647話 恐ロシア 挿絵あり
チャンとの会談は終わりさっさとコンテナハウスごと種子島へ。ロシア側の要求指針としては取り敢えず金貨20億枚だろうな。後は宇宙ステーション見ないとわからないし、その点も人が作り扱える技術なら開発はいいと中国側と決着した。まぁ、設計図がある関係上技術革新の波は止められない。
例えば俺の知らない所でガチヤバな設計図が出ていないとも限らないし、ソーツの匙加減的にはブラックホール・エンジンの設計図も重要なものとしてない節がある。と、言うかね?核融合炉作るのはいいですよね?って俺に聞くなよ・・・。その辺りは国際原子力委員会やらに聞け!
寧ろ核は廃止してクリスタルエネルギー路線なのになんで危ない物を研究したがるかな?まぁ、クリスタルエネルギーがなくなった時に慌てて代替え案を探るよりはよっぽどいいが、先に設備整えてからだろ?何にせよコソコソせずに大ぴらにやるならやると言っていたが・・・。
「戻りましたよ。」
鹿児島ギルドから飛んで元々コンテナハウスの合った所に降ろす。出掛けにギルドから連絡したせいが増田とチンが揃ってお出迎えしてくれた。まぁ、その2人はあまり仲良さそうではないな。互いを牽制する雰囲気と言うか、人相の悪い増田の顔が更に悪くなっているし、チンの方もブスッとした顔でそっぽを向いている。
「内容的には報告が必要なものは?」
「松田さん案件なのでそちらと話しましょう。悪い話しではなかったと思いますよ?」
多分悪い取引ではなかった。中国は大人しくするし中位も貰えてお金も10倍の額となった。代わりに出すのは労働力と薬。そう、不老は売らないが不死は渡す。資産価値を考えると勿体ない気もするがそれで大人しくなるならヨシ。寧ろ、不死薬って研究されてるんだろうか?
俺はいらないのでその手の話は出土したやらしか知らないし、飲んだ人にもあまり興味がないので詳しくは調べていない。ただ思うのは本当にどう言う効果を出すか分からない事。回復薬は要求してから作った。しかし、不死も不老も既に合った。なら、その不死と不老は誰が飲んでの不死と不老なのだろう?
少なくとも不死薬を飲んで死んだとは聞かないし、確かテレビで心臓止まっても生きてるとか言ってた気はする。しかし、肉体的な損傷がある以上全損も考えられるわけで・・・。不老は夏目と言う飲んでしまった人がいるので話を聞けるが、不死は飲んだ人と関わりがない永遠に恨まれるのも嫌なので下手に関わりたくもない。
う〜ん・・・、後から出た個体成長薬は生産終了のお知らせかほとんど出なくなってしまったし、そのせいで価格が更に高等していると聞く。まぁ、その煽りでスィーパー達も売買には慎重にならざる負えないし、風変わりな物コレクターは増えた。それはいいとして、仮に薬をまとめ飲み前提としているならどうだろう?
前に遥達と話したが俺も遥も肉体不要派だったし、見えない宇宙人達は精神体だった。不老と不死を同時に飲みその後個体成長薬を飲むなら、全盛期の肉体を維持し続けながら常に万全の大勢で戦えるとか?不死なら蘇生薬もいらないだろうし破片からも職的には増殖して復活させれば即戦える。
割と人類は個体成長薬の間違った使い方をしていた?魔女と賢者は爆笑してたし、もしかして魔女と賢者に対して笑いを提供する為だけに作った薬で笑いが取れたから生産終了したとか?それか、他の宇宙人に頼まれていらない分を理解して使えるだろうとゲートに放り込んだとか?
