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街中ダンジョン  作者: フィノ


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651話 選択肢 挿絵あり

「なるほど。便りのないのは元気な証拠と言いますが、その元気な人から急に『大丈夫』と送られて来たら何事かと思いますもんね。ただ気を引く作戦でもソーツ斎藤さんは?」


「来ませんね。元々祭壇で会いましょうと言う約束があるのでそれ以外は無視でしょう。でも、多分それでいいんですよ。彼等は神様じゃないし私達とはギブ・アンド・テイクの関係でゲート内の報酬は滞りなく払われている。」


 真面目な顔で話しているが『ソーツ斎藤さん』の方が頭に残る。間違った呼び名ではないし丁寧に呼ぶならさん付けなんだろうが売れないピン芸人を連想してしまうな。そう言えばリュウ達も奉公する者の本体から何人か言えとイメージ送られて地球人の何々と返していたし、そのおかげで宇宙ステーション大破は免れたので斎藤語録は馬鹿に出来ないのかも。


「決められたルートで呼びかけですね。ただ祭壇の発見情報はないと思いますが?発見出来なかった場合はやはりその年の交渉は・・・。」


「出来ないでしょうね。こればかりは私もどこにあるか探している身なので名言は出来ませんし、広大なゲートの中なので見落としもあるでしょう。そもそも月と地球を繋いで走り抜けられるゲート内なのでそれだけでも広さの程が伺えるかと。」


 この事実で海外含め政治家は膝から崩れ落ちた人多数と聞いたな。多分先に確保出来るなら確保してしまいゲート内場外乱闘を考えていたのだろうが、広さ的に不可能に近いと悟ったかな?まぁ、俺も崩れ落ちそうになった側の人間である。


 だって探せと言われた場所がそんな出鱈目な広さとは考えないだろ?当初からゲート内に端はあるのか?と言う論争は合ったが地球と月の往来可能が実証されたので捜索範囲はアホほど広がったし、さらなる問題点として月付近からゲートに入っても端は見えなかった。つまり、1つの階層だけで地球と月の距離よりも広い可能性がある。


 まぁ、それは指輪を使っていて薄々は考えていたが実際に証明されてしまうとね・・・。底の見えない指輪を作るのにはコストがかかるとか言っていたが、ゲートの場合俺達ではなくソーツが必要な物なのでコスト度外視で作っている可能性も・・・。


「壮大な話ですね〜。ただ今回の事を踏まえて宇宙への関心は大きくなるばかり!シェンゲン協定の話も盛んで国境や国と言うモノの境界線も揺らいでいますね。その点はどう思います?」


「う〜ん・・・。個人の意見と前置きをしますが、人が住めばそこが村であり街であり国なので壊そうと思えば壊せますよ。前なら土地には価値があった。でも、今は住むだけならゲート内でもまだないですがS・Y・Sの様なコロニーでもいいし、天然資源を開発して採取するのかそれともゲートから取ってくるのかの違いしかなく、技術が途絶えない為に技術開発は必要でも実際に発掘するには限りがある。私が宇宙にいる間に国際的な資源開発シンポジウムがあって天然資源は出来る限り貯金に回そうと言う話で落ち着いたと聞いています。」


 ロシアのマイナス要因の1つでもあるが、ゆくゆくは化石燃料の取り引きそのものがなくなるのではないかと言われている。と、言うのもスィーパーが増えればクリスタルの回収量は増えるし、スタンピード対策にもクリスタル回収は有効っぽいのでスィーパーは出来る限り回収するし、回収しないとモンスターが死んでないかもと心配になる。


 なのでクリスタルは毎日大量に持ち出されて来るし、クリスタルリアクターやらも出土するので電力の安定した供給も行われている。更に言えばガソリン車は生産台数が減って電気自動車が増えているし、そこでもクリスタルが使われている。


 日本でも火力やら原子力やらの発電所はリニューアルしてクリスタル発電所と化しているし、世界的に原油を買う国は減っていき更に高純度なレアアースも出土するので取り引きするくらいなら自国で取りに行くと言う話が盛んになっている。まぁ、取り引きそのものはゼロではない。


 ゼロではないが価格は下落し高値は付かない。その点は中東は上手くやった。ギリギリまで原油取り引きを安定化させつつ、技術開発と観光業に力を入れて夢のリゾート地イメージを売り出して稼いでいる。テレビで見たドバイは凄かったな。アラブ首長国連邦を構成するドバイ首長国なのだが、デカい額縁型のオブジェとかが有名かな?


