536話 絶対疲れる 挿絵あり
(いや、どう言う事って・・・まさか中で暴走させる気!?)
(いや、それを俺に聞かれても困るんだが?作ったのはお前だろ?あれの諸元やらは全く知らんし。)
(可能性を考えるなら自動修復機能が停止している中で命令を遂行する為に、手当たり次第に削り取って階層ごと消失させるとか?)
(いや、とかと聞かれても知らんけど。)
慌てられようとなんと言われようと現状把握出来てないから何とも言えない。仮に明日世界が終わると言われたとしても理由も原因も分からなければそんな事はないと一蹴するだろうし、一瞬で終わるなら確認する暇もない。
そもそもガーディアンが爆散するとしてガス欠状態で爆散するなら多分しょぼい爆発だろうし、物理的になくなった後に何が残ると言うのだろう?流石に機械の幽霊が残ると言われたらかなり微妙では?
(流石に可能性は導き出せても現物を見ない事には僕としても判断出来ないよ。)
(奉公する者と賢者が直接話すのは?)
(それは・・・、やってみようかな?)
「詳細。観測されているガーディアンの現状と起こり得る驚異の算出。並びに爆散した場合の被害想定。」
「おぉ!しかし話せぬ。先の見える話ほど面白みのないものはない。ただ、あの御方はそこそこここを観測しているのは確かだ。開示できるとすれば・・・、爆散と言うよりは爆縮らしいぞ?」
「なるほど、理解した。」
端的な会話で賢者は理解したらしい。と、言うか賢者に対してはフレンドリーと言うか何かしようとか話を聞かないとかはなかなか。なら、奉公する者の対応って賢者でいいんじゃない?確かに考えてみれば賢者は最初からギャラリーを決め込んでいたが、俺達の関係性の中では一番の部外者と言える。
青山が俺を見て奉公する者が魔女を見て、その中で一番部外者でありながら奉公する者的には魔女の同族として敬意を払う対象でもあるはず。なら・・・。
(言っとくけど奉公する者は僕を敬う考えなんてないよ?さっきの話しも必要だと感じたから話したのであって、魔女にとって不要だと感じたら何も開示しない。)
(魔女の同族でも?)
(同族だろうと僕は奉公する対象じゃない。仮に僕と魔女が喧嘩したなら奉公する者は一切の躊躇いなく襲いかかってくる。そこに勝てる勝てないとか自分が死ぬから嫌だと言う感覚はなく、魔女にとってそれが最良の結果となるなら文字通り自滅してもやり遂げる気でする。言ってしまえば僕よりも君が話す方が青山の意志がある分まだ通用する。)
奉公する者と言うか狂信者じゃないか・・・。いやまぁ、熱心な教徒は狂信者と言っても過言ではないし、集団としての同調圧力もあるから誰かの為に剣を取る事も泥を被る事も辞さない。奉公する者の場合1人?しかおらず崇める対象も1人なのだろうがその両者が力を持っている分厄介としか言いようがない。
(受付窓口はどうあがいても俺かよ・・・、それで?理解したって何を?爆縮って事は圧縮されるのか?)
(それは正解でもある。ただ、周囲を巻き込んで圧縮するって事になるけどね・・・。確かに早めに回収しろと魔女の本体が言う訳だ。)
(別に巻き込んで縮んでも勝手に再生するがそんな地形だとしか思わないから大丈夫だろう?寧ろ今から行ってギリギリ間に合わない方が被害が出るから、このまま聞かなかった見なかった知らなかったで済むだろ?)
(済まないよ。)
(済まないわね。)
(済まないのか?ゲートの岩盤と言うか、地面を削ってくれるなら近道出来るからそこそこ喜ぶけど。)
(問題はそこじゃない。威力測定が出来ないからそう言う話になるし、驚異とも思わないんだろうけど・・・、ゲートの中には何がある?)
(なにがってそりゃあモンスターに箱に・・・、ゲート?えっ?もしかして・・・、ゲートが壊れるとか?)
(可能性的にはね。すぐにそれが驚異となる訳じゃない。でも、特定階層でゲートが壊れれば君達はそこから先に進めなくなる。そうなれば祭壇は見つからないし底にもいけない。爆縮後の沈静化は相当な年月になるし1つの階層に複数のゲートがある事を考えると連続破壊の可能性もある。肉体を捨てた種族ならさして驚異でもないけど、君達的には超新星爆発し続ける様な場所に行くのは驚異だろ?)
話を聞く限り止めた方がいい。いいのだがどの程度ヤバい状態かわからない。そもそもガーディアンの所に行ってその暴走とやらは止められるのだろうか?行きました止める手立てはありませんでは困る。それなら最初から見て見ぬふりした方が余程賢いし、立ち入り禁止区域として発表すればすむ。流石にモンスターは溢れても現象が溢れ出る事はないだろう。
(驚異だから静観するって話でどう?行っても下手すれば止める手立てがないんだろ?)