なんだろうな・・・。魔女達は他者に力を貸して鑑賞会するくらい暇だし、その存在が俺の中にいると分かったからご機嫌取り的な意味合いで寄越したと言われても納得してしまう・・・。斎藤に鉢植え渡すくらい律儀ではあるのだし・・・。
「すぐに連絡されますか?」
「そうですね・・・、ロシア側の使者は?コンテナハウスで来ているならまた、鹿児島ギルドへとんぼ返りと言う話もありますが。」
「いえ、ロシア側の使者は生身です。現在は外務省の方々及び加納本部長と共に待機しています。」
ある意味大物だな。流石に使者を井戸に蹴り落とすスパルタスタイルではないが、情報管理の観点から考えるとチャンのスタイルが妥当かな?それとも本当に何の情報も持たないペーペーを送り込んでメッセンジャー扱いにしたとか?ないものは奪えないし貸し借りの話だけをするなら要求を聞いて面倒だろうが判断できる人間に毎回指示を仰げはいい。
寧ろ貸し借りの話をするからと、大物が来てそのままビジネスの話に流れ込む方が強かなのか?なんにせよチャンスと取るか面倒だから距離を取りたいと考えるのか?キリロフがソフィアの名を出した以上ある程度の人間は・・・、ソフィアの件に関わった人間はデータを廃棄しようとも記憶に残る。
黒江 ソフィア=ソフィア リドフであると確証を持っているのか否か。キリロフはソフィアと言う人間も理解していると言っていた。そして嗅ぎ回らないとも。フェイクの可能性は十分にあるしいきなり裏切る可能性も十分にある。ただ、それをどうやって成したかは分からないだろう。想定するなら蘇生薬を使ったとするとか?
或いは今のソフィアは元のソフィアと結構変わってしまって、確証が得られないからこそ調べていると言う可能性もあるか。まぁ、ソフィアのお披露目って配信でもコメントでもかなりセンセーショナルな話と言われたし、ウィルソン含め米国も協力してくれたが全ての目を誤魔化すのは無理に近い。しかし、娘として迎え入れた以上、父親としてはやれるだけの事をしよう。
「先にロシア側の使者と話しましょう。」
「分かりましたこちらです。」
案内されたのはJAXAの敷地内の端にあるプレハブ。中に入れたくないのだろうがそれでいいのだろうか?周囲を背広姿の役人と警官がウロウロしているが加納は中かな?注目される中プレハブに入ると30代くらいの女性と加納に多分外務省の年食った人が数人。
「お久しぶりです加納さん。その後はどうですか?」
「お久しぶりですクロエさん。かなりいいですよ。こうして元上司だったかもしれない人にも指示が出せますからね。さてと、話し合いはお2人でしますか?」
加納がズズッと茶を飲み俺も一服。ロシアの使者外務省のおっさん達も居心地悪そうだがさっき帰ってきて今ここなんだよ。まぁ、飛んでいる時にタバコは吸ったけどさ。寧ろチャンがペラペラ話すので割と面倒だった。貸し借りが終わればビジネス。そして、使える時間は使う。
企業主義者と本人が言っていたが、利益を追求する姿勢としては間違っていない。間違っていないのだが下手に話すと言質を取られるし、曖昧な解答はプラスに取られる。ただ中国側のギルド構造と言うかギルドを作るにあたり政治と切り離すと言っていたな。
本人達としては苦々しいのだろうがギルドの私物化は避けたいらしい。意外に思うかもしれないが見方によっては出島構造だな。多く利用するのは中国人なんだろうが、逆を言えばそこで問題を起こさなければ他国のギルドにも出入り出来る。つまり、海外遠征も視野に入れたギルド構造。ガッツリと政治と絡んでいるが本人達がそう宣言するなら止められない。
「中国側とは2人でしたので2人でしましょう。それとも同席を望みますか?」
「えっ!同席してもいいんですか?中国側と話す時はR・U・Rを使ったと聞かましたけど。」
「別に聞かれて困る話はしませんよ。あちらは直接対面すると情報を取られると考えていたのかもしれませんね。」
或いは洗脳を危惧したかだな。スパイに武術家と扇動した人間は中国国内にいる。それが見つかっているかは別としてEXTRAと言う職を警戒したなら十分にありえる。賢者と言う名は聡明さや知識の豊富さを思わせるが、魔女と言う名はどちらかと言えば悪巧みする者を思わせる。
職は俺の語感から当て嵌められて今の形となっているが、暴露話を聞いた関係上モンスターやソーツよりも格上で、その中のEXTRAと言う更に内容不明な職に就いていると思えば思考し、妄想し、空想して飛躍させて行けばないとは言い切れないと言う話に行き着く。寧ろその手管も狙ってる?
