閑話 115 ビギナー@6 挿絵あり
今回で終わるはずが忙しくて・・・
長文が書きたい
「その言葉信じるよ!」
「このまま直進して下さい!その先が渓谷になってます!」
「OK!那由多!千尋!このまま突き進んで渓谷に飛び出す!出来る限りこの車体を上に飛ばすからあのモンスターを叩き落としてくれ!僕も下から出来る限り援護する!」
「分かった!最後の煙を使う、それでダメなら切り札は頼んだぞ!千尋は俺の後ろからついて来い!」
「分かった、黙って背中に付いて行くさ。」
さてどうしたものか・・・。明かしていないが退路の1つには私がアレを倒す事がある。寧ろそれが1番効率がいいと囁く。分かっている、私にとって今飛んでいるモンスターは脅威に感じない。確かに速くこの車体よりも大きく、無数のビームを放って来るがそれまでだ。叩き落とせば接近戦も可能な個体かもしれないが、それは落としてから考える事で落とす前に仕留めればさほど変わりない。
しかし、対象達に荷が重い事も事実だ。どれほど取り込んだか知らないが多分、私達を追うと言うか付いてきているのはこの先にゲートがあるからだろう。つまり、この個体は17階層以降にいるだけの実力があると自ら判断し、その道すがらに私達を見つけて仕掛けて来たと仮定出来る。
生きて返せ、仮に青山が私に気付いて泳がせているなら中位として戦うのも仕方ない。ただその場合対象達がどう反応するのかと言う部分がネックで、外に出て報告されれば一発でどこの誰かが広まる。なら、姿を変えず時枝 加奈子として至ったとしても今度は日本政府が私に注目して来る。やはりバレずに始末するのが得策か。ダメージコントロールにさえ気を付ければそこまで苦労しないだろうし切り札と言う物もある。
私より先に切り札を切ればそれが終わらせてくれる可能性もあるし、そうなれば私は何もせず素知らぬ顔で外に出て学生として高校を卒業し、対象と共にスィーパーとして活動しながらよりギルド内部の様子を見つつ司を観察出来る。中々祖国に情報を流す手段が無いのは事実だがその辺りはテイに任せればいい。そう、テイに任せて・・・、任せて祖国に貢献する必要が今あるのか?
スパイが裏切り亡命を願い出たとしてもそれを信用するほど世界は甘くない。そもそもスパイとして活動していた以上、拘束され情報を吐き出させられ祖国が傾く片棒をかつがされる羽目になるだろう。別に私は祖国を滅亡させたいわけじゃない。単純に納得出来ない事に異議を唱えたいだけなのだ。
「加奈子、そろそろ見えて来た。あの渓谷の手前に発射台を作るからか飛んだ後はしっかり捕まってて!」
「はい!那由多君、千尋ちゃん準備は?もうすぐです!」
「「何時でも!」」
対象が・・・、結城が土を操作して急な発射台を作る。そして那由多が車体に羽を生やす。グライダーの要領で滑空出来るだろうが、あまり先に行っても今度は助けに戻るのが・・・、いや結城が緩やかにキャッチすればいいだけか。
「行くよ!更に加速!流砂よ全てを飲み込む様に砂塵の様に!」
対象の声で更に加速し車体は発射台から発射されて宙を舞う。アクション映画の様に飛ぶ車は急な発射台で勢いを殺されなかったのでかなりの高度に到達した。その中では後ろから来るガクンと前方を持ち上げる衝撃は那由多と千尋が踏み込み飛び出した証。バックミラーなんてものはないので振り返り目視すれば、後ろの形状は幌のないトラックの様になっていた。
「僕はこのまま車体を上手く着地させる!・・・、いけるよね?」
「大丈夫ですよ結城くん。私達は生きてます。」
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千尋を後ろに魔法糸のマントと煙を盾にして飛ぶ!下ばかり撃っていたモンスターが水平射撃が出来ないとは思わない!その証拠に煙を貫き飛来するビームは痛くないものの寄せ付けまいとする様に俺を狙って来る!
