表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
街中ダンジョン  作者: フィノ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/878

52話 清水 挿絵有り

ようやく4人娘のビジュアルが出せた

 本当は彼女自身がどう有りたいと決めてくれるのが一番いいのだが、それを願うのは少々酷だろう。元は自衛官、今は一般人の彼女が決めた事なら国を離れてどこかに移住して、ひっそりと暮らすという選択肢もある。


 秋葉原の件で彼女に支払われた報酬、彼女自身の資産その他諸々、それだけあればどの国でも悪くない暮らしは十分できる。しかし、望む望まないにしろ、彼女自身に力がある事は明白で、国防を仕事とする私達からすれば、その事態は容認できない。


 言ってしまえば彼女は良くも悪くもジョーカーだ。手元にあれば、扱いに配慮して手を拱くし、手放せば重大な損失として後の負債としてのしかかる。彼女を引き止める術は今の所、彼女の家族の安全を保証し、今講習を受けているメンバーが彼女の望む基準に到達するくらいしか思い浮かばない。


 上の方もその認識はあるようで、深い仲になるのは勿論推奨していたし、力をつける事も望まれた。しかし、その本質は彼女にここが家族にとっても安全で、且つ彼女自身の大切に思うモノが増えてこの国から離れられなくするという、情に訴える心理的作戦だ。その点、政府側の人間である望田は上手くやっている。


 彼女自身にその気があるのかは別として、名字の黒江をイントネーションを変えて外国人風に呼ばせるのではなく、下の名前で呼ぶ事を許可されている。やれやれ、何事も上手く行かないものだ。ifの話をするなら彼が自衛官のまま彼女になり、そのまま退職させずに自衛官として扱うというのが、私達の得る最高の結果だったのだろうか。


挿絵(By みてみん)


 いや、ifの考えだけど、この最良は多分ない。仮に自衛官だとして結婚していなければ、彼女を止める重石はなくなる。その場合、彼女はどこかに雲隠れするかもしれない。自分の考えだけど、ままならないな。彼女に成った後の出会い方では、大なり小なり彼女は自衛官を警戒するだろう。


 その証拠は彼女の連れてきた3名。民間からの出だけど、調べた限りでは宮藤さんは繋がりがわかる。彼は元警察官で被害にあってからの付き合いだ。しかし、後の2人、雄二と卓はほぼ接点のない状態から引っ張って来ている。関わりは総力を上げて調べた限り、旧秋葉原で喧嘩の仲裁をしたぐらい。


「そろそろ出ましょうか。」


 洞窟を出る前に消臭スプレーを一振り。こんな場所だけど気になるものは気になるし。ウェットシートで体を拭いてはいるけど、長い間風呂に入っていないので多分臭い。班員の一人がセーフスペースの水箱を回収して持ち歩いているので、今度借りて水浴びでもしよう。


 新しく作ったインナーは、着たまま水浴びしてもすぐ乾くし濡れた不快感もない。彼女が普段着にしたいと零していたけど、その意見には賛成できる。


「ええ、あまり待たせるのも悪い。」


 小田と共に洞窟から出ると、外では順繰りに食事をしていた。高カロリーな栄養バーはエネルギーこそ賄えるが、腹は膨れないので思い思いの持ち込んだ物を食べている。


「あっ、出てきましたね。次の組は洞窟へどうぞ。」


「あいよー、水瓶貸してくれ。鼻が馬鹿になっても、自分が臭いのが分かるくらい臭くてかなわん。」


「なら、先に中に設置してやるよ。水場は共用、飛び込むなよ。」


「やらねぇよ!」


 次の班員達が中に入り、他のメンバーは警戒を続行。雄二はいつも最後に周囲のチェックをして警戒を外れるので、今はリラックスしているけど周囲から目をそらさない。彼自身はただの学生だったけど、彼女によって連れて来られて以降、自衛官にしろ警察官にしろ誰にでも声をかけて、貪欲に知識や班行動の注意点等を聞いて回っている。


 その行動は好ましい。前のクソ上司より余程いい。まぁ、彼はこの世にはもういないのだが・・・。そんな彼が、珍しくスマホをポチポチ操作している。階層を跨ぐとどんどん電波状況は悪くなるけど、LINEやメールなら時間さえかければ十分使える。どこかの班からの連絡だろうか?


