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街中ダンジョン  作者: フィノ


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510話 新しい技術は異国から 挿絵あり

 大休憩宣言がされて各自思い思いの行動を取るかと思ったが、そんな事はなく大多数は俺の方をチラチラと見つつ電話対応と言うか自国との連絡で大忙しの様だ。実際横にいたジョージもアライルに呼ばれて話し合いをしているし、英国の使者も電話や情報整理で忙しそう。余裕があると言えば俺と松田・・・、厳密に言えば俺だけかな?憲章も確定したし永遠である事もほぼ証明出来た。


 一応青山の方はまだ武術家とやり合っているらしいが、バイト経由で今の所不要な流れとなるから後をつけるだけでいいとした。と、言うか武術家は耳が聞こえているのだろうか?魔女の声が木霊しているので意思疎通には難があると思う。まぁ、だからこそ言う事を聞かない襲撃者としては最適でもあるのだが・・・。


 何にせよコイツを捕縛しようとした人に被害が出るかもよろしくないので、青山やバイト含め静観からの離脱が最も望ましい。寧ろ、帰って来て発見した階層と状態を聞きたいな。元々軍部に呼ばれるくらいには腕が立つのだから簡単には死なないと思っていた。だが、そんな襲撃者が中層手前まで進み至っていたらと思うと頭が痛くなる。


 タバコをプカリ。持参したタバコは指輪から出さないといけないが、貰ったタバコを吸う分には文句も言われないだろう。これで文句を言われたら簡易禁煙状態に突入し、会議早く終われと祈るしかなくなる。そんなユルユルと立ち昇る紫煙の先には恨めしそうにコチラを見る中露の使者の顔が・・・。話し掛けたい様な雰囲気はあるものの丁寧な無視が効いているのか、こちらに近寄ってくる事はない。


 相手が引っかかりを覚えるとすれば蘇生薬とか?今も指輪の中にある薬だが、あちらの読みではソフィアに使用し失われた物としていたのかも。悪いが疑心暗鬼を更に加速してもらおう。ソフィアとはそもそも誰なのか?本当にロシアで行われた実験体なのか?容姿の違いはどう説明するのか?本当に無関係で米国で療養していた娘ではないのか?或いは薬以外の方法で蘇生させたのか?


 考えれば考えるほど現実と虚構は混じり信じたいものを信じる様に傾向していく。それに、日本の情報管理体制も誤情報垂れ流し方式なので、真意を確かめるにしてもスルリと滑り落ちてしまう。そんな事を、つらつら考えている間にも松田の方はギルド設立に当たっての人選はどうしたらいい?と言う質問を投げかけてくる人が多い。


「日本の体制として、データで提出した様にクロエ参加による講習会を実施して骨組みを作り、その後選出戦で選ぶと言う方式です。少なくとも中位がいる国はその人を長として技術や連携を・・・。」


「いやいや、流石に中位といえどダブルExtraには敵わないのだろう?講習会で中位に至ったプロセスも開示され、それを元に教育しているがたまに出る助言と言う言葉はどうすればいい?」


「中位が人格不適合者だった場合の損失はどうすれば・・・。流石にシリアルキラーが至ったと言う話は聞かないが、うちの国ではギャングのリーダーが至ったと言う様な話も・・・。」


「日本で中位育成留学は可能か?米国の中位はファースト氏の直弟子という話を聞いた。なら、それの様に各国から人を集め至らせる事も可能では?」


「そうならない為に日本として様々なデータを開示しているのですよ。我が国としては協定拡大には意欲的です。しかし、本部長としての業務も多忙を極め本人としても奥へ行くと言う目標があります。祭壇発見は人類としても優先するべき事項でしょう?他、自身と同系統の中位を統合基地に派遣しての交流は可能だと思いますが・・・。ちょっとクロエ?話聞いてるなら口を挟んでください。」


