583話 コスプレは難しい 挿絵あり
「至ったよ・・・。職に付いてはプライバシーがあるから本人に聞いてね。」
「うぅム・・・、当初よりどの国からも中位の発表はなくなっタ。クロエ、世界にどれくらい中位がいると思ウ?」
「全くの未知数。ただ、中位へ至った時の事は講習会メンバーやエマがまとめた文章があるし、それは各国とも共有した。後はそれを元にどれだけ自国或いは自分に落とし込めるかの問題で、それを試す人も時間もそれなりにあった。更に言うと私達は見せちゃったからね。」
「見せちゃっタ?」
「そう。日本のスタンピードは私が、米国スタンピードではエマ達中位が。そして、大会では藤君がその至る様を世界に向けてじっくりと。まぁ、あれほど外見が変わったメンバーはいないけどね。そうやって可能性を見せ、背中を見せ、戦う姿を見せて大会で煽り倒して職を問うた。なら、それに反応したスィーパーは少なからず、ね。」
アナタの職はなんですか?その問いを賢者として世界に向けて問い、闘争心の塊の様なスィーパー達が私とアナタは違うともがいて先に進む。そう考えると知らせがないだけで世界にはそれなりに中位はいるだろうし、リーの様にスパイになる中位と言う者もいる。
英国の中位と言えばサイラスの名が上がるが他にもいると言うし、その人物達は国としては扱いづらいとも言っていた。つまり、国が表に出したがらない中位と言う者も少なからずいるのだろう。ギルド世界化なら中位登録は優先するべきか放置するべきか・・・。
安全性を考えるなら登録しろと言う話になるのだろうが、しろと言った所で隠す所は勝手に隠す。やれやれ・・・、スタンピードでそこそこまとまりかけたと思ったが、人と人は仲良くなれるかもしれないが、国と国はどこまで行っても分かり会えないらしい。
「師として先に立つカ。確かに私達はクロエの背を追いゲートに入りモンスターと戦ったからナ。しかし、アライル達の仕事も増えれば大統領としても外遊に力を入れる時だろウ。日本の大臣達も呼ばれて飛び回ってるからナ。」
「武力衝突は最後の手段。でも、それをすれば下手すると国が消える。スタンピード然り、スィーパーの実践投入然り。薄氷の上に私達はいるかも知れないけど、その薄氷は簡単には割れないよ。さて、フェリエットに聞きたい事は?」
「手合わせも願いたいガ、それは後日でいいだろウ。私も宇宙に行く予定だがラボかここでパワードスーツの宇宙仕様テストは可能カ?米国でもテストはかなりしたが最終確認はしておきたイ。」
「う〜ん・・・、モノを見せていじくり回していいならここでも多分出来る。作ったのは山口さん?」
「あァ、主導は山口ダ。本人曰く日本やラボの思想とは違うコンセプトを目指したらしイ。本人が鍛冶師か造形師の職に就きたいと嘆いていたヨ。指示するばかりでは面白くないとナ。スーツの説明もされたが相変わらずよく喋ル。」
「山口さんらしい。ここで見せるかラボに持ち込むかはエマの方で決めて。」
そんな話をしながら1日目は終了。飲みに行くのは後日と言う事にして俺と妻とフェリエットはギルドを後にする。エマはもう少しギルドを見て回ると言うので一般開放されている所ならいいと許可をだした。流石にマスター不在でマスタールームをうろつかれると体面も悪いし、ないとは思うがPC内を漁られるのもあまりよろしくない。
「フェリエットは手合わせお願いされたらエマとR・U・Rで戦ってみる?」
「メガネが先だなぁ〜。アレを倒してからじゃないと勝てないなぁ〜。私はエヴァにもメガネにも負けてるから先ずは地力を付ける方が先だなぁ〜。」
スィーパーとなり初めて負けた増田を目の敵にしてるな。まぁ、乗り越える相手と言うのが定まっているのも目標を持つと言う意味ではいいのじゃなかろうか?