「何かあったか?」


「いや、母さんからのLINEっす。こういった仕事はどうにか認めてくれたんすけど、危ない所だから連絡しないと帰ったら凄い泣いたり怒ったりで大変で・・・。」


「いいお母さんじゃないか。」


「いい母さんっすけど、そろそろ子供扱いはやめてほしいっすね・・・。」


 そうボヤきながら苦笑する。歳がそれ程離れていないせいで、彼は弟の様に感じる。まぁ、私には姉しかいないのだが。


「清水さんちょっと。」


「分かった、今行く。それじゃあ、あんまりお母さんを心配させないようにね」


 言葉を残して小田の元に向かうが、呼んだ彼女の雰囲気は固い。表情こそいつも通りだけど、多分良い知らせではないな。私達がこうしている間にも、外では世界が動きキナ臭いものはキナ臭くなっている。そして、公安ではなく自衛隊だからこそ知る情報もある。


「なにか問題が?」


「直接ではないですが、北の付く某国でたぶん。バックはあの国ですね。それと米国でモンスターがゲート外に出現したと情報が出ました。」


「なっ!スタンピードか?」


 他の国の戦力は、はっきり言って分からない。昔なら軍事費増強などで指標を立てられたけど、今はそんなものでは推し量れない。個人が力を持つので、力があろうと秘匿されてしまえば鑑定師にでも依頼しないと判断がつかない。


 しかし、スタンピードとなると被害は甚大だろう。秋葉原で10万体規模。同等か否かは分からないけど、それだけの数にしろ強さにしろモンスターが人口密集地に出現すれば死傷者は多数出る。しかし、私達が災害派遣の名目で、海外に行く事態になっている?国として依頼が来れば同盟国と言う関係上、彼女はどうにか蹴れるとしても、自衛官としての身分もある私達は行かざるを得ない。


「違います。かねてよりの懸念事項・・・、モンスターを兵器転用しようとして、ゲートから運び出したようです。数は北が10体、米国が確認取れただけで30体。両国共に研究施設と思われる場所が・・・、壊滅しました。」


「・・・、なぜあれを制御できると思ったんだろうね?」


「さぁ?どちらも今回の件は、完全に火消しを行っています。米国は特に過激ですね。施設周辺を爆撃して証拠隠滅しました。」


「ファーストさんにその情報は行くと思う?」


 他国が自爆する分には私達は関与しない。そもそも私達の領分ではないのだから。しかし、クロエに関しては別。この情報が彼女の耳に入った時、彼女はどう反応するか・・・。理性的なので暴れないとは思うけど、絶望されては困る。


「チヨダがどう処理するかですね。ただ、高確率で行くと思ってください。現場対応で死亡した方の中には、こちらに派遣される候補の方が多数いたそうです。」


「ゲートではなく、外で安全に訓練をしているつもりだったのかな・・・?」


 やるならゲート内でしてくれればいいものを、モンスター持ち出しの実例が出来れば、更に面倒な思惑が動き出さないとも限らない。スタンピードは前回と同じなら、少なくとも警告があって行われる。それ以外で漏れたとなれば、テロもやりたい放題になってくる。身一つで入国して、その国のゲートに入ってモンスターを回収して野放しにすればいいのだから。


「どちらかというと、ジュラシックパークの方が夢はありましたね・・・。国外への対応は更に厳しくなると思ってください。私も貴女もそういう仕事をしているんです。では、戻りましょう。」


挿絵(By みてみん)


 歩きだす小田の後を追いみんなの元へ戻る。雑誌にあったダンジョン病ではないけど、今の生活が楽しすぎて現実に引き戻される話が嫌になる。雄二が眩しく見えてしまうな。まぁ、大人を逃げる事は出来ないんだけどね・・・。


 交代で見張りをしながら寝て起きて、歩いて進んでモンスターを倒して、傷を癒やしては、またモンスターを倒して交代でたまに寝る。生活サイクルは同じだけど、モンスターが違えば対応も違うので刺激には事欠かない。そんな共同生活を行っていれば、当然起こるイベントもあるわけで・・・。


「小田さん、自分と付き合ってください!」


「私は女性が好きなので、ごめんなさい。」


 出くわしたのは小田が告白されるシーン。互いに命を預けて行動しているので、こう言った事はよくとは言わないがある。現に私も何度か告白を受けた。別に恋愛禁止ではないので、受ける受けないは本人による。隠れて伺うとしよう。


