表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
街中ダンジョン  作者: フィノ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

655/878

557話 防壁を厚くしよう 挿絵あり

「取り敢えず奏江さんR・U・Rへのサイバー攻撃ってどんな頻度です?」


「日々何かが来て撃退される感じですね。データ量を考えると少数のスィーパーはいるみたいですけど、それも誘導されて間違いを進みます。なので迷路の攻略には相当な時間を要し、既存のマシンでは迎撃されてます。流石に相手のマシンが破壊される所までは進んでませんけど・・・、HDDクラッシュも念頭に考えますか?」


「防戦一方でデータ収集されるのもシャクなのでそれも考えましょうか。流石にハッキングかけてPCなんかが壊れたからと言って文句言ってこないでしょうし、文句言ってきたら自身が攻撃した事の証明になってしまう。」


 ネット空間をフヨフヨ漂いながら奏江と話すが、案内人は虚空を見つめながらフラフラ漂い攻性防壁たるモンスター達は元気に飛び回っている。視覚化と言うかイメージの産物だが、俺としては巨大な迷路に幾筋の光の細い線が繋がったり切れたりしながらデータをやり取りしている。その筋一つ一つがR・U・Rの使用状況であり、真っ当な接続である。


 しかし、たまに光の筋が迷路の外壁や中の壁ににぶち当たり、直進しようと壁にめり込めば直ぐ様迎撃されて配備したモンスターから不快な画像なんかの詰め合わせが送られたり、接続が切られたりしている。


 モンスターはデータなのでコピーで増やせるが、案内人は魔法も混じっているのでおいそれとはいかない。見た感じ攻性防壁の突破は難しく普通のマシンでは処理速度の問題で太刀打ち出来ないのだろうが、海外でも出土品研究は進んでいるしR・U・Rに使用している出土品も出てきているので、現状にあぐらをかくわけにもいかない。


 堅牢な城壁は崩れるもので、この攻性防壁もいずれは攻略されるだろう。今はまだ理解出来ないかもしれない。しかし、明日も理解出来ないとは限らない。少数でもデータを持っていかれればそれを積み上げでイメージも膨らむだろうし・・・。


「最善策と言うより次善策、ネット引きこもりの疑いのある奏江さんから何か意見はありますか?こう・・・、相手をぶっ潰してもいいので攻撃をシャットアウト出来る的なもの。」


「ネット引きこもりではありません、単純にクロエさんに会えないから案内人さんを見ているだけです。ギルドが世界化したならギルドの通信網をR・U・Rサーバーに集約するのはどうですか?R・U・Rの配置は各国の政府が決めてますが、個人販売はしてません。なら、ギルドに置くとすれば発信元の特定も容易で、国としても言い逃れは厳しい。」


「確かにR・U・Rからの発信者割り出しならそれが容易そうですね。流石に使用履歴は残るし、国として隠蔽しようにも回線やら製造番号を辿れば丸わかりになる。ただ、問題点は不正改造された場合とスパコンなんかを使って通常回線から無理やり侵入しようとした場合か。この迷路に更に外殻構築するのは面倒だし、かと言って意志ある相手を長時間迎撃し続けるのも不安は残るしなぁ・・・。今の所迎撃システムが破壊された形跡はないですよね?」


「ないですね。R・U・R内でもボスとして出たモンスターは倒されず、こちらの世界でも突破される兆しはありません。一応、R・U・R内でチートの様な行動を取ろうとした可愛いイタズラは見られましたが、バグ扱いでキャラクターが即死しました。」


 イタズラって何しようとしたんだろう?R・U・Rって探索モードと対戦モードが実装されていて、対戦モードは地形を弄る以外は素のスィーパーの能力でガチンコするし、探索モードならかなりマップが広げられたが選択式で最初から山岳地帯の様な荒野や最初の石造りの様な階層、最新マップの森林地帯しかない。


 一応、探索モードマップ内でも極稀に他の人に会う事は出来るが、そんな不確定要素を頼りにするくらいならメタバースと言わずマルチバースで出会った方が楽だろう。まぁ、そのマルチバースサービスも秘匿回線で国家間の会談で使われたりするだけで、まだまだ一般化はしてないし、個人で使うなら出土品探しからとなる。


