649話 1人戦国時代 挿絵あり
「日本も小さくはないですが島国な分、外交に回せる様な資源カードは少ないですからね。昔なら海底資源とかメタンハイドレートの埋蔵が!とか叫んでましたけど。」
「ええ。日本は資源の少ない国でそれをカードに出来るほど所有していない。有名な資源カードなら水ですが、それはゲートから持ち出される水箱でどこも水不足は解決しカードですらない。砂漠の緑化プロジェクトでさえ軌道に乗って既に苔むしていますよ。」
「そのうち地球水没とか・・・、しないか。水位が上る前に指輪に入れてゲートに捨てればいいし。なるほど、ヤバさが分かりました。発展途上国やら先進国やらの括りが消える中で次に台頭する国は技術力で決まる。そして、その技術力を高めるのに必要だった資源は自前でどこも揃えられる。」
「その通りです。それに付け加え現在ロシアが考える敵対的な国はドイツ、英国、ウクライナ、そして米国となります。地図上では隣国は敵と想定している関係上、身動きも取れず国境に軍を増強配置し人の流出にも気を配る必要がある。その上で日本よりも人口は少ない。」
なんと言うか1人戦国時代してるな・・・。軍を国境に配置すると言うのは分からない話ではない。日本の場合島国なので攻めて来るなら船や航空機と言う発想になるのだが地続きの場合歩兵でいい。そして、隣国を敵と見ているなら人を配置しないわけにはいかないし、更に相手がスィーパーだと想定するなら過剰戦力を置いて威圧したい。寧ろ人口流出やらを危惧して外よりも中を見ているのかも?
いいとは言わないが一般人が亡命するのはまだ容認出来るかもしれないが、それが高官やらヤバい情報持った奴やらだと打撃はMAX。そもそも人体実験されるかもしれない国に居座りたくないし潜在的な話をすればガチガチの脅しのネタを俺は家族として迎えている。アチラとしては協力者名簿に名前を入れて何かの際には関わっていたと言い批判の的をそらす役割も考えていたかもな。
なにせ成功体が多分いない実験でその事実と成功体(?)を知り擁護する人間が現れた。なら、共犯者に仕立て上げて言い逃れ出来ない措置を取ればいい。ロシアが素直に子供の情報渡して来たのってもしかしてコレの布石?あっぶねぇ!エレーナの話に乗って手を組んでいたらそのままヤバい事件に巻き込まれる所だった。
「キャベツ畑から兵士が取れるのは今は昔。一万発の弾丸には二万人の兵士でしたっけ?人を消費してゴリ押しするのはナンセンスですよ。なんにせよ不快なので話は蹴ったし、下手に敵対するなら叩き潰す。ゲートの中での話ですけどね。」
「ロシア側へのスパイは現状いません。アガフオンと言う男を使っていましたが流石に動かし過ぎればバレる。再度スパイの調達でもされますか?」
「なんでそこで物欲しそうに私を見るんですかねぇ?出来たとしてもしたくありません。中国の件はゲート内で且つやる程までに腹立たしかったからであって無闇矢鱈と人に使う気はない。」
「有用ですがやりたくないのなら仕方ありません。両国との会談でやり残しはありませんか?なければ後は帰っていただく事となりますが。」
「ないですね。下手に話して不快感から思考を鈍らせるのも避けたいですし、やる事は山積みで長々と構っている暇もない。」
そんな話をしながらホテルで家族と夕食を取る。長々と話して疲れたが、それは仕事なので家族に話さないし話していい話とも言えない。流石にソフィアにその話をするわけにもいかないしね。
「種子島は人が多いですね。外を歩くだけで色んな人から見られたです・・・。何処かおかしかったですかね?」
「ソフィアは綺麗で有名人だから注目の的なのよね〜。街の方に行っても見られてたし、配信に出たって言うのが大きいのかしら?ゆくゆくはスーパーモデルになったりしてね。」
「私は早く帰りたいなぁ〜。指輪の中身は見たけど混雑してるなぁ〜。アレを全部出すとかなりの量だなぁ〜。」
「でも出させるしかない。指輪の中には空っぽ、それ以外は認められないからな。でもその分報酬はいいんだろ?」
「ごちそうとお酒だなぁ〜。当分は晩酌とか出来るなぁ〜。」
中学通うフェリエットが晩酌・・・。獣人皆成人が許されてるから出来る荒業と言うか、犬猫年齢的には成人済みで姿が変わっただけだからいいと言うか・・・。割と獣人の会話って人から見るとカオスなんだよなぁ〜。薬を飲むと人型になるのはいいとして、親離れしていない犬やらに飲ませる事もあった。そうするとどうなるかと言うと、体格の良い野郎が小さい少女にやたらベタベタしている姿が爆誕する。
最近では見慣れてしまったし、そこに文句を言うと周りからの圧力と言うかフェミニストさえ潰す権力が働くというか・・・。今でもロリータにNOタッチなのはいいとして、獣人は成人と海外でも判断されている。そのせいか怖いくらい子供への犯罪が減ってるんだよな・・・。ついでに言うとそんな少女の外見の獣人が子供産んだら御乳あげるのが大変とか言うのでなんとも。寧ろ、乳離してるか微妙な時期だったらおっさんみたいな獣人が飲んだりその逆もあるのだろうか?
なんにせよフェミニストは報酬貰って納得して仕事してるのでいいだろう。金銭的にもギルドに一定額入って獣人貯金として残してるし。普通の銀行は獣人単体だとパートナーが保証人になるのだが、それがいない場合は渋るのでギルドに獣人用の口座開設業務と口座そのものが増えたし。
「明日には私とソフィアは帰っちゃうけど大丈夫?」
「フェリエットは大丈夫だろうし君達の方が心配かな?まぁ、大分にはカオリもいるし大丈夫だとは思うけど・・・。」
警戒は強めてもらおう。ソフィアは今の所部活にも入っていないしそこまで活動範囲が広い方でもない。入学当初こそ身長を買われてバレー部やバスケ部なんかに誘われたらしいが結局帰宅部に落ち着き友達と遊んだりする方に忙しいらしい。
お小遣いのやりくりでフェリエットと話し合っているが、フェリエットの財布の紐はかなり固く、そのせいか交渉のやり方は上手くなっている様に見える。本来は姉妹でもお金の貸し借りはない方がいいのだろうが、ソフィアとフェリエットの場合販売交渉とも言えるんだよなぁ・・・。
育ち盛りだからちゃんと飯は食べて欲しいが、交渉材料もまたおかずやらになるのでやめさせようとした。しかし、学生は割とお金がかかる。そこで編み出したのが料理の腕を上げる事。フェリエットが料理出来ないわけではないが、それでも人からもらう事を好むので料理を作る代わりに好きなお菓子を多めに指定させてもらうとかと言う交渉を日夜繰り広げている。
「最近は家の周りにまた人が増えたし警備会社の人もよく周りしてるから大丈夫だと思うわよ?あんまり心配しても始まらないし、貴方は明日何をするの?」
「見送りが終わればインタビュー予定。まぁ、他の予定次第ではそっちを優先するけどね。」
さっさと宇宙ステーション取り出して検分したいが準備次第ではもう少しかかるかな?遥がこっちに顔を出さないとなるとそこそこ手間取っているか残業していると思うし。なんにせよ早く調べ上げて追い返そう。




