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街中ダンジョン  作者: フィノ


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512話 何を狙っている?

「事務総長として、いや・・・、国連を象徴する立場の者として、貧しい者や弱い者の代弁者として発言する。確かにゲートのおかげで貧富の差も縮まり飢えは解消され、人は超常的な力を得て先のステージへ進んだ。反面、ゲートにはモンスターがいて、それが時折スタンピードとして解き放たれる。強き者なら・・・、ファースト(・・・・・)氏の様に笑いながら軽くモンスターをあしらい死を超越し、あの門の中を歩めるなら問題はない。しかし、それは今の所たった1人に許された権利でしかない。国連が調べた統計によれば地球全体でのゲートによる死者は既に一億人を超え更に今後数年で横ばいか増加するものと考えられる。故に、我々は宇宙へ出向きモンスターと戦える戦力を呼び込みたいと考えている。」


 ギリシャやエジプトからの質問に事務総長が答えた形だが、既に中露の考えを隠す気もないか。プロパガンダよろしく発生するであろう重大インシデントには触れず、さも宇宙人は人類に協力的で会いに行けば協力してくれると言う様な物言いだ。それならまだトルコの方が頭がいいし、ギリシャの方が建設的だ。


 赤道上にある国々も野心的で誘致さえ出来れば後は自分達で研究すればいいし、発言した様に現地民を使って貰えれば研究の手間は省け且つ、重要施設なら自分達の過損失は少なく守ってもらえる。


 インドも動き出したか・・・。人口は多いし数学的な分野やIT系も強い。ただ、カースト制度がまだ強かったせいでゲート発生当初はバイシャやシュードラが主にゲートに入り他は見守ると言うスタンスだった。しかし、それが職や出土品、金貨により逆転してバラモンば地に落ち苦肉の策として大半をクシャトリアとした。まぁ、このクシャトリアは王侯貴族ではなく戦士階級の意味だが・・・。


 何にせよカーストは意味をなさず嫌なら勝手にどこかへ行く。抑圧された年月が長い分自由へのあこがれも強く、力も金銭も手に入ったので今はかなり奔放に過ごしているのだとか。因みにガンジス川はかなり綺麗になったらしい。日本人が飛び込めば病気になる事必須であちらは水葬とかもするので、普通に水浴びしていると死体が流れてくる。そうでなくとも生活排水やら工業排水を流しているので底はヘドロ化していたが、ゴミをゲートに投げ込むのが定着したおかげと魔術師なんかが頑張って浄化したそうだ。

 

「異議あり。適切な重大インシデントが何1つ話されていない。そもそもどうやって意思疎通を行うのか?呼び込むと言うが何を提示するのか?そして、なぜ人類(・・)に優しくしなければならないのか?私がここに来たのは警告の為だ。行動原理の全く異なる者が人と同じ考えで行動するわけがない。」


「なら、それを全てクリアすればいいと?我々人類はそれをクリアする鍵を持っている。」


 事務総長の顔が歪みその口元に浮かんだのは笑み。そして指差す先は俺。マズった。会話を分析し発言するだろう箇所を事前に予測し、必ず口を挟むであろう言葉で言葉を誘い発言させる。油断したわけではない。しかし、事務総長の今までの発言が中立的だったが故に今の物言いには反論するしか無かった。ちっ、立て直しは面倒だ。事務総長の言う様に俺は出来る可能性を示し配信した。ここで協力しないと言うのは簡単だ。既に不公平であるとも宣言している。しかし、今のプロパガンダの真の意味は大衆がどれだけその言葉に夢を持ち、自身に降りかかる目の前のリスクを遠ざけられるのか?その一点に集約される。


 だからこそ統計と言う言葉をだし死者の人数も示した。誰だって死にたくない。それを投げつける相手がいるなら投げつけて肩代わりさせたい。それが宇宙人でありその宇宙人は人よりも優れていると事務総長と言うか、今の発言を考えた連中は思っている。確かに俺と言う存在がやった事や身体の事を見て考えて考慮した上での見解なら分からない話でもない。


