539話 犬より待てが出来ない 挿絵あり
中性子星とは早い話が星が最後を迎えた後に起こる現象で100%発生するわけでもない。わけでもないがその爆発規模は人類が考えた中で宇宙最大規模。一応1987年にマゼラン星雲で起こったものが有名で太陽が100億年放出するエネルギーを一瞬で放出するらしい。うん・・・、その規模の爆発ならゲートは消し飛ぶ。そして、仮にゲートが消し飛んだ後にブラックホールが出現するなら跡形もなくそのエネルギー毎飲み込んでくれる・・・、はず!まぁ、中性子星も質量次第じゃブラックホール化して巨大ブラックホールが誕生なんて事も・・・。
と、言うかね?そんなクソヤバなもん人の星の中で運用するなよ!安全性とか利便性とか・・・、それを阻止するための自動修復機能でしたね・・・。いや、こんなヤバ気なものなら停止からの帰還でよかっただろ!
「どうします?感覚だけならモンスターは光に集まっているようです・・・、なんか噴出した?」
「アレは高エネルギーの塊だな。ゴミを焼くにはちょうどよい。そうでなくとも磁界に囚われたゴミがバラバラになっておる。」
「それだと私達も近付けないんじゃ・・・。」
離れているがキセルを吸って煙を吐いて視界を広げて見れば・・・、うん。なんと言うか巨大な地龍?太い脚が6本ある多脚戦車みたいなモンスターが角と言うか衝角と言うか・・・、多分レーザーブレードなんだろうそれを光らせながらビームやら砲弾やらを絶え間なく発射しながら集団で爆走している。
こんな時でも仲良しこよしは全くなく小型のモンスターは角に焼かれ踏み潰され、ある者は取り付いて乗り物代わりの様に・・・、あぁ、取り付いても駄目ですか。普通と言うかゲームで巨大な敵を倒すなら、背中に乗ったりして弱点とかコアを攻撃するのが定石だが降り立った側から触手で串刺しにされて抜かれたクリスタルは食われている。
ただそんな集団の速度は早い。基本的にソーツが作るモンスターは高速、弱点露出なし、死角なし、遠近中全てこなせるオールレンジ仕様。巨大で辺りの木をなぎ倒しているが速度はどんどん加速している。あぁ、助走が終わったのかロケット頭突きみたいに飛び出した。ただ、磁場のせいかグチャグチャにバラされてしまったが・・・。てか、クリスタルだけガーディアンの方に飛んでいってる?
(なぁ賢者、たどり着いたらどうにかしてくれるんだよな?ここからどうにかしてくれ。幸いモンスターは俺達よりガーディアンにご執心だし。コードでちょちょいとやれるだろ?)
(う〜ん・・・、もう少しエネルギー減らせる?今のガーディアンはマッチポンプ状態で食虫植物とか?もう飛べないみたいだけど、それならそれでやれる事をやってるね。君も見ただろ?クリスタルが飛ぶの。アレをエネルギーにして攻撃してゴミを倒せばまたそこからエネルギーを抽出する。ただ、エネルギー運用がねぇ・・・。)
(効率が良すぎて莫大に増えてるのか?)
(逆。消費と回収が合ってない。)
(なら、ここから見ておけばいいのか?ならかなり楽な仕事になるが。)
強行軍だったからここで1つ、日の出みたいに光るガーディアンを見ながら酒盛りでもしていいのかな?エネルギーが減れば減るほど爆発リスクは少なくなるだろうし、近づけと言われたとしてもガス欠なら撃って来ない。鳥取の飢え殺しではないが、動かない敵を徹底的に腹ペコにて無力化するなら同じだろう。
(いや、なんで見守るのさ。ここは打って出る場面だよ?)
(いやいや、勝手に弱るなら弱らせればいいだろ?)
((?))
