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街中ダンジョン  作者: フィノ


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547話 本部長会議 その1 挿絵あり

 コツコツと靴音が短く響く廊下を歩く。すれ違う人は白衣を着て、それが研究者としての姿だと言わんばかりにタブレットを小脇に抱えたり書類の束を持っていたりする。神志那が旅立って後数日で12月を迎えようかと言う中、俺と望田は本部長会議に出席する為にラボを訪れているが、飛行以来中々来る事がなく様変わりした姿にちょっとついて行けない・・・。


「外凄かったですね!固定処理してるとは言えドームの形成も小型発電プラントも下の層を改築してバイオマス化してるのも!このまま宇宙行けるんじゃないですか?」


「それは種子島にいる斎藤さんやら高槻先生しか知らないけど、このラボをいじくり回した末の試作品なら、大元の方もそれなりに変わってるさ・・・。」


 特にクリスタル関係がエグいかな?元々クリスタルは八面体で大きさや色の濃さと言う部分でしか人は等級を付けられない。そして、大きさはモンスターの大きさに直結してくるので大きいクリスタル=大型モンスターを倒した事になる。まぁ、その大きさも最大で大人の拳程度で後はどんどん真っ黒になる方向らしい。


 圧力や回転を加えると電気や熱エネルギーを生み出してくれるこのクリスタルはちょっとやそっとでは壊れないし、寧ろ使い終わるまではそのまま残っているので、クリスタルの量=国のエネルギー自給率と言っても過言ではない。実際火力発電所は圧力火力発電所になったり、原子炉は廃炉作業が進みこれもまた圧力発電所にに変わっていっている。


 まぁ、家に大型クリスタル発電機やらこっそりクリスタルリアクターを使って電力会社との契約を打ち切った人は多いと聞く。そんなエネルギーとしてありがたく、個数を集めれば発電総量や熱量も上がり最後は透明になって消失する素敵物体の唯一の難点は触媒を使わないと加工出来ない事。


 きっちりと全て八面体構造なので積み上げれば量も入るのだが、人とはわがままなので円筒形にしたいとか液体のまま運用したいとか、或いは大きなクリスタルが欲しいとかいい出す。まぁ、クリスタルの液化はラボでは成功してる。


 ただ液化と言われて水みたいなサラサラのモノを想像したら大間違いで、なんと言うか飴細工作る時の飴と言うかガラス細工作る時のガラスと言うか・・・、膜の中が流帯になった様な形成していた膜か流帯になった様な印象を受ける。取り敢えず触っても手につかないし触媒を綺麗に拭き取れば固まるので好きな形にはしやすいのかな?ゆくゆくはこれも開示案件になるのだろうが、今の所ラボでは鍛冶師が円柱形のロッドにして色々と利用しているな。


 例えば重機やフォークリフトなんかはクリスタル電気エンジンを採用してガソリン車以上の馬力を実現させてみたり、飛行ドローンなんかは継続飛行時間を競ってみたり。実際ドローンはクリスタルを加工した電池を使用して既に半年以上飛行しているらしい。


 元々クリスタルのエネルギー量が膨大なのでそれもまた不思議ではないか。最近はそのクリスタルを薄く伸ばして何かに扱えないかと言う研究もされていて、最新の報告では不可視光や可視光線でもクリスタルが反応する可能性があるとされているらしい。


 学者と言えば顰めっ面で黙々と研究して成果が出なければ机を叩くイメージがあったが、ここの学者連中は笑顔で殴り合いしつつ成果を出したり新しいテーマをどんどん出しているので、ストレスなく働いているのかもしれない。言い方は悪いが大学の研究サークルとか?まぁ、俺は大学に通ってないからイメージなのだが・・・。


「お久しぶりですクロエに望田さん。最後は監査でしたか。」


「おっ!お久しぶりです橘さん。警察方面は大変みたいですね。」


「お久しぶりです橘さん。」


「大変どころか増員要請多数ですよ。世論としても迷宮入りの事件の再調査や誤認逮捕がなかったかの再調査をしろと盛り上がってますからね・・・。ただまぁ、それは同時にパンドラの箱を開ける行為なので政府としても、ゲート出現以前に時効を迎えているモノは再調査した結果誤認逮捕だとしても定額の補償金で解決するとしてますし、注力したいのはゲート出現以降の犯罪と言うのは変わりません。まぁ、その時効を迎えた事件の結果を公表するかも分かりませんけどね。」


 会議室に向かう廊下の壁に格好付ける様に背中を預ける橘が挨拶を交わしながら話す。世論的には割と大きい話なんだよな。例えば昔はテレビで行方不明を探したりしていたが、今だと探偵スィーパーに頼んで見つけてもらったりしている。人探しはそれで済むが、汚職や殺人、麻薬使用なんかの警察しか情報を持っていない様な事件は結局警察の領分となってしまう。


