586話 気になる人は多い 挿絵あり
青山の件は一旦横に置くとして、宮藤ブートキャンプ参加者だろう集団は湖の近くに集まっている様だ。セーフスペースと言う事もあり休憩中なのか地面に座り飯を食っている様に見える。ここから見た感じ荒れた雰囲気は感じないが、かと言ってピリ付いた雰囲気もない。強いて言うなら冷静に警戒してるとか？まぁ、休める時に休むのも仕事なのでいいと言えばいいし、座るにしても全員外を見る様にして座っているので警戒も出来ていると思う。
ただ宮藤が見当たらないが何処にいるんだろうか？電話は繋がったし生徒をほっほりだして勝手に帰る事はないと思うんだが・・・。一旦離れた位置に降りて観察してみるか。奇襲対応訓練とかそんなのをしているかもしれないし。
(合流しないのカ？宮藤は見えないが行けば出てくると思うゾ？)
(宮藤さんがいない以上、本当に参加者かも確定していないよ。それにガンナーならこの距離で顔は分からないかもしれないけど捕捉されてるし、ゲート内は稀ではあるけど人と出会う事もある。武装解除して歩いて行こうとなんだろうとunknownは警戒対象だろ？)
(ふム・・・、私達を拿捕させる算段なのかもしれないナ。事前に連絡を入れずに誰かが接近した場合、それに対してどう対処するかと言ウ。)
(ありそうと言えばありそうだけど、それって今必要な事なのかな？この状況ならわざわざ捕まえに来る必要もないし警戒はしても近寄って来る事はないと思うよ？)
考えあぐねるので宮藤にメールで連絡を取ると俺達は顔を隠せるなら隠してから自由にしていいらしい。宮藤も姿を隠してメンバーからの報告だけを受けて行動を見ているそうだ。なら、これは何の訓練かと言うと正体不明の敵に対する対応訓練だとか。
常識的に考えてあちらには圧倒的に数の有利がある。俺達2人に対して向こうは少なくとも20人以上はいる。しかし、その数で俺達を倒せるのかと言われると疑問符が出てくる。階層的にも36階層と言う事は中位がウロウロしていてもおかしくないし、それに準ずる強さの下位が修行をしているかもしれない。結果として睨み合いないし無視が妥当なのだろうが、それは海道が選出戦の時にやった釣りの様に不明なモノを置き続けると言うのは思いの外ストレスが溜まる。
こちらから打って出る必要もないし、好きにしていいなら好きにさせてもらおう。しっかし、なんでまた宮藤はこんな訓練させてるんだろうか？国毎の事情と言うモノもあるだろうがわざわざ対モンスターより対人に比重を置いた訓練は後回しでもいい様な・・・。取り敢えず俺とエマの顔を隠して口を開く。
(宮藤さんからは好きにしていいとありました。さて、どうしましょうかね？待つか打って出るかさっさと蹴散らすか・・・。)
(流石に蹴散らしてはマズイだろウ。多分精神訓練の一環だと思うゾ？相手を正確に見定めどう対処するのカ？どの国でもSPや軍、警察おおよそ戦う組織は運用方法を大規模転換させつつあル。そんな中で上がる問題点と言えば正体不明のスィーパーにどう対処するのカ？或いはどう対応を迫るのカ？そんな所に注目が集まっていル。)
(言いたい事は分かる。姿も年齢も性別さえも判断材料にならない中で相手をどう見定めていくのか？昔なら一発の銃弾が何もかも解決してくれた。でも今は殺した証明が必要とされる、か。)
俺は取り合えす消し飛んでも死なない。なら、夏目なら消し飛んだら死ぬのか？そもそも消し飛ぶ様な状況までどうやって持っていくのか？ウチにはリーと言う変装も出来れば逃げ隠れも簡単に出来るスパイが来た。それは青山が察知してこの上なく明確にスパイであると証明して見せた。なら、他の国は？