「ん?ギャングのリーダーが中位ならギャングごと取り込んでしまえばいい。スィーパーとはイメージが優先します。なのでその人をギャングではなく鉄の掟を持つ組織のリーダーとして実務者とする。そして、政府側の人間をデスクワーカーとして派遣し、互いに意見を出しながら協力体制を作る。まぁ、ギャングが咎人ではないとは思いません。しかし、何らかの形でその国で償う法はあるのでしょう?」


 犯罪者が至る。残念ながらない話ではない。引き金が感情の爆発と道を決める事なら、邪魔者は排除したいし排除する為に感情が爆発してもおかしくない。例とするなら騎士物語とか?姫を助ける工程で邪悪な魔物と戦い感情を爆発させる。若しくは、攻めて来た敵国の兵と戦い自身の愛する国や人を守る。


 綺麗な言葉で塗り固めるなら英雄譚。目を逸らさず見つめるなら排斥する物語。主人公の視点では正義でも、よく取れる食料として人を襲っていた魔物からすれば自然の摂理だし、国同士の戦いなんて現場の騎士がどう叫ぼうとも政治の一環でしかない。


「・・・、ならファースト氏は家族が襲われても法的に償えば許すと?」


「程度にもよりますし、日本ではスィーパーの犯罪者は厳しい奉仕刑となっています。それを差し引いてもどの程度の被害があったのか?或いはどうすればそれを未然に防ぐ手立てとなるのか?犯罪者は犯罪を犯さない限りは一般人です。それはギャングも一緒で最初からギャングという人もいない。踏みとどまらせる手立ては人との繋がりで、それが誰の家族か分からせておいたりするしかないでしょう。だからこそギルドマスターや職員はいい待遇をしてもらったり、家族が犯罪に巻き込まれたら国として全力で動くと約束してもらってますし。」


 初期の講習会メンバーは全員未婚だったが、選出戦で本部長となった人達や副長となった人には家族がいる人もいる。なので警察が家の周りを巡回経路にしたり、警備会社と契約して緊急駆けつけしてもらったりと様々な手はうってある。まぁ、それでも交通事故どうする?とか、16歳未満の子供では逃げる手立てもないなんて話もある。


 こればかりは人が成長するしかないのだが、1ついい話をするなら各国に配った旗には犯罪するなと魔法を込めているので、スィーパーの犯罪率は少しづつでも下がってくれると思いたい。こればかりは統計を見ないと分からないし直ぐ様成果の出るものでもないんだよね・・・。


 まぁ、家族を殺された治外法権のゲート内で探し回る。かなりグレーゾーンな話にもなるのだが、仇討ちや決闘は法律的に処罰されるのだが、ならゲートの中でならいいよね?とやる人は結構いる。例えば不倫して慰謝料払わずに逃げた奴が奉仕刑になったと聞いたら探しに行く奴もいる。


 期間を開けての執行開示になるし、本部長の家族が犯罪に巻き込まれたら、刑を執行する本部長は本人ではなく別の人間となる。その法だけは俺も違えない。それを違えてしまえば誰でも私刑に出来てしまうから。守ると決めた基準を自らずらせば何一つ立ち上がれなくなるから。


「奉仕刑・・・。松田副官房長官、その辺りの法律的なものも開示を。」


「かまいませんが日本は元々死刑のある国です。それを基準に更生目的ではなく、刑罰として作ってあるのでかなり厳しいですよ?それに、それを知らしめる為に学校教育カリキュラムで公民のウエイトを増やしたり、法律的相談所をギルドに設置したり、或いはスマホアプリですぐに検索出来る様にしています。」


「情報技術交流必須か・・・。シェンゲン協定は外務省の管轄でしたね。うちの国でも検討して話を持って行くでしょう。」


 さて、犯罪抑止用に杖の作り方は配信で広めるとして、ギャングを取り込めと言った手前、何かあれば話しが飛んでくるかなぁ。取り込み方はその国によって変わるだろう。ただ、既にある組織を活用するのは悪いことでは無いし、政府とギャングの抗争が勃発して割食うのは平和に暮らしている人である。


