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街中ダンジョン  作者: フィノ


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閑話 125話 橘戦記@3 挿絵あり

『退くものか!ギルドがゲートを持ち去ると言う話は本当だったか。悪いが私達には私達の暮らしがある。過去から学びスタンピードが発生しようとも私達で対処する。だからお引き取り願おう。』


『何を馬鹿な。コロニー内ではスタンピードの対処は難しく、モンスターの宇宙流出も他コロニーへの被害に繋がる。戦える大地でなけば対処が無理な事は分かっているでしょう?それに戦力も足りない。』


『戦力ならある。既に中位は50名いて先ほどの様な装備もある。周辺区域に飛行ユニットを配置したり歌人の用意もあるなら、我々のみでの対処は可能だ。ギルドには大変世話になって関係は崩したくないが、私達の生まれた場所は私達手で守る。それが生きると言う事だろう?』


 当時の情勢を考えると、そんな話が出るのは仕方なかったのかもしれない。下位から中位へのプロセスはある程度体系化されて必ずではないにしても、先ずは中位に至ると考える人は多かった。それはコロニーを運用するにしても本人達が生きるにしても、寿命や不老と言う薬を自ら手に入れて自身で死ぬべき時を選択出来るから。


 死は訪れるモノから選択するモノへ変わって久しい。その選択権を維持する為に薬の交渉は幾度となくクロエへ依頼され、話を持っていくクロエも報酬の量をある程度は弄ってもらえるから楽な交渉とした。実際過去には金貨を減らし、宇宙に出てからは石油を減らし、回復薬が作れるからと下級の回復薬を減らすなんて案もあったが、流石にそれは猛反発の末に却下された。


 良くも悪くも人類はゲートから離れられない。初の交渉時の内容はとある政府から暴露され憤る人もいたが、既に生活や国家運営に不可欠なものとして人々は受け入れた。そして、それの弊害とでも言えばいいのかゲートを引き離す事に対して事に対して忌避感を持つ人も増えた。確かにゲートあるのは日常であり、それがなくなった時の喪失感はあり続けると考える人にとっては無力感に繋がる。


『生きるのは自由ですが、周りに被害を出していいと言う事ではない。スタンピード発生後のゲート返還も約束されているでしょう?』


 ただ時間がかかる場合もある。それはスタンピード対策地に隣接する都市に賠償問題が発生した場合だ。非常にデリケートな問題で管轄地を統括する国や自治体がギルドのスタンピード保険に加入していれば一定額の補助金は出る。しかし、頻度が少ない事から加入してもどこかの時点で支払いを打ち切り返金を要求するケースがある。


 掛け捨てではなくあくまで積立方式で利子はなく、ギルドとしても強制するわけでもなく預かるだけなので国としてはそこに予算を割くのか?どれだけ浮遊金を出しておくのかと言う問題もでる。決して安い額額ではない。参戦するスィーパーへの支払いもそこから出されるし、一時期ギルド運営資金から全て出せと言う頭のおかしい抗議もあったが、各政府から出されるギルド運営費は少なく大半はギルドが商売して稼いだ金で賄われている。


『ウチは貧乏でな。一度手を離れれば他のコロニーへと言う話になりかねん。本来なら先にギルドの通信網を遮断して情報を漏らさず処理する予定だったが・・・。上位橘、挑ませてもらう。』


「ドボール、スタンピードは真報としていい。まだ遊んでいるなら離脱して確信したと伝えて欲しい。」


「今終わらせましたが・・・、1人で大丈夫ですか?」


「大丈夫ですよ、相手はスタンピード準備に人員を取られて防衛線を一人で張っている。コロニーにまで近寄れば強制信号でゲートを放出させ運びます。」


「来るわよ!」


 さて、相手は何者か?ガンナーと言うのは分かる。追跡者ならわざわざ跳弾させずとも追尾させればいい。他の戦艦にしても機械的な動きではなくもっと多彩に動かせる。ここに来る以上、中位であるのは確かとしてもう1つの職が問題か。流石に機械の目を通して見ていては深く見れず分かりづらい。視えすぎるから難しい、そう前に言われた事は本当で能力のセーブを前提に戦うのは面倒だ。


