534話 青山@2 挿絵あり
(お前達は観測されないといなくなるのか?)
(そうとも言えるしそうでないとも言える。吾がこうなる前は・・・、奉公する者として色々なモノを差し出す前はお前達風に言えば敵であった。或いは孫悟空だったか?アレに等しい。)
(玉を集める方の?)
(違う。付き従う方だ。それが最も楽で最も効率が良かった。姿を見せ恐れられ壊せばまた恐れを産む。産まれた恐れは伝播しまた恐れられて吾の存在を確かなモノとして強大になりあり続ける。お前達の言う信仰と似ているが、何かを与えた所ですぐに思い上がるゴミならさっさと恐怖で縛る方が効率的だろう?何か施しをする必要もないし吾は壊すのは得意でも作るのは苦手だ。)
(それはただの邪神とか言うものなんじゃないのか?もしかして何かやらかしたのか?)
(やらかしたと言うよりは思い上がったと言う方が正しい。幾度も星を壊し下等なモノの世界を終わらせ恐怖を受けて自身を構成し、吾以外は下等と断じて黒い宙を進みまた壊す。器を捨てると言う事は不確かな自身を何らかの形で証明し続ける作業でもある。自身を自身として証明する自己観測は最も簡単で最も無価値な方法でしかない。そんな折あの御方の視界に吾が映り・・・。)
(戦いを挑んだと?)
(たわけ!勝負になどならぬ。目の前を飛ぶ羽虫と戦おうとするモノがどこにいる?邪魔ではあるが振り払う程度だろう?吾は少し振り払われ、それにより再起不能となりあの御方に懇願して多少使えるからと奉公する者として付き従う様になった。良いものだぞ?自己を確定され個としてあり無となる道も遠ざけられると言うのは。)
(つまりお前はお釈迦様の手の上を飛び回る悟空だったと言う訳か。)
(否定はせんぞ。それ故に吾は職としての探索者様よりも程度は低い。低いがこうして話す事は出来るし単体でもあの御方が見ていてくれる関係上個として成り立つ。)
(その探索者様は個として成り立たないのか?)
(それ以前の問題よ。多少でも目を引く何かがあれば自ずと注目されるがなにもなければ見るに値しない。それが至ると言う道程なのだが・・・、青山よ。お前はなぜクロエと言う者に奉公したいと考える?吾はあの御方がいる故そうしろと語りかけた。しかし、お前の本心とはなんだ?)
(いや、俺は本心からクロエさんと一緒にいたいと。)
(お前達と言う種族はわざわざオスとメスがあって、それを愛だの恋だのと言う分からんもので繁殖を決めるものなのだろう?吾から言わせれば非効率極まりない。)
(なら奉公する者の効率ってなんだ?)
(一番良いのは劣化コピーを作り交配して新しいモノを作るか、無数の劣化コピーをばら撒き戻って来た所を喰らうのが良い。)
(なら、お前はあの御方とやらを愛していないのか?)
(愛などというものは知らん。お前のデータから読み取るに奉公する者としては不要と断言する。望まれたから行う、望まれる前にやる。綺麗事で塗り固めなくて良い青山よ。お前はどうなりたいのだ?繁殖したいのか?それとも共にありたいのか?或いは別の何者かになりたいのか?クロエとやらは既にパートナー?を決めている。その中でお前はどうなりたいのだ?)
俺がどうなりたいのか?どうなりたいんだろう?始めてテレビの画面越しに見た時に美しいと思った。その姿が。
話してみて普通の人だと感じたけど、それでも何かしてあげたいと思った。それは愛なのか?
戦場で戦う姿をスマホで見た。圧倒的で俺の出る幕は皆無だった。何も出来ないのか?
仕事として本部長の席に就く事となり人を集めていたから、俺も肩を並べられる様にその席の1つに着こう思った。でも、自身の欲望を優先して本部長ではなく彼女の元へ合法的に行く事とした。俺の脱落でほかがまとまるならいいと言う打算もあった。
彼女の妻と言う人では彼女を守れないと思い新たなパートナーに成ろうと思った。2人の仲は固く結ばれ俺の入る余地はなかった。彼女が笑っているならそれでいい。
男としては守り慈しみ子を成し人としての幸せを与えたいと思う。でもそれは多分彼女にとっては押し付けで、俺に出来る事は精々その視界の端で・・・、彼女の目の届く範囲で人の役に立ち憂いを無くし、少しでも肩の荷を軽くするくらいしか出来ないんじゃないか?
それを・・・、その無力さを認めてしまっていいのだろうか?
望まれたからやる、望まれる前に行う。奉公する者は多分優秀なんだと思う。望まれたからやる事は出来ても望まれる前にやるのは至難の業だ。肩が凝るだろう肩もみをすると言えばいらないと言われ、お金を渡そうとすればやはりいらないと言われる。
どうしようもなくちっぽけで狂おしい程に何かをしたい。たとえそれが空回りだとしても!偽善的で独善的だとしても間違いながらでも彼女の望む方向に進めれば何時かは笑いかけてもらえるんじゃないか?