 遺恨もあるし、殺された人にどんなに詫びても取り返しはつかない。でも、だからと言って野放しにも出来ない。だからこそ、法律と言う基準とゲート内治外法権と言う裏技があるのだし・・・。家族が害されるとか考えたくないなぁ〜。老衰や不慮の事故はまだ諦めがつくが、人の手で悪意を持って行われたなら必ず探し出す。


「ファースト氏、ファースト氏。よろしか?」


「えっと、サイさんでよろしいですか?」


「はい、台湾から出席しているサイです。ちょっとお話よいですか?」


「お話・・・、政治的な協力は副官房長官へどうぞ。また、交渉内容での抜け駆けは受け付けません。私はメッセンジャーですので。」


「違います。込み入った話です。R・U・Rについての・・・。」


 R・U・Rとな?ちょっと前なら関係ないと言えたが今ってラボで弄ったりしてるし傘下に入ってるしまるっきり無関係ではない。無関係ではないが決定権や発言権も持っていない。しかし、ここにいるのは政府高官。それもかなり地位のある高官なので無碍にしてもいいものか・・・。


  松田の方を見るとブータンやバンコクからの参加者から獣人に付いての質問を受け、英国からの参加者と共に対応している。大休憩の時間は短いし、国内と連絡を取った後は情報収集と言う流れなのか結構人も集まってきたな。ぽつんとと1人椅子に座る事務総長がちょっと羨ましい。タバコは吸えるが魔法禁止なので魔法は使えないし、スマホも置いていたのでネットも使えない。


 と、言うか部屋に訪ねて来たのってこの人かな?暇だから話してもいいのだが、あんまり当たり障りのない事しか言えないよな?さっきは意見求められたから話したけど。


「何1つ決定権がなく、話を聞くだけの相手でよければ。R・U・Rがどうかしたんですか?」


 いや、松田と話してる奴らまでこっち見んなよ。確かに会議の内容的にR・U・Rの事なんて一切出てきて居ないがそこまで興味の・・・。いや、アレも普通に使ってるけど出土品とのハイブリッド品なんだよな。と、言うか劣化品?ソーツが作って人が使える様にスケールダウンしてるから間違いないとは思うが・・・、ドイツの使者も話に混ざりたさそうにしているが、先ずは話しかけてきたサイさんからだな。しかし、込み入った話をここでしていいのだろうか?


「・・・、販売元に問い合わせて構築者がOKならと言われました。私はデジタル大臣をしてるのですがR・U・Rのモンスター構築風景を視察したい。あれは素晴らしいものです!作ったのはファースト氏と奏江氏、そして奏江氏はファーストの後追いと言いました。ブラックボックス的なもので、開示拒否されればそれまでですが、後から必ずその話がしたい。」


「松田さ・・・、後から伺いましょう。」


 話しながらサイの顔は悲壮感の漂うがモノになって来ているが、本当はモデリングなんかより大変な事でも起こってる?佐沼やラボからそんな話は聞いていないが今は通信手段もない。約束を取り付けた事に一瞬の安堵を見せるが、やはり表情は明るくないな。


「事務総長より、時間となったので会議を再開する。しかし、長時間の会議である点と各国から情報整理の時間が欲しいと言う意見を受け、一度会議を中断し明日の昼以降で再開したいと考えている。その間の宿泊費等は国連側が負担するものとする。異存のある方は?先に通達した通り、本会議は長引くと予想された為開催日当日より数日程度は予定を開けて欲しいとしていた。」


 一旦完全なブレイクは嬉しいが、ぼっちだった事務総長に誰が意見を上げたのか?各国としているが十中八九中露側だろ?さっきの休憩中もチーム日米側には人が集まって、それこそどちらに着くか迷ってた国も寄ってきて意見交換やらを行っいたが、中露側は電話ばかりでほとんど会話と言うか対話していなかった様に思う。


 多分交渉権たらい回しからの手中に収めると言う思惑が、権利保有者が死なないという事で完全白紙になってしまい次の案を作る時間が欲しいとか?残された道としては暴走リスクでまたゴネるか、実害的な損傷が注射や点滴の針程度では納得出来ないと言い出すか。それとも、交渉権手中案を完全に諦めて交渉内容で自国側有利なモノを提唱するとか?


