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街中ダンジョン  作者: フィノ


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601話 ミュンヒハウゼン症候群 挿絵あり

「よく来てくれたクロエさんにエマさん。」


「歓迎しますよ、お2人とも。敬称は略称で頼みます。」


「黒岩さんに大井さん、お久しぶりです。なんでまた種子島に?警備の関係ですか?」


「R・U・Rの試作機実験依頼カ、2人とも久しぶりだナ。」


「その警備の関係で私も来てますよクロエ。」


「橘さんまで・・・、物々しいですね。」


 JAXAに到着すると3人が出迎えたくれたが、ただの警備にしては橘まで連れてくるのはやり過ぎ感もある。宇宙へ行く人員名簿は離陸当日まで開示しないと言われ、確定しているのは俺とエマ。その他を推測するなら斎藤に藤は来るだろう。後はNASAとJAXAからの研究者とか?


 確かにS・Y・Sは1つしかなく2号機は建設中なのでスパイが入り込めば技術を丸っと持っていかれる可能性があるものの、今の種子島は厳戒体制が敷かれ浜辺にも監視塔があるし、島民も離陸までは東京等に滞在しつつ旅行したり、残った島民も海岸へは近づかない様に言われている。


 因みにその間の宿泊費や給料等は政府持ちで給付されるので、島民からは特に批判は出ていなかったが島外の人は羨ましいと言う声は出ていたな。まぁS・Y・S再実験の為の超法規的措置と言う話で離陸後は帰れるし、その離陸までの期間も短い。平たく言えば島民全員が有給使った様なものかな?


「エマさんは私とこちらへ。山口さんがエマさんのパワードスーツと付属ユニットを弄りたいそうです。」


「山口が来ているのカ?米国回復薬生産プラントの引き継ぎや増設で忙しいと言っていたガ。」


「ラボからの辞令で回復薬プラントは米国から来た研修者をこの度正式に卒業者として後任に据え、山口さんは米国チームと飛行ユニット等の開発側に回るそうですよ?まぁ、その研修生も高槻製薬社員に登用されていて、ラボを離れるのをかなり渋ったみたいですけど。」


「栄転ではないのカ?所長の後任なら賃金も待遇も悪くないはずだガ・・・。」


「研究時間が減るのを嫌う感じですよ。初期にスカウトされたり米国から研修の為に集められた人達は、回復薬製造がメインと言いつつラボの肥大化に伴い色々な分野の研究者と繋がりを持つ。そして、目の前で新しい技術が産まれ自分もそれに一枚噛めるなら、研究者としては興味が出るでしょう?さ、こちらです。」


 橘が流れる様にエマを連れて行ったがエマに聞かせたくない話があるのだろうか?疑ってばかりでは気も重くなるが、タイミングがよすぎると言うのも考えものだな。それこそ高槻が出迎えたなら何か宇宙で回収して欲しい物やして欲しい実験があると考えられるが、この2人だとどうしても不穏な方に思考が向かう。


「さて、残されてしまいましたがどこで話します?単純に月の石が欲しいと言う話ではないのでしょう?」


「あと数年もすればただの石ころになりそうな土産は頼まんよ。こっちに来て欲しい、防音室で話そう。」


 黒岩達に連れられてJAXA内を歩き会議室に入る。かなり不味い話なのか魔法で防音出来るなら頼むと言われて、前にやったエニグマ式盗聴防止魔法を使い椅子に座るが、何を話されるのかな?


「とりあえず最初はラボからのお願いでいいか。」


「ラボからのお願い?」


「思考ダイブトレースシステムとか言う物を試して欲しいそうだ。」


「えっ!?あれ完成したんですか!?台湾側の技術者と共同開発してるはずですが、かなり難しくて試行錯誤しまくってると聞きましたが。」


 作るの難しいと言う話は聞いていたが、宇宙世紀目前にサイコミュー技術完成しちゃったかぁ〜。前に高槻がガンダムOPのナレーションをそらんじていたが、いきなりファンネル飛び交う状態でスタートか。まぁ、ライフル撃つよりファンネルの方が好きではあるが・・・。


「完成した・・・、してるのか大井さんよ?」


「俺に聞くなよ。2人で統合基地に呼ばれて資料を読んだけど、あれで完成してるかなんて俺達じゃ分からん。とりあえずトレースシステムとか言うものを試したいらしい。」


「ふむ・・・、Gガンですね。」


「なんだそりゃ?」


「多分、地球のR・U・Rを経由して宇宙空間で作業用ロボットを動かしたいんでしょう。前に藤君がその辺りのモデルを作ってNASAとかにも渡したと聞きましたし。」


 怖い話じゃなくて良かった。ラグなし通信システムを作っていたが前回の実験で手応えを感じて今回が本番と言う感じかな?これで精神まで同調したロボットが出来ていたらID/0の世界だが、流石にそこまでは行き着いてないようだ。まぁ、今のシステムから考えると、いくら精神をロボットに入れても肉体側が壊されるとパイロット不在のロボットは動かないだろうな。


