあるみたいですよ。」
「確かに補助者や知り合いスィーパーと潜るよりも、親が最初の5階層を安全に潜れるならそちらにお願いする場面もあるか。」
「それだけじゃないですけどね。企業としての指輪取りでまだスィーパーに依頼出して集団で来る人達もいますね。特に4月中は多かったなぁ〜。選択の自由はありますけど職と指輪の有能性考えると在学中に職取りとかスィーパー専門学校とかやりだしそうですね。16歳って言うとちょうど高校入学時期になりますし。」
「それは既に孤児院とかで動いてるよ。大規模だってわけじゃなくてまだ試験段階だけどね。でも流石に専門学校化は厳しいと思う。」
ファンタジーじゃないしスィーパー専門学校って何を教えるのかと聞かれると結構迷う。孤児院を利用した政策はあくまで政府側のスィーパーと言うか、職員としてや警察自衛隊採用者確保を狙ってやっている。なので純粋にスィーパーになる為の教育をしているわけでもないし、そもそも教育するとすればそのまま学校教育でいいのでは?となってしまう。
ただ専門学校化したとしても命の危険がある関係上、かなり難航するんじゃないかな?現状で言うなら自己責任で且つ、親御同意したから未成年は入れている事を考えると学校側に親の責任を渡してしまうとまたゴタゴタするだろうし、最悪死亡保障なしとかになるんじゃ・・・。
そもそもゲート内って治外法権の自己責任空間なのでその学校、或いは教師が信用出来るのかと言う所から始まる。少なくともファンタジー小説風な冒険者学校的なモノをイメージした所で中身は全然違うだろうな。唯一似た所があるとすれば戦闘訓練とか?それでも相手は人よりも大きかったり、そもそも人型ですらなかったりとバラエティー豊かである。
ならフィジカルではなくメンタルかと言われるとガリ勉では体力が厳しいので、総合学習しつつ毎日身体を動かすと言う結果として普通の学校で落ち着いて行くかな。まぁ、学校カリキュラムもかなり改変されていっているし、後数年すれば本当に聞いたことない科目が優秀でしたとかアピールされそう。
「そうは言いつつ英国では魔術学校が出来て人気らしいですけどね。色々な国が視察に来てるってテレビでやってました。」
「魔法立国と打ち出しましたからね。いいんじゃないですか?サイラス長官も悪い人じゃないみたいですし。」
そうは言いつつメアリーに足に使われたり、魔術研究とかイメージ構築したいのに授業に時間を取られたりして暇が無いと嘆きのメールが飛んできていた。まぁ、それでも杖を発展させて俺も昔構想して結局作らなかったと話たマジックキーの作成に乗り出したとか。
「サイラスさんはジェットマンでファンが多いみたいですよ。ついでに言うと女王陛下と仲いいから熱愛報道とかも・・・。」
「不敬罪で潰されそうなゴシップをよくやる。まぁ、それ抜きにしてもサイラスさんは言い方は悪いけど便利だからなぁ。」
何気に護衛も送迎もこなせる便利人なんだよな。テレポートと言うものを考えた時に最大の利便性は遠くに一瞬で行けるとかではなく完全回避が可能な事である。そして、テレポートとして出現時間をいじれるなら完全回避時間は継続される。つまり、壁の中にいるけど死なないならある意味無敵である。寧ろそれってどうやって崩そう?逃げの一手を打たれるとかなり対処に困るな。
そんな話を食堂でしてからマスタールームに帰り仕事を再開。さて、さっさと進めて潜る時間を捻出出来るようにするかな。