 フェムの言う様に相手の銃口から光の花が開く。いや、それだけではなく無人機からも戦艦からも光が舞い、展開されたリフレクターに反射して縦横無尽に差し迫る。ただ、それの終着地点は私で狙い撃つ以上、殺到するモノを躱せばいい。カーブを描く様な回避行動はなく、直角に上下左右を移動し背後から来るビームも入り混じる弾丸や背後から狙撃して来る無人機もヒラリと躱す。機体は鑑定して覚え絶え間なく動く無人機さえも一瞬過去を重ね射線をずらし、飛来する散弾を斥力で跳ね飛ばしつつ避けきれないモノは盾を出して受け止める。


「フェム。至近弾のみ報告、それ以外は回避します。」 


「了解したわ。でも、過信はしないで。」


「分かってますよ。ただ、相手はガンナーにサバイバーか。確かに厄介だ!」


 サバイバーのトロンプ・ルイユに攻撃性はなくスィーパーなら直ぐに壊せる。騙し絵の様に浮かび上がった実像は中身がない代わりに大量に出せ、それを本物と錯覚させる。モンスターも騙されたり、踏み台に出来る程度の強度しかないそれは、この宇宙と言う場所では一瞬にして周囲をデブリ地帯にする事も出来れば、本人が隠れる隠れ蓑としても使える。


 張られた弾幕は飽和攻撃を狙いダメージこそ軽微ながらも行く手を遮る。応戦し落としてもパーツが散らばるかデコイで意味はない。しかし、甘く見られたモノだ。確かにゲート外で早々戦う事もないが・・・。


「見栄を張った手前、ここで遊ぶわけにもいかないんですけどね!フェム、武芸者の玉を。」


「何時でもいいわよ?私の心臓は夫のモノだから。」


 黒から灰、そして白へ。長年使った武器は上位へ至れば綺麗な白へと代わり扱いは更に向上し、説明文だった職の説明もただ鑑定したモノが使えるとなった。たぶ、それは人をも操れる可能性を秘めたもの。人には過ぎた力で、悪用すれば莫大な被害を出すだろう。


 色々な変遷はあったもののフェムは私の後頭部辺りに座っていて、その柔らかい胸を押し当ててくる。恨みを言う訳ではないが改修する度に藤君がフェムを人に寄せて行き生体パーツなんて物を使い出してからは感触だけなら人と変わらない。


 浮いた話が今まで生きてきてなかった訳では無いし、女性と深い中になった事もある。しかし、エンゲージドールと銘打たれ四六時中共にあり世話を焼いてくれる彼女を蔑ろにする気は起きず、更に言えば表向きは高槻製薬だとしても本当にドール国を藤君が作ってしまったので、私は何時の間にか本当に私はフェムと結婚してしまった様だ。


 押し当てられた胸を通しそこに武芸者の玉がある事を感じ、自身を武装し広げていく。ハッキリ言えば白色なのでよく目立つが、下層でも戦えるモノを出すのは過剰戦力か?


「ただ、これなら艦隊を1人でも楽に落とせる。」


 使っているパワードスーツは私の身体である。飛行ユニットは私の感覚である。指輪内に存在する武器は私の指である。この身体は武器と一体化した私自身である。境界をずらし、無機物と有機物の境を曖昧にし脆弱な身体を人機一体として補い疲れも乾きもないものとして動く。


 確かに視え過ぎているのかもしれない。この状態で鏡を見れば、そこに映し出されるのは人でなき者の姿。ただ、私はその歩みに後悔はない。まぁ、解除すれば戻れるのだから後悔があるはずがない。


  挿絵(By みてみん)


「集中なさい?回避ばかりではジリ貧よ?」


 変化中も縦横無尽無人に迫る攻撃を躱し、時に無人機もデコイもまとめて落とし確実に数を減らす。デコイは別としてAI制御機なら鑑定して同士討ちもさせられる、何より戦艦の制御も奪える。


「分かってますよ。武装を展開、クリスタルランチャーも出土品の武器も記憶も存分に使うとしましょう。」


 記憶を紐解きかつて使った武器の記憶を再現し、砲門や戦艦なんて存在しない場所からビームを出現させ敵艦を貫き、乱反射して飛んでくるビームは無数の盾で全て塞ぎきり、モンスターの空間攻撃さえも使い薙ぎ倒す。ただ、やはり時間稼ぎされていると言う感覚が拭えない。スタンピード開始は何時だ? 