 う〜ん・・・、加盟国全ての名前を書いてくじ引きをして引かれた国が交渉内容を決めるでもいいんだけどな。話したところで決めるのはソーツだしあんまり長いと時間の無駄だから帰ると言い出しそうだし。


 その後会議の議題は当たり障りのないものを上げたり、通達だけと言うモノも多い。ギルド世界化に伴い設計図は原則としてギルドに持ち込み管理するとか、出土品は貿易品の対象になるかとか、パワードスーツの世界的なコンペを行いたいとかとかとか・・・。中露側から飛行ユニットの情報開示を求められたが企業間でやれと松田が一蹴したのは中々爽快だったな。


 元から企業がやってる事で日本政府は関与していないと言う一貫したスタイルが功を奏し開示は見送られた。その代わりお小言と言うか釘刺されたのが回復薬系の話。スィーパーと言うか人の生命に直結する物なので作れる者をもっと増やして欲しいと一企業と言うかラボを名指しで言ってきた。


 これについては後日高槻の所に正式に要請書類が届くんじゃないかな?ただ、回復薬のノウハウを開示する場所は別にラボでなくとも米国の生産プラントでもいいので、意気揚々とラボに行く思ったら肩透かしを食らった気分になるかも。


 何にせよその辺りは高槻達が決めるのでどう転がすかは分からない。ただ、高槻本人は病人を助けると言う目標があるので、案外今頃書類が届く前にプランを立てて逆に申請したりするんじゃないかな?作る場所を各国の統合基地に併設させれば手間も暇も関税も無視して定価で販売出来るし。平等な医療体制と言うか平等に金取って人が助かるならこれほどいい事はない。


「あぁ〜疲れた・・・。」


 結局ホテルに帰って来たのは日付が変わる少し前。着物は嫌いではないが流石にずっと着ていれば疲れる。なので指輪に収納しサイが来るので失礼にならない様な部屋着に着替える。


  挿絵(By みてみん)


「もうフラッシュは懲り懲りだなぁ・・・。真面目に仕事したから明日はオフでもいいかなぁ〜?」


「まぁ、調印も終わったしフェリエットがする事は明日の入場者確認以外ないと言えばないんだが・・・。残念な事に時の人と言うか時の猫人だから外に出ると面倒だぞ?1日寝てるとかならいいが。」


「フィンが帽子のおっさんとエヴァもいるからゲート行こうと誘ってたなぁ〜。残り少ない日数だし、フィンを鍛えたいなぁ〜。」


「一端の口を聞いてるけど大丈夫か?調子に乗るとお前失敗するだろ?」


「これでも私は思慮深くなったなぁ〜。もう溝に落っこちたりベタベタな板に捕まったりしないなぁ〜。」


「はいはい、そこは一旦保留な。流石に要人としているフェリエットがゲートに行けばSPも見過ごせない。・・・、あっ!オフなし!妖怪の出来る事をフィンと共に簡潔に見せて欲しいって話もあるんだった。」


「・・・、サボっていいのかなぁ〜・・・。」


「ちゃんとやればマタタビ酒やキウイ酒もやる。終わるまでは頑張ってくれ。」


「その誘惑には勝てないなぁ〜。今日の分も一杯欲しいなぁ〜。」


「今は青山が持ってるから貰ってこい。」


 会議終了後青山も帰ってきたがかなりボロボロだった。武術家の現状を聞いてみたが中位に至ったかも不明なら言葉が通じたかも微妙らしい。なんか漢詩っぽいモノを口ずさみつつ全裸で走り回りながらモンスターと戦ってたとか・・・。狂人っぽいがゲートを探していたらしいので奥に行こうとしていたのだろう。因みに見つけたのは45階層。あと少しで中層である。出てきて欲しくないし退出ゲートから出れば多分中国なので俺の所に来る前に中国国内で処理するだろう。知らんけど。