「大丈夫か那由多!」
「大丈夫!タフな身体はこのくらいじゃへばらない!それに、大好きな人が付いてきてるんだ、カッコ悪い所見せられるかよ!車で話した通り、この勢いのまますれ違いざまに2人で一撃入れて撃ち落とすぞ!」
「分かってる!ケーキ入刀より先にハンマーでモンスターを撃ち落とすのが共同作業になるとはな!」
「2人共ギルド職員になるんだ、そんな結婚式もあるかもなぁ!杖よ!フル強化だ!」
ハンマーを改造してツルハシに、柄を2人で掴み走幅跳の様な姿勢から一気に振り下ろす!腹に当たるビームも肩に当たるビームも頬を掠めるビームも・・・、飛んでくるビームは俺が受け止める!背中の千尋には一発も届かせない!
「殴り落とす!」
「精錬出来ずに不純物は増す!脆く砕けろ!」
大型バスくらいあるモンスターの頭?に直撃!一瞬身体をずらそうとしたモンスターだけど背中の千尋が空を蹴って修正してくれた。だからこその直撃、父さんがくれた杖は強化の魔法が使えるらしい。何度か試したけどその力は凄くて全身の筋肉がコレでもかと言うほど躍動する。ただでさえ鍛冶師は腕力と体力には自信があるけど、その強化の代償は体力だとか。確かに使い続ければ疲れるのは早くなるでも、それも回復薬で回復出来る!
「「うぉーーーー!!!」」
このまま砕け散ればよし!砕けなくても撃ち落とせばそれなりにダメージは入る!でも、ツルハシにしたせいかめり込んだか!それに下には相棒がいる。飛んでいた高さから更に渓谷の下までの距離にはビビるけどそれも一瞬。下には針葉樹の様な鋭い岩と・・・。
「見えました!2人ともモンスター前面!無事だよ!」
「分かった!2人とも!動くなよ!!!!!!すべり台を作るからそれに乗れ!!!」
「千尋、頼む!」
「分かった!」
身体の伸びた千尋が俺を抱き締め反動を付けてモンスターを蹴り作られたすべり台へ飛び移る。その衝撃でハンマーが抜けてよかった。飛び移ったすべり台は螺旋状で速度を殺しながら滑るけど・・・!
「滑らかに作成!流線型に改造!千尋の尻が危ない!」
「尻とか言うな!」
結城は土の魔術師、そのまま滑れば下にはマントを敷いていたとしても摩擦で熱いし、急ごしらえでたまに突起もある。それを改造と作成で滑らかにしつつ更に湾曲させて速度を殺す!先が見えないから自分の手元と見える範囲から!
「先に攻撃します!」
「やったか!はなしかな!?僕も行く!」
滑り降りる前に下から聞こえる声はモンスターの生還を知らせる。ダメージがないわけじゃないと思う。確かにツルハシにしたハンマーはモンスターの頭を捉えた。多分、クリスタルは出てない。そして、結城の作った棘もモンスターを捕らえるコース上にあったと思う。なら、それだけ壊されてもまだ動けるモンスターなのか?
地面に降りるのももどかしくて千尋を背負って途中で飛び降りる。モンスターの方を見ると砕けた岩にモンスターのパーツだっただろう物が透明になりつつあり、加奈子の射撃を軽快に交わしつつビームで応戦してくる。加奈子ってあんなに動けたか?サバイバーだから動けるんだろうが、ビームを紙一重で回避しながら間合いを詰めるなんて・・・。
「背後ががら空き!浮かび上がれ石剣!魔術師はどこからでも攻撃出来る!」
距離を詰める加奈子に攻撃が集中しない様に結城が背後から石槍を瞬時に突き出し、それを跳ねて交わした所に石剣を舞わせる。でも、それは腕で壊されダメージがでない。
「俺達も行こう!」
「分かっている!加奈子1人では荷が重い事い!」




