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街中ダンジョン  作者: フィノ


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660話 未来に目を向けると?

 青山は取り敢えずこれで大人しくなるはず!そんな出ていった青山と入れ替わりに望田と珍しく高槻本人がやって来た。わざわざ秘匿回線でもなく対面で話に来ると言う事はまた厄介事か?しかし、高槻関連で厄介事の話ってなに?大株主はやっているが俺が戦闘員とするなら高槻はサポーターである。


 確かに高槻製薬と言うかラボ関連なら話題に事欠かないが、医者としての良識もあるしこれと言った問題行動も今までしていない。と、言うか俺の周りの親しい人間は青山を除き基本的に良識のある大人である。


 そりゃぁ中露なんて言う考えの合わない国もあるが、それでも話を聞けば納得出来る部分もある。そもそも人の考えが統一されていたら新しいモノは生まれないし、どちらかと言えば人ではなく昆虫的な無機質な何かなんじゃないかな?


「お久しぶりですなクロエさん。社長があわられた!」


「コマンドを選択出来るなら逃げるですかね?お久しぶりです高槻先生、遠路遥々どうしました?」


「回復薬のデリバリーと、言いつつ相談事ですな。」


「かなりの本数貰って受領書も渡してますよ。」


「ふむ・・・、話を聞くのはいいですけどカオリが同席しても?」


「かまいません。寧ろ、本部長会議をするならそこで議題に出して頂きたい案件です。」


 机を指輪から出してコーヒーを入れて一服。全体的な本部長会議はあまりないが情報共有と言う面では割と本部長達は対面で話したりR・U・Rで話したり、本当にヤバそうな案件は秘匿通話で話したりと結構話し合う。まぁ、そうせずに独断専行すると周りもわり食うし、基本は政府と話してから全体的な法律やら行動指針と言うものは流れてくる。


 ローカルルールは仕方ないと言えば仕方ないかな?住む所が違えば方言なんかで話したり受け取り方も違うし、今はなくなったが名古屋走りとかもあったか。因みに大分ギルドで悪さをして友人なんかに見られた、東京湾ならぬアイツを別府湾に沈めておいてくださいと言うフレーズが出る。


「議題に出すのはいいとして、どんな内容です?」


「獣人関連ですな。望田さんには外で少し話しましたけと、獣人との結婚や出産と言う話が多く飛び交い政府も頭を痛めているらしく、ラボの方に何かしらの策はないかと話が来ました。フェリエットさんの件を含めてラボやギルドには獣人のデータが多数あり、そのデータを元にどう言う方針で研究しようか悩んでまして。」


「どうするも何もDNA的に1.1%の違いで混血は出来ないって話でしたよね?それを公表した上で何を望まれて頭を痛ませてるんですか?無理なモノは無理と言えば・・・、研究?」


「高槻先生と言うか、ラボ的には双方のDNAデータとか卵子と精子があって研究を進めれば子供を作れるって話みたいですよ。」


「あ〜、うん。なんとなく話は見えてきた。」


 獣人をパートナーとする。発生当初から隣人として受け入れて来たし容姿や性格的な面も含めて増えた獣人はどの国でも受け入れられている。そして、そのパートナーとしての関係性も同居人やら家事手伝いを任せる相手やら子守り要員やら、踏み込んで結婚相手として受け入れた人もいる。それこそ男女共に。


 そこで発生する問題は明確で一般的人視点で言えば結婚したから単純に子供欲しいと言う話なのだろうが、政府側の考えとしてはもっと深刻になる。単純に人間の出生率が下がるのだ。獣人の性格としては性的な事にあまり忌避感と言うか隠すものと言う雰囲気はないのだが、結婚と言う制度を理解して人間側がダメと言えば本人も断る。しかし、その相手がDVやらご飯くれないとなると言いつけは意味をなさずに外に出ていくし、そうなれば自分で食べ物を得る為にそう言うお店で働く獣人もいる。


 元々オス猫オス犬共に子育てには参加しないし、やる事と言えば縄張り守ったりするのがメインで発情期なんてモノがある関係上、出来る時にどんどんする、良さそうな相手がいれば誘って誘われてする、終われば子孫を残す為に他の相手ともどんどんすると言う、いわば特定のパートナーとだけしないといけないと言う考えがない。


 獣人化して発情期なるものはなくなったらしく、特定の期間じゃないと獣人同士でも子供が出来ないと言う制約はなくなったと年間を通じて観察していた政府機関から報告は受けたが、裏を返せば奔放な獣人は毎年子供を産むかもしれないし、逆に人間側は経済的とか時間の制約やら家同士の付き合いが面倒とかで1人出来れば満足、或いは話し合って作らないと言う選択もある。


 既に日本としては少子高齢化を体験してるし、ガーディアン騒動やらスタンピードやらで結婚や子供を作る事に前向きにはなって来ているのだが、その中で獣人と結婚する人の割合が増えればご破算どころか人と獣人の数が逆転してしまう。


