556話 師走は忙しい 挿絵あり
種子島から帰りマスターとして仕事を再開。いや、種子島にいる間も仕事はしてたよ?主にPC関係だが・・・。寧ろPC関係が最近メインになりつつある。と、言うのもR・U・R関連から国外におけるハッカー撃退の為にファイアーウォールの拡大構築を急務として政府からの依頼された。まぁ、サイからの話だとR・U・Rバラした後はメインサーバー直通便状態なので簡単には突破されるとは思えないが、それは知っている人の意見であって知らない人からすればハッカーからの攻撃=隙を突かれて気付いた時にはデータ持ち去り後に発覚と思わなくもない。
「それで、政府は今のファイアーウォール体制に不安を覚えていると。佐沼さん的にはどう考えます?」
「それもですが戦闘データ容量が莫大なので保存方法もどうするか検討されてますね。世界規模で日夜R・U・Rが使用されている関係上、古い物は定期的にログを削除してましたが後進育成用に残すログの精査もしないといけないし、眠らせているデータを奪われればそのままその国のスィーパーの戦闘方法として解析される可能性もある。特に中位やクロエさんのデータは狙い目ですよ。」
「残したいならディスクやHDDに保存して物理的な接触以外完全拒否でいいんじゃないですか?完璧に防げるとは思いませんけどR・U・Rの戦闘データはその扱いが無難だと思いますよ?台湾側との協力体制的にはどうです?」
「元々試作品を稼働実験までしてたものですからね。完成品にはほど遠いとしても行動トレースならどうにか。一応、無作為な戦闘データを選び同じ職の方にトレースしてもらいどこまで自身のモノに出来るか実験はしてみましたが、繰り返しトレースしても半分程度です。まぁ、単純な身体の使い方なんかは馴染みやすい半面、技術を要するものは時間がかかるでしょう。」
「やはりR・U・R内で正拳突き千本とかが妥当であると?」
「いえ、スィーパー科学的には理解出来るかが争点になります。無駄なく最短最速最高打点で突く、言葉は簡単ですがその理想を追い求めるから格闘家の方々は日夜訓練されています。少しでも自身のイメージが完成出来る様に。」
「ふむ・・・。」
ファイアーウォールの話からR・U・Rの話になったが台湾側との協力体制は順調な様だ。ただ、このトレースシステムは中々曲者かもな。確かにイメージが先行して身体が付いてくると考えるスィーパー科学的には、正拳突きをするよりも先に理想的な正拳突きと言うものをイメージしてから実践する方が効率的である。それこそ毎日一万回正拳突きをしたとしても、それが理想的ではなく何処かに不安を抱える様なモノなら結果として不安な正拳突きが完成してしまう。まぁ、それでもやったと言う実績はあるので成果ゼロと言う事はない。
だが例えばこれを赤子に使ったらどうだろう?いや、もっと言えば薬やらで記憶を曖昧にした人とかに植え付ける様に使ったら?何も知らないが正拳突きと言うものはトレース出来るのでそう言う動きだとは分かる。そして、それが最も理想的な動きであると言い聞かせていけば理想的な正拳突きは完成するんじゃなかろうか?
魔法への応用は難しいかもしれないが、近接系下位なら十分にインスタント戦力強化出来る?特に持っていったのが中国なら武術は山のように存在するし、それに付随して武器や暗器も多い。やはりデータ流出は避けるべきだしファイアーウォールを再度堅牢化して安心材料を作るのも急務か。
しかし、どう堅牢化したもんかな?現状のアドバンテージとしてはR・U・Rを介して侵入するならメインサーバー直行便なので発見と撃退はどうにか出来る。しかし、魔術師:雷が絡み出すと通常回線からの攻撃も可能なので不安は大きい。
デジタル親和性と言うか自己をプログラム化しての悪さだとR・U・Rはよくてもそれを中継しない攻撃だと守りきれないしな。そうなると、インターネット各社のサーバー経由地として引き込むのが得策だが、経由前に逃げられたらどうしようもないし何より最終手段の物理的接触侵入と言う手もあるわけで・・・。いや、物理接触されてる時点で完全に潜り込まれてるわけか。
流石に今の世の中インターネットに接続していないインフラなんてないし、仮にあるとすればそれは個人宅レベルだろう。うちの場合水は水箱から全て引いているし、電気は電力会社から買っているがストップしても発電出来る。ネットは自分で電波拾えるのでテレビなんかに動画を流すにしてもそこまで困らない。火も出せるし・・・、あれ?割と困るのは企業で個人単位ではそこまで困らない?