「先ずは私を指差していますが失礼です。そして、その失礼も理解出来ない人間がどうやって穏便に話しをするんですか?」


「対話出来るなら相互理解も可能だと考えている。高度に発達した科学力を持ち、我々に恩恵と宇宙への道を示した存在達なら弱者に手を差し伸べるなど・・・。」


「アウトです。」


「アウト?」


「ええ、アウトです。前提条件が子供の夢物語の様に何1つ確定していない。私達は獣人と言う対話出来て協力し合える新しい隣人を迎え入れた。しかし、これほど好条件な異種族にさえ人はまだ高慢に振る舞う。元が犬猫だったから、元がペットだったからと。獣人憲章を提唱しその話し合いの中でサボるは不要と意見が上がり、多数の国の方がそれに賛成した。それどころか管理や効率と言う言葉も出た。それは宇宙人と人間の関係にも置き換えられる。呼び込めば弱いから救ってもらえる。なぜ、何の関係もない宇宙人が我々を助けなければならないんですか?仮に私が宇宙人としての立場を考えるなら、人類を管理して奴隷として扱い欲しいモノがあればどんなに命を消費しようと関係なくやらせる。それが最も損失も少なく効率的でしょう?」


 人類として差し出せるものは多分、今のところ何もない。よくて労働力だろうがそれも魅力としては下の下で思い通りに動く機械と、意思があって勝手に何かする不確定存在なら間違いなく機械を選ぶ。しかし、本当にそれだけが目標なのか?前に聞いた話ではスタンピード封じ込め失敗時に宇宙へ逃げると言う地球脱出計画もあった。


 と、言うか何故それを言わない?スタンピード発生時、戦闘状況次第では非参加者を逃がす為に大型輸送システムが必要で、それをラボと同型の物にしたい。宇宙人なんて言わずコロニー作って退避先の確保が必要だと言えば更に賛同者は増えただろう。なんだ?何かを見落とした?何かを除外した?いや、スタートや目的が違う?


 チラリと松田を見るがその松田も増田から貰った情報以上は持っていない様だ。そうなると知っている情報で話を組み立てていくしかない。全うに受け取るなら協力者を探しに行く。含みを考えるなら宇宙に出て交渉権の場を作り発言力を増す。しかし、これは既にほぼ無いと考えていい。本人達も探すと言う関係上、不確定事項が多すぎるし、この会議で交渉内容を話し合うと言うなら次に繋げる為と考えられなくもないが、その間に祭壇まで辿り着いているとも考えられる。そうなれば発言力は他の国と変わらない。


 なら、何故宇宙に出てまで宇宙人を探すのか?まさか本当に肩代わり先を探している?いやいや、ないとは言い切れないがそれなら先に他の国に押し付けるだろ?他国と宇宙人とではリスクが違いすぎる。それに、昨日の時点でギルド世界化案は可決されて動き出している。


 そうなると最も個人的で独善的で且つ、夢として追いそうで何らかの形で優位性がありそうなもの・・・。まさか、ソフィアの件で求めたのは蘇生ではなく永遠?不老と不死の薬はある。しかし、経過観察は不十分だし薬を分けた意味も未だに分かっていない。そして、出る量はかなり少なく俺が売って以来発見したと言う報告もほぼ聞かない。


「それをさせない為に貴女がいる。我々では出来ない事を行える貴女が。永遠を自称し圧倒的な力でモンスターをねじ伏せる、宇宙人でさえ、ソーツでさえ説き伏せた貴女が。それとも初日に出されたデータは偽物で死なないと言う話も出任せなのですか?」


「永遠の証明に私が自身の頭を銃や剣で何万回と撃てばいいのですか?はっきり言いましょう。別にこの身体は人と変わらない。モンスターに撃たれれば穴が空いて巻き間取り、齧り取られればそれも巻き戻る。痛みもそこには存在し出来る事と言えば考えて考えて考え抜いて戦うくらい。そんな、そんな程度の身体です。変に買いかぶってもらっては困る。それでも信用出来ないなら首を跳ねればいい。あぁ、でも髪は切らないでください。割とこの髪は気に入っているので。」


 解放した武術家は惜しかったな。使う場面はここだったか。有無を言わせない襲撃者なら、誰もが知らず中国側だけがその存在を確認出来るあの武術家なら切り札として切れた。しかし、それは今はおらず引き金を引くなら自分しかいない。自傷なんて趣味はない。そして、小さな自傷では意味がないのだ。それこそ身体の半分を吹っ飛ばす程度の損傷から巻き戻るのが1番証明しやすい。


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― 新着の感想 ―
>対話出来るなら相互理解も可能だと考えている お花畑の妄想ではあるけど というか中国こそが対話できるけど相互理解不可能な存在の筆頭だと思われてるだろうに
急に分からなくなったな、「我々は宇宙へ出向きモンスターと戦える戦力を呼び込みたいと考えている」奉仕するものは来ては居るのも少しややこしいが 宇宙人との交渉もファーストなら出来ると、ファーストを動かす…
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