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街中ダンジョン  作者: フィノ


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566話 広まる技術

 さてさてこの杖である。誰でも使えると言う方法で作ったなら危険性は高い。流石に喧嘩で剣士がいきなり魔法を連発すればバランスブレイクもいいところ。なので何かしらの条件や呪文が組み込まれているとは思う。そこから考えるとサイラスの魔術師としての職に沿ったものとなるだろう。


 土と風、それの複合の可能性もあるがそれを考えるのは後。床に突き立てても何も起こらないので地中探査系はないと思う。本当に調べるなら外で土に刺すのが早いが、指した所で呪文が必要なら意味はない。黒塗りで重さはそこまで感じないので鉄製でも多分ないのだろうし中が空洞とも思えない。


「鷹の頭を模した細工が多分風とかのイメージを固めたものかな?そうなると本体は土か単純に杖として見せるための物とか?割と手に馴染むと言うか、見た目よりも手の置き心地はいい。」


 鷹の頭を掌でなでなで。特に引っかかる部分もないし、車のシフトレバーの様な感じで手に馴染む。杖の上に鷹の装飾って邪魔かと思ったがこれなら普通に杖にも使えるな。まぁ、膝が悪くなることもないのだが。


「私は杖を見るのは初めてですけど、そんなに分かりやすくするものなんですか?」


「う〜ん・・・、そう言うわけじゃないけどサイラスさんの場合そうする事に意味があると思う。前に話した時に魔法の受け渡しで結構細かく設定しないと上手くいかないみたいな話もしてたからね。」


 人のイメージにもよるが魔法の受け渡しはその設定が肝になってくる。魔法が強力とか使い勝手がいいとかは置いておくとして、何をもって渡した相手に魔法を使わせるのか?俺の場合は中身を知っている事なんかを設定したり、杖なら呪文を設定して売り言葉に買い言葉で循環させたりしている。


 サイラスの場合その細かくがどこまで細かくしているかも分からないし、完全にノーヒントで分からないモノを送ってくるとも思わない。なら、1つは多分これがな?


「ガチガチに固めた呪文じゃなくても大丈夫だといいけど・・・、形を変えて羽を私に。」


「おお、鷹が動いた。これって羽になって飛ばしてくれるんですかね?」


「英国も飛行ユニットの研究はしてるけど、それより先に魔法で飛べない人を無くす方が先なんじゃないかな?」


 プライドが許さないと言う線も考えられるが、それよりも先に若い人の目を引きたいと言う考えがあるのかも。サイラスが言っていた、魔術師ではなくサイキッカーと若い人は言う事もあると。魔法だろうと超能力だろうとこの場合同じものなんだろうが、古いモノを嫌った若い人には飛行ユニットかイケてる装備に見えて魔法は古いモノと言うイメージもある。


 ならその装備や最新技術にも負けず劣らずの魔法を作って実現させれば科学と魔術の境界は曖昧になり、まだ手に入らない飛行ユニットよりも多数いる魔術師を鍛えて装備品を量産すると言う方向性も出てくる。


 特に今の所話題に上がったと言うか作ったと宣伝しているのは日本と米国で、他の国はどこまで完成に近づいているかは分からない。特に中露は怖いな。会議でいいところが少なかった分、発表とかは全部後回しにして水面下で量産体制が整ってからのお披露目も考えられる。


「背中で羽を畳んだ状態でマウントしてますけど動かせる感じですか?」


「ワサワサ動かせる感じはするかな?後は、この棒の方も何か込められてそう。鷹の方は飛行術式のイメージとして、この黒い棒は何かな?カオリ使ってみる?」


「いいんですか?壊さないとは思いますけど。」


「壊れたらそれまで。簡単に壊れるような物じゃないだろうしいいよ。基・・・、これじゃ羽が外れないか。そうなると・・・、止まり木に戻れ。」


 棒を差し突き出しながら言うと羽が外れて元の鷹の装飾に戻り、それをそのまま望田に貸す。流石に杖にして魔法が1つとは言わないだろう。黒い棒・・・、本当に止まり木として鷹の方にまだ何か組み込んでいるとも考えられるか。望田は嬉しそうに受け取って呪文を唱え羽にしようとするが今度は鷹が動かない。もしかして、呪文式ではなくて他の要素で盗難防止を設定した?


