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街中ダンジョン  作者: フィノ


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483話 こっそり訓練開始 挿絵あり

 校長室と銘打たれた長官室へ入り中を見回すと、大きな窓がやはり目に付く。ロンドンは雨が多く曇りの日もまた多い。1日中降ると言うよりはざっと降って上がるか霧雨が降り続ける感じらしいが、今日は運良く晴れていたのだろう。ただ、その分窓を背にして座るサイラスは暑そうに見えるが・・・。


 何にせよ床はふわふわの絨毯だし赤いカーテンも金の装飾がされているにも関わらず嫌味な感じはなく、調和がとれて落ち着いた雰囲気となっている。時代錯誤かもしれないが、領主の屋敷と言われれば納得してしまいそうだし、サイラスの格好も燕尾服の様なスーツにシルクハットだったのでゴシック調のインテリアや世界観が好きな人にはたまらないかもな。


 強いて言うならモノクルが欲しい!アジア人にはイマイチ似合わないが彫りの深い西洋人にはよく似合うだろうし、サイラスがそれを付けるなら俺はペストマスクで迎え撃つ所存である!寧ろどっかに売ってないかな?出来ればフルフェイスのペストマスクが欲しいんだけど・・・。


 前ならそんな物いらないでしょう?と妻からダメ出しされただろうが、今なら指輪があるのでいらない物を買い込んでもバレないし怒られない。しかし何故こう・・・、ペストマスクやらガスマスクってカッコよく見えるんだろう?多分コンプレックスの裏返しでそう見えてるだけなんだろうな。


「どうかされましたか?」


「いえ、ウチとは違いいい趣味の部屋だと感心してました。どうしても私の執務室は近代化と物を置かない方向性になって無機質なオフィスを思わせる。」


「それもまたあり方の一つでしょう。私はこう見えてもそれなりの年月を生きて若返った身なので、古きを楽しむ術を知っている。何か欲しいものがあれば進呈しましょうか?調度品とか・・・。」


「ペストマスク!」


「えっ!?」


「こらこらクロエさん。そんな子供みたいな事を言わないでください。しかもなんでまたペストマスクを?ここはほら、チークやマホガニーで作られたアンティークの机とか茶器セットとかをですね。」


「そんな物は買えば済む話です。欲しいのは顔を隠すペストマスク1択です。それがあれば刑を執行する時もノッペリとした仮面ではなくそれを使いますし、こちらで過ごす時もそれを付けておけば調合師辺りと勘違いしてくれるでしょう?現地に馴染む小道具は必要でペストマスクは文字通りヨーロッパで黒死病が流行した時に医師が付けたもの。何もフル装備でペスト医師の格好をするつもりはありませんが、マスクだけでも馴染めるでしょう?実際車から見た街では制服効果狙いのスィーパーも多数散見されましたし。」


「まぁ・・・、ない事もないですが本当にそれでよろしいのですか?」


「他と言われても宝石や調度品は必要ありませんし、欲しい資料もこれから情報共有を進めるなら必要ないでしょう?あっ、古い稀覯本とか魔導書なら閲覧してみたいですね。本を読むのは好きなので。」


 サイラスは本当にそれでいいの?と言う感じで見てくるし松田も理解出来ない様だが、多分ペストカッコいい理論に辿り着けないなら一生理解出来ないな。欲しいと言ってもなにも実際に使用した歴史的価値のありそうなものはいらないし、どちらかと言えばスチームパンクっぽい仕様かコレはレプリカと分かる様なものでいい。だって本物だとくちばしの先に香草とか詰めてたから臭そうだし。


「なら少しお待ちを。ジャスパーが帰ってから取りに行くとしましょう。流石にエスコート相手を置いて宝を取りに行くわけにもいかない。」


「そうですね。流石に私達も置いていかれた後に何かあったとして、何もしてないで押し通せるとは思ってませんよ。それで、魔法の話でしたよね?」


「ええ!どうぞどうぞかけてください。例えば過去の例に習って魔法陣を引く。或いは特定の地域に継続的に効果を及ぼす。そう言った魔法は可能だと思いますか?」


 勧められたので適当な席に着きつつサイラスが矢継ぎ早に聞いてくるが、何か魔法て設置したいのかな?例えばテレポートの魔法陣を作って避難経路を形成したり、もっと簡単に数を増やして交通機関の肩代りとして使ったり。