 アレを全部金と宝石で作ったり、スィーパーに対する税金を限りなく低くして国内取り引きを盛んにさせたりと、元からあった資金とギリギリ高値だった時の取引額をぶち込んで相当華やかになっている。まぁ、そのせいで犯罪率もそこそこあるので行くなら気を付けないといけないらしい。


「国が消える日が来ると?」


「消えると言うか何々国から自治属国とにはなるんじゃないですか?地続きで出入りの制限が緩めばそれは隣の県に行く様なモノですし。特に今は人が増える事を嫌う国は少ない。まぁ、その分警察は涙目になるかもしれませんが・・・。」


「警察と言うかギルドですね・・・、他の国でも日本式ギルドを手本とした国は逮捕権やらをギルドに持たせる様な動きもありますし、日本ギルドとの提携の話なんかも。」


「ギルドICPO化ですね・・・。その点は協力を前提としつつ現段階ではなんとも言えません。」


 打診は来てるよ!と、言うのもスィーパーの行う犯罪は巧妙で下手すると犯罪と分かっていても立証出来ない事もある。その事にどこも頭を悩ませていた中でスィーパーを管理する組織を作るなら逮捕協力者かそのまま取り締まって貰おうと言う話で打診されている。実際食い逃げして国境越えとか言う馬鹿な話もあるしな・・・。


 ただ流石にそんなデカい話を俺に振られても困るので、松田達がICPOや米国、英国やらを巻き込んで日夜議論を重ねてるとか。落ち着きそうな話では国際的な事件なら協力と言う話で落ち着きそうらしいが、代わりに指名手配犯の手配書はわんさか来るかもと言っていたし、スィーパーの国際的な法律も必要だと話が大きくなっているとか。現状ではスィーパーの犯罪はやらかした国の法律で裁かれるのだが、確保前に高跳びされると難しいのよね・・・。


「時代の大きな流れに変化する情勢、これから極まる混迷は続きそうですね。では・・・。」


「いえ、インタビューはこれくらいにしましょう。あまり長尺でも見る人がダレてしまう。それに、次の予定もありますからね。」


「分かりました。『東海林の独占インタビュー』今回はこれで終了となります。映像の販売等はHPへアクセスして下さい。では、また不定期に。」


「不定期に〜。」


 インタビューを終えて少し東海林と話部屋の外へ。時間的にも昼前でちょうどいい頃合いだろうし、昼からは宇宙ステーション取り出し作業もある。水球内取り出しとなるが検分出来る人間も限られてるし難航しそうではあるんだよな・・・。中身が人の技術で作られていればいいが、設計図を前提とした開発プランなら国内から情報が漏れた事になる。


 田辺が関わってたらしいが罷免ではなく左遷と言う辺り中身を知らず名前だけだしたか、或いは人の作れる物を発展させようとしたのかは悩みどころだな。設計図は預かったが開封していないので俺としては補助魔術師枠だが、あの設計図を読み解いているとすれば彼しかいないか。なにせ発見者だし。


 そんな事を思いながら食堂に行くとフェリエットがいた。かなりの好待遇なのか新鮮そうな刺し身やらローストビーフやらをモリモリ食べている。最近のグルメリポートでは人と獣人のコンビ売りが多くテロップに『この後獣人の〇〇さんが美味しくいただきました』と言う中訳を見かける。


  挿絵(By みてみん)


 実際獣人はよく食うしな。その代わりまずい時はガチでまずいと言うので店としても気が抜けない。残念な事に自由な獣人は嘘をつかない事もないが、食事にだけは真摯に向き合ってるんだよ。まぁ、舌が肥えてなければなんでも旨いと言うらしいが・・・。


「いいもん食ってるな。報酬か?」


「そうだなぁ〜。連れ回されるけどこれがあるから我慢できるなぁ〜。」


「昼からは頼むぞ?その為のご馳走だからな。」


「分かってるなぁ〜、ご馳走されたからには手は抜かないなぁ〜。指輪の中身を出さない奴は猫パンチだなぁ〜。」


 そう言いながら招き猫の様においでおいでしているが、フェリエット的にはアレが猫パンチなのだろう。フェリエットもスィーパーなので殴られると痛いが、指とかにある肉球はプニプニすると割と和む。


「ここにいましたか。インタビューが終了したと聞き迎えに来たのに部屋にいないのでもしやと思いましたが。」


「なぁ〜ぉ・・・、今はご馳走を優先するなぁ〜ぉ・・・。」


「?」


「フェリエットとしては増田さんはライバルと言うか、いつか打ち勝つ相手枠なので気にしないで下さい。」


「それはそれで私も気が抜けないと言うか・・・。」


「それよりも取り出し準備の方は?」


「斎藤博士も到着したのでほぼ準備は完了です。ただ、遥さんがもう少し糸が欲しいとは言っていましたが、そちらは魔術師:水達が今出している所です。」


「なるほど、なら昼から取り出しは予定通り出来そうですね。その後のリュウ達と宇宙ステーションの取扱は?」


「現時点では宇宙飛行士達については使者と共に一部は帰国させる予定です。宇宙ステーションに付いてはこれから検分するので何時返却されるかも本当に返却するのかも分かりません。」


 これ返さないやつだ。日米としては最強の手札として残しておくつもりだろう。マスコミ的には情報開示請求とか大統領令で開示しろとか、或いは25年後の審査まで待つなんて言う話が出るかもしれないが、それをしても公開の範囲はステーションの強度方面を開示すればいいので気は楽だが、中露としては現物が明るみに出てやろうとした事がバレるのは大変よろしくない。