 緊急システムとして帰還コードなんかも入っていそうだが、それも宇宙と言う場所で正確に動作するかは分からない。今の所宇宙へ行ってその機体を介護しながら経過観察とか動作確認すればいいのかな?でも、黒岩が最初はと言うあたり本題は別にあるのだろう。


「その辺りの話を聞いてるなら話は早いな。藤副主任も一緒に宇宙へ行くがS・Y・Sを離れるわけにもいかんからその辺りの作業を頼みたいそうだ。」


「そのくらいなら大丈夫ですよ。なんなら操縦とかしましょうか?ロボットのパイロットって割と憧れますし。」


「大きさ的にはロボットと言うよりヒューマノイドとかレプリロイドとか言うらしいぞ?何にせよ人とそこまで大きさは変わらんそうだ。」


「なるほど、宇宙開発技術漏洩が怖かったんですね。では、話も終わりましたしそのロボットを・・・。」


「本題は別だ別。聞かなきゃ逃げられる程甘くない話だ。大井さん頼む。」


「あいよ、先ずは自衛隊側と警察側が集めた情報をまとめた資料だ。目を通しながら聞いて欲しい。」


 大井から分厚い紙の束が手渡されるが、機密扱いなのでエマには見せられないな。自衛隊の秘密区分には「機密」「極秘」「秘」の3つがあったが訓令改定でなくなったと聞いていた。しかし、時代の流れかそれも復活したようだ。機密と極秘が過去のままなら国家安保に関わる重大な秘密事項となると。


「・・・、電影公社とナタリア社倒産?日時未定?株を持ってるなら売れと言う話ではないですよね?」


「違う。中国とロシアが共同で大規模宇宙ステーションを作っていたのは知ってるな?」


「ええ。交渉権の話で宇宙に出れば交渉出来るのではないかと躍起になって連日スペースシャトルを打ち上げていましたし、それについての報道もかなりされた。しかし国際会議のおり、私が宇宙へ行っても交渉出来ないと言いましたし、今回宇宙へ行くのだってそれを証明しに行くようなものです。それと会社の倒産になんの因果関係が?」


 なんの会社かは知らないが、他国の企業が潰れるからと言ってそんなに大事になるかね?これが海外に多数の工場を持つ大企業なら国内外問わず雇用の問題で荒れるだろうし、公的資金ぶち込んで延命措置を取るとも考えられる。しかし、書かれた文字は倒産である。


「増田のスパイからの情報でな、この会社は宇宙ステーションの部品やらを作っていた。そして、それが確定で倒産すると言う事は?」


「・・・、まさか・・・。えっ?それは本気でその様な事態を引き起こすと?」


 いやいや、まさかそんな・・・。いくらなんでも危ない橋を渡りすぎる。仮に既に宇宙ステーションで宇宙人と接触を果たしていると言うなら会社は倒産させなくていいし、寧ろ更に部品発注をかけて宇宙ステーションを盤石な物にしようとするだろう。


 しかし、会社が確定で倒産すると言うなら何らかの不祥事が発生する。資金繰りの悪化なんて話はない、悪化するほど儲かってないわけがない。なにせ宇宙ステーションは実際し、それを作るのに支払われた額は安いものではない。だが、これはあまりにも危ないし人命も危ない。


「スパイも万能じゃない。しかし宇宙ステーションの滞在人員は定期的に入れ替わり、今いるのは中国とロシアの軍人だけだ。」


「クロエさん。気になるあの子が無視してるとして、自分の方に無理矢理にでも顔を向けさせるならどうするよ?」


 人なら両手で顔を持って向かせればいい。しかし、国は人ではない。国が無視しているなら振り向かせる方法はそんなに多くない。実際日本の無視は書面でのやり取りを重視して顔を合わせないと言う方向で、話しの食い違いを避ける為に通し番号であったり、複写であったりと必ず甲と乙同じ物を作る。


 そんな中で無理矢理にでも振り向かせるなら、振り向くしかない状況を作るしかない。しかし、これはいくらなんでも・・・。だが待て、この前松田にしたやられたばかりじゃないか。でも、出された資料を読み進めて行くとその方向が見えてくる。