職への理解と本人の資質、そしてなにより相手を見定める真贋。モンスターだって強いと思い込めばどこまでも強く感じるし、弱と思い込んでも全くもって弱くはならない。ならその真実の姿を見て戦うしかない。そしてそのモンスターを狩るスィーパーを敵とした場合、丁寧に丁寧に相手の事を見定めていかないと足元を掬われる。
(腹ごしらえに昼食でも取ろうか。行くにしても迎え撃つにしても相手の出方を見るとしよう。)
(それは良いが偵察くらいしておこウ。しかし、私達もお互いに顔が見えないのカ？私から見るとクロエの顔が真っ黒に見えるガ。)
(私は魔法の使用者だから見える。魔術師もそうだけど自分の魔法は自分のイメージの産物だから余程だいそれたイメージでない限りは制御出来るよ。この場合私がエマを見たくないと思えば顔は見えなくなる。)
(強盗するにしても目出し帽は時代遅れカ・・・。出来れば私は見ていて欲しイ。)
そんな話をしながらテーブルを出して少し近づきこれ見よがしに食事開始。触ってないとテーブルも消えるので片手はテーブルから離さないようにして食べないといけないが、コレがゲート式テーブルマナーにでもなるのだろうか？寧ろ、昔の貴族の様に食べた骨とかは投げ捨ててもいいし、食べこぼしも服に付かなければ勝手に消える。
子育てする大人は楽かもしれないが、子供の方は怒られない事をいい事に好き放題散らかしそうだな。まぁ、そのツケとでも言えばいいのか散らかしたオモチャはもれなく没収されるのだが・・・。ゲート民族とかこれから出てくるだろうしギャップは凄そうだ。
(中身がないなら底なしカ、実際空腹や満腹と言うモノや生理的モノは感じているのカ？私がイメージすると空洞でしかないと思うんだガ、触れば反発もするし骨が無くとも立てル。)
(熱い寒いは分かるし料理の味も分かる。その半面空腹満腹もないしトイレにも行かない。簡単に言うと外からの刺激には反応するけど中からの刺激には無反応とか？まぁ、その外からの刺激も巻き戻るから継続してないと一瞬で終わるけどね。)
こうなった当初に胸を揉んだ事があったが、ムニムニ変化はするがすぐに元の形に戻るし強く掴んでも掴んだ痕が残る様な事もない。その半面、つねるとずっと変形しているせいか痛み続けるし、先っちょをつねるとビビるくらい痛かった。
まぁ、その痛みは一瞬でなくなるし体内と言うか皮膚を突き破って侵入した異物は、これまた巻き戻りでポロリと落ちる。多分、立てているのは立った姿に戻ろうとしているからだろう。
(なラ、人の可動域を超える事も出来るのカ？)
(新体操選出より柔らかそうなヨガマスター的なポーズは取れるし、逆屈伸とかも出来るよ。まぁ、これは肉壁も出来るからそこまで自慢にはならないけどね。)
(不思議なものだナ。頬を突くと望んだ柔らかさで返されているとも思えるシ・・・、どうやらあちらはじれて来たようだゾ？意見が割れだしタ。)
(放置か見に来るかで？エマ的に最適の行動ってなんだと思う？)
(状況によるが確認しなければならないなラ、サバイバーに偵察させるか盾師と格闘家を先頭に背後にガンナーと魔術師を置ク。中位もいるなら更に幅は広がるガ、それでも不用意な接敵は避けたイ。私が言うのもなんだガ、相手が狩人なら下手な接敵は餌をやる様なモノだ。魔術師なら最速最短で仕留めたいガ、腹ごしらえの時間分あちらからすればコチラはなにかを準備しているととるだろウ。・・・、捨て置いていいなら無視だナ。それが実際の脅威であるなら既に行動は起こされていル。)
(ただまぁ、そんな無視が出来ない人達が生徒みたいですけどね。ほら。)
宮藤：
膠着状態なら終了でもよかったですが、多数決により彼等は攻撃すると決めた様です。戦うのが面倒なら訓練に移行しますがどうします？
PS 戦う場合は自分も参戦します
(教官も我慢出来ない部類の人間じゃないカ・・・。)
(熱烈なパーティーへのお誘いだと思いましょう。)
