624話 どう取り扱おうか? 挿絵あり
ゲートその物への考察と言うのは山口が言う様に多数ある。俺としてはブラックホールをエネルギーとして稼働させていると思っているが、真実は不明で一番分かりそうなのは鑑定した橘だが脳がイカれそうになってぶっ倒れた。鑑定はやめろと言う警告を初期に政府を通じて行ったが、それがどれほど守られているかは定かではない。
実際スィーパーの死なんてものはいくらでも偽装出来るし、職使ったから死亡したなんて話をされてもモンスターと戦ったのか或いは、何かの乱闘騒ぎや無謀な挑戦でもしたのかとしか思わない。まぁ、無謀な挑戦・・・、ダーウィン賞にノミネートされそうなモノばかりなのだが、至近距離で普通の散弾銃を回し受けして無傷で何処まで距離を詰められるか?なんてのがギネス記録になったらしい。
やる方もやる方なら記録として認定する方もする方なのだが、1mは切ったそうで先に攻撃するとか壊すなら銃口向けられた瞬間に終わらせられるのだろうが、撃たれた弾に対するチキンレースなのでこれくらいだとか。やった人としても小さな散弾が一発当たってかなり悔しかったらしい。ここまで聞くと何が無謀なのかも分からなくなってくるな・・・。
『帰投しました。パワードスーツ等を洗浄に回してサンプル受け渡し後エマと共にそちらと合流します。』
『大量のサンプルだがラベリングは任せたぞ橘。』
『もう慣れましたよ・・・。ただ、隕石なんかは流石に鑑定でも無理ですからね?』
「流石に名も無い石は無理ですか。宇宙学者が泣き叫びそうだ。」
『人を何でも屋の様に扱わない!遺留品や証拠品はある程度人が絞り込めている関係上、断定した結果を出せますが落とし物の落とし主を探すなら追跡者や探索者。頑張れば分からない事もないですが中々に骨が折れる。寧ろ学者が鑑定師の職に就きたいんじゃありません?』
「統計的に見ると学者が鑑定師の職に就く率は低いんですよ。まぁ、Sなので出る率も低いですけどね。ただ学者側の意見としては鑑定師はあまり喜ばしくはないらしいですよ?あくまで日本に限っての話ですが。山口さんは鑑定師になりたいですか?」
「いや・・・、どちらかと言えば鍛冶師とか造形師方面ですね。だって機器を使いこなしても分からない事は分からないですし、作るのも既存の方法からじゃないですが。自分で調べて何かを作って証明して、その結果からまた調べて証明する。分かりきった事実も鑑定すれば新たな発見があるかもしれませんけど、それはわざわざ鑑定師じゃなくても調べられますし、鑑定師がいるなら頼んでしまって私自身は他の事をしたいですね。」
分業と言うか目標と言うか、学者やらがよく就いているのは鍛冶師や調合師にオカルトなんか。分野別と言うわけではないが、それを志して勉強してりして来ているので割とそれが出る。まぁ、分子構造を研究者する人が剣士に成る事もあれば治癒師になる事もある。鑑識の人間が鑑定師にあまり成らないと黒岩がいつだったか愚痴っていたが、鑑識としても先ずは探す所から始めなければならないし早々上手くは行かないだろう。
『そう言えば地上との回線は今もオープンなんですか?』
「橘殿達の帰投を確認して閉じたでござるよ。実験中や実験前はデータの早期共有の為にオープンでこざったが、無事に終了したなら開いておく必要もない。ただ、地球からの通信は結構飛んできておるな。緊急のモノ以外は定期的に確認するにとどめておるが。」
「定時報告で済むならそれが1番、ミッション終えて橘さん達も疲れてますからね。次の目処が立つまではゆっくりしておきましょう。昔の宇宙ステーションに比べて食べ物もスペースも贅沢に使える。」
「あっ!なら私呼びかけ動画のマラソンしてきます。内部で見るのと外部で見るのはやっぱり違ってますからね!地球の方ではメッセージ受け取れた人や獣人は何が違うのか調べるって言ってましたし。発信元のクロエさんとしては何が違うと思います?推論に仮説に荒唐無稽な話まで今だとなんでもかんでも言いたい放題ですよ!」
「言うと尾を引きそうなんでやめときます。」
その言葉を聞くと山口は残念そうに部屋を後にし、藤も嫁達のメンテすると言って出て行った。俺は橘達を出迎えるべく残ったが、発信したメッセージを受け取る受け取らないの違いなんて、多分便りを待っていたか否かだろう。なにせあのメッセージは無事を知らせるもの。だから、離れた誰かを思っている人ほど届くんじゃないかな?
それはそうとガーディアンコアはこのまま死蔵コースでいいだろう。知っているのはここの面子だけで扱いとしてもコードが使えなければミラーボールでしかない。いや、暴露話もしたしロシアに渡す?中国側への要求はテイとリーの身柄を本人達が知らぬままもらう事。ゴネるだろうが勝手に集めた情報は渡すので得もある。逆にロシア側への要求は今の所思いつかない。
ソフィアの件は既に決着がつき下手にちゃちゃいれるとまた探られる。流石に懲りたとは思うが、それはあくまで宇宙関連の話であって今ある国と言う枠組みでの話をすればひたすらにババを引いているだけ。なら、対話用ツールとしてコアを渡し警護させているとするのはどうだろう?
