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街中ダンジョン  作者: フィノ


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493話 誰かの落とし物 挿絵あり

 サイラスとメアリーを連れて外へ。メアリーは終始楽しそうにしているが、やはり王室内と言うか女王とは窮屈なのだろうか?人々の模範となり規律を守り象徴となる。俺には無理だな。自堕落でわがままだし。ただそれが生まれながらの生活なら、慣れてしまってそんな感覚もなくなるのかもしれない。まぁ、隣の芝生は青いので宮殿から外を見た時に、同い年の誰かが何の気兼ねもなく笑いながら歩いていたら羨ましくなってしまったのかも。自分になく他の人にあるモノを羨むのは人としてとても自然な事だから・・・。


「ねぇねぇ、その杖も何か変形するのかしら?」


「いえ?変形するかと問われたら確かに変形するのはしますが、見るには穴を掘る必要があります。」


「変わった魔法をリクエストしましたがそれと関係が?」


「そうですね。これは土をイメージして作った土の杖。まぁ材料はカーボンですけど大元のイメージとしては金属探知機が近いですねサイラス長官が土にどう言ったイメージを持っているかは知りませんが、私としては土とは無機物と有機物の化合物であり地球に程よくあり且つ、生命を生み出すもの。土壌という言葉もありますしね。」


 魔法で火の玉飛ばすならフワッとした感じでもいいが、杖として作るならガチガチの理論を組み上げた方がいいかも。う〜ん、やはりデバイスとかガジェットとしてのイメージが俺に強いからだろうか?杖を装備して魔力が上がる。ゲームなら分かるが実際にはなんか凄そうな杖を持っても、ぶん殴る事は出来てもその杖が何かをする事はない。


 やっぱりこれは音声認識PCだな。出来る事は指定された事だけで使い道がないわけではないが、普通に魔法を受け渡したのと変わらない。まぁ、安全装置的な意味とファッション的な意味合い。後は使用回数の増加とか?受け渡すよりも使用回数は増やせる様に思うし。


「土いじりは楽しいですからね。魔術でやってしまってもいいですが、丹精込めて土を耕し手間暇かけて咲かせた花は美しい。と、何かいい香りが・・・。」


「これは・・・、パンかしら?美味しそうね。」


「多分フェリエットでしょう。流石に敷地内でパンを焼く生徒はいないと思いますし。」


 外に出ると庁舎から少し離れた所に生徒達が集まっている。香りはそこからするのでフェリエットで間違いないな。思考し、妄想し、空想し、操作し、具現化し、法を破る。これの操作の部分を鍛えるなら何かを動かしたり作ったりするのがいい。具現化は前の工程で既に何をするか指定しているのでいいとして、操作とはそのイメージの加工工程なので、ゲート外で加工が上手くなりたいなら色々な物を動かしながら彫刻でも料理でも絵画でも作り上げればいい。


 これも配信に載せているので芸術や料理方面に走る魔術師も少なくないな。藤なんかがいい例で簡単な人形ならダース単位でポンポン作ってしまう。まぁ、想いを込めた一品には程遠いがマンパワーやらを考えると量産できる分使い捨てに出来る。


「そろそろ焼けるなぁ〜。フワフワのパンは熱いけど美味しいなぁ〜。」


「どれくらい作った?タイミング的には昼前だからみんな腹ペコだけど。」


「大きいの1つと小さいの1つだなぁ〜。小さいのはフィンへのご褒美だなぁ〜。」


 尻尾でちょいちょいと指す先にはズブ濡れで大の字になるフィンの姿。泥にもまみれなので魔術の練習でもしてたのかな?多分早く動かせとか好きな所を隆起させろやら穴ほって逃げろとか?使える属性を増やすよりも今出来る事を伸ばす方向で訓練していた様だ。まぁ、獣人は得意がない代わりに全部を満遍なく使えるみたいだしな。そこから得意と言うか好きを見つけるのもいいだろう。