「はじめまして、エレーナと言います。ファーストさんが立会が必要と言うならどうぞ。祖国からは可能な限り意向に沿う様にと言われてます。」
「そうですか。」
エレーナと名乗った使者の言葉でピクリと反応する奴がいるが、個人の貸し借りの話って分かってる?中国側には個人と言うには大きすぎる要求をしたがやらかした事に関して言えば人類規模である。さて・・・。
「加納本部長に立ち会って貰いましょうか。」
「我々役人は不要だと?」
「外務省のトップがいますか?悪いですが本部長の権限は各省庁のトップと同等です。それだけの権限を持つ方がいるなら名乗り出て下さい。付け加えるならこれは外交の話ではない。」
特別特定害獣対策本部本部長の名は伊達ではない。伊達じゃないからこそ政治には口を出さない。その一線を超えてしまえばギルドが政府となり代わり超武力集団が牛耳る国となる。特に今の日本がそれをするとまずい。日本のギルド方式を真似る国が多数あると言う事はそのまま同じやり方でクーデターを起こせると示してしまうのだから。
「いないですよ。だってこの人達の顔を私、知ってますから。」
加納がそういいすごすごとプレハブから退出していく。寧ろ何が欲しかったんだよ。今更油田や天然ガス要求する様な事はないだろう?えっ?もしかして横から口出して樺太とか狙ってた?流石にまさかね。
「凍てつけ、音は積り雪の様に溶けて消ゆる。」
「防音どうも。さてと、エレーナさん私からの要求は金貨20億枚と家族を嗅ぎ回らない。それと今回の事で懲りて宇宙人を呼び込もうとしないでしょうが呼び込まない。それとしますが異議は?」
「それだけでいいのですか?事の重大さによれば更なる要求があるものと思いますが?」
「悪いですがエレーナさんの地位も役職も知らずただの使者としか見ていません。」
(エレーナさんはロシアで最近外交官として有名になりつつある人物です。外遊先は主に中国だったと・・・。実績としては宇宙開発に置いて中国宇宙ステーションの共同開発を締結させたと。)
(ふむ・・・。)
だから外務省の人達がウロウロしてたのね。寧ろ偽名で来る辺り内々で済ませたいなのだろう。公には宇宙人を呼び込もうとした事は公表されてないのだし、つまり相手としては口止め料としては安いと感じている?多分外見と年齢は見合ってないな。ついでに言えば外人の年齢って日本人からすれば分かりづらいし。
要は尻拭いしに来た感じ?外部に情報が漏れるのも嫌なら今回の事をなかった事にしてしまいたいとか?確かにそれだと要求として少ないのか?でも、ロシア側に要求するものってないんだよな。下手に要求するとそこから探られそうだし。
「祖国としては今回の件を重く受け止め宇宙開発の白紙化及び、人材育成に力を入れていく方針です。また、中国側とも一旦距離を置くとも。」
「シャラップ。政治は政治家へどうぞ。私はあくまで個人の貸し借りの話をしています。親日路線だろうと宇宙開発を停止しようと私には関係ありません。必要なのはルールを守る事で今回それは破られた。必要にかられどうしょうもないなら分からない話でもないですが、今回のは明確な違反です。別に私個人としてその事を公にする気はないですが、総理の言う様にルールは守って下さい。」
「呼び込みの主導は私達ではないのですが?」
「しかしキリロフ大尉はその施設を知っていた。なら、大人としてルール違反を見つけたらどうするべきかは明確でしょう?」
エレーナが若干涙目で訴えるがそれは無視だ。どちらが主導したから悪いと言う話をするならその場にいた全員が悪いし、知っていて見逃したなら更にたちが悪い。今回は丸く収まった。まぁ、後から青山と言うか奉公する者に文句は言うし青山にも変な事はするなと話す。
話すが仮にこれが本当に関わりのない宇宙人だった場合どうする?ガチで見に来てたんだよ、あの時あの場で見えない宇宙達が。先に唾付けではないが地球にはゲートが合ってソーツは個体名はないが他の星では思念制作群体と呼ばれていると言った。つまり、そこそこ宇宙人として他の星にも宇宙人にも関わりを持っている。それならまだ助けとしてソーツをカウント出来るが、ガチにそれ以外だったら?