「フェリエットは女の子なんだからあんまりお転婆しないのよ?それにしてもエマさんってかなり若くなってない?」
「米国で20代前半辺りになるまで若返りの薬を飲んだらしい。前よりも更に動きのキレと言うか、体力的にも充実したイメージが持ててるらしい。」
話しによればその年頃には、がむしゃらにトレーニングして上官に話を聞いて回って、後輩を殴って回ってと叩き上げの軍人として走り始めた頃だと言う。元々美人で若さもあるなら男所帯の軍では色々とあっただろう。
ただ制服効果と言うか、その時の自分の姿に戻るなら気力なんかも充実するんじゃないかな?それに加えて積み上げた経験もあるから老獪さは増している。課金で引っ叩くゲームとは違い現実にショートカットはないし、サボればそれだけ取り残される。置いていかれるのではなく取り残されるのだ。
スタートは全員一緒ではなく不平等だとしても、その後にどう言う生き方をして過ごすかは決められる。昔ならあの時は時代が悪かったと言えるかもしれないが、今なら出来る事をコツコツとやって若返った時にあの時は出来たから更に出来るとか、挑戦して失敗したが今なら出来るかもと思った方がお得だろう。
「若いっていいわねぇ〜。なんでも出来そうなきするし。でも、同じ様に綺麗に歳を重ねられるのかしら?」
「さぁ?でも、わざわざ悪く生きようとも思わないさ。」
そんな話をしながら家へ。今日はバイトが休みだった息子とソフィアが出迎えてくれて、中に入ると結城君と千尋ちゃんにリーがいた。リーと結城君はソフィアの勉強を見た後遊んでいた様だが、リーの胆力と言うか好きにスパイしていいと言たとしても、こうして家に遊びに来るのは堂々としていると言うかなんというか・・・。
結城君の手前断りづらいと言うのもあるのだろうが、この家に持って行かれて困る情報と言うのはない。仮に家族のクローンなんて物を作る計画とかがあるなら叩き潰すのは間違いないし、完成させたならそのクローンには俺の手で引導は渡そう。
「こんばんは、お邪魔してます。」
「いらっしゃい。このまま晩御飯食べていく予定?千尋ちゃんが作っててくれたみたいだけど。」
「僕は母さんが帰れってうるさいから御暇しますよ。千尋にもそう伝えてますし。」
「私はいただく予定ですね。父さんも今日は遅いみたいなので。それに、ソフィアちゃんからコスプレの小物を頼まれてて・・・。」
「藤と会ったら何かやりたい気になったです。そこで加奈子お姉様にお願いしたですが、体型的に魔法少女ににに・・・。私の代わりにお父さんがコスプレとかどうです?市位ちゃんとか。」
俺に魔法少女をやれと?既にやってる様なモノだが、それを娘に強要されるとやはりくるものがある。でもまぁ、ソフィアの魔法少女コスプレはなぁ・・・。
悪くはないが色々とヤバい気がする。ヤバい気はするがアニメやゲームのキャラってそれどうやって着てるの?って衣装も多いんだよな。魔法少女にあこがれてる奴とか。
「ソフィアはプロポーションいいから大丈夫だろ?写真撮ったら藤さんに送るのか?」
「お兄ちゃんは分かってないです!胸があると服選ぶのは大変なんですよ!そこを通る服を着ると土管みたいになるし、ニットを着ると胸ばかり見られるし!私もお兄ちゃんのお股をずっと見ててあげましょうか!?」
「褒めただけなのにやめて!」
「那由多の肝はそこまで小さくないだろ?」
「千尋はなに言っちゃってんの!?」
「落ち着け親友!肝っ玉の話で様は度胸の話だろ?決して2人が結ばれたなんて話を両親の前で暴露する千尋じゃないだろ!」
「そうだぞ那由多なにを勘違いしてる?」
「あ〜、那由多君が墓穴を・・・。」
「千尋お姉様とお兄ちゃんはなにかあったですか?」
「ソフィア、そこは武士の情けなぁ〜。」
「しかし服か・・・、大人っぽいのであれば多分エマが詳しいぞ?」
「そうなの貴方?エマさんって軍人さんよね?軍服来てるイメージとかカジュアルなイメージがあったけど?」
「元々エマは全米美少女コンテストに出場したりしてたし、初めて会った時はやたらと服とかコスメとかの話をしてきたから、なんだかんだで興味はあったんじゃないかな?そのうちココにも遊びに来るだろうし、会いたければギルドに来れば会うのは会える。まぁ、仕事で来てるから話せるかは分からないけどね。」
来日直後に増田の運転する車でやたらとコスメやら服やブランド物やらの話をされたんだよなぁ〜。一切興味なかったから当たり障りのない解答をしたが、アレだけ話せるなら審美眼的なものもあるだろう。
魔女式審美眼ってこう・・・、派手なんだよね。俺は娘寄りでシンプルな物がいいのだが魔女が選ぶのはヒラヒラのとかフリフリとか目立つ物が多い。その点エマは外人体型のソフィアを見立てるなら最適だろう。
「米国の英雄が日本に来てるんですか司さん。」
「仕事でギルド視察にね。」