「迷宮入り事件ってかなりありませんでした?ケイゾクって話になって。」


「あるから大規模採用なんですよ・・・、特に職に就いた人を優先的にね。まぁ、今はスィーパーじゃない人の方が疎開もあって少ないですが。ついでに言うと裏金問題のあった議員とかは雲隠れする算段を付けてるとか付けてないとか。イメージ商売ですからね。」


「それでも見つけられなかった人ってどうなるんです?こう・・・、神隠し的な。」


「そのまま迷宮入りでフィニッシュ予定ですよ・・・。流石に遺留品の不足や採取ミスがあった場合どうにもなりませんし、何より少数ながら人体消失なんて事件もありますからね・・・。」


 橘がドでかい溜め息を付いているが昔から神隠し的な事件は多い。大体は駆け落ちとか山川海で行方不明とか海外逃亡なんて話になるのだろうが、中にはトリックが分からず放置されたものも。まぁ、何かしらの偶然が重なれば本当に予期せぬ事態も起こりえるし仕方ないだろう。


 それに橘の言う様にゲート出現当初の事件の方が混沌としている。全員職に対しての理解が薄い為、故意出なくともそうなったケースもあるし、そう言ったイメージで犯罪を犯した人もいる。何にせよ警官に対して大小含めて事件の数が多いので増員は仕方ないだろう。


「それよりも今回の会議の議題って何か作ってるんですか?会議するから行ってこいとしか言われてませんが。」


「知らないんですか橘さん。今回はお茶飲みながらの雑談ですよ雑談。ギルドフル稼働に伴い各ギルドの問題点や人員稼働状況、その他警察なんかとの協力体制に付いて話し合います。まぁ、各ギルドで個別対応案件が多いので余程問題がない限り懇親会みたいなものだと思ってください。」


「その懇親会で愚痴る方は多いと思いますよ?例えば誘われずに置いてかれた人とか。」


「クロエたんお久しぶり〜、宮藤さんもどうどう。ゆくゆくはうちが隣でサポートしながら一緒に奥に行くから。」


「うおっ、宮藤さんに海道お久しぶりです。割と突発的なものがあったので許してください。」


「お久しぶりです宮藤さんに海道さん。そう言う宮藤さんってどこまで進んだんです?」


 橘と話しながら進んでいると宮藤と海道がベンチに座って肉まんを食っていた。流石に海道の身長は伸びていないが宮藤との親密度は上がっている様だ。身元を引き受ける側と引き受けられた側なのだが、今はもう海道も本部長としてギルドをまとめている。ただ、特定の副長を作らず指名するのは宮藤なので、それだけ信頼関係もあるのだろう。


 まぁ、そのうち結婚しちゃえよ。秋葉原の死んだ友人達ばかり見るのではなく、生きた海道を見れば鎖にもなるしおいそれと死に急がんだろう。


「今の所59階層ですね。東京近郊を中心として教導を行ってますからサポート方面に時間を取られてますよ。そうでなくとも家に帰れば海道さんが大量にご飯作ったりして待ってますし・・・。」


「宮藤君、その発言は特定の人間には死をもたらす。よって元上司として殺人容疑で逮捕するとしよう。」


「そう言う橘さんはフェムとばかりいるから悪いんですよ。事件を追う時もフェムと一緒、食事するのも帰るのもフェムと一緒。婦警達からは人気ある半面尊いとの声も・・・。そう言えばフェムは?」


「フェムは父の元でメンテナンス中。仕方ないだろう、するつもりはなくても見るだけでも鑑定出来ると言うのはどうしも相手を身構えさせる。それに比べクロエは見ても鑑定出来ないしフェムは私の思考の一部を加工している娘だから気兼ねがない。」


「つまり橘さんって美少女ドールに延々と独り言話してるヤベー奴であると。」


「カオリ、個人の名誉の為に言うけど分離した自己性愛なら自分を裏切らない。まぁ、知らない人が見たらヤベー奴だけど、ストレスを無くすと言うなら独り言も分からなくもない。人形と話すヤベー奴だけど。」


「ヤベー奴やん橘さん・・・。肉まんくうか?」


「ヤベー奴を連呼しない。海道さんが可哀想な者を見る目で私を見ているでしょう。雑談はコレくらいにして会議へ行きましょうか。」


 橘が話しをぶった切りゾロゾロと移動。途中で兵藤や浦橋、内藤や奏江なんかのラボを見学していたメンバーとも合流していき総勢50名。裕子も来たかったらしいが今は育児の真っ最中で辞退と言う運びになった。まぁ、グループLINEやらで知っているので大丈夫だろう。