 個体成長薬はほとんど出土しなくなったから、今ある薬を飲ませて後は自然繁殖の流れなんだろうが、既に獣人同士の子供は生まれて来ているし、増やすなと言う反対派もほとんどいないと言うか、隣人として認められて生きる権利もあるのでそんな話を獣人に持っていけない。


 つまり、人が頑張って数を増やすか疑似混血も含めて人として認めるか、それとも諦めて自然に身を任せ少数の人間と多数の獣人の中で生きるかの選択を迫られている。まぁ、うん。去年獣人ベイビー生まれたから少なくとも18年後にはどの選択をしたのか、或いは選択せずに緩やかに日本人が減っているか分かるな。


「理解が早くて助かりますが、どうされるのがいいと思いますか?」


「少なくとも人も獣人も子供が欲しいと言う点では同じでいいんですよね?」


「確か・・・、あったあった。クロエが宇宙にいる間に政府がスィーパーと獣人向けにアンケートを実施したんですよ。ギルドや政府のHP、或いは出口調査なんかもしてましたね。それの結果としては特定のパートナー(獣人含む)の回答でいると言う人が男女共に80%は超えたんですが、その先で相手が人間か獣人か細分化していくと人間同士は減りますし、異性か否かでも減って行きますね。」


「その紙ちょっと見せて。」 


 望田の持つ用紙を見せてもらったが、結構細かくアンケートが取られてるな。年代別なのはいいとして、職種はスィーパー、公務員、一般的で分けられているが年収の項目はない。多分ゲートに入る関係上、特定の年収を出しづらいからだろう。確かにパートナーのいる人の割合は高いし、気になる異性がいる人の割合も高い。人と獣人どちらが特定のパートナーかの質問では人間同士の方がまだ多く結婚を考えている人の割合もそこまで悪くない。


 ならそこで出てくるのが異性のパートナーとした場合の割合・・・。うん、同性婚認めたからそりゃあいるんだろうけど8%くらいいる。ついでに言うと同性獣人と結婚したいと考える人も少ないがいる。そして子供が欲しいのかの項目では獣人がパートナーと回答した人の方が欲しがる傾向が強く人間同士だと一歩及ばない感じだな。


 総合的分析するなら子供が欲しい人の割合は多いがパートナーにより子供が出来ないと言う、なんとも頭の痛い結果が見えて来る。政府としても今までなら子育て支援とか婚活とかを推奨してればよかったのだろうが、出された結果にコミットするには医学的方法が必要不可欠なわけで・・・。


「考えと一致してました?」


「概ね一致してるけど同性婚OKしたら浮き彫りになったと言うか、昔の日本みたいに男娼やら陰間が増えそうと言うか・・・。」


「その辺りの産業は獣人が増えて人が減った感じですな。統合基地付近でもそう言った店は多い。やはり顔がいいと言うのはそれだけ選ばれやすいですからな。その上性格としても結婚を迫るよりもご飯くれですし。」


「犬猫的には男親いらないですからね。その辺りも獣人としては?」


「人の社会に入りましたが育児に関してはあまり他者を必要と考えませんな。良く言えば男は仕事で女は家事育児と言う昔の日本形式が成り立ちやすい。それがスィーパーにはマッチしたとも言えます。」


「確かに行ってきますに行ってらっしゃいを返してもらえると嬉しいですからね。」


「ん?カオリも結婚考えてる?」


「一般的な話ですよ。それで高槻先生的には混血を作るか作らないかを研究するのを迷ってるんですよね?」


「かなり難しい話ですからな。完全に混血化するとヘテロクロミアはもちろんの事、片耳だけ獣人の特色が濃く出てくるや毛のない尾が生える等の事態も考えられる。そして、そう言った外観的な異常は両者から弾かれる可能性が高い。そうでなくとも獣と言う本能的な部分を考えれば死ぬはずの子を面倒見続けると言うのは人よりも過度のストレスを受けると考えられる。」


 確かに野生なら障害があれば淘汰されるし、それが外見的に濃く出れば群れとしても異物として扱う。例えばイワシの群れにアルビノが一匹いればそのイワシは爪弾きは確定だろう。なにせ他と違うと言う事はそれだけ目立ち、群れからすればそいつのせいで全員食われかねないのだから。獣人は理性を得ても根底には自然の掟がある。回復薬等のおかげで障害児も生まれない中でそれが生まれればかなりの波紋が出るし、育児放棄も考えられる。


「先ずは研究方針と言うものを政府とは?」


「学術的な部分は話せるだけの知識人がいないからとラボの方針を見てから決めたいそうですな。確かに話は分かりますが、重大な決断なのでこればかりは私の一存で決めるのも考えものでして、日本や海外にいる多数の人間学者や獣人研究者、医師会に獣人医師会等とも議論をしました。その中で出た方針は概ね3つ。


