630話 後続は何時間?
電波が立ったと言う事は何処かに電波塔ないし統合基地っぽい物があるも推測される。問題と言えば距離と方向か。電波塔を中心として携帯電話基地局の場合は半径200〜500m程度で放送電波の受信範囲は約1500km程度が目安。当然地形や天候にも 左右されるしゲート内は遮蔽物がないので、そこそこ遠くまで届くが周波数変換器を双方付けていないと一方通行な事も・・・。
各国の電波状況はゲート内だと流石に統一されて通信網が構築されつつあるが、ローカル電波も飛び交えば装飾師が工業的なイメージじゃなく、芸術方面ばかりだとどうしても固定処理に甘さがでてくるので消えたりする。そんな事はさておき電波が立ったなら話せる。
「もしもし?聞こえますか?」
「も・・・、き・・・。」
やはりかなり電波が悪い。通話出来ると言うレベルではないな。と、言うか普通に撮影してるのに馬に命令したしあの辺りは削除してもらうか・・・。来れる証明をすれば後は時間とイメージの問題だしべら棒に時間が伸びる可能性もあれば、何処の統合基地周辺に出ていたかも分からない。宇宙でゲートに入る時は確か日本近辺がS・Y・Sと正対する時間だったはずだが、経過時間は48時間を超えてしまっている。超えてしまっているのだが馬を使わないと統合基地を渡り歩く時はそれ以上の時間がかかるとも聞く。
「通話は切らずに移動します。繰り返します、通話は切らずに移動します。」
何度か呼びかけつつ擦り切れた馬は首を落として指輪に収納し、新しい馬を鹵獲して移動。目標は日本統合基地なのでそのうち電波状態も良くなってくると思う。
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「総理、クロエさんから通信がありました。」
「そうか・・・、松田君。これでまた歴史は動くと考えるかい?」
「当然ですね。総理にしても官房長官にしてもコレの情報共有はまだ行わないのでしょう?」
「正式な到着があるまでは、な。最悪もう2、3日遅らせる事も考慮する可能性もある。呼びかけに対してそれを受信出来た人間に対する聞き取りも進めているが・・・、語りもいるのだろう?」
「人は何処かで特別と言うモノに憧れを持ってますからね。」
「そう言う君も特別と言えば特別だろう?副官房長官。当初より内閣側からの使者として良好な関係を築けていると言えばそれまでだが。何にせよ上に関係はこのまま継続してもらうとして・・・、ラボにJAXAとさらなる共同宇宙開発関係強化を打診されては?」
「そこは警察と自衛隊を噛ませた後だろう。現状、内閣府として国は安定していると考えている。しかし、それでも小物や漏れてはいけないと考えられるモノの流出も考えられる。私はギルドと言うモノが今以上に力を付けるつもりはないと考えているが、それでも時代の流れで勝手に付く流れは止められないと思っている。」
「私も総理の考えには賛同します。国民の総数=スィーパーの総数。出生率の下がっていた日本としては疎開やスタンピードで出生率は上昇しましたが、それでも16年後にはスィーパーとしてギルドに通う様になるでしょう。」
「二重政府構想か・・・、今回の宇宙ゲート侵入の件で死刑囚の使用や、犯罪者に対する司法取引でゲートに侵入させると言うモノがあった。まぁ、その話はリスクが大きすぎて出た当初に松田君が否定したが。」
「ええ。流石に他国に亡命されても証言を取られても、ましてやS・Y・Sに犯罪者を乗せると言うリスクそのものも多きすぎますからね。今の状況としてもあまり快いモノではないですが。」
「中露は流石に大人しくなる。総理も通話の中で怒ってらした。今の日本から文句を言われて楽観視する政治家は早々長く付き合う必要のない者だろう?」
さて、クロエさんから途切れ途切れの通信があったのが10分前で、私達はそれを統合基地からの連絡で知りました。ゲート侵入実験を行って姿を消した2日間、どの国も割と大変だったんですよ?呼びかけの内容は大丈夫と言う物で、なぜソーツこいではないかとか。まぁ、そこは4カ国から他国へ政府等への連絡で大丈夫だから来て欲しいと言う内容を共有しましたが、呼びかけ内容を知らずに受信した人間からすれば正式発表までの間に『なんで大丈夫なのか?』『来いではなく大丈夫?』と言う大きな疑問を抱かせました。