「なら青山の所に行ってくるなぁ〜。」


「ならついでに松田さんに私が呼んでたって伝えて。多分サイさんがそろそろ来るから。」


「分かったなぁ〜。行ってくるなぁ〜。」


 フェリエットがスキップしながら部屋を出ていったのを見送りプカリ。明日の会議の時はスマホの持ち込みを申請するとしてサイの話はなんだろうな?あんまり込み入った話はスルーしたいんだが・・・。そんな事を考えているとノックがされ、SPと入ってきたのはサイさん。松田よりも先に来たが話してしまってもいいのだろうか?SPは退出し部屋は取り敢えず防音するとして・・・。


「先ずは大変申し訳ない事態となった事を謝罪したい。」


「えっ?いや、単刀直入過ぎて何が何やら。先ずは順を追って説明をしてもらえませんか?」


 ガバリと頭を下げたが何か不備ってあったっけ?スマホの着信やらを調べても妻から『私も愛してるって♡♡♡』と言うLINEくらいで目ぼしいものはない。ギルドの本部長PCにも特に事件を知らせるメールは来ていないので、説明してもらわないと本当に分からない。


「私が来ましたが・・・、どういう状況です?これ。」


「その状況を説明して貰う所ですよ。何やら申し訳ない事態になったとかで。」


「事の発端は私の国が中国と袂を分けた所からです。元々台湾と言う国は一国として立ちたいと言う思想がありました。そして、その転機として日本側につくと言う断固とした態度を示しこうして日米側についています。」


「ふむ、話は分かります。オリンピック等でもデリケートな問題としてありましたから。」


「しかし、今の話では核心に触れていないのでしょう?続きをどうぞ。」


「はい・・・、台湾と言う国はIT技術に力を入れています。そして、それの最先端にあるものがR・U・Rです。脳波による操作や仮想現実と言ったモノをバラバラになら今の技術でも程度は低くとも再現は出来る。しかし、それを1つのシステムとしてあそこまで小型化出来るかと言えば答えはNOです。それにダメージの人体へのフィールドバックはかなり繊細な部分とも言えるでしょう。なのでR・U・Rを再現するとして購入した物を分解等してみました・・・。」


 言い淀むがバラして組み立てられなくなったとか?安い物ではないが、かと言って買った本人が勝手にバラしたなら文句のつけ様がない。PCだって好きな人は買ってきて勝手にメモリー増設とかHDD増設とかするし。その過程でネジが余ったり動作不良を起こしてもメーカー側には何1つ痛手はない。寧ろ修理費貰えるからありがたいとか?


「話が見えませんね。修理依頼ですか?」


「違います。その分解した技術者の中に中国側の人間がいて、核となっているだろうパーツや我々が新しく組み込もうとしたシステムパーツを持っていかれてしまいました。」


「サイ大臣、それはまず何が出来るんですか?私はR・U・RやらIT技術には疎い。クロエの方にも何かあったと連絡はないのでしょう?」


「ないですね。そもそも多分核のパーツって出土品でしょう?元々露店で買ったお土産だったからそこまで重大事故につながるとは考えにくい。」


 元を正すと増田にあげたお土産だしなぁ・・・。出土品なので大量にとは言わないが出てくるし普通に売っている。問題とするなら佐沼達の会社の技術が漏洩した事だが、ハブ技術はどこかで開示するとしていたし、フライングしただけと取るなら賠償金で済む。と、言う事は組み込もうとしていたパーツの方が問題とか?


