498話 杖のイメージを固めよう 挿絵あり
部屋に帰りキセルを取り出してプカリ。フェリエットはマタタビ酒の瓶を抱いてベッドで丸くなっているが、ショットグラス1杯の制約を付けたので、今は飲んだ気分で瓶の口から微かに漏れる香りに酔いしれているらしい。まぁ、本人がいつ飲むかは決めるので生暖かく見守ろう。
「ワインはどれにします?赤ですか?白ですか?それともロゼ?スパークリングワインもありますよ?」
「う〜ん・・・、赤かな?ルームサービスで肉系のおつまみに合わせるならそうなるだろうし。」
本音を言うと鳥刺しを白で飲むのが結構好き。と、言うか大分だと鳥刺しがスーパーに並んでいるので常備的なおつまみとして買うし、やる人は少ないがそれをポン酢で食べるのが好き。ももかむねかで言われたら断然もも。コリコリとした食感と香ばしい皮がたまらない。
でも、ここって英国だし生肉頼むとローストビーフなんだよね・・・。まぁ、シンプソンズのローストビーフをサービスしてくれるらしいので赤ワインで楽しむとしよう。どうせ青山が頼むにしてもローストビーフは外さないだろうし。程なくしてワインとやたら大量なおつまみが届いた。
定番のチーズにお目当てのローストビーフ。後はナッツ類にスコッチエッグ、フィッシュ&チップスにバケット等々。てか、チーズフォンデュあるのはなんで?まぁ食うけどさ。
「取り敢えず乾杯。松田さんの方はどうだった?」
「分刻みのスケジュールでしたよ。出向くのではなく来るのがメインでしたけど。ただ、中露系は時間がないと書面貰って後はスルーでしたね。」
「丁寧な無視をやってるなぁ〜。ガチガチにスケジュール入れて塩対応してるんだろうし、それで諦めて離れてくれれば嬉しいんだけどなぁ〜・・・。」
「無理っぽいですね。露骨に胸元の開いた女性秘書官や線の細い美男子なんてのもいましたけど、門前払いされたら立つ瀬もないし、その立つ瀬を作る為につきまとう。クロエさんはホテルと魔法省の往復だから知らないと思いますけど、ホテルの外はハニトラだらけでした。ささっ!どうぞどうぞ!」
よくやると言うかよく調べ上げたと言うか・・・。あちらの思惑として関係修復を図りたいのだろうか?それとも籠絡して情報と技術を抜いた上で傀儡としたいのだろうか?言っては悪いがIT技術的にはゲート出現前なら日本は中国に負けている。地方ではまだまだだろうが、北京や上海なら買い物もQRコード決済で済ませられるしスマホがあれば財布はいらない。
まぁ、そんな中でも雄安新区なんて言う10兆くらいぶち込んで爆誕した明るい廃墟なんてものもある。いや、今はマンパワーとゲートのおかげで不動産バブルがギリギリ保ててるんだったか?なんにせよ政府外に目を向けさせるか、どこかを悪者とでもしないと厳しい状況なのだろう。追い越したと思った日本がすぐに追い越したのも気に食わないだろうし。
そこで目をそらす先を考えていた時に宇宙人の存在を知って、宇宙開発に国として乗り出しスペースシャトルをバンバン打ち上げている時にラボが空を飛ぶと。スタートはソフィアからだがあちらとしては踏んだり蹴ったりな状態だな。まぁ、国政はいいや。俺の領分ではないし。
「なんにせよ何事もなくてよかった。ほい。」
「だめです!そんなついで貰うなんて恐れ多い!」
「飲む相手はいるだろ?下戸なら仕方ないけど、お前飲めるし元ホストだし。お酌していいのはされる覚悟のある奴だけってな。まぁ、奉公する者的にはNGならやめるけど。」
目の前で手酌で飲まれてもなぁ・・・。しかし、コレもまた仕事を・・・、意味を奪っていると言われたらそれまでだな。ただ、主体は青山なので普通に飲むとは思うが・・・。
「審議の結果、いただく事にします。」
「私も今から1杯だけ飲むなぁ〜。」
「ん?チーズいるか?」
「その赤い肉がいいなぁ〜。」
「まぁ、量はあるし食べるなら食べていいぞ〜。」
