546話 どっちがお得? 挿絵あり
ぼちぼち日々の仕事をこなし日々の平穏は続く。熾烈な企業間戦争はまぁ・・・、俺には関係ないかな?ただ、日々の売り込みというか新商品置かせてくださいと言う売り込みは多い。テレビCMにネット広告、マネキンによる実演販売に試供品の無料配布等々、スィーパー向けの商品が増えるにつれギルドは企業からすれば販促地として見られ実演許可や販売場所の確保と何かと声がかかる。
まぁ、スィーパーやショッピングモールに置いたりアウトドアショップが販売スペース拡大したりしているのだが、やはり1番目に付くのはスィーパーの集まるギルドだし、そこで一定数のモニターから意見が貰えれば販売利益も算出しやすい。
そこそこ安定して売れている商品のラインナップとしては職や装備品により異なるが携帯食料やら高カロリー食品、他はトイレ系の商品も多いな。携帯トイレと言うか尿パッドや大用の携帯トイレは売れ筋だし大型簡易トイレをチームとして買う人もいる。
確かに野郎は小ならその辺で警戒しながら出来るが男女ともに座ってする場合はどうする?と言う話し合いはしばしばされるらしい。まぁ、死ぬまでに誰しもが必ずやる事で行く場所なので、自己完結出来る様にイメージを作るか、諦めて出来る状況を作るかの違いだろう。そのせいで男女で固めたい人も一定層いるみたいだし。
「クロニャンクロニャン、先に種子島行っていい?割とガチな話で。」
「視察の件ですか?流石に来月やるからって早すぎません?何か問題が発生したんですか?」
「問題と言うか今回のプロジェクトは協同と言いつつ日本主導の部分が多いかんね。先に現地入りして斎藤っちや山口ちゃんと意見交換したいのさ!と、そう言えばクロニャンは今回の有人試験飛行に使うエレベーターの仕様って知ってたっけ?」
「いや、半月ほどゲートに籠もったり出て来たら出て来たで、R・U・Rのファイアーウォールの件でデータをまとめたりとそこまで手が回ってませんね。その他にも本部長会議と言うお茶会の誘いもありますし。」
「本部長会議って私も参加する事になってましたけど良かったんですかね?」
「俺はハブられてますが?どうぞ、クソマズなコーヒーです。多分ウドとか言う所の苦いヤツに匹敵します。」
青山がそう言うと本当に宇宙の何処かにウドの町がありそうで怖い。と、言うか宇宙の何処かに知的生命体がいたとしても人型ではないので会いたくない。そんな豆どれくらい使ったか分からないクソ苦いコーヒーを飲む。大阪には1杯10万のコーヒーがあるらしい。大量に豆を使って濃縮された旨味があるらしいが、青山の出したコーヒーは香りこそコーヒーだが物凄く軽くて舌に苦味だけが残る。クソ、マジにオーダーに応えやがった。
「青山はハブられたと言うよりも立場の問題だ。そもそもお前って副長でもマスターでもない一般スィーパーだろ?流石に中位だから参加できるわけじゃないし、藤君とかも今回は呼ばれてない。まぁ、会議終了後に交流会とかするなら声でもかかるんじゃないか?一応、主導は宮藤さんと橘さんだし。それよりも試作機の仕様って?」
「基本的にはラボと似た作りになってる。素材としては石英ガラスだし電力としてはクリスタルを使用した場合と魔法を使用した場合と後は、内部循環でどこまで賄えるかなんかもテストするって言ってたかな?一応、設計図の特定条件下でエネルギーを生産するモノも作ろうとしたけど、間に合わなかったらしいよ?出来たらパワードスーツが宇宙で無限軌道になるぜ!」
キャッキャと神志那が騒いでいるがいくらエネルギーが合ってもスーツが耐えられなかったら意味がないだろう。いや、ナノマシンとかならイケる?それよりは形状記憶合金?何にせよ有人だと圧縮装置使った高圧縮酸素や二酸化炭素循環システム使っても酸素切れで人が先に死にそうだな。いや、案外パワードスーツに中層の木とか使えばもしかしたら酸素も作ってくれる?
