閑話 117 とある巻き込まれた帰還者の話@5 挿絵あり
「さてと、フェムさんから榊が榊じゃなくて化石って話は聞けたけど・・・。」
「化石じゃなくて榊!」
「榊原人とかでも良くない?まぁいいや。一旦ダーリン達と合流しようか。」
リリにからかわれながらギルドを出る。知っている東京の風景はなくどちらかと言えばのどかな田舎に見える未来都市、ただ未来人の服ってこう・・・、ピッチリスーツとかをイメージしてたけど、大きく代わり映えもせず未来っぽさはない。
ただ人が急にいなくなったり空を飛ぶ人やミミの様な獣人にロボットがうろうろしている事を考えると、未来と言うよりも別の世界に来た様に感じる。あのロボット達はわざわざ一目でロボットと分かる様にしなければならないのだろうか?
「リリ、人と同じ見た目のロボットっていないのか?」
「ん?いるよ?ただ、そう言うのは対人作業用インターフェイスかな?その辺歩いてるのはガイドノイドとかだから、何か聞きたい事があれば聞くといいよ。」
「わざわざロボットっぽくしなくても全員人っぽくすればいいのに。」
「それだと人とロボットの境界がなくなるじゃん。超AI管理コロニーとかに行けばそう言うのもあるけど、私はあんまり行きなくないなぁ〜。」
超AI管理コロニー?住む場所で生活様式が変わるのはある事だけど、自由コロニーとか管理コロニーとかわざわざ分ける必要はあるのだろうか?と、言うかその管理コロニーってどんな所なんだろう?やはり奴隷みたいに人に自由がないとか?リリも行きたくないと言うし。
「それって、人を解放しないとまずい所じゃないよな?」
「違うよ?ケースバイケースだけど、人生リタイアした人が最後に行き着くところとか?不老にも不死にもなれるけど長い人生で本当に嫌な事があって、立ち止まって袋小路に迷い込んで気力的な意味で亡くなった人が多いかな?まぁ、暇して出てくる人も多いんだけどね。」
「出てくるって・・・、管理されてるんだろ?」
「されてるよ?衣食住医は完備で何1つ指示される事もする事もない。1日中寝ててもいいし、ネットでうろついてもいい。中には投資とかに忙しくて人の生活が邪魔と思うからそのコロニーにいる人もいるね。」
「ブルジョアの巣窟ってわけか。働かなくていいとか夢みたいだな。」
毎日遊んで暮らせて最後の医って多分医療だろ?未来の医療がどうなってるかとか興味は出てくるけど、それよりも働かなくていいとか最高じゃない?多分その管理AIがいい感じに取り仕切ってるんだろうけどさ。と、言うか人類全員それに管理してもらったら楽なんじゃない?
「う〜ん・・・、榊の時代がどう言う思想でその言葉かは知らないけど、休むだけなら多分いいと思うよ?全員が同じ形の部屋で過ごして料理とかもインターフェイスがやるから動くなって言われて、下手するとお風呂とかも入れてくれて恋人欲しかったり、友達欲しかったらそう言う有機インターフェイスを用意してくれたり・・・。」
「・・・、えっ?そこって部屋の外には出られるんだよな?」
「出られるよ?ただ、全てをフラットにするって思想が詰まったAIだから物理的な他人との接触は嫌うよ。一度体験したけど、街を散歩するって言ったらルートは全てインターフェイスが誘導して人に会わなかった時は驚いたかな?」
「なんでまたそこまで人との接触を・・・。」
「人と人が出会うと比べちゃうからね・・・。ネットで人に会うのはまだ外見とかいじれるからいいけど、物理的に出会ったら嫌でも比べちゃうじゃん。例えば私とミミの胸の大きさとか、仮想ならあり得ない大きさとかにも出来るけど、それはあくまで仮想であって現実で出会えばねぇ〜・・・。だから、そのAIは人と人の関わりをどんどん削ってインターフェイスをあてがう。」
「それでよくコロニーとして運営と言うか、国家として成り立つな・・・。」
「コロニー=国家ってわけじゃないよ。サイズもバラバラだしね。そこが成り立ってるのは公平なバランサーって役割でギルドからか資金提供されてるからかな?」
「公平なバランサー?」
「そう、人の意を汲まない完全な01バランサー。お金や物の流通とかを仕事にしてインターフェイス達が高速ドライブで物流支えてたり、それを元手にリゾートコロニー作ったりしてる。」
「ふ〜ん・・・、AIの反乱とかないのか?」
定番中の定番!AIの反乱で人類と全面戦争とか!話を聞く限りそのAIは人を懐柔と言うか、緩やかに支配して行こうとしている様に思う。なら、それに従わない人を全員駆逐してAIの理想国家に・・・、無理なのかな?リリやジョーンズの戦闘力やらあのモンスターを考えると簡単には支配出来ない的な?
