596話 中々増えない 挿絵あり
「こちらは日本代表フリーリポーターの東海林です!大分ギルドに来ていますが、多数の獣人でごった返しています!どのギルドもそうですが、本日より獣人の職取りが始まりました。まだまだ未知数な部分があるとされていますが、今回の試みで職に就いた獣人が増えれば国としての警備体制強化に繋がるのでは?と期待する声も多いです。私への質問は特定回線からお願いします!」
『現場の東海林さん?東北テレビからですが、大分ギルドからの発表はなにかありましたか?他のギルド含め第2陣までゲートに入った様だと連絡がありましたが。』
「大分ギルドも沈黙を守っています。情報そのモノはマスタークロエさんや他本部長達も持っていると思われますが、大々的な発表はありません。また、政府側の発表としまして職に就いた獣人は統合基地に向かうと言う話もあります。正式な発表はその後となるかもしれません。」
『現在続々と退出している獣人達は職に就いていないと言う認識でよろしいですね?統合基地に向かわせたリポーターからは通信障害の為、映像が途絶えたと言う話もありましたが。』
「それは間違いないと思いますが、近くの獣人とパートナーに聞いてみましょう!そこの貴方、ちょっとお話しよろしいですか?」
「えっ、俺?」
「はい!お名前とよろしければパートナーのお名前もよろしいですか?」
「岡部です、パートナーはフェイリスです。」
「よろしくニャンニャン。」
「岡部さんとフェイリスさんですね。フェリエットさんにあやかった様なネーミングですが・・・。」
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「兵藤さんの所が3人、小田さんの所も2人、他の所も1人から最大で3人。第2陣まで入れてコレだとかなり平均だと1割切るかな?」
「5人に1人は獣人と言った感じですけど、それでその人数ならかなり低いですね。教育不足とかそう言うのもやっぱり関係あると思います?」
「タブレット学習を日本の獣人はほとんどやっているのだろウ?それで教育不足と言うのはおかしくないカ?」
「それを言い出すと対人関係が脆弱と言うのもおかしな話になるよ。少なくとも大元の犬猫は人と関わり続け、話が出来て意思疎通出来るほどになった。その時点で半分は対人関係としては完了してる。」
「半分ン?残りの半分はなんダ?」
「ぶつかり合う事、反発し合う事。そして何より相手を納得させる事。従うだけならペットと変わらない、怒るだけなら獣と変わらない、意思疎通出来て言い負かせるだけの関係が築けているなら人と対等な立場と言える。そして、それをするなら何よりも知識が必要で理を説くならモノを知らないといけない。だから話せて半分。」
「やはり小難しい事をクロエは言ウ。」
「確かにフェリエットちゃんって時々反論出来ない事を言いますもんね。」
神志那曰く天才のフェリエット。英国でも魔法を論理的に教えたり、ソフィアに勉強を教えたりと道理を説いている。そこから考えると学校に通わせるのは間違いではないしその中で学ぶ理不尽もある。取り敢えずは職に就けた獣人のデータが揃わないと結論は出せないが、隣人として立ったら本人達の意思も示さないとね。まぁ、飯くれはよく言われるが・・・。
「戻ったなぁ〜。」
そんな話をしていると増田達に呼ばれたフェリエットが帰ってきた。各県からからの申請を考えると職取り獣人は1万人を軽く超えるのでそれの整理も大変なら、職に就いた獣人は統合基地に来て欲しいと言う政府からの要請で職に就いた獣人は補助者と統合基地に向かっている。
そんな中でフェリエットが呼ばれたのは、単純に先輩獣人スィーパーになら話せる事もあるのではないかと言う話から。仮に妖怪以外が出た場合またゴタゴタしそうだし、別の職に就いたら就いたで疎外感も出そうだしね。
「お帰り。まだ残りがいるけど帰っていいって?」
「増田達からいいって言われたなぁ〜。予想より少なくて肩透かしくらったとか言ってたなぁ〜。」
「私としてももう少しいると思ってましたけど、フェリエットちゃん的にはこんなものって感じですか?」
「そうだなぁ〜。モンスターはプチプチしたいけど、職を使うにしても一緒に戦うにしても頭がよくないといけないなぁ〜。頭が悪いと魔術が上手く使えなくなるなぁ〜。」
「比重と言うやつカ。最初から比重の偏った獣人は職に就けないのカ?私は魔術にそこまで造詣が深くないから感覚的な話になるとは思うガ。」
「話すのが殴る事なら魔術は納得させる事だなぁ〜。私達が妖怪しか職に就けないならどんな形でも両方必要だなぁ〜。叩いて教えるだけでもダメ、話して教えるだけでもダメだなぁ〜。私達は初めて立って歩き出したから仕方ないなぁ〜。」