 バッサリと再アタックの芽ごと切り捨てられた新垣は、落ち込まずに晴れ晴れとした顔をしている。


「いや、いいですよ。想いを伝えられずに死ぬのが嫌なだけだったんで。それでは!」


 そう言い残し、新垣は回れ右して私には気付かず走っていった。残された小田は小難しい顔をしながらこめかみをトントンと指で叩いている。まぁ、気持ちは分からなくもない。


「お疲れ様、モテモテだね、小春。」


「分かって言ってるでしょ?言う側は伝えられてスッキリするけど、受ける側は断った罪悪感とかあるんだからね?それに、めげない人は、いいとこ見せようとしてガンガン前に出て怪我するし。女の子が好きな事を公言したら、対象の反応次第ではね・・・。」


「同性婚は国が認めてる。大丈夫じゃないか?」


「景子は単純。本当に好きなのは好きだけど、公言したら構えられちゃうじゃない。あくまで任務はこちらへの傾倒とパイプ。その延長線で来てくれるならウェルカムなんだけどね・・・。今の所は断りの常套句扱いです。」


 今回派遣された4人の別班で本当にガチなのは夏目。小田は両方ともいいらしいけど、気持ち女性の方が好きらしい。多分、私もこの分類。井口は実はノーマルだけど、クロエにならいいと言っていた。今回の班分けでも、兵藤、赤峰チームだけは、好みの子がいないから行きたくないと夏目は愚痴っていた。それは外れたけど、今度は加納の対応なので彼女が貧乏くじを引いたように思う。


 最も夏目曰く、卓が男の娘ならワンチャンあるらしい・・・。一応、加納にはゲートに入る前に、小田と井口で釘を刺したそうなので大丈夫だとは思うし、そもそも攻略対象が空にいるので手の出しようがない。訓練なのでその対応も理解出来るけど、なんともツレないお人だ。


「そんな貴女だって、何人かに告白受けたでしょう?・・・、過去・・・と、言うには新しいですけどあの事引きずってます?」


「まさか、せいせいしてるよ。」


 そう、せいせいしている。工藤 幸治。かつての上官でゲートに還元変換された・・・、クズ。上官として出会った当初から、セクハラまがいのアプローチを掛けられる事無数。私以外の女性にも同じ事をして、泣き寝入りさせたゴミ。ゲート開通当初、配信を見た彼は少女に出来るなら、自分達は小規模で十分と、私のみを連れて内部調査としてゲートに入った。


 そして、入った直後にクズに襲われた。はっきり言って馬鹿である。多分、連れ込み宿代わりに使えると思ったんだろう。ご丁寧に映像資料用のカメラまで停止して、背後から羽交い締めにして服の下に手を入れ、髪の匂いを嗅ぎうなじに舌を這わせてきた。生理的な嫌悪感が湧き上がったけど、その間に私は職の選択を済ませ、上がった身体能力で無理やり抜け出し殴り付けた。


 分が悪いと思った工藤はそのまま、下半身丸出しで走って奥に行き、追った私は途中箱から剣を手に入れて追った。入り組んだ道で追いかけっこをして、立ち止まった工藤はニヤリとこちらを向いて言い放った。


「上官には従う義務(・・)がある・・・。清水よぉ、俺は魔術師だ。俺に従え。さもなくば、痺れさせて従わせるぞ?」


 走っている間に、職の選択を済ませた工藤は魔術師たぶん雷。パチパチと音のする身体と逆立った髪の毛は、多分それで間違いがなかったのだろう。


「いくら上官でも、分別はつくでしょうに?」


「俺は気の強い女を屈服させて、従わせるのが好きなんだよ・・・。お前はいい、他のやつより骨がある。それを屈服・・・、ヒヒヒ・・・。ここは誰も見てないからよぉ、やりたい放題だよなぁ?」


 ニヤニヤしながらこちらに指を向ける。今なら分かるけど、クズはあの時多分魔法を使えない。或いは、使えても静電気が迸るくらいだっただろう。しかし、それは今になって分かる事。当時は配信のイメージが強く、炎の玉が飛ぶなら電気の玉も飛ぶと思い、素早く踏み込みクズの腕を切り飛ばした。


 武器で切ったけど肉を断つ感触もなく、黒い剣は驚くほど滑らかにクズの腕を切る・・・、いや、当たった部分を分解して腕を落とした。一拍遅れて吹き出す鮮血が顔にかかったけど多分、私はその時笑っていた。今までの抑圧とストレスが一気に解消されたのだから、嬉しくて仕方なかったのだろう。