 対面で会うならそれ相応のメリットもあるが、電話だけ映像通信だけでも事足りる。小売業界的にはマルチバースを進めてバーチャルで商品を手に取れるサービスを!と意気込んているので、そのうち通販サイトはマルチバースに集約されるかもな。


「イタズラって何しようとしたんですか?」


「使用するアバターはある程度いじれるのですが、生成AIにクロエさんの身長と体重を入れてカラーコードで肌色のインナーを着て全裸を・・・。」


「死んで当然のやつですね!えっ?イタズラって私を作ること?」


「いえ?特定のカラーコードを特定の衣類等に入れる事です。誰が何を着ているかは別としてR・U・Rは内部再現も忠実なので、下手にセンシティブなモノは生成しない様になってます。それをカラーコードを悪用して・・・。アバター生成時に特定の個人を思わせる作り方には規制を入れたので大丈夫ですけど、秘匿領域ではどうなってるか・・・。一応、あちらでは全裸化ですし。」


「個人で楽しむ分には口出ししませんが、規制は強めにお願いします。例えば腕八本にするとか。」


 エロの力は偉大である。寧ろエロスがあるからこそ人類はここまで広域に分布出来たと言っても過言ではないが、それの対象にされるのは流石に勘弁願いたい。例えばさっきの奏江の言う通りに操作するとすれば、すっぴんでインナー状態のアバターを作って肌の色とインナーの色を合わせればお手軽全裸生成が出来ると言う事か。まぁ、仕様上普通にR・U・Rを使う分には破けてもインナーまでと言う制約はあるものの、服と肌の色が一体化してたらパット見全裸だしな・・・。


  挿絵(By みてみん)


 盲点と言うかやれるけどやらない事を一体誰がやったのやら・・・。水着写真とかも撮影されたし完璧な数値は分からないにしてもAIなら近似値とか出してきてそれっぽく見えそうで嫌だな・・・。いや、寧ろ写真取り込んで数値を学習すれば動かないものなら正解の数値が出せる?何にせよ公の場でやるのは遠慮願おう。


「化け物生成は既に肉壁の方々がやっているので、クロエさんに似たアバターを作ろうとしたら検知して化け物にする様にしましょう。元々アバター作成技術も肉壁への柔軟度を上げるためのモノでしたし。」


「あの人達は身体弄ってなんぼの所がありますからね・・・。と、エロいチーターと言うかイタズラした人はいいとして、ファイアーウォールの再構築案ですよ。個人的には今の防壁を核としてスケールダウンしたモノと考えてますけど。」


「佐沼さん達が監視して扱える物と言う事ですね。確かに魔術師:雷、それもネット上でのやり取りに長けた人が複数人で攻撃し出したら手が回らない所も出て来ますねマンパワーで賄う方針と言うところですか?」


「そうなりますね。後はせっかくロボテックスーツやパワードスーツのデータも充実しだしたから電子の世界での簡易アバター化も出来ないかと。流石に魔術師程動き回れませんけど、角ばったポリゴン製の機体ならデータ量次第では動きやすいかなぁ〜。防壁を全て電子制御すればマシンパワーを食いますけど、ある程度スケールダウンししたロボ風のアバターなら思考だけと言うか、モーショントレースで動かせばどうにか・・・。」


 本当は思考ダイブトレースシステムが完成していれば話しは早い。訓練は必要だろうが操作する人の脳波でも読み取って貰って電子空間で好きに動ける様になるだろうから。しかし、今の所モーショントレースが限界なので動きをなぞらせるしか出来ない。なら、リアルタイムで動きをなぞるモノを作れればかなり有用なのではないだろうか?