「おっ!モルガン達も来たのか。いや、マスク外してるならファーストさんでいいか。フェリエットはいい訓練相手だな。魔法をどんどん出してくれるから切るにしてもイメージが作りやすい。雷って切れると言うか打ち払えるもんなのな。」


「雷を切る?あぁ、立花道雪の雷切と言う逸話がありますね。ヨーロッパ方面ではゼウスが出てくるのでアレですが、日本なら大概のモノを武士は斬ってますよ。」


 神に逢うては神を斬り、仏に逢うては仏を斬る。戦闘民族丸出しだが、武士道の中で「死ぬことを見つける」とは、生命の危険や死への覚悟を持ち、戦闘や義務を果たす覚悟を意味するので、表向きは治安も悪くなかったと思う。まぁ、野武士やら落ち武者がいるので一概には言えないし昔の倫理観だからなぁ・・・。


 海外で騎士が切るものって大概悪竜とかよく分からないモンスターで、そもそもその騎士が本当に実際したかと問われると書物が処分されたり焼かれたりして信憑性の部分が弱くなる。まぁ、雷切で本当に雷を切ったかと問われれば単純に落雷に当たって生き残っただけとも言えるが・・・。


「そんなサムライもいたな。で、外で何かす・・・、るんですか?」


 エヴァがメアリーを見て背筋を伸ばすが、当のメアリーは軽く手を振るにとどまる。まぁ、サイラスの弟子ならメアリーの事を知っていてもおかしくないか。ただ、露骨に態度に出すのは辞めてほしい。周りの生徒が気付いたら獣人はいいとしても人間はかしこまる。そうなると俺にも飛び火するんだよ。


「エヴァちょっと。」


「はい師匠!」


 サイラスがエヴァに説明するのを横目にフェリエットのパンは綺麗に焼き上がり、熱そうに手に持って割れば小麦のいい香りがする。竈は見当たらないから全て浮かせてやったのだろう。普段の俺のサボりを見てやったのだろうが、いい見取り稽古になったと思っておこう。


「バターに塩を一つまみでかぶりつくなぁ〜。フィンは動けるのかなぁ〜。」


「このまま寝てたい・・・。昨日より水球が痛い・・・。」


「壊せる力の水球に当たれば当然痛いなぁ〜。回避しながら魔法を使える様にずっと計算しないといけないなぁ〜。クロエはどうして出て来たのかなぁ〜?授業が終わった?」


「終わったと言うかこれの試しにな。」


 フェリエットは俺が手に持つ杖をしげしげと見ているが、見ただけで判別はつかないだろう。見た感じはただの黒い棒きれで中は空洞なのでパイプと言われたらそれまで。この先誰か杖職人とか出たとしても、武器のアタッチメント方式が主流になるかもな。まぁ、炎の剣でモンスターを切ろうと普通に剣で切ろうと代わりはない。強いて言うなら飛び道具にして対応力強化とか?


 ガンブレードは扱いを考えると重いし弾数が少ないし、ブレードが折れ曲がれば弾が思う様に飛ばなかったりと結構扱いには丁寧さが求められるし、着剣したライフルは斬るのではなく突く事をメインとするので用途が違う。それに引き換え魔法の込められたアタッチメントなら気にする点は少なくていい。まぁ、威力は?と問われると作り手によるとしか言えないのだが・・・。


「その棒はどう使うのかなぁ〜?投げて取ってこさせるのかなぁ〜?」


「違うよ。なにが出来るかは地面に刺してからのお楽しみ。さてと場所はここでいいとして・・・。」


「なら私に扱わせてもらえないかしら?危なくはないのでしょう?」


「メアリーが?」


 危なくはないが制御がなぁ・・・。命名するならノズチ君とかになるんだろうが制限としては直径1kmの円の中で鉱物や貴金属を取寄せてくれる。なければ何も出てこないのだが、ここってバッキンガム宮殿に近いから色々出てきそうなんだよね・・・。昔の貴族が落とした指輪とか秘密の地下通路に置かれたお宝とか。1つ何か出たら止めればいいのだが、面白かって使い続けるとどんどん発掘してくれる。今から命令を付け足すかな?