マタタビ酒に何が合うのか?イマイチ分からんが、本人がこれと思うならそれだいいんだろう。高かろうが安かろうが酒とはつまり酔えればいい代物である。さて、飲むのはぼちぼちでいいとして問題は杖か。守りの杖となるとどう守るのかが鍵になる。
賊を吹き飛ばすのか?或いはそれを避けて逃げるのか?現代の誘拐を考えると・・・。いや、先ずは立場か。王族が使うとしていきなり射殺はない。それこそ古くはサラエボ事件の様に政治的緊張が高まっているわけでもないし、目的から考えると主義の主張に行き着く。なら、早い話しが車で突っ込み攫って逃げる。或いは何かしらの混乱に乗じて攫うと言うのが自然だろう。
そうなると最低限の自衛手段・・・、スィーパーにも人にも効きそうなのは電撃。スタンガンやテーザー銃程度の電撃を出す魔法は組み込む。そして、形の変化は必須として後は守り方か。攻撃は最大の防御と言うが子供に危ない魔法は持たせたくない。なら、見失わせる?米国でペンタゴン潜入に使った魔法。
本人をズラす魔法が最適?あそこまで行くと死の淵に文字通り立っている事になるが、それを子供に持たせるのはなぁ・・・。流石にあれは危なすぎる。なら、ベールを再度イメージし直して・・・。いや、あれは先ず視線を外す所からだから、サングラス越しでも一瞬目が眩む程度に光らせるか。それこそ写真のフラッシュの様に。ついでにメデューサに睨まれた様に一瞬神経を混乱させて静止させれば更に逃げる確率は上がるな。
いや、それならベール改妖精郷?ティターニア辺りを組み込んで本当は夫のオベロンとだったが、人と妖精で子供を取り合ってもらえば半分はこの世ならざる所にいるとしていい。ふむ、妖精郷を取り入れるなら使い魔というか妖精はいてもいいな。ピクシーとか。それとも四大精霊?まぁ、電撃を出すのを子供本人が攻撃したと思わせるよりも誰かに助けてもらったとした方がいいな。
本人の教え方次第だが国民に助けられている王家やら、色んなモノに助けられる王族として教えるなら悪政もしかたない。そもそもそれが出来ていればこの杖は無用の長物である。と、言うかそのイメージだと妖精とか精霊が必要じゃん!いや、まぁ、犬が出せるから作れない事はないが、さすがに喋ったりはしない。それに絵心は魔女しか持ってないので、何処かから情報を仕入れないとな。
(藤くん藤くん起きてる〜?)
(おお!クロエ殿どうされた?こちらは大丈夫でござるよ〜。)
(なにか妖精とか精霊の画像ない?無料で立体化してよさそうなやつ。)
(フリー素材でござるか?それならいくらでもあるでござるが、何かするのでござるか?)
(ちょっと頼まれごとしてね。モデリングイメージとしてそこそこ気品がありそうで親しみやすい奴がいいんだけど。)
(う〜む、人外でもいいでござるか?例えばドラゴンやヴォジャノーイとか。)
(出来れば人型かなぁ〜。そして西洋風がいいと思う。)
(ならコレとコレはどうでござる?顔はこのキャラクターを使い服を遥殿のラフイメージから引っ張ればオリキャラでござろう?どうせモデリングするなら顔付きもいじるでござろうし。)
藤と相談してイラストを貰い妖精のイメージを固める。召喚士の杖と言われれば聞こえはいいが、一瞬現れる程度で子供自身が害したと思わせない為のモノなので、呪文を組み合わせる裏技でも使わないと動かないかな?一応、この妖精達も魔法なので杖の延長として動かしは出来る。
姿を消す、妖精に守ってもらう、雷を使って相手を痺れさせる。要点はコレだけだが、姿を消す=物理的に接触出来ないなので守りとしては十分だろう。まぁ、解除ワードを親が知らないと永遠に妖精郷に囚われるか本人の意思で帰ってくるかしかない。ただ、残念な事にこの魔法ってビームにはぶち当たるんだよね・・・。俺自身が使うなら細かな対処も出来るが設定して使用するとするなら光の加減なんて物は対処しきれない。