「奉公する者、1つ相談かある。」
「なんだ?吾はあの御方に見てもらう喜びを味わうのに忙しい。」
「俺はクロエさんを見ている。お前はあの御方とかいう人を見ている。そして、その2人は同じ所にある。なら・・・。」
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「そろそろ今日はおしまいにしますか?奥に行くにしても青山の戦いぶりは見て分かりましたし、下位とは言え行ってすぐに死ぬ様な事はないと思いましたけど。」
「う〜ん・・・。」
夏目はガーディアンまでの案内人として連れて行くのは確定。ただ、落ちた場所が必ず分かるわけでもないから捜査が使える青山は連れていきたいが、そこでネックなのが下位であること。下位のまま最適化されていいかも分からないし、かと言って奉公する者が混在して至れるかも分からない。
一応、奉公する者って勇者ポジションと言うか火消し役?らしいから弱いわけではない。ただ、魔女が作り替えたと言うなら大元は魔女達よりも下なのだろう。宇宙人的に自分よりも下のモノを支援したり扶助したりする気持ちと言うか、ボランティア精神的なモノがあるかは分からないが、感覚としては下は上に関わりたくないとか?まぁ、立場や上下関係が何で決まるかは分からないか。
(賢者に聞きたいんだけど1つの身体に2つの意識があるとして、例えばどちらかが至る準備が出来てても片方が止めることってある?)
(あの奉公する者を宿した人の事?言っておくけど奉公する者は魔女のモノだから中位に進めるかは本人次第だよ?そもそも勝手に追ってきた眷属と言うかペット?奉仕生命意識体?なんて余程逼迫してない限りうるさい同居人でしかない。まぁ、それでも魔女が話しだしたら使い魔は踊るんだけどね。ねぇ?魔女。)
(同族が見てるのを邪魔するほど私も暇じゃないし、中位に至れないのは本人のせいでしょう?そもそも私の同族がアレがあるからと気を使うなら最初から上位にでもしてるわよ。その代わりブーイングの嵐でしょうけどね。)
魔女と賢者はブーイングの嵐ではないのかと小一時間問い詰めたいが藪蛇は避けるべきだろう。いや、そもそも魔女は最初の選択以外出ないらしいし、賢者は出るにしてもExtra枠なので余程適性に恵まれないと就けない。その上で対話出来るかも不確定ならブーイングは出ないのだろう。いや、そうなると俺って魔女の同族からヘイト集めてない?
(集めるも何も私が黙らせるわよ。)
(人の深い思考を読むな。なら、やはり問題は青山自身と言う事か。)
武器もスポイトから万年筆の様な先の割れたダガーになって動きは良くなった様に思うし、乱戦でも戦い続けるだけのタフネスと言うか、自分の疲れやら怪我を抜き取って相手に注入しているように思う。他の人に心当たりもないしやはり青山は置いていって追跡者中位の俯瞰者とか呼び寄せるかな?
ギルドが立ち上がったばかりでかなり忙しそうだけど、発見と対応があればどうにかなるかも。でもあの人物探しよりもモンスター退治に振り切ってるから爆散して粉々だと厳しくなるのかなぁ・・・。タバコを吸いながら今後を考えるが、あまり遅らせるのもなぁ〜。いっその事本部長達集めて集団で捜索する?
政府としてもダメだとは言わないだろうし、戦利品としても多分魅力はあると思う。ただ、どの程度残骸が残ってるのかがネックなんだよなぁ・・・。下手したらもう消えてしまっていると言う可能性もあるし・・・。
(流石にお手軽インスタント中位は無理か。忖度してくれればありがたいと言えばありがたかったが。)
(それは私が許さない。事をなすのに力を貸す事はよくても近道なんて興ざめよ。私達はあくまで職で観客・・・。あのバカが!)
(どうしたの?そんなに魔女がキレるなんて珍しい。)
(本体の悪ノリよ・・・。いえ、面倒になって許可したわね?)
「吾、同調!見てくだされ魔女様!吾が参りましたぞ!」
変な喋り方になった青山は満面の笑みを浮かべつつノールックでモンスターを・・・、 触れる事なく分解してみせた?えっ?アレってコードだよな?極細のコードが編まれた糸と言えばいいのか、そんな不可視の線でモンスターを解体し、ビームを霧散させ時な抜き取り・・・。
「吾が来たからにはもう安心ですぞ!ごふっ!」
「青山が吐血して腕から血を流してますがどうします?」
「どうもこうもありません・・・。一旦引き上げて確認しましょう。」
絶対あれコード使ったフィールドバックだろ?ダラダラ血を流しながら笑っているのがまだ猟奇的な・・・。その前に本物(?)の青山どこ行った!?無理やり乗っ取りは出来ないはずだろ!それが何で奉公する者がガッツリ表出てんの!?確かに口を貸して喋る程度は出来てたけど、今やってるのは俺と同じ様に完全に意識と言うか身体の主導権渡してるよね?