「ええ、やっぱり新しいモノは使って模範を示さないとね。これがスタンダードに広まるか、それとも別の何かになるかは分からないけど、誰でも使えるって分かれば素敵じゃない。」


「分かりました。使い方は地面に刺して『1握りの富をここに』です。絶対に1握りを付けてくださいね?」


「分かったわ、貸してちょうだい。」


 ギリギリ書き換え完了。1握りの富なので落ちているコインとかも集めるかも。富をここにだけだと金のなる木状態になるが、コレなら手のひら分しか集まらないだろう。まぁ、富を置いて更に富を求め出したらその限りではないかもしれないが・・・。まぁ、杖は握り続けての杖なので手放そうとした時には手放すなと警告だな。


 メアリーに杖を手渡すと杖の中間を持ち地面に突き刺す。パッと見は挿し木した桜の様だが節もないので何かの目印にも見える。これがあれば日本なら徳川埋蔵金も簡単に見つけられるかな?それとも金鉱脈?流石に限界値を決めないとどんどん広がってしまうのでそこまで探せないが命令次第だな。特定の何かと強くイメージする分、より反応は強くなるかも。


「1握りの富をここに。これでいいのよね?」


「ええ、何か富があれば出てくるはずです。それはコインかもしれないし、金貨かもしれない。或いは宝石という線も・・・。」


「本来は無作為に集める物ですか。流石に根こそぎ地中をさらわれては困る。」


「先にサイラス長官が集めてそうですけどね。それにロンドンにはカタコンベも多数あると聞きます。死者の眠りを妨げるのはいい事とは言えない。」


「確かに歴史のある街なのでないとは言えません。まぁ、この周辺の地下に空洞がないかは調べて発見は出来ませんでした。でも、お宝となると別ですね。探そうと思えば探せますが、今だと金銀財宝はゲートから出る。古きに重きを置き職でなく職人の手作業に思いを馳せるなら、それはまだ価値ある財宝と言ってもよろしいですが。」


「匠の技とその時の混ぜ物次第ですね。金は錆びませんが他は錆びる。金貨を流通させれば量次第では何かを混ぜないと追いつきませんから。」


 発行当初は純度が高くとも時代が進めば流通量に対して金が不足するので混ぜ物は増える。仕方ないとは言え溶かして新たに混ぜ物を増やした金貨を作るなんて言う輩も・・・。だからこそ天秤は必要だったし公平の証とされた。まぁ、昔の人が今を見たら卒倒するんじゃない?探して追い求めていた黄金が子供の手に握られてる事もあるし。


  挿絵(By みてみん)


 刺された杖は話す横でウゴウゴ動き何かを出そうとしている。さて、何が出るかな?メアリーはそろそろ手を離そうかと考えている様だが、流石に手を離されると困るのでその姿勢をキープ。


「あら、何か手に当たって・・・。」


 筒先から何かが吐き出されたのでキャッチ。手を開いてみると金貨である。多分古いものなのだろうが、いつの時代かまでは検索しないと分からないな。まぁ、金の価値よりもアンティークとしての価値の方が高そうだが・・・。


「ほう、絵柄的に旧ソブリン金貨ですね。コレクターに人気がありますよ。」


「1握りの富とするなら十分ですね。」


「まだ出てきそうなんだけど!?」


「それは1枚だと1握りとは言わないからでしょう。十数枚は出てくるんじゃないですか?」


「そんなに・・・、クロエさんはこの金貨いる?」


「遠い昔の誰かの落とし物なんでネコババする気はないですね。どうぞ、扱いはご自由に。」


「扱いと言っても・・・、なら国に寄付して国庫にでも入れておくわ。異国からのお客さんが拾ったものとして、ね。」


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― 新着の感想 ―
pcってことはusbに魔法(ソフト)入れて使い分け的なことできる? できるなら日本人なら仮面ライダーぽいの作るのででくるだろうな
道雪はそれで半身不随になったらしいしね あと葉隠は書かれた鍋島藩ですら禁書枠だったとかで本格的な研究は近代になってからとか
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