「神志那さん、もしかしてそれってもうラボが作ってます?無限軌道パワードスーツ。あるなら私にも再オーダーメイドで使ってもらおうかな?」
「残念ながら永久機関はまだ出来てないぜ!ただ、それの糸口になりそうなものは色々と研究してるけどにゃあ〜。一応、長期滞在と言うか長期設置実験もしたいし、ラグジュアリーポイント超えたりしたいって話もあるからエレベーターの中には町っぽい物が作られてるよ。ゲート内の飛行ラボは下面を防御装置にしちゃったけど、今回のはそこで畜産とかもやるみたいだしね。」
「エレベーターにかこつけたコロニー試作品じゃないですか・・・。まぁ、水は無限に調達出来ますし、それから酸素も供給出来る。畜産や酪農が出来て生産性の管理さえ出来れば新天地となりますが・・・。」
「そうなんだけど、ゆくゆくは食料生産用のコロニー案とかもあるみたいだにゃあ。動物って肉食獣いなかったら植物与えれば放置でも育つし、人が病原菌を持ち込まなければそれですむ。今回エレベーターに乗せる家畜はゲート内で無菌繁殖させた本当に病原菌がいないタイプだから、宇宙で繁殖出来れば本当に無限食糧庫が作れるぜ!」
「ん?ゲートの草は食えるよ神志那さん。」
「青やんは分かってない!確かに食えるし旨味はあるけど、肉も草も同じ味だと人は飽きる!と、まぁコロニーとしての不備やテラフォーミングについての話なんかもしたいから早めに来れないかって話が来たんだわさ。」
「テラフォーミングとはまた・・・、火星でも第2の地球にします?一応、氷はあるみたいですけど、やるならエウロパとかの方が中露にはウケがよくありません?まぁ、生命体が先にいたら私達は撤退を決め込むしかないですが。」
「ちょっ!クロエテラフォーミングって出来るんですか!」
「集まった設計図の品を全て作れれば可能かな?まぁ、テラフォーミングやるよりもコロニー浮かべた方がリスクは少ないし、何より資源争奪戦が発生しない以上他の星を開拓する意味はない。仮にするとすればそれは自己顕示欲を示すためだよ。」
鉱物にしろ食べ物にしろ土地にしろ、ゲートの中には揃っている。一応、ゲート内の広さには限界があるのではと言う推論は色々な国から出ているが、それでもゲートの端を見た人はまだ誰もいない。なので今の所有限な無限空間と言う訳の分からない事になっているのだが、それがまだセーフスペースの分範囲が残っていると言う計算となる。なので、コロニーを作るまでは理解は出来ても星を開拓する意味はあんまりない。
仮にあるとすれば新しい元素が見つかるとかそんなところではないだろうか?何にせよ人口爆発が加速したとしてコロニーやゲートの定員が満タンになるまではやらなくてもかまわないし、それを予見出来た時に改めて星を選定しても遅くはないと思う。
「ロマンが消えた・・・。新天地ってワクワクしませんか?こう・・・、陽の光の下草原でアニメの冒険者っポイ格好で佇むとか。」
「憧れない事はないけど結局人がテラフォーミングしたなら、それは地球のオマージュ星で草も木も動物さえ見た事あるものだからなぁ〜。」
「望田さんは何処か新天地に行きたいと?どうぞどうぞ!後は俺が引き継ぎますから好きなだけ旅行してください!どこがいいですか?どこの国籍を取りますか!」
「行かない!行くならクロエと行く!だから私は地球に残る!と言うか青山さんが宇宙行ったらどうです?多分宇宙人と仲良くなれますよ?」
「えっ?宇宙人とは仲いいですよ?共に過ごし共に目標に向かい、共に切磋琢磨して時に殺し合う。互いを高め合いながらクロエさんに奉公出来るって素敵じゃありませんか?」
「青山〜、不穏なのが混ざってるぞ〜。」
殺し合うって俺の様に頭の中と言うか意識の中で奉公する者と戦っているのだろうか?確かに奉公する者は強い。それは63階層でも普通に付いて来れた事が物語っている。なら、青山も意識下でパワーアップしているのだろうか?
うーむ・・・、それはそれでなんか怖いな・・・。探索者中位で名を改めて才覚者そして第2職は肉壁。非常に面倒だと思うよ?うん。イメージすると何でも吸収するスライムとか?そもそもスライムって弱いモンスターじゃなくで描かれた当初は強敵だったし、それが後に核を砕けば倒せるとか水っぽいから火なら特効になるとか可愛い絵柄で愛されキャラになるとかの変遷があった。俺個人としてはT-1000並に青山のしつこさが上がったと思う。
「青やんも宇宙的な存在だよね〜。こう・・・、人が思う斜め上に走る様な・・・。」
「言わないでください神志那さん・・・。さて、引き継ぎが出来てるなら種子島へは行っていいですよ。定吉君も同行させます?」
「その予定かなぁ〜、私は定吉君の小まめな気遣いによって今は生かされてるからね・・・。」
神志那が遠い目をしているが定吉君が来てからと言うもの部屋は綺麗になったし、他の人が見ても何がどこにあるか分かる様になった。天才だからと言うわけではないが神志那の場合どこに何があるか把握しているので汚くても問題なかったが、他人からすれば資料なんかを探す時は大変である。
「まぁ、定吉君が犬人でよかったですね。猫人だったら一緒にダラダラしておしまいな気もしますし。後は職に就けるかどうかとか?」
「それね!一応色々勉強させてるけどどうなんだろうね?それもまた探究の道を歩む者として知りたい事象のひとつなのであった!と、言う事で各方面にお願いと種子島行きのチケットの予約をしてくるぜ!」
神志那がバタバタと部屋を出て行ったが宇宙開発ねぇ・・・。人は地球を離れたらどこまで行けるのか?英国は地球に今の所残りたいと話した。中露は宇宙に目を向け先に行きたいと言った。なら、俺としては受動的に動くしかないのかなぁ〜。問題がなければ普通に仕事をしていればいい。問題があるからこそ動く場がある。何にしても自分から厄介事に首は突っ込みたくないな。