 腕を抑えて逃げ出した工藤は、そのまま曲がり角から出て来た砲撃型に頭をビームで貫かれて絶命。私は砲撃型から隠れ、他のモンスターをやり過ごしながら走り回って、どうにか退出して今に至る。


 出た後は大変だった。一応は上官が内部で死んだのだ。色々な聞き取りをされては、女性に狼藉を働こうとし、反撃を受けた彼は恐怖で一人走りモンスターに殺されたと話す日々。他の女性からの証言もあり、この件は組織内部の汚点として内々に処理された。


「あれは、死んで正解。モンスターなんかよりよっぽど質が悪い。私も胸揉まれたし。」


 小田が自分の胸を抱いて空を睨む。小田も被害者だったのか、あのクズの被害者は多すぎて全容把握は諦められた。一応、仕事は出来るようだったけど、あの性格ではどこに行っても鼻摘み者だっただろう。


「小春のは揉みがいがありそうだ。今度揉んで大きくしてあげよう。」


「えっ!いいんですか?私も揉んでそのまま・・・。」


「ピンク色の妄想は出た後。・・・、機会があればね。」


「分かりました、その言葉忘れませんよ?さて、戻りましょうか。」


 仲間の所に戻り、またモンスターを倒して歩く。それぞれルートは違うけど目的地は一緒なので、たまには他のチームに会いながら20階層の退出ゲートを目指す。途中で腕や足が切り飛ばされる人や、ビームで消し飛ぶ人もいたけど小春のおかげで生やしたり、くっつけたりして仕上げに回復薬を飲んで進んでいる。


 来た当初も割とスパルタ疑惑があったけど、それを受け入れてこなせている私達は、知らずのうちに調教されているのではないだろうか?先程も、格闘家の島田がモンスターを殴ったときにレーザーで切られたと、開きになった腕を抑えながら小田の所に来た。回復薬をかけているので、痛みは薄いらしいけど見てる側としてはスプラッター。


 雄二もよくよく怪我しているし、私も同じようなものなので人の事は言えない。戦闘が終わっての束の間の休憩、男達が集まって何やら話し込んでいる。


「みんな大丈夫っすか?しっかし魔術師いないとやっぱり一手足りない感じっすね。」


「遠距離はガンナーが踏ん張ってくれるけど、瞬間発火とか見ると速度がなぁ。」


「ん〜、乱戦前ならミサイルとか撃ってみる?」


「やれんのかよ?」


「フッフッフッ・・・、見る、撃つ、当てる。弾は何でもいいんだよ。なら、グレネード撃つつもりで撃てば、イケる!」


「実際、格闘家で柔道スタイルだけど、ビーム一本背負いしたもんなぁ。」


「雄二、なんか聞いてない?」


「クロエさんは職の説明は正解って言ってたっすから、多分、その項目にあることなら、大っきい補助があるんじゃないですかね?剣閃飛ばすときも、最近は風云々じゃなくて、離れててもそこを斬ったイメージで斬ると斬れますし。」


「おぉ〜、とうとう遠隔斬撃か。魔法職の十八番かと思ったけど、うち等もそれならやれるな。」


「イメージか、魔法職よりはいいな。あいつ等頭ん中相当沸き上がってるらしいし。」


「何の話をしてるんですか?」


「あっ、清水さん。近接職の遠隔化とかの話です。清水さん踏み込み早いですけど、何か考えてます?」


 雄二から声がかかる。話の流れを聞くとざっくりといえば、できることが増えたけど更に増やしたいと言うもの。それは、何時だったかのLINE会議でも上がったけど、彼女の助言の元を辿るなら。


「多分、本質は気づく事。雄二君は身に覚えがあるだろう?」


「風は吹くっすね。なら、やっぱり高い身体能力って言うなら、自分で自分の限界作っちゃだめっすね。卓の奴にも色々聞いたけど、成りたいものを思い描いて、それに進む為に至ったとか言ってたし。」


「ちょっとまて雄二君!強くなったら至るんじゃないのか?」


「え?違うっすよ?確かに至ったら強くなるっすけど、至る事が目的だと多分無理っす。」


 だって、それだと先がないから。雄二はそう言った。しかし、この話は割とこの場にいた大人達の足元を崩す。訓練をして強くなれば至れると思っていた人間は多いけど、その前提がなりたい自分になる為と言われると、話が少し変わってくる。なぜ、私が剣を握り振るうのか?そして、その剣を振ってどうなりたいのか?まるで哲学問題だ。


「・・・、雄二君は何で剣士なんだ?」


「ぷはっ!うひひひ・・・。」


「まて、なんで急に笑うんだ!」


 腹を抱えて笑う雄二は心底楽しそうだけど、私はおかしなことも言っていないし、何なら真面目に質問した。なら、なぜ私が笑われる事になるのよ?