「反乱とかはないし、従わないと言うか受け入れられない人は無視するとか?スタンピードが起こればそのコロニーにも危機は来るし、下手に人を集めても管理出来ないからね。直接聞いたわけじゃないけど、魔術師とかで対話してる人曰く、かなりドライな感じらしい。」
人を管理してダメにするドライなAI。う〜ん・・・、人が好きだから優しくしたりすると言うのは聞くけど、ドライと言うのは中々聞かない様な・・・。そのAIに人格とかあるのかは知らないけど、仮に人が好きで愛したら暴走とかするからドライなんだろうか?謎な未来人達だから俺の頭では追いつかないかも・・・。
リリと緑が多い街を歩き浜辺へ出る。途中、俺が歩くのが遅いと言われたが、そんなに遅かっただろうか?いや、リリ曰く走ると数分もかからない道程を30分以上かけて歩いてきたから遅いと言われても仕方ない。ただ、どんな人体改造?をしたらあんなに早く動けるのだろう?多分あの指輪とかゲートって物が関わってるんだろうけど、俺もそのうち入れるのだろうか?
「ダーリン来たよ。」
『おう、そこから西にある海の家にいる。林も一緒だ。』
「西にある海の家にいるって、行こうか。しっかし、この砂って苦手なんだよね。踏み慣れないと言うか、踏んだ感じが気持ち悪いと言うか・・・。」
「未来人は泳がないのか?リゾートとか言うと常夏の島で泳いで旨い物食うのが定番だったけど。それとも、プールばかりで海水も嫌いとか?」
「おーい!こっちこっち!」
サーフボードを持ったミミが浜辺で声を上げるけど、ふつふつとジョーンズに殺意が湧くのは俺だけじゃないと思う。何あのスタイル!横のミミを見てもタイプの違う美人だしあのハゲは何様!背は高いし強そうだ面倒見はいいし、判断力は高そうだしあの旨丼とか言う旨い物をくれるくらい面倒見はいいし、お金持ってそうだし、宇宙船を所有してるし・・・、やだ!ジョーンズの評価って女性面以外爆上がり!?確かにあのモンスターがいる空間で頼れる男と言うのは評価が高い。
そして、俺は経験はあっても少年として歩むと決めたから・・・、そもそも化石だから何1つ分かってない。中位とか上位ってなに?リリが上位ならジョーンズは弱い?いや、あの強さで弱いと言う事はないだろう。てか、スィーパーってなに?湧き上がる疑問は後から後から出てくるけど取り合いずは目の保養から・・・。若い身体ってこれでも反応するんだよな・・・。
「おう、リリに榊ギルドでは?」
「ギルド依頼ゲット!フェム推薦だから報酬も期待出来るよ。」
「それはご機嫌な報告だな。詳細は聞いても?」
「それよりも私に彼を紹介してくれジョーンズ。古い情報にも価値はある。今年はファーストさんに出会わず君に会ったから情報には飢えてるよ。」
「それは分かってるが落ち着けよ林先生。そんなに荒ぶるものかねぇ?」
「タマさんとは死別して暇してるからな。歴史と言う霧の中を歩むのが歴史家と言う者ならそれの片鱗を持つ者は歓迎するさ。しかし、タマさんは惜しかった・・・。獣人が寿命延長を嫌うのは知ってたけど、最後の最後まで寿命の薬は飲まなかったしね。」
「獣人の生死観は自然任せが強いからなぁ。報酬を得て仕事して面倒と感じたら離脱する。まぁ、職に就いたら引き止められる奴はいるが・・・。」
「引き止められても自由な獣人は中々意見を覆さないよ。彼等は隣人として人とは違う価値観で生きてるからね。まぁ、異種族コミュニケーションの勉強と言うなら最適だよ。古くは人間が最高の存在で宇宙人にしろ何にしろ好意的と言う希望的観測は崩れ人の価値観は変わった。そもそも人の寿命と言う檻が崩れればその世代や生きて現世と関わった期間でも変わってくる。なら、それを楽しむ術を知るのが人生に置ける1つの目標ともなり得る。」
「へいへい、先生の話は毎回小難しい。言ってる事は理解出来てもそれを真に理解するのは厳しそうだ。」
「なに、教える立場なら分かるさ。導くなんておこがましい事は言わないけど、それでも話す口はある。そして、その言葉は出来る限り事実に即したモノがいい。クロエさんとの会話は中々に楽しいよ。今に至るまでの霧を照らすカンテラとしてね。」
「カンテラ・・・、確か光源だったか?何にせよ榊は古代人と言うかその世代に生きてた人らしい。質問があるなら聞いてみな。」