お互い多分間違ってない?いや、賢者がおかしい?なんで放置で弱る相手に打って出る?供給が間に合わないほど攻撃にエネルギー割いてるならそのまま自滅待ちでよくない?俺達を闘争心の権化みたいに言うけど、勝手に死ぬ相手にリスク犯してまで特攻しないぞ?例えば敵の戦闘機が武装使い終わって燃料切れを待てるなら待つし・・・。
(もしかして限界ギリギリまで行っても自爆用のエネルギーは残してる?)
(もしかしなくても普通残すでしょ?なんで最終攻撃手段を死蔵して終わるのさ。今はまだ戦えるからその手段を取らない。でも、戦えなくなるならその手段を取る。だから、そこの奉公する者がいる。)
バイトの上にいる奉公する者を見ると目が合ってニコニコした笑顔を返してくる。確かに言伝なら青山に伝えて口で言えば済む話。それをわざわざ同調なんていい出したから何事かと思えば、抜き取りでコイツがエネルギーを抜いてくれるのか。でも、どれだけエネルギー抜けばいいか分かってるんだろうか?
「奉公する者、アレからどれくらいエネルギー抜けばいいか分かってるよな?」
「吾はあんな物見た事ないから知らんぞ?あの御方から奉公してこいとしか言われておらぬ。更に言えばこの脆い身体ではある程度の距離しか見えぬし、ただ光ってるようにしか見えぬ。」
「私も同感です。ここからかなり距離があるので日の出程度にしか見えませんね。たまに何か噴出してるみたいですけど。それよりも考えはまとまりましたか?」
「ある程度としか。少なくともあの光ってる場所付近まで行ってエネルギーを抜かないといけないみたいです。」
「近付く・・・、近付いて大丈夫なんですよね?クロエさんは別として私も青山も一応人間枠で死ぬんですけど。」
「私もその枠に入れて欲しいですが、頑丈さは折り紙付きですからね・・・。結論から言えば大丈夫とは言えません。たまに噴出してるのはエネルギーの塊で方向性がないならどう言った変化が現れるか分からないですし、モンスターも群れで特攻してるので下手すれば板挟みに合います。それだけではなく磁場が強いのかモンスターも無理やり突き進む以外は流される見たいですね・・・。」
光って見えるけど降着円盤出来てるとか言わないよな?周囲の物が間延びしながら螺旋状にガーディアンに向かって行ってないからまだ大丈夫だとは思うが、そこまで行ったらお手上げ的な?ま、まぁ?視界変えたからと言って見える物が・・・、変わるんだよな・・・。可視光線も不可視光線も見ようと思えば余裕で見える。まぁ、見えるからこそ干渉出来るし不干渉にも出来る。
ただモンスターが進めるなら人も進める。こんな時に考えるのは肉体が邪魔と言う話か。少なくとも物理的に干渉されるモノがなければ行けと言われても躊躇なく進む事が出来る。悪いが俺だって痛みはあるんだよ。普通の人と同等かは別にしても痛いと言う感情は。
ただ、多分俺はこの方骨折なんてした事もなければ入院なんてインフルエンザでしたくらい。なので痛覚と言うモノを理解して上限を設けるとするなら過去からの感覚に引きづられる。なにせ中身がないのだから骨折の痛みは永遠に分からない。まぁ、知りたくもないが・・・。
「その流れに沿って進むと?」
「それが大前提ですね。遠ければそんなに干渉されないでしょうが、近ければ近いほど沿って進まないとなバラバラにされて間延びします。夏目さんは抵抗があるのである程度は大丈夫でしょうが厳しいなら離脱して下さい。元々墜落現場の分かるナビゲーターとして呼びましたし。」
「吾は行きますぞ?同調しておればそこそこどうにかなる故な。それに、吾もここに遣わされたからには奉公せねばならぬ。それにあの光はどう見ても旨そうに見える。」
(魔女、コレって奉公する者に食わせていいやつ?と、言うか食えるのあれ?)