 魔法の継続性と設置。論文のテーマとしてありそうだが設置に関しては受け渡しで代用出来る。ただ、それはイメージによるものが大きく俺の場合は一服の煙なのでそんなに回数は多くない。その代わりに煙を吸う=使うなので火をつけてもいないタバコは残り続けるのと同じ様に魔法も結構残る。


 少なくとも半年以上は残ってるかな?ギルドが稼働して金庫に監視用の魔法の玉を撒いてそれがなくなったと言う事はない。それに増田に渡した雷の魔法も残っていると言っていた。指輪に入れられてしまえば魔法を通して周囲を見ようと思っても真っ暗で何もわからないが、バイトを使いに出した時は手にでも持っていたのか周囲は見えた。まぁ、それは外にいた時でゲートを潜られると再度見直しとでも言えばいいのかよく見ようと思わないと見えづらいのだが・・・。


 ゲート内と外は多分別空間なので、チャンネルと言うか電波的なものが違うとか?その割には普通にスマホカバーエリアが拡大しているので何がよくて何が悪いのかは分かりづらくなってくる。う〜ん・・・、多数の人の使えると言うイメージとかだろうか?


「話しを聞く限りだと可能だと思いますよ?サイラスさんは当然魔法を受け渡しできますよね?後は糸を出したりとかも。」


「ええ。アレは魔法を理解しようと思うならいい訓練になりますからね。無いものを実在させて形とする。イマジネーションリアルと言われていましたが、私としてはそんな堅苦しい言い方よりも魔法作成物やアーティファクトとでも言った方が聞こえがいい。」


「私も出来そうな魔術師に見せてもらった事がありますが、いつ見ても不思議な光景ですね。それに自由度も本人次第でかなり高い。鍛冶師や装飾師も魔法の加工と言う工程に入れればと躍起になってますよ。」


 横で松田が口を挟むが魔法の加工か・・・。遥に装飾品の一部として使えないかと聞いた事はあったが宇宙関係で忙しいのか音沙汰はない。その代わり政府がそれを肩代わりしてるのかな?


 実際受け渡せる人は増えてるし糸が出せる人も増えている。魔術師総蚕化計画とかないよな?天然繊維と言えば天然繊維でコストや生産面を見ても悪くないし。そのうち糸の魔術師とか出てくるのだろうか?警察なら捕縛要員として活躍できそうではあるし、海外ならスパイダーマン的な動きで飛び回るとか?


 中層当たりなら活躍出来そうだが、上層だと山岳地帯なのでモンスターを絡め取るくらいが関の山と言うか、糸でモンスターがバラせる強度を持たせるとなるとそれ相応の強度がいる。それを詰めるよりもウォーターカッターで切った方が早いし何とも言えないが、カッコ良さを突き詰めるならありだな。


「日本ではそこまで・・・。しかしクロエ、可能と言うなら貴女は出来ますか?」


「設置魔法と言うものがですか?出来ますよ、魔法の受け渡しは設置魔法でしょう?」


「いやいや、受け渡した魔法は渡した本人が許可しないと使えないでしょう?解放するにしても魔法を読み解く必要もあれば運用上の注意点や危険性もある。」


「え?特定キーワードや何の魔法か知れば済む話でしょう?魔法陣と言いますけどそれはつまり受け渡す魔法を魔法陣の形に整えれば済む話で、そこでキーワードと効果を理解して使用者が使うと思えばいい。」


「それでは上手く行きませんでしたが?同じ魔術師でも他の職の人でもイメージの齟齬で破綻していき多少の効果を発揮出来たとしても完全開放には程遠い。」


「イメージの破綻?それこそ何で起こるんです?完成した魔法を渡しているのに破綻したらそもそも未完成の魔法でしょう?加工するにしても完成した魔法を渡さないと消えてなくなってしまう。」


