クリスマス時空 聖夜協奏曲@旅立つ人々
「さて、ウィルソン補佐官。いや、クロエと旧知の仲間と言う肩書を貰い抱き着いたり抱きつかれたりする羨まけしからん要人国賊と呼んだほうがいいかね?」
「大統領、国賊ではありませんよ。抜け駆けしたクソ野郎でよろしいでしょう。さて、局長として聞くが贈り物は何かな?小さな小箱だと聞いているけど?」
「じ、自分は役割を果たしているだけです・・・。」
ペンタゴンの一室。俺の勤める情報局奥の局長室、別名尋問室に俺は後ろ手を縛られ両足を椅子にくくりつけられ、局長が付与師の札で首から下の筋力上限が赤ん坊程度にされて拘束されている。クソ!俺が何した!
旧知の仲指定はファーストがした。米国もそれをバックアップした。そして俺はウィルソンおじさんとして画面越しでしか見た事のないクロエ=ソフィアを一時期預かった人物となった。いや、裏工作やら司法取引なんて日常茶飯事だ。
犯罪者だって重要人物なら減刑やら死亡を偽装し顔や名を・・・、経歴そのものを偽装して新たな人物として歩き出す。そんな米国で人1人の存在裏工作を行うなんて簡単だ。特に存在しなかった人間を存在したかの様に偽装するなんてどうとでもなる。問題はその工作後だ!
ファーストは何を思ったか旧知の仲の工作に乗り気で、出会えば抱き合って抱擁しようとした、嬉しかった!
たまに・・・、半月に1回くらいギフトが届く。前回は住む所の特産品で美味かった!
米国にいないファーストと俺の接点は少なく、部屋にあるポスターを眺めるくらいしか出来ないが、そのポスターに砂漠で見た姿が重なる時もある、美しかった!寧ろスクリプターとして色々自分の記憶を改竄してやった!
実はファーストのスマホの番号も『何か不測の事態があれば連絡するので。聞きたい事や暇で話し合いでが欲しい時は気軽に電話して下さい。』と交換したので個人的に知っている!数度電話しようとしたが、なんだかんだでかける勇気がなくチキンハートが炸裂しているが満足は満足だ。
ただ、旧知の仲で電話連絡がないのもおかしいと思っているのか、たまーに、本当にたまーに電話がかかってくる。とても有意義で満ち足りた気がする・・・。
「ほぅ?我々に隠れて連絡を取り合いギフトをもらい、中年のおっさんがあの美しい少女に抱きつく事が役割だと?」
「ウィルソン君、役割と言うのは確かにそれぞれにある。君の役割は私の補佐であってクロエと1人だけ仲良く遊ぶ事ではないよ?」
「し、しかし自分は旧知の仲!なら家族ぐるみの付き合いでもおかしくないでしょう?親戚の仲のいいウィルソンおじさんとして!自分はファースト・・・、クロエに選ばれた!」
「ぐぬっ!なんと言う優位性!」
「大統領、敵は強大です!お気をつけを!」
「そう、俺は選ばれた!それが偶然か必然かは分かりません。ただ、事実として選ばれてその席に座った!だからそのギフトも俺の物です!」
「ぐぬぬ・・・、直接写真集やインナーさえも貰ったお前が更にギフトを得るだと!?」
「ウィルソン君。時に配達業者が誤って私のデスクに配送したとデータを改竄・・・、もといそう言った事実があったとしていいね?」
「局長、ボケるのは早いです。本人の前で何言ってんですか。大統領、現場には現場の事情があります。」
「成る程・・・、時に局長、私はウインターバケーションに出発する。1人では騒動が起きるだろうとエマ大佐に護衛も依頼した。ではさらば!」
「大統領!?米国のクリスマスパーティーは!?」
「家族と楽しめと御触れを出した!こんなご時世だ!家族との繋がりを優先したまへ!ハハハ・・・。それに若返り老人会と言う物も発足していてね・・・。」
「・・・。局長、大統領は既婚者では?」
「どうせ互いにバカンスを楽しんでから合流するだろう・・・。」
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「サイラス、日本へ行きましょう。」
長官室に現れた女王陛下は突拍子もない事を言う。日本・・・、日本?はて・・・、ワシは密入国を手伝えと真正面から言われとる様な・・・。いや、聞き間違いじゃよな?