「何を組み込もうとしたんですか?話を聞く限り問題点はそこだと思いますが。」


「思考ダイブトレースシステムです・・・。概要を話すなら誰かの行動パターン、例えばファースト氏がR・U・Rを使い行動した動きや思考を自身で模倣するシステムです。」


「ほう!思考ラーニングですか!えっ!心の中丸わかりに出来るんですか?」


「いえ・・・、まだ開発中なので今の所モーショントレースが限界です。ただ、そのトレースをする過程でR・U・Rのマスターサーバーに繋がる可能性があります。」


(クロエさんクロエさん、それってまずいんですか?サイ大臣が死にそうな顔してますけど。)


(う〜ん・・・、直接繋がれるならサーバーを攻撃する事も可能でしょうし、完成していないとは言え人の心に触れられるなら思想誘導も出来るとかですかね?まぁ、サイさんの話ではモーショントレースだけなので今の所問題はないと思いますが。)


 確かに脳波とか読み取れるなら何を考えていたかを文面にも出来る。そして、身体が強いスィーパーの動きを模倣するなら、いずれ身体に馴染んでくる。要は仮想現実世界で師範の正拳突きを何万回も模倣して、それが身体にフィールドバックするので師範と同じ正拳突きが出せると言う仕組みだろう。


 米国とかは欲しがりそうだな。魔術師のデータが集まれば個別の思考はあるだろうが、自分なりの最適解は探しやすそうだし、取っ掛かりをつかむと言う話なら見取り稽古の先を行く。フェリエットの様に魔術を理論とするならいいが、感覚で魔法使う人は教えてくれと言われても言語化しづらい部分もあるし。


「確認しますけどサーバーへのアクセス時、正規ルートを通ると思いますか?」


「いえ・・・、どちらかと言えば本人の精神が加算される分違法データとなります。しかし、その仮想世界で本人の精神が自由に動ける事は確認しています・・・。大変申し訳ない!既存のファイアウォールでは多分その攻撃は止められない!いくら処理速度が速くとも、意思あるものが介入するなら特定行動しか取れないプログラムでは出し抜かれる!」


「なんだ、その程度の事ですか。」


「その程度って・・・、蓄積されたデータを奪われたり事によっては乗っ取られて日本が人質にされるかもしれないんですよ!?」


「なら、分解したR・U・Rの型番教えて下さい。それで良いですから。あっ!そのパーツ良かったらもらえません?いい手土産になるんで。」


「それは・・・、試作品を持っていかれたので作り直さないといけません。今回の不祥事を国として謝罪しシステムパーツを渡す事は約束します。」


「なら、後は技術的な協力関係ですね。私に権限はないのでそのシステムパーツの出来次第ではラボの方からと言うかR・U・R作ったりサーバー作ったりしているところから話がいくと思います。」


「その・・・、本当にそれでいいんですか?先ほども言いましたがインターネットに繋がった全てのモノを掌握されるかもしれないんですよ?」


「ちょ!クロエさん!それかなりヤバいですよ!」


「焦らなくていいですよ松田さん。R・U・RはR・U・Rサーバーで処理を行っている関係上、必ず最初にそのサーバーに行く事になるんです。そして、そのサーバーのファイアウォールは私と奏江本部長で1から作った特製品です。今サイさんの言われたシステムだと必ずファイアウォールに引っかかる。そして、メインサーバーへの侵入は不可能に近く、仮に突破したとしてもボスがいる。」


 奏江がいつか有ってよかったと言う日が来ると言っていたが、かなり早く来たな。これが魔術師:雷からの攻撃ならかなり面倒だがR・U・R経由なら防げる。それに、時間が稼げるなら対処も出来るしサイがパーツくれると言うなら寧ろブラスなのでは?何にせよ新しい技術はそこかしこで生まれているようだ。


「クロエさん、そのファイアウォールって日本全体を防げます?」


「橘さんがサイバー方面は鑑定してるので今は橘さんや警察頼りじゃないですかね?」

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― 新着の感想 ―
古い国ならその手の連中を権力側というか治安維持側に取り込んだ歴史もあるけどねぇ 無法の法として まあ強盗どころかスリ程度の小物まで自発的に盗賊ギルドっぽくなった国も珍しいけど ああ、クロエなら遠山の金…
要するにインターネットの中を適正無い人でもクロエが移動するように出来るよ でも電気等の適正ある人の方が更に凄いよと ロッ○マンexeでのネットみたいなの出来るよ適正有るとそんなの使わずに更にチート出来…
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