悪いが勝てる未来も穏便に終わる未来も負けて更地になる未来もある。スペース・オペラは嫌いじゃないが内容は基本的に戦いなんだよね・・・。そもそも宇宙で戦うとして一撃貰ったら酸素切れで大体の人は死ぬんだよ!
「それはそうなのですが・・・、我々としても戦力は欲しいし、国が衰退するのをただ見ているだけではいけないのです。過去はまだ原油や資源を売り賄えた。しかし、それは貴重品から一般人が取りに行ける物へと変わった。そうなれば祖国は人口激減と合わせて後がない。」
「それで逸早く未知の技術を確保しようと動いたと?」
考えてみればぶっ殺すモンスターと人を結合しようだなんて狂気の沙汰だもんな・・・。それを依頼されてやるしかない状況にまでヤバいのか、はたまた成功すれば新たな金のなる木としたかったのか?中々闇の深い話だな・・・。人の手で人を不死に出来ればその技術を買う国も個人もいる。なにせその国の人間とさっき話してきた。
「そうです。結果はご存知の通りでした。そこで我々は貴女と取引がしたい。更なる報酬も約束します。」
「ノーと言えば?」
「ビジネスパートナーが変わらず更に悍ましい者を見る事になるかもしれません。当然我々は抵抗はする。しかし、抵抗出来ない物もいる。」
ウソ泣きだったのか・・・、と言うか涙目も嘘だろうな。そしてやり口が汚い。ソフィアの名を出さずしかし、コチラが把握しているであろう点を突いてくる。横にいる加納もあの時の当事者なので何を言わんとしているか分かり顔を顰めている。
「取引内容は?」
「人体工学を優先的に我々は学びたい。スィーパー科学の提唱は我が国です。日本には藤と言う肉壁でもないのに姿の変わった方がいる。そう言った方達のデータが欲しい。中位に至るプロセスは開示され後はそれと他者をどう結びつけるのか?我々はそのデータも至った人のデータも人から変容した人のデータも足りない。日本は中位最多であり国際結婚等によりそのDNAを受け継げば・・・。」
「なるほど、要は人体実験先を自国から他国に求めると?端的に言いましょう、不愉快だ帰れ。」
「同意します。氷漬けにするぞ露スケ。」
「待って下さい!我々としてもスタンピード対策に頭を悩ませている。自国で発生した場合の被害や隣国での発生を考えれば、中層を掃除して発生させないに限ります。その為に我々は人の進化を更なる発展をと考えています。」
「やはり不快です。先に聞きますがエレーナ、貴女は何階層まで進みましたか?」
「25階層までは・・・。」
「ならそこに連れて行っても問題ありませんね?私とゲートに入ればエレーナさんの最高到達階層までしか行けない。大丈夫です、死なない様に守りますから。」
「そこを守りながら戦えるのは強いスィーパーのみです!それが出来る人を増やすと言うのはファーストさんも同じ考えでしょう?」
「中位には増えて欲しいですが、それは自然に任せるものであって故意に作り出そうとは思いませんね。ビジネスと言うなら私はその取引を蹴ります。はっきり言いましょう、オリンピック選手にドーピングしまくるのと人体実験しまくるのはわけが違う。そんなにインスタント中位を作りたいのなら先ずは自身で試されては如何か?」
「もう試しました」
「クリスタル・・・。」
加納が呟く様に腕捲くりされた二の腕にはクリスタルが・・・。確か浦城がやってた様な・・・。意味はなく特にどうこうなるわけでもないらしいが、この人も中々業が深い。実際ロシアと言う国は男女比率で言えば女性の比率が高い国である。国際結婚とかは勝手に好き合ってするなら止めはしないがDNA目的で結婚すると言われると怖い。
「それ、意味のないインプラントでしょう?」
「ええ。でも試さなければそれも分からない。私の身体も貴女の改造されたと言う身体も未知です。今なら回復薬を使えば多少の無茶は帳消しに出来るし貴女がされた様な改造技術を得られれば下位としても何の憂いもなく先へ進める。」
中国もぶっ飛んでたが更にぶっ飛んだ国だったか。流石恐ロシア。しかし無理だろうな。この身体の改造はソーツだけではなく魔女達も関わっている。
その事を踏まえれば解答は。
「やはりノーです。貸し借りの分のみの取引としましょう。」