(その為によこしたんでしょ?どうせ本体が奉公する者に何かしようとしてエネルギーが足りないから渡りに船ときっと寄越したのよ。まぁ、何がしたいかは知らないけど。)
魔女が不貞腐れた様に話すが、ここに来るまでモンスター退治は一切出来ず引き籠り状態なので暴れ足りないのだろう。しかし、魔女の本体は何やってるんだろ?俺達と言うか地球に関係ないなら何でもいいが、下手に干渉されても怖い。いや、職がある時点でバリバリ干渉しまくってはいるのだが・・・。
「むっ!魔女様!魔女様ーー!!吾はココですぞ!!!ははぁん・・・、アレを始末すればよいのですな!」
「おいコラバカ!勝手に走り出すな!えぇい!バイト!お前は夏目さん乗せてついてこい!」
(御意。)
「せっ!背中!咥えて走るな!」
魔女はさっと消えたが放たれた弾丸の様に奉公する者は木を駆け降りる。人の話聞けよ!確かに始末はして欲しいがこっちの要望言う前に勝手に理解して事を運ばれてはたまったもんじゃない!それが普段なら気が利く程度の美徳なのかもしれないが、こう言った場面で早合点すれば失敗するだろう!と、言うか賢者は魔女に☓じるしの付いたマスクを渡すな!そして魔女は粛々と付けるな!
(賢者!取り敢えず進むがどこまで行けばいい!)
(せめて視認できる程度。間に合わない事はないから視界は維持し続けて。先に言うけど磁場を平面で見ようなんてふざけた事は言わないよね?)
(ご指摘どうも!なんだよこのドーム、どう進めばいいんだよ!)
(簡単さ、コレには必ず強い所と弱い所がある。あくまで物体にしか干渉しないんだ。墜落地点を中心として君達の言うNとSの境はあるよ。)
(その境がブレブレじゃなければ助かるけどな!)
「その左!右!斜め右に飛ぶ!今から指示に従って下さい、出ないと先に行けばミンチです!こら待て奉公する者!」
「それくらいならどうにか復活出来ますけど、吸い込まれたりしないですよね!?バイト、頼むよ!」
(吾輩とて帰りたい・・・。でも、帰ればあの2人から何を言われるか・・・。死なぬ程度に頑張る。)
「はっはっはっ・・・!吾について参れ!このように単調な変則磁場など・・・、邪魔だな。ついでに目とか言う物ももう少し頑丈に・・・。」
先を走る奉公する者から何か飛んできたと思えば血が・・・。また青山の身体と言うか脳を酷使しているな?ついでに言えば降ってきたエネルギーの塊も抜き取れるのか消してしまった。つまり、青山は回復薬がぶ飲みで本人が限界を迎えない限り大丈夫そう。
残るは俺とバイトと夏目となるがまだ大丈夫な範囲。そりゃあかなり距離があったからね。俺もバイトの背に乗り勝手に走る奉公する者を指示を出しながら追うが接触してなくても磁場が2Tを超えると知覚障害が出だす。その上ガーディアンが回転でもしているのか道は常にうねり倒されたモンスターの破片は上下左右どこからでも飛んでくる。せめて一定方向なら・・・。
「無事ですか!」
「太ももをザックリやっただけです!切断してないならすぐに動けますが・・・、クロエさんは?」
「気流バリアで受け流してますけど、あんまり見ないでくださいよ?これ見られるの好きじゃないんですから。」
磁界ならSとNがあり常に切り替えれて中和すれば凪いだ道を歩めると思っていた時期がありました・・・。賢者曰くこの磁界そのものもガーディアンからすればセンサーらしく、流れに沿うなら一応無害。中和や抵抗すれば異物としてサーチしてくるとか。だからこうして破片を煙で受け流しているが、デタラメに飛んでくるから片腕に直撃して飛んだ。まぁ、痛みは一瞬で若干間延びしたが繋がって元通り。多分、かなり磁界が強いな。身体の表面が引っ張られている気がする。血中の鉄分でも反応しだしたか?
還元変換はよ!小さな破片は消えていくさなかで元はもっと大きかったと思うが、そんな事はどうでもよくでさっさと消えろと願うばかり。小さな物程ね、気流抜けられるとめり込んでいたいんだよ!下手すると銃で撃たれたんじゃないかって言う衝撃が飛んでくるんだよ!