 1つはゲノム解析を進め卵子及び精子を弄り獣人側の特徴が現れる部分を削除しつつ、人としての性質を強めると言うもの。当然人をパートナーとした場合、この方法なら獣人の子は生まれません。


 2つ目はクローンニングハイブリッド。片親の・・・、人側のDNAを元に外観的な形成部分を弄る方法。耳や尻尾が弄る部分には該当してきますが、人側の特色が強ければ強いほど機能不全の確率も高く、また獣人としてもいきなり子供が現れて愛着と言うものがわかない可能性もある。


 最後に3つ目、両者の選択による交配です。当然現段階では薬ないし器具的な物は必要と推測が出来ますが、獣人としての我が子を作るか人間としての我が子を選択してもらいそこからと言う話になります。」


「ん?1と3の違いはなんです?1の話でも逆に獣人側の特色を残せば獣人が生まれるのでは?」


  挿絵(By みてみん)


「私達には人間のDNAデータは多数あっても獣人のデータは少ないのです。そもそも女性獣人の子宮にその卵子が着床出来るのかも不明です。クロエさんは犬人の生理は見たり聞いた事ありますかな?」


「いや・・・、ウチのフェリエットは猫人でそもそも生理のない動物でしたし。犬は確かあるんですよね?カオリは犬人の件で聞いた?」


 獣人関連で調べたが犬の生理はヒートと呼ばれて定期的に起こるし出血もあるし、人と同じ様に食欲不振になったりするらしい。しかし、考えてみれば犬人からそんな話は聞かないな。逆に猫人は大元が交尾排卵動物なのでしないと卵子が出ない。しかし、フェリエットは生理がないのはいいとして、犬人の方は俺が聞いてないだけかも。


「いや、そんな報告は無いですね。」


「当然ですな。獣人は選択排卵動物ですから。寧ろその報告があったら私も頭を抱えていた所ですな。」


「選択排卵動物・・・?そんな動物いましたっけ?交尾排卵動物なら猫とかウサギでいますけど。」


「獣人研究者からの報告で成人している犬猫からの犬猫人個体に対しての検査と、成人していない犬猫から犬猫人になった個体に対して検査を行った結果ですが、個体成長薬で人型になった個体は本人が子を作ると言う意思で排卵するらしいんです。そして、採取した獣人の卵子及び精子は人の物と違いips細胞の塊の様なモノと考えて下さい。」


「ips細胞って確かなんでも出来る細胞でしたよね?」


「再生医療とかで期待されてたやつだね。確か卵子の元の細胞までは作ったとか記事で読んだ記憶がある。」


「なんでまたそんな記事を?」


「それはほら、スタップ細胞はありまーすが記憶に残ったからとか?論文は撤回されちゃったけどね。しかし、ips細胞の塊って事は人のDNAを自然に受け入れる可能性が?」


「不明ですな。人と交配妊娠の話は上がってきてませんから。免疫の問題なのかそれともDNAの違いなのか、或いは単純に人との交配を獣人側が拒んでいるのか?様々なケースが考えられます。」


 話だけ聞いて現状を考えると3かな?DNAいじったりクローンハイブリッドとかなんか怖い。そのうちスーパーハイブリッド獣人とか生まれる?いや、人間が獣人に勝ててるスペック的な部分でスタミナくらいだしなぁ・・・。


 まぁ、そのスタミナで勝てるからそこ人間は遥か遠くへも行けるし、生活圏を広げてどんな所にでも住んでいる。逆に人間の代わりに獣人が台頭して来たら生活圏は狭いままかもな。畜産なんかはやるかもしれないが、飯持って移動するのって結構手間だし餓死を恐れるなら飢えない範囲の生活圏を維持すればいい。


「話だけ聞くなら3の案ですかね?少なくとも獣人ベイビーが大人になるまでには約18年はある。その中で生まれる技術も出土品もあるとして人だけを増やせばいいと言うものでもないですし、薬が枯渇している関係上、どちらかが衰退すると言う未来もまた好ましくない。本部長会議でも議題として上げときますが先生としては?」


「私としては全てやってみて結果で判断と言う感じですな。未知の分野で何が正解は分かりません。ただ、それでもいい方向に向かう様な選択を出来る様にしていきましょう。では、久々の地元なので昔馴染みの所にでも顔を出しに行きます。」


 そう言って高槻は部屋を出ていったが、人が子供を作る様に獣人も子供を作る。未来でも仲良く過ごしてるといいんだけどなぁ〜。


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― 新着の感想 ―
獣人の成長期間も18年でほぼ人と同じとクロエ達決めつけてるな 設定がそうでもクロエ達は大きくなるまで分からないと思うんだけど 職等で解析したらそこまで分かるのか? 産みたいなら何でも受け入れる卵子?…
選択排卵を司る遺伝子を人間に移植するしかと思ったけど強姦からの望まぬ妊娠が起きる可能性も減るな、この世界は でも遺伝子特定して予防接種くらい楽に注入できる技術は開発しとくべきか
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