「未完成と言うか他人を受け入れるイメージ・・・、例えば魔法を宝箱だとするとその錠前を外すイメージは必要でしょう?外して箱を開けたら開放。その鍵が私と他の人で違うから完全に鍵が開かずに半開きになってしまう。」


「なるほど、受け渡すにしても私と貴方は違うと言うわけですね。まぁ、イメージの違いは仕方ないか。誰がどうイメージするかも統一するわけにもいかないし、統一してしまえば最後イメージは限りなく少なくなってしまう。」


「統一ってダメなんですかね?私としては統一して規格化してくれた方がはるかに管理しやすいと思うんですけど?」


「政治家やら警察はそうでしょうね。でもダメです。そんな面白みのない固定正解なんて端的に言ってクソ喰らえです。」


「そこまで否定するからにはなにか理由が?」


「サイラスさん、こう考えた事はありませんか?魔術師:火は水の魔術を使えないのか?」


「それはまぁ、考えましたよ初期の初期に。しかし、結果は使えるでしたね。程度の差を考えると魔術師:水よりは確かに劣る。しかし、劣ったとしても使い続けイメージが出来てくればそれも埋められる。」


「ええ、その通り。差が埋まると言う事はベースとして魔術師はどの魔術にも適性がある。そして、属性を出されたものが1番イメージしやすいと言うだけなんですよ。だから変に否定していけば自分で自分を縛ってしまう。」


「ふむ・・・、要は受け入れるだけの遊びを残して行けと?学校としてやる分にはどうも規律的な方に振ってしまうな・・・。」


 サイラスが考え込んでいると背後の扉が開きジャスパーと犬人が現れる。フィンだな。画面越しで見たのと似た姿で何処か緊張した面持ちだがどうしたのだろう?鼻もひくひくしてるし。そんなフィンは紹介されつつもそのまま歩き出して俺に抱きついてくる。


「フィンを連れてきました。って、なんで抱いついてる!ファーストさんすいません!」


「いえ?犬人や猫人のスキンシップが激しいのは共通でしょう?私も買い物なんかに行くとよく抱きつかれますし。」


「寛大な配慮ありがとうございます・・・。」


「ジャスパー・・・、ちょっとレディご所望の物を取ってくる。クロエはしばしお待ちを。」


 サイラスはテレポートして何処かに行き、抱きついたフィンは匂いを嗅ぎながら離れない。犬にじゃれつかれてると思えばそこまで気にしないが、ジャスパーの方は早く離れて欲しそうにしているな。


「戻りました、これで良かったですか?」


「おぉ!コレですこれ!では・・・。」


  挿絵(By みてみん)


 カポッと顔につけて見る。視界は狭いが視界を切り替えて過ごす訓練にもいいし顔も隠せる。松田は微妙な顔をしているが日常的に目隠して過ごす機会はないし、そんな事をすればまた何かあるんじゃないかと勘ぐられる。合法的且つ、怪しまれない。カッコよくて注目されそうだが目をつぶっていればそこまで気にならないし、やはり出歩く時はマスクをつけておくかな。


 ご丁寧にと言うか、他にもつけている人が多いのかくちばしの部分がチャック式で開閉できるのもポイントが大きい。酒を飲むにしても飲食するにしてもこのままいけるしいい貰い物だ。


「パーフェクトですサイラス長官。」


「ミスター松田、ファーストさんはなんでアレを?」


「さぁ?賢者と呼ばれる者が考える事を凡人が推し量れると思いますか?」


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― 新着の感想 ―
狩人の設置罠とかを例に取れば、だれが乗っても同じ効果でやってくれるわけで、それを使い切りではなく持続かつ自動再設置にするだけで要件は満たせる。 元の年齢的にサイラス氏のイメージに新しめの創作物がないの…
ペストマスクは…ほんとになんでもらったの??
イメージの統一は多様性失うから無しだよね 当人の認識とは独立したフロッピーに保存したプログラム的なイメージで共有出来ればあり得るか? あーもっと個から切り離さないとだめか 人間社会側も獣人のスキンシ…
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