フェリエットが頭良さげな事を言っている。まぁ、獣人にしても激動だからなぁ。人型になって人の世界を歩き出して何も知らないのに身の振り方もない。振り方もないのだがそれを決める前に世界は勝手に歩き去る。なら、それを引き留めるには引き留めるだけの材料も必要だろう。
そう考えると職に就けた獣人って、獣人達の導き手とか?強い人に従う傾向のある獣人達の性格を考えると、職に就いた獣人は魅力的で従うに値するし導くにしても自己中では群れの王様で終わってしまう。獣人憲章もフィンとフェリエットのおかげですんなり獣人達に受け入れられた部分もあるし。
「比重か・・・、逆に比重を崩してどちらかに振った獣人はどうなるんだろ?」
「追跡者が中位に至る時に2通りに分かれた事を考えると職名が分岐するんじゃないだろうカ?確か俯瞰者とサイドアームだっただろウ。」
「そう考えるとまだまだ職も未知ですよね・・・。記者の先って何になるんだろ?突撃リポーターとか?」
「確かに取材はしてくれそうだけど・・・。」
語感から来て当てはめられた職名だが、突撃リポーターとかあるのかな?確かに近接組が記者を第2職と選択したとして、突撃はしてくれそうだが記事を書く暇がない様な・・・。もちっとこう・・・。でも、装飾師はドレッサーと言う人ではなく物品名になってしまったし、究極的に言ってしまえばペンとかペーパーとか記者に必要な物の名前になってもおかしくない。
まぁ、それは至った人が出れば分かる事か。本日最終組もそろそろ出てくる頃で外も真っ暗。流石に1月なので日暮れも早い。他県の本部長達はズームではなく懐かしい文字だけのチャット方式で議論を交わしているが、全体的な意見としてはパートナーと職に就いた獣人に対して本部長として協力要請を取り付けている。
パートナー側への報酬は一律だが、獣人側への報酬は様々でお食事券の配布で手打ちした所もあればギルド食堂を無料開放するなんて所もある。ウチも入る前にその辺りは説明しているが、獣人側が何を要求してくるかな?金銭には執着があまりないが、それを求めるならそれでもいいし食堂無料開放を願うならそれでもいい。
実際フェリエット1人では手が足りない所も多かったし、本分は学生で護衛と言ってあったのでヤバ目な案件を扱う方が多かったな・・・。犯罪の手口が職を使ったモノが増える分巧妙になっていってるし、証拠を始末されるから状況証拠で固めて捕まえる事も多くなった。
その分警察への市民の目は厳しくなってるし、汚職警官は秘密裏に軒並み千代田にしょっぴかれたとか。まぁ、それを大々的に暴露すると警察と言う組織そのモノが消滅しかねないので仕方ない。軽微な犯罪、例えば立ちションとかは流石に見逃されるけどねぇ・・・。
「そう言えば獣人の集団職取りは国内外問わずニュースになってるそうだナ。日本が検証してくれるから他の国はデータを得て事を運べる分助かるガ、成果が凄まじければどうやって追いつくと頭を悩ませル。」
「米国の獣人教育ってどうなの?あんまり話題に上がらないけど。」
「難しい問題でナ・・・。成人としたから義務教育を受ける必要がなイ。パートナーとしても離れたくないから共に過ごす傾向が強イ。そして何より共に働くパートナーとした農家も多いから勉強そっちのけで人と同じ様に過ごす獣人も多数いるし、旅共に旅をする者もいル。政府として獣人は確保したり入学支援の助成金を出したりしているガ、感覚としては今年の年末から来年だろうと言う話ダ。まァ、逆に入る規制がない分いつの間にか誕生していたと言う話もあるかもしれないがナ。」
「それはそれでいいなぁ〜。机に齧りつくだけが勉強でもないなぁ〜。私は水遊びで魔術が使える様になったなぁ〜。」
「ソフィアちゃんとの夏の水遊びですね。フィン君もそんな感じで魔術を使ったとか。」
「フェリエットの弟子1号のフィンは割とスパルタにやられたけどね。」
「師が師なら弟子も弟子と言う事カ・・・。うッ!犬の群れガ!」
エマが頭を押さえているがR・U・Rでの無限湧きがトラウマになっている様だ。克服させる為にも現実で甘噛み地獄でもやらせてみようか?1対多数はスィーパーとしてはお手の物だろうが、変にトラウマがあると特定の姿のモンスターに忌避感を持たないとも限らないし。
「次はR・U・Rじゃなくてゲート内で相手させようか?」
「それは機会があればナ・・・。」
「明日以降も獣人は入場するのではその機会はもう少し先ですよエマ。と、言うか宇宙に行くまでに落ち着きますかね、これ・・・。マスター代理だとその煽りが・・・。」
「ある程度目処が付けば分業先を見つけるよ。流石に法律課に投げるのは厳しいからまだ考え中だけどね。」