 それに職はなくともスィーパーの動きのデータは多数ある。それをトレースさせればインスタント強者も出来る?近寄ると怖いからガンナーメインで補修はスクリプター、回線切断は剣士辺りかな?後は案内人に案内させるか、監視している人員が指揮権持って指示すれば済む話とかになるだろう。なにせ物理的な制約のない電子の世界。


 指示=現場対処なら急行の手間は省けるし、何よりデータが完全破損しない限りはコピーで増やしてインスタント兵士が無限供給も出来るし邪魔なら削除してしまえばいい。今の所攻性防壁がオートモードとするならスケールダウンしたマンパワー戦略だが、PCに詳しくない人にデータが勝手に対処していると話しても不安は残り説明しても理解出来ないなら結局人為的な手段をお願いされる。


 なら、扱える知識がある人だけが扱って不具合をなくしつつ、人が管理しているとアピール出来るシステムならそこそこ信用してもらえるかな?データ量を軽くすれば魔術師対処は難しくても通常のハッキングには十分対処出来るだろうし、何よりキーボード打つよりも早くハッキング手段を止められたら相手としても行動不能になるだろう。


 ここで文句が出るとすれば普通のインターネット回線を取り扱ってる業者からとか?監視下に置かれるのはユーザーとしても不満が出そうだし、それを回避するなら政府からの通達でどうにかするしかない。まぁ、主要施設だけ監視下に置くなんて方法もあるにはあるが、どういった決定がされるかは分からないしな。


「ロボットは詳しくないですが、どういった形にして容量落とします?人から離れれば離れるほど操作は厳しくなりますけど。」


「カッコ良さは求めないので可動部分は肩、肘、手、首くらいで足はなし・・・、いえ魚にしましょうか電子の海と言うくらいですし。」


 えっちらおっちらモデリングしつつ容量を落とす。そこそこの性能でそこそこ動けてそこそこ対処出来ればいい。寧ろ数がいるので軽い方がいい。なんならパッケージ化して圧縮し普段は人が使い必要時に解凍して数を揃える方が・・・。


「モデリング的にはこれでどうです?」


「流石に指が無いのは操作すると言うイメージが削がれるので手の部分は作り込みしょうか。顔はそのまま立方体でいいですよ、その代わり胴体は動きに直結しそうなので作り込んで圧縮しデータを胸にでも詰め込んで・・・。」


「圧縮データってこのデータをどれくらい折り畳んで入れますか?内部にスィーパーのモーショントレースまでいれると大きくなりますけど。」


「最悪1〜2体で後はクラウドから引っ張ってくるって方式でもいいかもしれませんね。要は時間が稼げれば相手としてはバレたと感づいて撤退するでしょうし、それを無理やり突破するメリットはないですから。」


「最初から壊す事が目的なら大規模攻勢に出るでしょうからね。それを検知したなら私も仕掛けますけど。」


「奪うメリットはあっても壊すメリットはないですからね。特にR・U・Rのデータを壊したとしても使ったスィーパーの戦闘データが消失するくらいですし。嫌なのはインフラ攻撃による身代金要求とかなのでその際はボコボコにしてしまいましょう。寧ろ探知ツールで発信元が割れれば本人達を拿捕出来ますし。」


  挿絵(By みてみん)


 そうして作ったのがこのモデル。基本的には容量を落としつつR・U・Rの攻性防壁サーバーから回線に乗って問題箇所へ転送されて対処する。本来ならそれもデータ上で勝手にやってくれればいいが、目に見えて誰かが対処していると分かった方がいいだろう。


 それに要スィーパー対策も兼ねているので、このプログラムの権限を奪われないかも心配な所ではあるが、その場合このプログラムより上位に位置する案内人なんかがまとめて破棄するし、バックアップデータは攻性防壁サーバーではなく、R・U・Rサーバーに保管する手はずなのでコピーしてくれば再利用可能。


 難点と言えば慣れるのにそこそこ時間を要するとか?一応R・U・R経由で探索モードフィールドを視覚化すれば扱いやすくなるかもしれないが、足を省いてしまったのでモノフィンで空中を泳ぐ形になるかも。その際は痛覚へのフィードバックをゼロにしてもらおう。じゃないと腹筋や背筋が大変な事になりそうだし。


 R・U・RにEMS効果はないが電気刺激で痛みを再現しているので、人が普段やらない動きをイメージし続ければ筋肉痛を誤認して痛みを与えてくるかもしれないしね。


「さてと、奏江さんこれ扱ってみます?」


「そうですね・・・、政府への報告書や佐沼さん達との打ち合わせもあるので一度操作してみます。しばしお待ちを。」


(えっ?離れないといけないの?せっかくこんなに一緒にいるのに?でも、クロエさんがモデリングしたモノの中に入って操縦してるって事は、産まれた子供に精神を重ねてる状態よね?そもそもデータに感情はないし、なら、私は今からクロエさんの子供になる?)


