648話 別にいい人じゃない
「ビジネスとしてもデータの公開はされないと?」
「今以上の公開もしませんし私個人がする気もない。ご自身達で調べて下さい。それまた発展へ繋がる道筋でしょう?」
「それは暗に・・・。」
「なにか思い違いをしているかもしれませんが、別に私は正義のヒーローではないですよ?既にゲートに人を送り込みスタンピードの戦地に人を送り込みモンスターと戦えと言う側の人間です。それにゲート内は治外法権、法の通用しない場所で何をされるかは知りませんし何をされるかも知りません。」
前に赤峰から人を殺さなければならない時もあると言われた。流れとしては犯罪者をと言う話になるが、それがゲート内では通用しない。なにせどの国も治外法権としてあの中で何をしても外の法は適応されない。だからこそ色々やるならゲートの中となるし、合法非合法と言う言葉がない。
それにエレーナの言っている事は暗に人体実験するぞ?して欲しくないならデータ寄越せと言う話だろ?貰って報酬を払うからビジネスと言う話になるが、それは新薬の治験と変わらない。まぁ、どんな狂気を振り撒くかは知らないが・・・。
しかしロシアが中国と組んだ理由が何となく分かるな。衰退するからと言う理由もあるが永遠を目指すと言うなら確かに人体については知らないといけないし、今度は薬を飲んだ人間からデータが取れればそれにより更にわかる事も出てくる。
今は依頼を受けて仕事をする立場だが、先では報酬を貰い不死者を管理する立場になるのかも。不死者と言えど退屈はある。それこそ魔女と賢者が暇と言う様に。
「そう言うスタンスですか。」
「スタンスも何も警告はしても世界を飛び回ってモンスターを倒すわけではない。それこそガーディアン出現警告を成した後はその国に任せた。噂ではとある国に被害が出たと聞きましたがね。なんでも大穴が空いたとか。今回はガーディアンではないですが良かったですね、国が消されなくて。」
「それは脅しと取れます。貴女は宇宙人に呼びかけが出来る。それをして国を消されたとしても私達には何がなんだか分からず抗議も出来ない。私達に黙れと言う事ですか?」
黙ってくれるならそれはそれで不快感はなくなるが、あまり人の事を言えないがこいつも何言ってんだろ?先にデータ寄越せやらインプラント見せて覚悟を示したと言うのになんで叩かれないと思った?う〜ん・・・、俺が優しい人間にでも見えていたのだろうか?別に非道な人間ではないが一般人的な非道さは持ち合わせてるんだが?
「黙れも何も今回の宇宙人は壊すと言っていたので壊すんでしょう。どういった形かは知りませんが。そもそも宇宙ステーションでキリロフ大尉からビジネスの話は日本政府を通してしかしないと約束されたし、今の貴女がするべくは貸し借りの話であって貴女の国の思いを聞く場でもない。それに、他国の人間が他国の人間を使って何かするのを私が止める立場ではない。どうぞどうぞ、未だにキャベツ畑から兵士が取れると思うならゲート内で好きにすればいい。」
「・・・、人を助けないのですか?」
「顔を知らない人を助けるほど暇じゃない。そんな話をするなら今この瞬間も誰かは死んでいるし、話を持ってきた貴女は自国で助けられる立場でしょ?命の盾を使って話を進めようとしても無駄です。」
エレーナの顔芸と言うか初めてイラッとした様な顔を覗かせた。多分人物分析をした上で命を盾にすれば有利に進めると言う自信が合ったのだろう。まぁ、人に死んで欲しいか欲しくないかで言えば死んで欲しくないが、それは身の回りの人であって顔も知らない奴の事は知らん。肩を並べて戦ったりその中で守れなかった人には申し訳ないと言う気持ちもあるが、今からやるぞやるぞ、して欲しくないなら取引しよう。そんな話を受けるほど甘くはない。
「分かりました、今回は貸し借りの話のみとさせてもらいます。」
「ええ、そうして下さい。何かをするなら手の届かない所、目につかない所、そして何より見つからない所でする事をおすすめします。そうでないと私の身勝手な正義感がゲート内で暴発するかもしれません。」