あると便利だが今の所言語変換器くらいにしか使い道はないし、ガーディアンの残骸は全て俺が持っている。一応ね、コアに何が出来る?と聞くと過去データとか送ってくれるよ?断片的な戦闘ログだとしてもちょっと他人にはショッキングと言うか、モンスター1体ゲート外に持ち出して隠しだけで大きな穴を星に開けたり、抵抗した軍と言うか個体と言うかは半身を吹き飛ばされたりまとめて削り取られたりと散々。散々だか中にはガーディアンを片手間風に壊す奴もいるのでよく分からなくなってくる。
と、言うかね?ログ自体がほぼないんだよ・・・。元から持ち出したいとも思わないモンスターを持ち出すのはかなりの少数派で、戦闘ログしかないから何がしたかったのかも知り様がない。でも、預けていいものかは迷うな・・・。言い方は悪いが獣人に見られてもボールくらいにしか見えないだろうし、寄越せと言われても出さなければそれまで。
「なにか考え事カ?」
「お疲れ様エマ。考え事と言うかコアどうしようかなと。死蔵してもいいし研究に回してもいい。アレ単体で何が出来るのかと言われると何も出来ないが正解だからね。」
「宇宙言語に変換出来るのに?」
「橘さんもお疲れ様です。あの言語が正確に話せるなら確かに価値はある。それこそ防人とかなら可能性はゼロじゃない。でも最初の取っ掛かりもない宇宙語、コードと言いますがそれをどうやって理解します?聞いて鑑定出来るなら鑑定師もコードが使えるかもしれない人となりますが。」
「流石に聞くだけでは無理ですね。ただ研究に回すと言ってもラボでしょう?また批判が飛んできませんか?最近の創作小説や漫画なんかで『ラボ』と言う文面が入るとなんでも出来る超集団ですよ?そこにコアを持ち込むと更に・・・。」
「いえ、持ち込むのはロシアにしようかと。」
「ハ?」
「何を驚いてんの?」
「イヤイヤイヤイヤ!何故そこでロシアとなル!?どう考えても中露は敵だろウ!今回のイメージ送信の件も含めて何1つ渡して得する事がなイ!」
エマは驚き橘は宇宙を見上げる。確かに得がない様に見えるがただ渡す訳でもない。どこかの時点でイメージをどうやって送信して何が必要で何を理解しなければならないのか?その問いは必ず出て来て俺の所にアンサーを求めに来る。だが、こうも思うのだ。
それを欲しそれを求めその為にここまでやらかす国に対して、親がゲームを取り上げる様にアレもダメこれもダメと言うだけが解決策ではないと。どうせ中露はツーカーだろうし渡せば勝手に協力し合う。寧ろ、リュウとキリロフを呼び寄せてそこで渡してしまってもいい。
「こっそりと渡すわけではないんですよね?」
「もちろん大々的に渡しますよ。かなりの嫌がらせになりますけどね。」
「ただの嫌がらせにそんな貴重なモノを使うナ!必要なら米軍を使って攻撃してやル!」
ただの腹いせに米軍動いたらそれはそれで問題である。問題なのだが動かせる階級も人望もあるエマが言うと洒落にならない。流石は元マッド・ドッグ。今はマッド・ガールらしいが本気でやりそうだし、過去の因縁を考えると喜び勇人は多そうだな。だだ、これを渡すのは決定ではないが鎖かけである。
「そこがダメなんだよエマ。貸しを返してもらう、その為にこれを渡す。そこにある意味は読み解けるまで待て、だ。試し打ちなんかさせないし、そして何かが来れば批判は国として免れない。下手に動かれるよりも材料を渡して弄くり回して貰ってた方がまだ目先ではなく、先を見る目が出来てくると思う。まぁ、直ぐに決める事でもないんだけどね。」
無くせばなくしたで批判はする。誰かが持ち逃げしようとすれば追う。だから渡すにしても杖に嵌め込む形で簡単には言い逃れ出来ない様にする。何より大々的にやるなら他の国からも注目されて下手な動きは封じられる。割といい案だとは思うんだが・・・。
「持ってる設計図全部渡せとかで貸しは回収しないんですか?中国の方にも貸しがあるんでしょう?」
「そちらはもう回収の仕方は決まってますよ。なにせ個人的に貸し付けた貸しですからね。前にも言いましたが私は結構我儘なんですよ。何に価値を見出すかは別としてね。さて、次の実験の目処はまだ立ってませんが2人はどうします?宇宙戦帰りでお腹すいたなら食事とかでもいいですよ。」
「そう言うクロエは?」
「大人しい軍人さんにでも会おうかと。S・Y・Sの中を案内する気にはなれませんが、何時までも缶詰にしておく分けにもいかないでしょう?OKが出ればS・Y・S内部配信に参加でもしてもらいますよ。」
斎藤達の時もやっていたがS・Y・Sの内部は見せられる範囲で見せている。それは当然S・Y・S自体が非武装である事を証明する為でもあるし、特に害意のある研究をしていないと見せる為でもある。『笑顔の絶えない楽しい職場です』この言葉をどれだけの人が鵜呑みにして信じてくれるかは知らないが、少なくとも学者や研究者の目はギラギラしてるな。
「そう言えばあの配信チャンネルまだ使ってたんですね。」
「なくすと一部の人がうるさいですからね。1回チアコス配信を停止にしたら再配信して欲しいと言う凄い多言語コメントが・・・。」
「話をすり替えようとしてないカ?コアの件は流石に見逃せないゾ?」