「は?」
「聞こえなかったの?日本へ行きましょう。君主として仕事してるんだから、たまの休みくらい一般人として遊ぶくらいいいでしょう?」
「いや・・・、入国手続きとかがですね・・・。」
「その為に運び屋に内々に話してるんじゃない。家族と過ごすのも90回以上にやれば流石に飽きるわよ。それに、私が再度君主として立ったから子供達は戦々恐々としてるのよ。『母上を上回る君主としての模範とか胃が!』ってね。重責を感じて杖抱いて寝てるし。」
愛された君主が再度君主として国の模範を示す。本人としては何一つ変わらん日常なのじゃろうが、その後に続く君主の重責はいかほどじゃろう?長くある人が退きそれを超える様な模範を示す。女王陛下としてメアリーは理想的じゃが、その理想が通常として受け入れられた時、次に立つ者はさらなる高みを求められる。
抜け道は魔法じゃろうなぁ〜。職として魔術師に就きあの戴冠式以上の派手さで魔法を使い国としての・・・、魔法立国としての存在を示す・・・。酷じゃのぉ〜。そもそも女王陛下とて戴冠式の時は魔術師ではなかった。その後ワシとエヴァ、フィンを連れてゲートに入り魔術師:火となった。
激動を生き自由であり、女王としての職務に情熱を燃やす。その火は絶えずに未だにに燃え盛っておると考えれば、確かに魔術師:火は出るじゃろうな。まぁ、女王がヒーローの様に変身したら・・・。
「既に変身してた?」
「なんの話よ?それよりも共犯者サイラス、私は日本に行こうと思ってるの。杖のお礼もしたいし、クリスマスにはプレゼントがつきものでしょう?何がいいかなんて分からないからお茶とお菓子の詰め合わせでいいと思うけど、聞いてる?」
「聞いてますが・・・、それはクロエの所に行くと?」
「ええ、正確には押し掛けるね。黄昏時に現れた影法師。短時間だけでいいのよ。騒がれる前に連絡するからね?」
「しかし女王陛下、その短時間をどう誤魔化すおつもりで?クリスマス時期ともなれば忙しいでしょう?」
「どうせ車で宮殿に入ろうとしたら警備員にも止められる私だもの。影武者でもかかしでも人形でも座らせておきなさい。家族との時間は大切だけど、それは終わりが見えるからであって、小憎たらしい小娘になったら邪魔でしょう?公務は次の君主育成として子供達に投げたわ。」
「やけに手回しがいいようで・・・。」
「それくらい出来ないと君主じゃいられない。と、言うか日本くらいなのよ。未だに市民に銃規制してる国って。その上で犯罪者に対して物凄く厳しいし、極めつけはギルドのグランドマスター、クロエが犯罪者許さない方針だから、夜でも女性1人で出歩けるの!」
「いや、確かに日本の犯罪率は相当に低い。国際会議後に開示された犯罪率や刑罰に関する法律を考えれば、確かに怨恨でもなければ犯罪は割に合わない。」
「でしょ?なら、それを肌で感じないといけないの。魔法立国を目指すにしても、どこでも魔法をOKにするつもりはないし犯罪には手厳しくが世界的な流れだしね。」
「う〜ん・・・、ちょっとだけですよ?私も護衛として着きますからね?」
「なら行きましょうか。この部屋の扉には会議中入るなと女王名義で張り紙したし。」
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「む?」
「あら?」
「サイラス魔法長官?」
「米国の英雄?」
「・・・、結城。俺今日家族と過ごすの辞めるよ・・・。」
「いや、アレはまさか・・・、な?強く生きろよ?世の中って割と変な事起こるっぽいし・・・。千尋とは仲良くやるんだぞ?」
「てめぇ!他人事だと思って!何が悲しくて家の前に大統・・・。」
「ご子息の那由多だナ?すまないがNGワードだ。そちらは御学友だと思うガ、他言無用で頼ム。」
「ほう!彼女がトラップマスターの・・・、面白いものですね。」
いつの間にか口元には黒い猿轡が!いや、絶対この人父さんの言うエマさんだろ!?てか、テレビで見た事ある人達だろう!えっ!なに!?ウチって何か国際的な重要拠点にでもそれたの!?
「私は通りすがりのギース・ハーワード、大統領違う。」
「私は女学生メアリー・ポピンズ!傘とかないけどポピンズよ!ギース?なんで下顎を出してるの?」
「こうするとバレないからだ。言葉もカタコトならなおいいらしいし。ふむ、我々は老人会の催しでここに来たがクロエさんは不在か?」
「いや・・・、父さんはまだ仕事・・・。」
「多少早かったカ。クリスマスまでは大変な事ダ・・・。それとサイラス長官、その格好は目立つゾ?」
「米国の、私もさっき呼ばれて今ここと言う奴だ。流石に日本に馴染むように頑張ったが何分持ち合わせが・・・。」
「老人会ね、まだいないなら先にちょっと食べながら話さない?ギース。」
「いいともポピンズ。すまないがナユゥタ君。このあたりで豚骨ラーメンの旨い店を知らないか?東京で食べて以来気に入ってしまって。ポピンズはそれでいいかい?ナイフとフォークもなく麺を啜るが。」
「人生挑戦よ。文化の違いを受け入れるのもまた、新たなる風に乗る作法でしょ?」
「あー、それなら近くのタイガードリーム?」
嵐の様にいた人物達は嵐の様に去って行く。別に父さんは恨まない。ひょっこり顔を出して見ていた母さんも誰かは気付いただろ?なら、俺は戦略的撤退をする!
「母さん、俺クリスマスは彼女と過ごすから!下手したら帰らないから!」