糠に釘だろうが言葉は投げる。話すタイミングとしてはここしかないんだろうが面倒な事を話してくれたな。知らない所で実験やって・・・、既にソフィア達で実験を行って彼等はその結果は得た。しかし、それは思う様な結果ではなかった。だがソフィアが逃げた先でその結果が捻じ曲げられ思う様な成果を見た。米国も頑張ってくれたんだろうし加納も頑張ってくれたんだろうが人の記憶までは遠隔では多分弄れない。
エレーナを残し外に出る。推定顔が変わって他人となったソフィアだが逃げられないしがらみも言う奴か。取り敢えず家族を嗅ぎ回るなと話したがそれがどこまで通用するか・・・。ゲート内なら職を使うのにそこまで躊躇しないが外ではやはり1線引くものがある。寧ろその1線が暴走するしないの境界線なのかも。
青山に聞く案件が増えたな。あ奴はどこまで知って奉公する者の本体を動かす事に同意したのか?単純に本体側が暴走して襲ってきたと言う話なら嗜めればすむ。しかし、実情を知った上で本体と話し合って動いたとしたら?分からん。俺もギルドを離れる事はあるし、あいつも仕事で離れる事もある。飯食いながら色々と話は聞くしバイトの散歩で家に来る時も話は聞いているが中々難しい・・・。
「ソフィアさんの件、注意度は上がりますね。」
「加納さんもそう思います?」
「データや画像は消せても人の記憶までは殺す以外で抹消出来ないですからね。スィーパーの記憶力は元の人間より遥かにいいです。でも、ソフィアさんは黒江 ソフィアと言う日本人として人生を歩むとした。なら、私達はそれをサポートするしかないですよ。」
「同感です。ソフィアも種子島に来ていますがロシア側と接触しないように言っています。まぁ、あの子は白人恐怖症な所があるので自分からは近寄らないでしょうけどね。」
大分良くなったがやはり白人は怖いのか自ら近寄ろうとはしないし、仲良くしようとも思わないらしい。今の中学にもALTの先生はいるが米国から来ていて既に日本に帰化しているとか。それで大分とは言わないが多少は信用できるでいいのかな?流石にそこまで疑うと切りが無いし身辺調査もされたと聞く。
その後松田と直接俺式Wi-Fi通信で話す。流石にキャパオーバーと言うか共有しないとまずい情報もある。ロシア側の思いを松田も不快と言う話で同じ方向は向けたと思うが、表立って動くかと言われると迷う所。なんにせよ先ずは宇宙ステーションの内情を知り、その後にロシア国内を探れたら探るという話で落ち着いた。加納と別れ増田の車に乗り込みホテルへ帰るか。
「話し合いとしてはどうでしたか?」
「不快ですね。中国側はまだ一貫した姿勢と損得勘定から話が通じると言う印象出来たが、ロシア側はどこかで暴走しそうな雰囲気もある。そんなにロシア国内って今ヤバいんですか?増田さん。」
「ヤバいヤバくないと言う話をするなら相当にヤバいと言う状況です。中東が石油輸出で食べていたのに飯の種を取り上げられ、過去の利益で急激に技術開発に力を入れているのはご存知でしょう?」
「それは知っています。原油原産国はゲートから石油が出ると分かったらすぐに行動を開始した。当時出土量は不明でしてが出ると言う事実から価格が下がると予測したのでしょう。その上でクリスタルエネルギーが代替えとして優秀だったのが拍車をかけた。COPやパリ協定でCo2削減を歌った国はそれを盾に脱原油と言う話もでましたが、その実情はエネルギー資源による外交カードをクズ札にしたいと言う思いからでしょう?」
世界のパワーバランスを軍事力で語るのは簡単だ。核保有数とか空母の保有数とか戦闘機の数に兵士の数を見れば、一般人でも強そうな国はすぐに分かる。当然隠された兵器と言う一般人が知らないものもあるし、今なら中位やスィーパーも戦力としてカウント出来る。
しかし、資源やエネルギー問題となると混迷を極める。大前提として石油がなければ兵器は動かない。それこそ自動車だって石油がなければ動かない。だが、それと戦争を結びつける人は少なく兵站の一言で済ませる人もいる。しかし、それは今は昔でゲートから石油が出るなら買わずに自国で取りに行けばいいし、それでスィーパーが鍛えられるなら一石二鳥。更に言えば資源は石油以外にもでてくるし武器も出てくる。
「それの大打撃を受けているのがロシアです。元々天然資源の多い国で国土も広かったですが、その全てがマイナスに働いています。」