通信網やら制御システムとしてIT技術は優秀だが、今の御時世必ずしもインフラを購入しなきゃ生活出来ないとも言えないな。まぁ、個人技量に依存する部分は大きいにしてもだ。
「話を戻しますが奏江さんの見解としてどうです?ファイアーウォール方面ですが。」
「彼女及びウチで携わってる人間の見解とすれば簡単には突破出来ない半面、カバー範囲がR・U・Rサーバーと限定されているから大丈夫と言う話でもあります。政府の言う日本国的なファイアーウォールを作れと言われたら中々厳しい。」
「そうですよね・・・。無数の通路が蟻の巣並みに広がって更にそれが数多の行き先に繋がる。主要拠点として接続先を絞る事は可能でしょう?」
「可能ですが魔術師が絡むと無理やり広げられるか、或いは偽装してすり抜けも可能でしょう。少なくとも何段階化の防御システムで遅延は出来ても防ぎ切るのは厳しい。」
「日本はまだいいですが、海外だと原子炉も現役で稼働している所は多いですし、少ないとは言え何時テロリストが息を吹き返すか分からないですからね・・・。」
12月と言う寒い季節になったが考え事は減らないな。海外の事はギルド世界化が宣言されてその国のギルドに任せればいいとしても、国を跨ぐテロリストはどこにでも現れそうだし、相当数潰したからといって完全に息の根を止められたわけじゃない。
救いとすればギルドはどの国も犯罪者に厳しいことかな?スィーパーの管理とは生存管理やサポートもそうだが、先ずは犯罪を犯させない事も含まれる。日本ではないが、海外ではスィーパーが暴れて軍が出動する事態なんてのも報道されたし、対テロ要員に政府が中位を雇うのはメジャーな事になっている。
「お疲れ様です、コーヒーでいいですか?」
「ありがとうカオリ。頭痛の種は消えないねぇ、考え方次第ではネット内スタンピードだけど、その戦場にいる多数は関係ない一般人っていうのがネックだ。」
「音もなく忍び寄ってきますからねハッカーって。でも、それって対策可能なものなんですか?今までだって既存のモノは突破された事はあったんでしょう?」
「目的によるのかなぁ・・・。突破された事は多分あるんじゃない?ランサムウェアとか個人情報流出とか。R・U・Rサーバーは分からないけど完璧はないからなぁ〜。」
政府がR・U・Rサーバーのファイアーウォールで納得してくれればよかったが、ペンタゴンにしろ他にしろ色々やっちゃったからなぁ〜。ゲロる前に痕跡を消しておけば頭を悩ませる事もなかったのだろうが、出来ると分かった上で放置するのもまた違うしなぁ〜。
「取り敢えず視覚化出来れば何か良さそうな案とか出そうなんですけど難しいですよね?」
「流石にデータやインターネットをイメージしてもモニターに囲まれてるくらいしか・・・。」
「でも、前にサイバー攻撃を視覚化してるサイトがあるって言ってませんでした?」
「あるけどそんなサイトに捕捉される程度のサイバー攻撃って完全に防がれる前提のフェイクなんじゃない?しかし、視覚化か・・・。いや、その前にどうやって攻撃されてるか確認した方が・・・。」
賢者が対応と言うか遊んでいるので俺はノータッチ部分だったが、まずは見ない事にはイメージも出来ない。なら、一度迎撃現場を見るのも手か。年末なので早めに対策してゆっくりとクリスマスを迎えよう。