「どうかしました?」


「いえ!生まれ変わってきます!」


 奏江は言葉を残して消えてしまったが、元々デフォルメされた姿だったのでぬいぐるみが無くなった様で多少寂しい。まぁ、それでも光の糸やらがR・U・Rサーバーに向かい無数に突撃しているので受精時の様な賑やかさはあるのだが・・・。


「戻りました!」


「おお!動き的にはどうです?簡略化を目指してマニュアルとセミオートがありますけど。」


「セミオートは規定プログラムが容易に呼び出せる感じですね。その分出来る事は少ないと言うか、このセミオートだけでもハッカー対策はいい様な・・・。」


「発信元探知プログラムにゴミデータを壁として割り込ませるプログラム、後はこのプログラム自体にハッキングかけた時に相手のマシンに高負荷をかけて遅延しつつ迎撃プログラムを呼び出したりしますね。」


「このマニュアルにある召喚と言うのは?」


「コレと同じモノをコピーして出した後に指示する用ですね。流石にハッキングするにしても単一ではないでしょうし、複数経路から攻撃されれば手が足りない。なので自爆覚悟の特攻要員です。まぁ、それは更に簡素化されて魚のダツみたいなんですけどね。」


 魔術師なら手痛くなくハッキング出来るほどにPCに精通しているなら・・・、電子の世界を俺や奏江の様に自由に動き回れるなら心伴いが、これはあくまでメインサーバーへの攻撃を減らす為の措置なので時間稼ぎさえ出来ればどうにかなるし、案内人が誘蛾灯の様にいるので迷路に誘い込まれて8割は間違った攻略をしいられる。これで多少は堅牢化出来ただろうし、政府としても納得してくれるかな?


 結局人は目に見えないものは信じないし、だからこそ警備員は居なくならない。時代が移り変わって人からロボットになろうとも最終的には不備がなかったかのログ確認はするだろうし、人が機械と喧嘩し出せば管理者が来る事になる。


 昔はカーナビとよく喧嘩したな。こっちの方が近道だとかこの時間この道は混んでるとか。それでもカーナビは大きい道を通そうと案内するし、目的地付近でナビの示す道に入ればさも当然の様に案内を再開する。


 まぁ、機械に感情はないので一人相撲もいい所だが、人はその相撲を取る相手を探している。間違ったらその人に押し付けて文句を言えばいいしねぇ。


(このデータって僕も使っていい?)


(賢者が?)


(そうそう。新しいユニットとしてゲームの駒に出来るし。)


(かまいはしないが何か目印は付けてくれ。流石に指示してないデータが勝手に動き回ってたら不審に思う。)


(なら案内人の手駒の1つに登録しとこうかな?)


「慣れも必要で視覚化するなら雑でも上下を示す程度のモノは必要ですね。私にはあんまり関係ありませんけど。」


「戦闘機のレチクル的なものでどうです?大規模攻撃ならR・U・Rサーバーも攻性防壁サーバーもそれにかかり切りなるから探索モードのデータを参照させて無理やりフィールドに呼び込む事も出来そうですが。」


「信号を立体に落とし込むのはかなり容量食いますね。ただ、そこで個を保てない信号はPCからの攻撃なので脱落狙いならありなのでしょうか?」


「その辺りは佐沼さんと話しを詰めましょう。私も好き勝手してますが自己流で詳しくプログラミングを習ったわけではないですし。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
評価、感想、ブックマークお願いします
― 新着の感想 ―
AI画像等で心当たりが有るフィノて言う人だが 規制のいたちごっこ、クロエの魅力で対象は全世界の人々か ネット世界も何処までファンタジーに寄せるかで変わってきますね 現実ならハッカーも事を起こす時は殆…
なんか最終的にデータ上にガーディアン再現しそうだな >圧縮しデータを胸にでも詰め込んで そのうちクロエのアバターを胸に埋め込んだアバターが流行るんだ 巨乳のアバター倒すと大量のクロエアバターが呼び出…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