 ここで手を拱いても仕方ないが、広域攻撃しているにもかかわらず相手は上手く逃げている様で、破壊しても後から後から指輪から戦艦を取り出している様だ。直下に落ちてやり過ごそうにも・・・、嫌らしいがやるか。相手が隠れているなら炙り出す。それは地上での考えで360°戦場として使え目的が到達ならやり過ごしてしまえばいい。


「今より1km下へ、その後全速でコロニーを目指す。」


「背中撃ちは必死よ?」


「撃てませんよ。なにせ私はコロニーの真正面へ飛ぶ。」


「ナンセンスね。物理バリケードは常備されて対ビーム兵器様の装備もある。それに歌人がいるのでしょう?全力で撃ちながら追いかけてくるわよ?」


「それでも一瞬の躊躇いはあるでしょう?私がやるべき事はゲートの奪取ですよ。」


 狙撃により数発ビームは貰ったが弾丸は全て弾き損傷は軽微。熱線である以上、光学兵器はどうしても斥力バリア抜けて来る。過去には鏡で反射なんて話も存在したが、事はそんなに単純ではなく当たれば溶かされてしまう。


 相手のトロンプ・ルイユを記憶再現し直下に落ちてレ点の様に跳ね上がりコロニーを正面に捉える軌道へ。指輪へ収納され回頭して出された戦艦がコチラに砲門を向けるも火砲はなく、代わりに無人機からの攻撃に留まる。やはり別の正義で生きる者か。多数を危険に晒そうとも自分達の手で決着がつけられればいいと言う。


 目標コロニーに周辺にはいくつかの付属コロニーがあった。その付属コロニーも今回の件は承諾しているのだろうか?確かに、この周辺に他にゲート搭載型コロニーはない。ゲートが通貨と言うわけではないが、それでも他国のコロニーに入るのには一般人は金がかかる。


『逃げるな!戦え!』


『悪いですが私の目標はゲートです。貴方の正義が何であるかは別として、私は私が知らない所で起こる悲劇を許せない。そして、知ってしまったなら悲劇を回避する方法を取る。』


 それはかつて別れた後に起こった友人の交通事故死の事。可能性は何時でもあって、ただその可能性を引かないから日常をおくれるだけの話。今この時もスタンピード発生時刻は迫りモンスターが溢れようとしいる。


『くっ!』


 苛立たしげに吐かれた言葉は背後からの光と輻射熱で掻き消され、盾の隙間から私の方へと伸びてくる。艦砲射撃をコロニーに向けて行ってきたか。歌人がいるならそれも防ぎきれると想定しての事だろうがなりふり構わない気か?いや、もしかして既にゲートは別コロニー移送されている?


「フェム、コロニーまでの距離は?」


「後100km。・・・、背後!」


『逃がさん・・・、ぞ。』


「ちっ!一撃もらったか。」


『そのパワードスーツ、リミッターを切ってますね?』


『飛行ユニットを最大限に使う為にな。おかげで止まって見えたぞ?』


 いくらサバイバーに撤退があろうとも光速で動けばただでは済まない。私も切り札の1つとしてリミッター解除はある。しかし、それはゲート内で且つ単独で使用する前提でこんな所で使うものじゃない。それに下手をすれば真空に焼かれる可能性もある。


『時間がないと言っているんです。火星で戦い再度ゲートを回収すれば済む!』


『言ったはずだ!私達が生きた所は私達が守る!』


「フェム、瞬間的にリミッター解除を使います。」


「仕方ないとは言え危ないわよ?見捨てなさい、私は貴方を優先する。」


「ありがとうフェム、でも私はこう言う生き方しかできません。」


 振り下ろされる剣を受け流し、発射される武器から生み出された灰色のビームを身体を捻り躱す。互いに光速の中で行われる戦闘は自身より遅いものは、そこに点在するモノとなる。何手先、何十手先と読み合い鑑定して相手の思考を探り、その思考が退路を求めて撹乱し、目に見える相手のみが実像となり遅く動いているのかも分からない武器達が願った場所に移動するまで後どれくらいかかる?