まぁ、そのつけは中露がいきなり来いでは失礼で日本人らしく奥ゆかしい呼びかけと言う評価をしてどうにか沈静化。批判するなら最初はその2カ国と考えていた国も肩透かしをくらい、誰も先頭に立ちたがらずに声を上げない。楽に動ける反面いい兆候ではないのですが、今の総理は国外に対しては更に口を結ぶとしたので不用意な事も言わないでしょう。
現在の総理にしても官房長官にしても大きく動く事を嫌っていて、不用意に話せば何処から何を言われて不味い事態になるのかを考えている。確かに今の日本は技術と戦力と言う面で先に進みスィーパーの管理としても異常をきたしていない。ギルドとしても政府と民間の中間組織としての体面は崩さず、他国から直接ギルドに話が行っても外務省から回してくれと門前払い。まぁ、この経由ルートで動かなければ情報が前後して政府としても動けなくなる場面があるので仕方ないでしょう。
「必要はないが潰れてもらっても困る。対岸の火事は飛び火してこちらに来るだろう?日韓トンネルを建設するなんて話は構想倒れで止まっているが、勝手に掘っていないとは言えない。まぁ、スィーパーと言う者を突き詰めて行くと何を持って縛るのか?と言う話に関わってくる。そんな事よりもJAXA内で怪しい動きをしている者があったと聞くが?」
「私も聞いているが、それはゲート前からの流れ的な物では?初めてスタンピードに対応し、その後の処理として復興や箱の回収を行い中身が危ないと言う事は分かった。その中で確かにJAXAにもこう言った危ない設計図があるとして情報共有は行った。しかし、そこから箝口令や情報流出をしない様にと連絡は回しただろう?」
「その話、誰も完璧にこなすとは思っていないでしょう?官房長官。」
「当然だな松田君。そして総理もな。寧ろ今までその話が表に出ていない方がいい意味で驚きと言える。ただ・・・、超重力だったか?それの扱い方が分かるかもしれない方法を世界に向けて開示した。それで炙り出てくれば・・・。」
「協力体制を取ると?」
「いや、日本としてはやめろと言いつつ静観する。何も我々が全てを作る必要はない。そして、どこかの国が危なげ無く作るなら完成品は使わせてもらう。ただそれは今ではない。だからこそ、漏らした者は明確にして何を漏らしたか聞く必要もある。それはいいとして・・・、あの娘の到着はまだか?」
「宇宙からゲート内を通ってるとは言え馬で来てますからね。多少の通信改善はあるでしょうが、どのあたりかまでは。無事と言う知らせはありましたがゲート外GPSは意味を成さないのでゲート内でGPS信号を元にヘリを飛ばしたりラボに連絡をして探しいる所です。ただ、馬で移動していれば見つからないでしょう。」
あの不思議な馬は長距離かつ高速移動をしていれば何処かに迷い込むかの様に追えなくなる。確かに電場や信号と言う物は受信出来るが姿が位相空間にでもある様に目視は厳しく、速度を落として来ているならいいが最速で走らせているだろう中では中々に発見は厳しい。それでも追跡者に探させていますけどね。
コンコン・・・。
「どうぞ。」
「失礼します。先ほど日本ゲート内統合基地よりファースト氏到着の知らせが。」
思ったより早い・・・。来たらお祝いをすると言う話はありましたが、流石に報道規制はかけられないまでも他国は現地から出しておきたかった。いえ、これは私の見通しの甘さが招いたものでしょう。
「総理、到着発表会見を粛々と行いましょう。通信が入るにしても到着するにしても流石に早すぎる。」
「約2日半・・・、宇宙への距離は確実に縮まったか・・・。分かった、会見を開こう。官房長官も他国へ到着の知らせを。会見の準備については松田君に任せる。」
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アルバムを見返す訳では無いが自身の旗が掲げられている場所に行くと言うのはこそばゆい。まぁ、何度も訪れ慣れたからいいのだが、遠くに見えていた統合基地はライトアップされ薄暗い中でもその存在感を示す。
「統合基地を目視で確認、移動時間は約60時間程度。但し、この移動速度については個人差があるものとする。また、今回の実験により宇宙からもゲート内を通り地球側への接触が可能と証明された。願わくば、この情報を有効に使ってもらいたい。」