 残念と言うか俺の身体は巻き戻って数ミリも成長しない。つまり、サイラスが俺専用の杖を作ったとして盗難防止に定めるなら身長でも体重でもいい。まぁ、体重は服の重さがあるのでそこまで当てに出来ないとして、ありそうなのは身長、性別、後は・・・、なんだろう?最初に使った人限定と言うならそれまでだが、その最初に使うのが俺とは限らないわけで・・・。


「ちわ〜、鑑定術師の神志那で〜す。息苦しくって暴風感じる杖を見たからやって来たぜ!」


「お疲れ様です神志那さん。これって何個くらい魔法込められてるとか分かりました?」


「鑑定した感じ3つかな?相変わらず魔法と言うか魔術師の鑑定って気持ち悪いよ。もっちーは何してんの?杖を振り回したりして。」


「クロエが杖を羽にしたのでそれを私にも出来ないかなと。でも、呪文唱えてもダメですね。なにがいけないんだろ?」


「私も杖って初めて見たからこうとは言えないけど、攻撃的な物は組み込まれてないと思うよ?だから、優しく扱えばええんでないかにゃあ?」


「優しくですか?杖に優しく?あっ!クロエが鷹を撫でてたのってそう言う?」


「いや、単純に触り心地を確かめる為。結構手に馴染んだよ。」


「私の手にはちょっと小さいですね、杖も短いですし。でも撫でてみましょう。」


 望田が鷹をワシャワシャ撫でてから振るうがどうも羽には変化しない。やはり別の条件があるのだろうか?何にせよ神志那が3つと言うならあと一つなにかある。1つは羽で飛行、1つは形状変化、さて最後の1つはなんだろう?もう一つ風系の何かかもしれないし土にまつわるものかもしれない。会ってからそこそこ色々と話したが、そこを元に考えるしかないとしてさてさて・・・、何にせよトライアンドエラーか。


「サイラスさんに連絡とって聞いてみます?」


「それは最終手段と言うか答え合わせかな?そもそも杖は英国に行って設置型の魔術と言うものが作れないかと言う話から作ったもので、受け渡しよりも持続性と使用回数を向上させたり、大衆的に使える物を目指してる。でもその反面杖を・・・、魔法と言うモノを悪用しようと考える輩にはこの上ない道具で、それをさせない為に呪文やら使用者制限やらを組み込まないとヤバいとサイラスさんとは話した。だってそうだろう?例えば私がビルを風化させた魔法を杖に込めて大都市で使えば、一瞬にして都市機能は麻痺するし、藤君なんかがECM攻撃をイメージして杖を作って街中で使っても対ECM処理されてなければPCなんかは使い物にならなくなるしデータも消し飛ぶ。」


「スケールの大きい話ですけど、それをやった本人が言うと説得力が・・・。」


「その辺りも考えてR・U・Rサーバーとかは地下深くに設置して色々と防御処理されてっけどね。アインシュタイン先生理論で言えば、次の次は棍棒と石って話だったけど、そのターンも来なさそうだにゃあ。」


「来ないでしょうね。外的要因の技術的特異点をバンバン生み出すゲートがある限り、石と棍棒使うよりも魔法と拳やら剣で戦った方がよっぽど強いでしょうし、スタンピードを仮に放置したとすればモンスターも含めた全面戦争勃発でしょうから。いや、もしかしてこの棒の部分って・・・。」


「何か思いつきました?」


「思いついたと言うか、前にマジックキーの話を英国で松田さんも含めて話したのを思い出して。」


「マジックキー?」


「そうマジックキー。今の車やらの鍵の安全性を向上させる案で、こうして物体として杖を作れるならそれを鍵に出来ないかって話があったんだよ。例えば魔法で鍵を作って鍵穴も魔法で作る。そして、鍵を回す時はその両方が合致していないとエンジンがかからない。日本は犯罪率低いし世界としても犯罪率は低下傾向にあるけどその分、凶悪犯罪って名の付きそうなものは目に付くからね。」


 最近と言うか去年の12月頭付近であった凶悪犯罪と言えば魔術師絡みだろうか?海外の話だが、浮気した恋人が許せず浮気相手に恋人に駆け付けた警官にとどんどん生き埋めにして家なんかも埋めてしまった。最終的にその国の中位が狙撃して頭を吹っ飛ばして死亡確認がなされだが、かなりセンセーショナルな話題としてテレビで流れていた。


 オフレコの話をするとその犯罪者は統合基地には行っておらず、旗も見ていないので犯罪するな、悪さするなと言う思いは届いていなかったのかもしれない。実際統合基地周辺の治安はいいし英国でも米国でも、なんなら増田に預けたスパイの話では旗を見た人は悪さをしようとすると結構嫌な気分になるらしいと言う話を聞いた。


 ただあれも漠然と悪さするなとしか思っていないので、本人の中の正義は変えようもない。もう少しデータがそろえば何かしらのテコ入れは必要かも。こんな事なら選出戦の時に大々的に悪さするな、犯罪を起こすなを徹底しておけば良かったかな?


 ・・・、今考えても過去は変わらない。出来る事からコツコツしていくとしよう。差し当たってはこの杖だが・・・。とりあえず外に出て地面に付いてみるかな?どんなに技術が発展しようとも人は歩くものなのだから。


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次の次の戦争、アインシュタインの石と棍棒と内容はほぼ同じでは 拳とソーツの武器でその人達が時代を重ね培ってきた物でなく その辺に有った棍棒がダンジョンに有った物に変わっただけなので 狙撃で倒された犯…
いずれ悪さするなポスターを月面に投影するとか でも100年もすると月面見上げる人が減るな コロニーぐらしとかになって
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