 武器から実弾式の弾を再生し、行動制限をかけるも縫う様に移動して罠にはかからない。だが、それでもまだ私の方が分がいい。この身体は物品を使いこなし戦うのだから。


『遅い!』


『速さだけが全てではありませんよ?』


 届いた声は何時のものか?過去の声が追いすがる様に聞こえそれに返す。振り下ろされた剣を下からかち上げ、返す刀で袈裟斬りにしようとするが・・・。


『デコイ!』


『色々と仕込ませてもらった。隠密である以上、真正面から戦うばかりが能じゃない。』


「背面飛行ユニット一部破損、このままでは不味いわよ!?」


「いえ、もう終わりました。」


 隙を見せる。そこに飛び込ませる。何より自己鑑定で思考を過去の思考と入れ替える。殺したい訳では無いが、それでも敵として立つならそうせざる終えない場合もある。料理人の腕は解体するなら丁度いい。ただ、最後の最後で仕込まれた弾丸が飛行ユニットを壊したか・・・。鑑定結果として通常運用なら問題はない。しかし、その通常運用で間に合うか・・・。


 コロニーに向かい強制信号を送る。抵抗らしい抵抗もなく露出したゲートはメーターが半分まで進みかなり不味い状態だ。やはり時間が惜しい。飛行ユニットを取り換えゲートを押す。ただ、機器エラーがあるのは否めない。なにせ相手を倒そうとする時に綺麗に倒そうだなんて誰も考えないでしょう?


「減速して、スタンピードに参戦する前に爆散するわよ?何度でも、何回でも言うけど私は貴方を護るの。」


「そうも言ってられないでしょう?何百年も生きて来て今更怖気付いてスタンピードの被害を広げたなんて話は笑い草にもなりませんよ。昔、人は死にたくないと願いましたけど、今の人はそうでもない。」


 既にリミッター解除して光速で移動し、真空に焼かれる様に身体が熱を持つ。さて、どうやら本当にヤバい。格好つけて話すけど身体としたパワードスーツからもヤバいと・・・。


「フェム、貴女は生きなさい。爆散するのは私だけで十分でしょう?運が良ければ私も生きてますよ。」


「・・・、橘 亮二。私の旦那様。私と貴方は同じ精神よね?」


「元々加工して分けただけですからね。だからフェムも武芸者の玉を使える。自律したくなりまし・・・。」


「私のすべてを貴方にあげる。代わりに貴方の全てを私がもらう。私は貴方の武器であり、貴方は私の武器である。だから、貴方の身体を私が使いこなして入れ替わる!」


「な!?」


 それが最後の記憶で唇に押し当てられたフェムの唇は柔らかく、武芸者の玉が全てを覆う。確かに私の身体はパワードスーツごと中身も自身としていた。そんな中で入れ替わられて助けられた末の奇跡。


 ただ文句があるとするならどう言う手管を使ったのか、宇宙空間で漂っていた私を回収したのがクロエであり藤君が乗るS・Y・Sコロニーであり、その場にリリもいた事か・・・。

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100kmなら光速機動してるなら密着と変わらない距離だな 直進じゃなく周囲を飛び回ってても変わんない 脳みそどれだけクロックアップしてるやら まあ個の定義も変わっちゃったねぇ
リミッター解除で光速かゲートまで100キロ光速までいかなくても瞬時だし距離か速度あやふやの方が良かったのでは? 中位50人は居てスタンピード大丈夫と言っても 要するに狩りのノルマ守れなかった訳で同じ…
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