「国家ぐるみのミュンヒハウゼン症候群じゃないですか・・・。そこまでして・・・、そこまでしてS・Y・Sに入り込みたいと?」


 ミュンヒハウゼン症候群とは簡単に言うと病気を大きく見せたり自傷する病気である。やる理由としては怪我や病気という口実を利用して同情をかったり、懸命に病気と闘っている姿をことさらにアピールする。


  挿絵(By みてみん)


「今このタイミングだからな。S・Y・S離陸後、あちらの宇宙ステーションは何らかの危機的トラブルに見舞われる。そして、それを助けられるのが・・・。」


「私達であると・・・。」


「あちらのシナリオ的にはそうなる。飛行ユニットはまだ開発していない、不測の事態に対応しようにも頼る会社は共に潰れている。そして何よりスペースシャトルにもそこの部品が使われていたなら発射は許可せず・・・。」 


「S・Y・Sを頼って来ると。」


 見殺しにでもしない限り合法的な被災者であり、待に徹し様にもその期限を考えるなら飛行ユニット開発まで。そうなると事情を知らない国はなぜ宇宙へ行かない?と騒いでくる。振り向かないなら横っ面を殴ってでも振り向かせるなんて話があるが、よもや自分の横っ面を殴って目を合わせてきたか。


「頭を切り替えましょう。助けるにしても無償の善意ですよね?」


「松田さんもそう考えてる。考えてるが無理だ。無償で助ければ何度でも同じ事態は起こる。有償で助ければ国際社会の一員として弾劾される。相手はお礼金を出す気まんまんでそれを受け取らせさえすれば深い交流も可能だと思ってるだろうし、中の状況を帰国して言い触らせば日本をヨイショ出来ると思ってるだろうよ。」


 助けてくれてありがとう、お礼金も出すよ。こんな凄い物作ったんだね、中を見て思ったけどウチでは真似できないから勉強させてよ!やっぱし技術は分かち合って発展させないとね!技術料も払うよ!だから仲良くしよう!振り向いた先は笑顔である。笑顔の裏にどんな葛藤があろうとも絶対に笑顔である。


 そして内情を知らない国からすれば感情を捨てて歩み寄って来たと取るだろうし、そこでも無視を決め込むと流石に日本が狭量と取られるだろ。なにせスタートはゲート内の出来事でソフィアの事を知らない人からすれば、封鎖地域に入ろうとしただけでそこまで怒るのか?と言う話になる。


 危ないから封鎖した。しかし、命が保証されなくとも治外法権だから入れろ。あの時は時間稼ぎすればよかったが今回は時間を稼ぐと最悪死人が出る。人な命を盾にしたやり方は気に食わないが、それが最も効率的であるとも言えるな・・・。


「狡猾ですね・・・。いっその事地上に救援部隊を最初から配備すると言うのは?あちらもパワードスーツで船外活動してるなら配備部隊で地上に降りられるでしょう?」


「クロエさん、分かってると思うがその場合多分何人か死ぬぞ?」


「ゔっ、やっぱりそう考えますか・・・。橘さんはやはり牽制要員として?」


「その予定だが牽制にもならんだろう。記憶にない事は鑑定出来ない。なら、S・Y・S内部に乗り込んで何をしろと指示された組と宇宙ステーションに細工する組は別だろうさ。」


「最悪内部見学だけならそこまで気を使わなくてもいいんでしょうけど、仮にソーツや別の宇宙人が来た時に何を仕出かすかわからないのが怖いですね・・・。」


 ただここまで話て不測の事態がどう言ったものか予測も出来てくる。電力遮断からの酸素停止だろう。ロシア製ならエレクトロンと言う水から酸素と水素を取り出す酸素発生装置使っていそうだし電力がなくなればそれも止まる。


 当然酸素タンクや非常用の酸素発生装置(SFOG)のカートリッジは備蓄されていると思う。カートリッジ1つで1日分の酸素を出せるらしいから、数日は放置しても大丈夫?いや、既に国の威信の名の元に電力遮断状態だったり・・・。


「あちらの宇宙ステーションと連絡って付くんですよね?」


「それは俺達じゃわからん。警官と自衛官だぞ?」

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魔法で助ければ良くね?と思ってしまうし、職の修理やソーツ製の何か 指輪にキロ単位入れるし人数分以上の脱出船を入れて救出地球へ等でと 無数に思う程に自由度高いんでどう理由付けるかだな 我々の技術では無理…
中露の打ち上げの際に隕石ぶつけて事故を装えば良いんだよ うっかり地上まで隕石が地上に到達してツングースカみたいに薙ぎ払われるかも知れんが クロエならメテオストライク出来るだろ
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