 そもそも日本としてはブラックホール・エンジン開発の事が知りたいし、米国としては宇宙人を呼び込もうとした証拠が握れればそれだけで中露に対して黙れと言える。一部帰国と言うがリュウとキリロフは居残りだろうな。文字通り生き証人で口実としても指揮官に話を聞くと言われれば断れないだろうし、帰国させて不慮の事故で死なれても困る。


 ついでに言うと俺もそのイメージ送信室に行き、実際に映像を見てイメージを解読したので言い逃れは不可能だろうな。チャンはそれを見越して国内を大人しくさせると言ってきたのだろうがエレーナはなぁ・・・。


 派閥があるのは仕方ないとしてやり方的には強硬派とか?穏健派の勢力が強ければ・・・、まともにモノが見えて判断出来るなら少なくとも今は耐えて息を潜め国内を優先する。と、言うか暴れたら事実暴露で国が飛ぶ。


 事実公開しなかった日米も煽りを貰うかもしれないが、それはまだシステムが不明で宇宙ステーションの機能不全からの流れで、判断出来る者が宇宙にしかおらず事態の終息に尽くした。とでも言えば済む。なにせ世界中にどこの宇宙ステーションが機能不全をおこし救助活動が行われたかは中継されてたし。


 やはりここがターニングポイントか。宇宙でリュウがステーションを出していればまだ隠蔽する手立てはあった。そうでなくともS・Y・Sへの避難時に全力で外宇宙にでも打ち出していれば回収は難しかった。だが、宇宙ステーションは分離もブロックの射出もされずに全て回収されて地球に降りた。


 ・・・、奉公する者か。恐ろしいな!奴はブチ切れていたが狡猾だった。ただ威圧するだけで面倒な国が地球の中でも大人しくなる様にシナリオを組んだのか?魔女の本体は奉公する者にキレてなんか分割したみたいな事を言っていたし、基本は無視して自由にさせていると言っていた。


 それは裏を返すと構うと面白くなくなるから?青山の奉公はウザイが人の範疇と言えば人の範疇である。しかし、奉公する者の奉公先は魔女やその本体で始まる前に終わらせれば魔女の本体も動かず、結果として自身が自由に思う様な奉公が出来る。そもそも俺なんかより頭がいいと言うか比べるのも烏滸がましくなる様な相手が考える奉公がどんなモノになるのやら・・・。


(魔女さんや、これって仕組まれた結果?)


(仕組まれた?馬鹿なの?物事は常に選択の連続で成り立つ。外的要因で意見が変わろうとも選択するのは自身よ?それを仕組まれたなんて言う価値のない者が縋る言葉に置き換えて楽がしたいならどうぞ?流されて流され続けて飲み込まれ、希薄になりて消えてゆく。自己選択の結果を放棄するならゲートから出ずに何も考えずにただ、私が遊ぶ玩具にでもなりなさい?)


 中々ヘビーな事を言ってくれる。確かに見捨てると選択したのは自身で無理やり宇宙ステーションを出させなかったもの自分。なら、その結果は確かに俺が選択したものだ。仕組まれていようがいまいが関係ないな。


(いや。奉公する者の遊びが過激でね、確かに無視するに限る。)


(それは貴女の結論?)


(当然。完全な無視は無理でも下手に付き合うと、いつの間にか寝たきりの病人にでもされかねない。悪いが俺は確かに俺の意思で選択した。それがたまたま今回の結果になっただけの話だ。)


「中露がよくそんな話を飲みしたね。」


「隠しようのない事実がある以上、無駄だと判断したのでしょう。我々とは別に話たクロエの要求は通ったのですか?」


「中国からはいい返事を。ロシアからはただの返事を貰っただけで内容は秘密です。それよりも取り出し場へ行きましょうか。斎藤さん達も待ってるんでしょう?」


「ええ。斎藤博士に藤君、橘監査官にエマ大佐に山口博士と大所帯です。検分の指揮は斎藤博士が鍛冶師と言う事で取り仕切ります。NASAもそれには合意し日本が先に中を検分し米国は外観からの検分となる予定です。」


「なんにせよ燃料パージからですね。ロケット燃料なんて言う爆発物はさっさと無力化するに限る。」


 話し込んで食堂で温かい飯は食いそびれたが、増田の運転する車の中で紐を引っ張ったら温まる弁当を温めて食べる。さてと、これが終われば種子島ともお別れかなぁ〜。


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― 新着の感想 ―
いずれ化石燃料の使い道なんて化学製品の材料くらいになるだろうし それもいずれ職でどうにかしたりするかもしれないが 贅沢な嗜好品には間違いなくなるだろうけど
資源保存か魔術師等の原子変換で水や何かを石油類に変えれなければビニール製品やプラスチック製品等も高騰不可避だな 逆にダンジョンからの資源だけで今までと同じ以上の経済活動なら安定してあの量以上が企業に!…
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