「さて、第1回チキチキ警察教導官及び各都道府県本部長会議〜。議長は僭越ながら私クロエと・・・。」


「副議長の望田です。議事録は後から作りますが、必要な方はICレコーダーやスマホで録音しても大丈夫ですよ。ただ、議事録作る前に外部に漏らさない様にお願いします。また、喫煙や水分補給、飲食はご自由にどうぞ。」


  挿絵(By みてみん)


「はい、では何か議題のある方。雑談でも構いませんよ?例えば不良スィーパーどうしようとか、日々の業務に押しつぶされそうとか、真面目に仕事してるのに何かとトラブルに巻き込まれるとか・・・。」


「あ〜、じゃあ俺から。獣人を職に就けたいって要望が多いけどどう処理してる?政府やクロエさん達の情報を元に勉強はさせてるみたいなんだけど、下手に入場許可出すと試しにウチもって話が増えそうでな・・・。」


 口火を切ったのは兵藤か。確かにその手の話は多いんだよなぁ。ジレンマとでも言えばいいのか、人には大多数の明確な基準でスィーパーに成った人とイレギュラーで年齢を下回ってスィーパーとなった少数がいる。まぁ、その場合イレギュラーを出さないとさて入場制限をつければいいのだが、獣人の場合学力や対話性と言う曖昧なモノが判断に出てくる。


 車の車検と一緒で今日よくても明日悪くなるかもしれないし、逆に昨日よくても今日悪くなるかもしれない。勉強させて話して仕事してと一朝一夕で身に付くものではないのだろうが、逆を言えばそれがゲートに入った次の日には認められるのかもしれない。


「人は年齢でいい悪いが言えるけど獣人は感覚だからな。」


「死ぬかもしれないって言っても一定数『俺が守る!』って言う人はいますね。そこそこゲートを進んでる人が言うと断りにくいです。」


「私ん所は法律課さんにテスト作るの頼んだ!ちょー難しいテスト解けたら入っていいよって感じ。」


「酒井たんはそのテスト解ける?」


「初っ端は0点だった・・・。いやね・・・、高校まで勉強とかしてこなかったからスィーパー式勉強法でも知識が溢れかえってて・・・。」


「基礎学力的な問題かよ。てか、それだと本部長の仕事は地獄じゃね?」


「あっ、そっちは問題ないよ?一回やれば固定処理でも作成でもしてやり方は覚えられるし。まぁ、量は地獄だけど・・・。」


「と、言うかフェリエットどんの強さはどんなもんでごわすか?戦闘資料がない分判断に困るでごわす。」


 泰山がフェリエットの強さ・・・、言うなれば妖怪と言う職について知りたい様なので、会議の為に貰った英国でのエヴァ戦の映像をモニターに流すと、途端に静かになり戦闘者としての目で両者を吟味する。反応が強いのは雄二と卓かな?まぁ、雄二はエヴァに興味がありそうだが・・・。


「R・U・Rでドローは珍しい。コレってクロエさんが?」


「多少はバックアップしましたけど大本は既存のR・U・Rデータですよ奏江さん。まぁ、フェリエットは発展途上ですが概ねゲート内の動きと遜色ありません。」


「コレは・・・、僕としては弟子に欲しいと言うかなんと言うか・・・。」


「お前って妖怪変化だっけ?」


「違う、変身ヒーローだ。ただ比重の均衡を保てればヒーロー戦隊にも出来るし・・・。」


「レッドはいるから残りのメンバーが欲しいのかよ。」


「それよか力比べとかしてみたいねぇ。獣人はガタイのいいのも多いし、力もあるからスィーパーに成ってどうなってるか知りたいねぇ。」


「はい、クロエさんはフェリエットさんをどちらか傾けるつもりですか?」


「いえ、私は中立を目指してますね。ただ、フェリエットが望めばどちらかに傾くでしょう。今の所は獣人はギルドのテストで受かれば入場と言う方式でいいですか?学力は測れても全員の対人スキルを見るのは無理ですし。」


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クリスタルは夢のエネルギー源ではあるな 何処ぞの掘って掘って掘りまくれ言ってる大統領でも乗り換えるだろうくらいに 橘はいずれフェムになる上に外見はクロエだからな 理由はあるんだろうけど行動だけ語ると…
クロエ派閥の会合、実際1000年後にも団結し機能してる超派閥 激務だが超勝ち組のチケットだったなあの大会 パロディの組織のゲーム、小説とか陰謀論等多数出てもほぼ事実や事実の方が凄い事してそう ソーツ…
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