「いや。すいません。その質問クロエさんが卓にした質問と同じなんっすよ。」


「ファーストさんが?」


「それを選ぶなら、何かその人の中で何かしらの思い入れがあるみたいな事は言ってました。俺は昔から剣道してたんで、剣士なんすけど、じゃあそれでどうなりたいかって言われると、途端に分からなくなっちゃって。卓待たせてるから、至りたいんですけど、こればっかりは間違えられないんで・・・。」


 雄二の話をいつの間にか全員が聞いていた。これはかなり有益な情報だけど結局今の状況に舞い戻る。イメージを固める、イメージを積み重ねる、そして、その先をイメージする。分かってはいるけど、天井が見えたと思った大人には難しい。


「今はイメージを固めて積み重ねるしかないな・・・。ん?」


「どうかしたっすか?」


「いや、煙が消えた?」


 ゲートに入って以降ずっと上空にあって、割と光る煙の塊が無くなっていた。卓のチームで何かあったのだろうか?彼女は私達と卓のチームの安全装置として上空で待機していた。それがなくなるということは、不足の事態が発生したと言う事。


「リーダー、加勢に行くか?」


「卓がいて救援なんだろ?何が起こってんだ?」


「おい後ろ!ってあれは、バイトと防御役の望田さん?」


「・・・、皆さん落ち着いてください。ゲート内で不測の事態は仕方ありません。仲間を信じて進みましょう。」


 雄二が声をあげ先への道を促す。彼も卓の事が心配だろうけど、その事を態度に出さず進む事を選んだ。あった当初はヤンチャな子供だったけどもう子供扱いしちゃいけないわね。でも、一応メッセージは送っておこうかしら。


 それから歩き出して、モンスターを倒しているとバイトと望田さんがそれに参加してかなり戦闘が楽になった。本体はただの犬のはずなのに、あの犬は煙を自在に操り、空だろうと地上だろうと関係なくモンスターを倒していく。また、クロエの所に戦力が増えているじゃないか・・・。


(小春、あの犬どう思う?)


(飼い主に似たんじゃないですか?)


(思考を放棄するな!)


(実際分からないんですよ。秋葉原以降飼い出したとしか。犬種だけなら、アイリッシュウルフハウンドとかですかね?狼と戦う用の犬種なので、闘争心はありますよ?)


(それは見たら分かる!)


「二人共!喋ってないで加勢してください!」


「わかった!」


 練習していた縮地は様になり、地を飛ぶ様に進む。右に通り過ぎざまに抜刀して一閃、振り抜いた剣で次のモンスターを縦に一閃、剣を納刀する為に身体を捻って斬り上げで一閃し、そのまま跳ねて横に一回転して、飛来するビームを抜刀して切り払う。


「前方3体結合します!」


「なら、俺が貰う!」


 小田の声に雄二が反応して、二振りの剣でモンスターを薙ぎ払う。そのまま彼は、遠くのモンスターを斬る仕草をして、遠当てでモンスターを倒していく。私にも、あれができるだろうか?いや、的はある試してみよう。


 剣は納刀されている。抜く速さはメンバーの追随を許さない。イヤ、違う。速く抜くから斬れるんじゃない、抜いた時には斬れている(・・・・・)んだ。集中するが目を閉じるな。間合いは関係ない。あれだけ速く動けるのだから。目にも止まらぬ速さではない、斬った事を悟らせぬ一撃!モンスターと焦点が結ぶ!


 日本刀なら納刀する際に音が鳴る。しかし、これは日本刀ではないので音はしない。しかし、モンスターはズルリと滑りクリスタルとなった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
評価、感想、ブックマークお願いします
― 新着の感想 ―
最初から思ってたけど作品を通して全員性欲強すぎる 性欲強いのは別に良いけど性的描写多すぎるのはそれ目的で見てる訳ではないから面白くない またやってる飛ばすかって感じになる
[一言] ようやく最新話に追いついたので感想おば。 ざっくり行くと今まで読んだ現代ダンジョンものではかなり面白いです。という事で☆5つ進呈 同ジャンルはエタが多いのでゆっくり目でもいいので無理せず話を…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