643話 政治は別として
今日まで短いです
「飛ぶ鳥は自由でいい。その先に何があるかも明日の糧を得られるかも分からないけど、確かにそこには生死の自由がある。」
「今から死にそうな発言だが大丈夫カ?急に鳥が飛んだと思ったガ・・・。」
「人は生ける権利を持つけど同時に死ぬ権利も持つ。それは多分勝手に産まれ出て物心付く頃には無意識に考えているよ。まっ!私は死を売り払って権利を手放したから戯言でしかないし、死の間際にするだろう後悔は永遠に訪れない。戯言だよエマ。でも、その戯言の為に私はこうして誰かのする仕事を自分の仕事としてやってる。」
「えらく感傷的だナ。何かの前触れカ?師として仰いだクロエがそんな事を言い出すと嵐の前の静けさに思えル。」
「米国としても想定してるんじゃない?今回の件で中国は最後の首の皮を切った。今はまだ宇宙ステーションは出されていない。しかし、準備が整えばそれは明るみに出て調査される。はっきり言うなら宇宙人への呼びかけを実行した時点で国際社会からの批判は免れないし、日米としても庇う義理はない。」
「それハ・・・、賢者としてノ?」
「エマがどう考えているかは別として、賢者と魔女は人がどうこうするいざこざには首を突っ込まないよ。あの2人は傍観者でありその傍観者が楽しむ術を知ってる。戦争や戦いはショーじゃない。でも、その事実を見て少なからず商売にする人も楽しむ人もいる。」
例えば戦略ゲーム。どのハードにも多かれ少なかれその手のゲームはあるし、第二次世界大戦を舞台にしたゲームは多数ある。ノルマンディー上陸作戦から兵士を操作して銃撃戦するアクションゲームやら、古くなら三国無双なんて言う群雄割拠の時代を生き抜くなんてものも。
古い自身の記憶を言うなら・・・、湾岸戦争の映像も多分幼かった俺は楽しんだ。ニュースで暗視映像越しに光が飛びそれがどこかへ向かう。言い方は悪いが炸裂しない花火だと思って内容もよく分からず単純に綺麗だと思った。まぁ、親父殿にニュースで綺麗な映像が流れたとその事を言ったら『その綺麗な光で知らない人は死ぬし建物は壊れる。その事を考えてから他の人には言え。まぁ、考えてから話したならそれでいい。俺は困らないし。』
確かに親父殿は話さないから困らないが、ニュースをよく聞いて理解しようとした俺には中々ヘビーな事実だったよ。元々長崎が生まれで戦争関係には結構敏感な所だったから、親父殿に言われなければ知らずに話していたかもしれないな。無責任でもないし、かと言って器用でもない。だからこそ親父殿には学ぶべき所がある。
「スィーパーやスタンピードを題材とした新作ゲームは多数あるしナ・・・。そうでなくともニュースでも配信でも人とモンスターの戦う映像は流れル。確かに私達は当事者であると同時に傍観者だナ。他人の戦いから学び糧としていル。」
過去を思い出したのかエマも若干感傷的になっている。それはそうと準備が進み取り出したステーションの全容次第ではかなりヤバい事態になるし、かと言って襲撃するにしても耳目は多い。多いのだが中国の使者が早く貸しを返したいと申し出て来たのって最後の頼みの綱を探してるから?
流石に買い被ってはもらっては困る。言い訳はいくらでも立つだろうし『リュウが宇宙で大人しく出さなかったのは命令がなく動けない軍人としては当然で、こうして地球に降りてきたからにはファーストさんの御威光でどうか穏便に・・・。』何かしらの文句が付けられない程の色を付けて返して便宜をはかって貰おうと考えていないとも言えない。
まぁ、リュウには宇宙で出さないならそれでいいと言ったし、多少国が傾いて大人しくなるならそれでもいい。しかし、地上に着いてからリュウ達は国と連絡が取れてるのだろうか?流石に無事を知らせはしていると思うが、政府経由なら指示をシャットアウト状態なので結果だけを聞かされる。別にリュウが悪いわけじゃないよ?出せと指示が合ったから出した。時間かせぎの工作も日本が一貫して無視路線・・・。
「増田さん増田さん、中国の使者って焦ってました?」
「焦る焦らないを言えば焦るでしょう。直接リュウ上尉には接触させず意を汲まないメッセンジャーが端的に伝えているだけですし。何か思う所が?」
「思う所と言うか・・・。」
貸し借りの話をするなら無視じゃなくなるよな?個人的な貸しなので変な事にはならないと思うが、状況的には更にリー達の身柄を得られると考えよう。逆に絶対接触させてはいけないのはソフィアだ。妻といるから簡単には接触接触出来ないだろうがキリロフはソフィアの事を話に出した。
牽制とも今は取れるがあの時点でそこまで考えていたのか?とりあえず飄々とした印象だがリュウ以上に食えない奴かもしれない。例えるならリュウが軍人らしい軍人とするならキリロフは職業軍人かさもなくば傭兵とか?統率が乱れるのは致命的だが自身がそこの責任者なら判断を下すのは自分である。少なくとも中露宇宙ステーションで長を務めた責任はあるだろうし、いない上司を頼るのはナンセンスだ。
「言い淀まれると私としても余りいい感じはしないのですが?」
「いえ、貸し借りの話ですよ。それを使って食い込んで来る事はないと思いますが・・・。」
来てくれたら来てくれたでいいかも。個人としてはどうでもいい相手なので悪いが適当にあしらうのはいいとして、ギルドとしてそこそこ関わりを持ってますよと言う水面下でのアピールは出来る。ギルド世界化して政府は知らんぷりでもスタンピード考えるとギルドは知らんぷり出来ないしな。
政治とギルドは別物。そうじゃないとスタンピードはかなり厳しい。中位が多ければ安心だが、その中位も下に行けば絶対じゃないし米国では負傷している。毎回ゾンビアタック状態の俺か言えた義理じゃないが死人は少ない方が良い。