(いや、手立てはあるよ。他でもない君と僕。それに奉公する者と言うか青山がいる。最終段階に進む前なら抜き取ってしまえばいい。そうか・・・、だから奉公する者を寄越したのか・・・。相変わらず先を潰すのが上手い。)
「どうぞお茶です。」
ココアを飲み終えた俺に奉公する者がお茶をよこす。スッキリした味わいで口の中の甘さが押し流されてサッパリとするが、コイツがキーマンなのか。取り敢えず行って止めるかスルーして長時間攻略待機を受け入れるかと言う話になるんだろうが、一応止める事は出来るらしい。
「奉公する者的にはガーディアンの爆縮中止に力を貸してくれる感じ?」
「魔女様のご要望とあらば全力は尽くしましょう。なに、死ななければいいと言うならどれほど無茶をしても問題にはなりません。なんなら道中で薬を飲んで死なないと言う事を証明もしてみせましょう!」
「いや、その権利は青山のものだ。勝手に飲めば魔女も怒る。これは確実に同意しているよ。」
「間接的にしか聞けないのはもどかしい。やはりクロエが引っ込むべきでは?」
「主体は私だ、指図は受けない。主人が容認しているのにそれを覆すと?」
「その主人を思えばこそ、制限された解放は喜ぶべき事。あの御方本人が下手に動かれると色々と危ない。その点魔女様なら多少暴れても問題ない。故に遊び場を提案して主人に提供するのもまた奉公の一貫でしょう?」
「本人が拒否ってんの!」
「なんと奥ゆかしい!」
少なくともお前がいなけりゃ魔女は好き勝手暴れてるし、普通に入れ替わってモンスターも倒してる。お前がウザいから出たくないと拒否ってんだよ!まぁ、そこを嘆くと言うか文句を言ってもしかたない。奉公する者も行けと言われてきたに過ぎないし、賢者的にはコイツが来たのは正解でガーディアンを止めるのにも役立つらしい。時間との勝負と言う面では否めないが、先ずは行って現状把握から始めない事にはどうしようもない。そうなると動き出すなら今からか。超絶強行軍するとして夏目は来てくれるだろうか?
さっき帰してすぐ来いと・・・、言うしかないよな・・・。ガーディアンの墜落現場をある程度把握してるのは夏目しかいないし、他のメンバーを選出している暇もない。下手に人数が増えればリスク管理も増えるし個人の行動速度でばらつきが出ればそれだけ進む速度は落ちる。
「吾の奉公する様を間接的に確認し不備がないかを確かめる。そして、ないはずの不備があれば叱責は免れぬが、そもそも奉公する対象が原生生物クロエを通してとなれば仕方なきこと。なるほど、これは吾に対する教育か!同調し知識は得たし青山と話して確認もした!なれば青山が精神崩壊して吾となったとしてもすべからく奉公出来る様にと言う試練か!クロエよ・・・、間接的ではあるがお主も魔女様を宿す者として奉公する対象に・・・。」
「するなよ!?絶対にそんな事するなよ!?」
「そなたも奥ゆかしい。やはりあの御方の末端を宿すとなれば何よりも美しく気高く高貴で、折れず曲がらず圧倒的に強き者でなければならないのに、下々の者にも優しく耳を傾ける様はあの御方を思わせる。原生生物の外見などどうでも良いが、少なくとも強さや美しさはこの中では別格なのであろう?」
「黙秘する。」
なんか、ヤベー事言いだした。下手に解答すると悪い方向に行きそうなので一旦黙秘。寧ろ考えをまとめてる時に話しかけるなよ。気が散るだろ!
「謙遜なさるな。あの御方も吾が話しかければその話に耳を傾ける静かに聞いておられる。それ即ち、吾の有益な情報に聞き入り何かしらの事をされているのだろう。吾はあの御方ほど万能でもなければ壊す以外に余り能もないが、それでも奉公出来ているのは無常の喜びと身を震わせ・・・。」
多分それ無視されてるやつだ・・・。どうでもいい話やら自慢話してくる人って、無視されてるのか聞きいて貰えてるかの判断がつかない人が多いよね?パチンコに興味ないのに昨日どの台で何万勝ったとか言われても聞き流しスルー以外ない。まぁ、話の種として知識だけは蓄えるけどさ・・・。
「電話するから黙ってくれ。」
「吾がしますが?」
「お前じゃ相手に何を言っていいか分からないだろ!」
「考えを抜き取れば吾も同じ事が出来るが?」
「するなよ?私に絶対にそんなことはするなよ!」
「それは・・・、しろと言う事か?押すな押すなと言われれば押せと聞いたが。するなするなはしろと?」
「禁止事項その1!私に職を使おうとするな!」
なんだよ無駄知識とポテンシャルの悪魔合体・・・。コイツとゲート旅するのって普通に戦う以上に疲れない?