(痛いなら扇動すればいいよ。この程度ならどうにかなる。寧ろ、なんでしないの?)
(扇動って相手がいるから出来るんであって何を扇動しろって言うんだよ!)
(決まってるじゃないその相手をだよ。飛んでくる破片はその口をつぐみ言葉を発せない。宙舞う破片は風に乗って楽しそう。言葉は大事だけど言葉に惑わされてはいけないよ?君の扇動は君が思う相手を扇動するんだから。魔法と一緒さ、法を破ればいい。幸い補助具もある事だしね。)
(ご講釈どうも!耳を傾ける相手がいないのに何に訴えるんだよ!まだ焼いた方がマシだ。)
(それは気づかれる。ガーディアンはこちらが手出ししないから優先順位を下にしているのであって、多少なりとも脅威を示せば攻撃してくる。目でご覧よ、青山はさっきの抜き取りでどんどん攻撃されてる。)
確かに先を走る奉公する者にはエネルギーの塊が殺到している。突き抜けて進もうとするモンスターもいるので分散はしているが、最初にランダムに降ってきた塊よりは幾ばくが導線上に飛んできている様な・・・。まぁ、エネルギーを減らせと言うオーダーに対してエネルギーの塊を降らせてくれるなら消費と言う観点からはいいのかな?ただ、その塊も転がったり飛んだりして襲ってくるのだが。
「小癪!吾相手に小癪!コラ青山ボデー動かんか!この程度で知覚不良とは情けない!」
「夏目さんは・・・、大丈夫そうですね。」
「抵抗しても目眩や頭痛が酷い時点で超強磁場です。下手をするとそれさえも超えているかも。これで首輪カメラを使っていたら間違いなく頭と胴体がサヨナラしてますね。」
「って、事はバイトは無事か!」
(首輪は既にない。後で代えが欲しいが大丈夫か?探せと言われたら探してみるが・・・。)
「首輪くらい買ってやる。」
「えっ!私に首輪を買ってくれるんですか?」
「吾にも首輪とか言う褒美をくれるのか?」
「黙れ、ボケ共!死にづらいからって死なないわけじゃないんだ・・・、ペっ!話してる時に口に飛び込みやがって。」
「お見事、よく噛んで止められましたね。」
「煮干しのおかげです、後はじゃことか。しかしまだ見えないって、お触りは厳禁・・・、ですが仕方ないですか。肉は保ちますか?」
「この程度なら大丈夫ですよ。米国よりはマシですからね。」
急に抱き着かれて何事かと思えばバイトの後ろにはモンスター達が。先頭を走っているわけではないと思うが、それでもモンスターが集まれば後続も生まれる。そして、その後続がお行儀よく走るだけなわけはない。夏目が延ばした爪や腕で殴り飛ばして磁場に沈めているが、その磁場が見えないせいで肉ごと削られたり間延びしたり千切れたりしている。いくら痛みに抵抗出来るからと言っても痛いだろう。
(賢者、やり方は?)
(既に君は知ってるよ。有るか無いか分からないモノもその傲慢で生み出した。なら、そこに意思があろうと無かろうと君は出来る。君の国では言うだろう?八百万の神ってね。)
(なるほど・・・、なるほど?)
神は信じない。そもそも人の訴えをまともに聞く神なんているわけはない。それは例えば人が蟻の訴えを聞き入れるのか?と言う話になる。雨降りに蟻が蜜を持ってきてその代価に傘を要求したとして傘を渡す人間がどれほどいるだろうか?
子供ならあり得る。大人なら無視する。そして、気に食わなければ巣穴を壊し場合によっては毒を撒く。だが、もし本当に訴えたとするならその訴えたと言う事実はなくならない。例え言葉が通じなくとも。例えそこに互いの意思がなくとも。そう、訴えなければ何1つ始まりはない。




